薄汚れた少女二人を連れ歩く男の姿は誰がどう見ても不審者である。
うーん、人の目を恥ずかしく思ったのは初めてだ。
彼女たちからは悪臭がしているし、触ったら臭いが移りそうだ。嗅覚を無効にしたとはいえ、自分が臭いもの扱いされるのは嫌だ。
正直近寄りたくない。
髪はべっとりと肌にくっついており、ここまで汚れた女の子は初めてである。ゲロを吐いた女の子以上に近寄りたくない存在だ。
尚文はそんなことを気にならないとばかりに平然と隣にイタチ少女を連れている。
勇者だ。勇者がいる。
尚文に深い尊敬の念を抱いた。
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正直いつまでもそのままではいられない。
彼女たちには熱湯を頭からかけてやりたいくらいだが、実は人肌のぬる温かいお湯というのは難易度がわりと高い。
火傷する熱湯や、キンキンに冷えた水なら楽勝なのだが、自身のめちゃくちゃ高いレベルが壁になるのだ。湯船くらいの大きな桶になら水とお湯を交互にためて調整できるのだが。
戦闘とエロに関わる魔法ばかりを高めてきた弊害である。
そんなわけで入浴に行くことになった。大人一人子供一人で銀貨一枚。
街に一件あり、宿一泊分の費用がかかると考えれば高い。ちょっとした娯楽になるのだろう。
とはいえ、そのまま直行してしまうと、着替えでまた臭くなってしまう。
そのため、まずは服屋に、と思ったが、ファンタジーなこの社会。
服は結構高い。オーダーメイドが基本だし、時間がかかる。
だが、入れ替わりの激しい子供服ならば! と思って探してみれば古着ショップを発見。それなりに需要が深いのか、様々な年齢の衣服が揃っており、女性上位のメルロマルクだけあって、デザインのかわいい。選びたい放題である。
下着もあるねーといった瞬間、尚文はぷいと顔を背けて任せたと言ってでていった。
この恥ずかしがり屋さんめー。
興味深げに見ていたので、イタチ少女のリファナには普段使いの下着に追加して、黒の紐下着を買ってあげる。尚文に見せてやってほしい。
彼女は人懐っこい性格なのか、それとも自分に害を与えないと判断したのか、拷問を受けていたようである奴隷の割には距離が近い。
尚文には一歩分、俺には三歩分くらいの距離まで近づいてくる。
逆にたぬき少女といえば、リファナの背中に隠れて近づこうとすらしない。
正直唸り声が聞こえそうなほどに警戒しており、近づく気がまったくない。
近づいた分遠ざかるため、全く距離が変わらない。
まさしく野生動物との距離という感じだ。
はあ。尚文に付き合って、面倒なの買っちゃったな……。
正直、尚文と違って、逆らわない仲間が必要というわけではない。
それに、LVの最高が100なのであれば、2倍以上に強くなれる俺からして、仲間は補助要員だ。
魔法を使いこなせそうな仲間ならともかく、対して学習を受けていない力自慢の獣人なんてペット以上のなにものでもない。
そういえば。
かつて日本で、異世界に行く前の頃。ハムスターを買ったことがあった。
くりっとした瞳に、ふわふわでまあるい姿。
かわいいなって思って、でも……冬に寒さに眠ってそのまま起きなかった。
本で調べて冬眠なんじゃないかって信じて待って……ひどい匂いをしだして泣いたのを覚えている。
──世話、できるかなあ。
ペットの世話とか全然自信ないなあ……。
憂鬱な気分で俺は──
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「めっちゃ生き返るう」
「ああ、久しぶりにスッキリした気がするな。冷たい果実水も気が利いてる」
「俺、牛乳が良かったなー」
命の洗濯とはこのことである。
広い風呂に浸かるのは幸せである。間違いない。
数日タオルで拭くだけの生活だったので、だいぶスッキリした気持ちになる。
くっそ汚かった獣人少女達も、しっかり体を洗ってきたみたいで、ようやく普通の少女AとBになれている。
ちんちくりんなのは変わらないが、衣服のおかげでだいぶいい感じである。
だが──
「リファナ、結構鞭のあと目立つね」
拷問趣味の主に買われていたのだろう。
ちゃんとした衣服を着たからこそ、胸元や手足に見える鞭の跡が目立つ。
「あっ、ご、ごめんなさい」
一体何に謝っているのか。きっと、悪くないのに謝って少しでも叩かれないように努力していたとかそんな癖があったのだろう。
尚文をみると彼がうなずく。
「《肉体修復》《大回復》」
腕の欠損すら治してしまえる上級の回復魔法は、鞭の跡などたやすく治してしまう。
傷一つない……それどころか、生まれたばかりと言わんばかりにつややかな肌をしたリファナがそこにいた。
「す、すごい……コレが勇者様の力なんですか?」
「ん? そうだよ。刀の勇者だけどね。戦場で回復は必須だから」
高レベルの魔物の攻撃を受ければ腕や足は簡単に吹き飛ぶ。
修復技能は必須の技の一つだ。
「な、尚文様は……盾の勇者様、なんですか?」
リファナの問いかけに不快そうにそうだと答える尚文に、ぱあっと瞳を輝かせる。
盾の勇者は獣人の勇者でもあるらしいが、やはりそうなのだろうか。
嬉しそうに微笑んだ。
たぬき少女といえば、リファナの傷が治ったことに驚きぽかんと口を開けつつも、自分も治してもらえるのかと期待するような、でも、あんな奴に期待なんてするものかと抑えるような複雑な表情をしていた。
じっと、尚文を見ていて、あっちが良かったなと言わんばかりの目でこちらを見たので、腹がたった。
目が合うとふいとそらされてしまう。
「ラフタリアだったか? そっちも治してやれよ」
「……うん」
俺だって、あっちが良かったさ。
アニメ二期・三期制作決定おめでとうございます!
めっちゃ楽しみ!
そして、ラフタリアとのほのぼのハートフル生活スタート。
なお現在の距離感は野生の動物。
『コワイ。信じられない』
『めんどくさい』
尚文リファナペアはもう距離が近い模様。