「それで、今日は何買ってくんだ?」
「そうだな、まずはコイツラの武器か」
リファナとラフタリアの装備はもうぼろぼろである。
盾の勇者のパーティ効果なのか、それともレベル差か、ろくにダメージは負わなかったし、ちょっとした怪我は魔法と薬でかんたんに対処ができた。
このパーティーは防御力多寡なので、攻撃力優先は正しい。
リファナは体が成長したこともあり、そろそろ短剣から剣……獣人の力を考えると長剣か槍あたりがいいだろうか。
ラフタリアは……体が小さいままなので短剣のままだが。
リファナと同じ位の予算でラフタリアに短剣を見せていると短刀を持ってきた。
攻撃力は高そうだが、ナイフのほうが普通にものを切れる分、多用途で日々の生活にも役に立つ。
それにナイフのほうが丈夫だ。
「あの、おそろい……」
「え? ああ」
刀の勇者と、ということだろうか。
うーん、たしかに使い方は教えられるかもしれないけど。
「でも、ナイフの方が便利だし、刀はあんまり作ってるやついないから換えが効きにくいし、ナイフにしよう」
これかこれ、と指差すとしょんぼりしながらこっちと言ってきた。
……そう言いながら高い方だ。
見る目があると言っていいのかどうなのか。
「さて、お前は……」
「尚文様、私の装備を買ってくれるのは嬉しいけど、その前に尚文様の装備を変えましょうよ」
「なんか変か?」
「もうちょっといい装備してほしいです」
盾の勇者の尚文は、盾以外装備できないため、武器が必要ない。
その上、高防御力の盾を持っているため、防具もさほど必要ない。
これがゲームなら、パーティーに簡単にダメージを与える様になり、かばうを使って攻撃集中を図るようになる中盤、後半までは装備はお下がりが基本になるポジである。
……リファナのお下がりの鎧を着る女装尚文を想像してしまい笑いそうになる。
ビキニアーマー装備尚文とか攻撃力があっていいかもしれない。
ぷふっと笑いそうになるところをリファナに見られる。
釣られるようにしてむっとした尚文もこちらを見た。
「……お前はいい装備してるな」
「まあ、防御力って大切だから」
かき集めたドラゴンのウロコからできた龍鱗の鎧を着込んでいる。
龍鱗は耐刃、耐熱に高い防御力の割に軽くて動きやすい。
先日のドラゴンから奪った素材でこっそりオーダーをしていたので、先程引き換えたところである。
一撃で瀕死になる程度のドラゴンだったので期待はしていなかったが、親父さんの腕がいいのか、かなり強そうである。
「あそこまでとは言いませんけど、もっと勇者らしくかっこいいかっこしましょうよ!」
「勇者らしくねえ……」
はあとため息を大きくついて、「動きやすいやつを頼む」とお金と素材をぼんと机に出す。
お、これならいいやつ用意するぜとウキウキする親父。
予約表には【蛮族の鎧+4】と書いてある。
「ほう。なんだ心配してたけど結構順調なんじゃないか。これならクラスアップも間近だな」
「クラスアップ?」
「ああ、限界のない勇者さまと違って、LV40で普通は打ち止めになるのさ。その制限を破り、100まで上がるようにするのがクラスアップだ」
「つまり、よくあるクラスチェンジか……」
「けど、40か。うーん、届きそうではあるけど、変にクラスアップ即、波に挑むのはなー」
ゲームの世界であればステータスは高いほうが強いが、現実になると体の慣らしをしないとむしろ弱くなってしまう場合がある。
例として、補助呪文は顕著で、スピードアップして一歩の歩幅が変わったせいで空振りを連発してしまうような間抜けな事象が起こったりすることがある。
慣れていても攻撃の瞬間に効果がきれて事故ったりすることもあるので、まんべんなく強化され、戦闘終了まで効果のある長時間効果が続くことが好ましい。
もしくは、自分自身にかけて把握できるとか。
「避けておくべきか?」
「ならせる時間があるならしたほうがいいけど……」
戦力が高いに越したことはないのは確かなのだ。
前回の波も、村人やレベルの低い兵士はともかく、戦闘訓練を積んだ精鋭や名のある冒険者は普通に戦えたらしいので、そんな冒険者や兵士のついている勇者パーティならそれほど苦戦はしないだろう、と思われる。
だが、センスはあっても根本的な戦闘経験に乏しい素人3人なので、不安は残る。
とはいえ、最悪現状は他の勇者パーティーと、俺がいるので、大切なのは自分を守れること、生き延びられることだろうか。
「いや、やめよう。そもそも波がいつかわからない。日数的にはそう遠くないと思うが」
「んだよ、アンちゃん教わってないのか?」
「何をだ?」
「国が管理している時計台が広場の方へ行くと見えるだろ?」
「そういや、見えるな、城下町の端にそれっぽい建物」
「そこにあるのが龍刻の砂時計だ。勇者ってのは砂時計が落ちたとき、一緒に戦う仲間と共に厄災の波が起こった場所に飛ばされるらしいぜ」
「へぇ……」
なるほど。国が尚文に余計なちょっかいを出さないのはどの道波の場に呼び出されるからか。
しかし、知らなかったら昼寝をしてたり、お風呂に入っているときに呼び出されたりする可能性もあったわけだ。
「ろくに国に頼ってないからしょうがないといえばそうだけど、勇者が知らされてないってひどいなあ」
「ふん、アイツラには何も期待できないさ」
どこかの王様が煽り続けているのか、噂は広がり続けるし、尚文の些細な行動は脚色された噂になる。
勇者にたかろうと仲間になるぜ、夜は後ろの女使わせてくれるならな! と話しかけてきたバカをバルーンの刑に処したら、盾の勇者は仲間を志望した勇気ある若者を脅して有り金を巻き上げたと噂になったりである。
「んー」
しかし、情弱はちょっとまずい。
そろそろ野宿を続けての遠征では限界が来ている。魔物を狩りすぎて発見までに時間がかかるようになってきた。
かと言って、今知っているのは高レベル用の、しかも勇者的には美味しくない場所だけだ。
情報収集なしに無意味に行動して村や目的地が見つかるのはゲームだけである。
波が終わったら情報収集がてら他の勇者の情報も集めなきゃな。
ユウ「情報集めに行ってきます!」
尚文「(こいつ女抱きに行くんだろうな……溜息)」
いや、そろそろエロいことも書かなきゃいけないかなって!