波の正確な時間を知るため、俺達は親父さんにきいて時計台へと歩く。城下町でも高所に位置する時計台は近づけばすぐにその存在に気づく。
観光地というわけではないようで、入場代は特に取られていないようだ。教会のような見た目のドーム状の建物。
その門は開かれ、人々が出入りしている。
受付にいる女性はシスター服を着ており、勇者である俺たちに気づいたようである。
成人女性で大きめの胸が内側から服をお仕上げている。
泣きぼくろがなかなかセクシーな女性だ。
「盾の勇者様、刀の勇者様ですね」
「波の時期が知りたくてきた」
「はい。ではこちらへ」
案内された先は教会の奥で、そこには安置された大きな砂時計がおいてある。全長だけで7メートルはありそうな巨大な砂時計だ。
その大きさと、美しい装飾にどことなく神々しい印象すら受ける。
砂はだいぶ落ちており、もう残りは少ない。
落ちきるのはもう直ぐだというのは俺にも分かった。
ピーンと刀から音が聞こえ、二本の光りが龍刻の砂時計の真ん中にある宝石に届く。
すると俺の視界の隅に時計が現れた。
75:12
3日後には波の時間のようだ。
親父さんに頼んだ装備が出来上がる頃だろうか。
多少時間はあるが、外で悠々と狩りをするほどではない。
ちょっと微妙な日数な気がする。
「ん? そこにいるのは勇と尚文じゃねえか」
かけられた声に振り向くと、そこには槍の勇者の元康がいた。
あれ? 首をかしげる。
元康はぞろぞろと女性のパーティーメンバーを引き連れていたが、メンバーが違う気がする。入れ替わったのだろうか。
まあ、よくあることか。
前勇者だったときは孕ませるたびにパーティーが入れ替わったので、一月二月しか持たなかった。
四ヶ月もあれば全入れ替えである。これほどペースの激しい入れ替わりはゲームでもそうそう見ないだろう。
「元康、元気そうだね」
「おう。竜装備のおかげで想定よりぐっと先に進めたからなー。なあなあ、波が終わったらダンジョンに付き合ってくれないか? ダンジョンは危ないし、波が終わったらみんなにはちょっと休みあげようと思ってさ。その間にどうかなって」
「んー」
おそらく波を経験すればラフタリアもリファナもレベルキャップである40に行くかもしれない。
クラスチェンジしたらしばらくは慣らしの訓練になるだろうから、尚文に任せてしまっても大丈夫だろう。
「わかった。波のあと付き合うよ」
「やりぃ! ちょうどこのレベル帯と少人数プレイで美味しいところがあるんだよ」
ガシッと手を握られ、ブンブンと上下に振られる。ニコニコしており、嬉しそうだ。
その反面、元康の仲間の女性陣はあまりいい気持ちではないらしい。なんとも言えない複雑そうな表情を浮かべている。
尚文は目を鋭く尖らせて睨みつけている。
やっぱり元康が嫌いなのだろう。
マインはと言うとこちらの視線に気づくと嬉しそうにニコリと微笑んだ。
「おい、勇、さっさと行くぞ」
「なんだよ、つれないな」
元康は呆れたような、蔑むような視線で尚文を上から下まで一瞥する。
「なんだお前、まだその程度の装備で戦っているのか? 勇に手伝ってもらってるくせに」
確かに、元康は約一ヶ月前の時とは雲泥の、なんていうか高Lvだと一目で分かる装備をしていた。
鉄とは違う、銀のような輝く鎧で身を固め、その下には綺麗な新緑色の高そうな付与効果がついているだろう服を着ている。
魔法効果を持つアクセサリーも身につけている。
武器といえば竜の素材をもとにした、鋭いやりを構えており、装備の面で言えば尚文とは比べ物にならない。
まあ、初期装備が良かった元康と育てるところから始めなきゃいけなかった尚文の差とも言える。
「……」
「何よ、モトヤス様が話しかけているのよ! 聞きなさいよ」
元康のパーティーメンバーがそう尚文に言うが、聞こえないとばかりだ。
「ナオフミ様? こちらの方は……?」
リファナが何かを察したように、元康たちをにらむように見つめる。
「……行くぞ」
けれども、答えずに尚文は出ていった。
おいてかれないようにとたっとリファナが走ってゆき、それを追うように歩くと遅れて不思議そうに首をかしげながらラフタリアが追いかけてきた。
「あ、勇さん、元康さん、……と尚文さん」
入り口から入ってくる樹。
どうやら彼も時間を確かめに来たのだろう。
しかし、龍刻の砂時計を一度見ればどうやら時間がわかるようなのに、後少しと言うところでようやく確かめに来るあたり、どうやら国は勇者がどう確認できるかまでよくわかっていないようだ。
波についてはもしかすると国はあんまり役に立たないかもしれない。
「パーティーを増やされたんですね」
「ああ。俺は盾の勇者。戦えないからな」
樹はリファナを、ついでラフタリアを見て、俺を見た。
うんと小さくうなずいて、
「波で会いましょう」
といって奥に行ってしまった。
彼もかなり装備が整っている。
連れている仲間の平均的な装備自体が良くなっているので、バランスよく整えるたちなのだろう。
一部装飾にお金を使ってそうな、見た目がいいが、平均的にはそこまで強くなさそうな元康パーティーと比べるとだいぶしっかりしている。
「勇……」
「なに?」
「今日は、解散にしよう。疲れもあるだろうし、それぞれ行動しよう」
「ああ、うん」
「リファナ、ラフタリアと遊んでこい。夜には宿に戻れよ」
そう言うとお金を渡して歩いていってしまう。
いらだちと申し訳無さを含む複雑な表情をして。
──なぜ……。
はっ! そういうことか。
一人になりたかったんだな。
「ふたりとも、今は尚文を一人にしてあげよう。俺はちょっと情報収集してくるね」
元康のパーティーが大人の女性ばっかりで、イライラムラムラしちゃったんだろう。
子供と別れてお楽しみの時間に違いない。
尚文はお店に行けないタイプだと思ってたけど、やっぱり長時間外で生活しており、自由に抜けない生活のせいで溜まってしまったようだ。
しょうがないね。溜まっちゃうとね。エロいことしか考えられなくなっちゃうもんね。
ウンウンとうなずく俺のことを不審そうに見つめるラフタリアに気づき、ごまかすように手を振りながら、歩き出す。
尚文は自分と元康との違いに色々複雑な気持ちを感じて真剣なのにこいつときたら、エロいことばかりである。
ちょいと風邪引いてました。つらみ。