管の奥に残っていたものまでチュッと吸ってもらって後始末をしてもらう。
スッキリした気分で宴に参加する。
パーティーには魔王から町や国を開放するたびに参加していたから特別珍しいものではない。
けれど、勇者ということは知られていても、子供であるせいか、サポートだけで他の勇者と違いボスを倒すのにそこまで活躍しなかったからか、さほど声をかけてくるものはいない。
遠目では槍の勇者の元康が多くの令嬢から声をかけられてはへらりと笑っているのが見える。
あたりを見渡せば錬は壁側で黙々と料理を口にしているし、樹はといえば、にこやかな笑顔が怪しいやり手そうな男に話しかけられてにこやかに笑っている。
お皿を両手に持ちながらも話しかけられずに樹の周りをウロウロしている眼鏡の少女はパーティーメンバーだろうか。
「ふーん、みんな楽しんでる、のかなあ?」
尚文といえば完全に壁に同化して存在感を消そうとしている。錬と違ってろくに食事もとっていないようだ。
そういえば、料理が上手な割に、街では一番安い料理とか、腹にたまるものとかこだわりが薄い。
作るのは好きだが、食べるのは嫌いなタイプなのだろうか。
『あなたに食べてもらうことが私の幸せなの!』
料理が趣味だという女に食事を作ってもらったときにそう言われたことがある。
食べやすいように切って短くした髪の毛や血が混ぜられていたが、ファンタジー世界帰りの胃は強く気にせず食べた。味は悪くなかった。
言えば魔法がなくても何でもやらせてくれる女だったがどうしているだろうか。
母親にも手を出してしまっていて、彼女の家で食事をとったときは流石に緊張した。
こちらを睨んでくるかわいい妹には手を出せず仕舞いだったか。
「ユウ様は食べないんですか?」
いつの間にか現れたラフタリアは口をベッタリとソースや油に濡らしながらもブンブンとしっぽを振りつつけている。もしかしたらこの宴を一番楽しんでいるのは彼女かもしれない。
「ご馳走ですよね! 食べないと損ですよ!」
ラフタリアは普段は食べられない食べ物の山を見て、瞳を輝かせている。
「まあ、好きに食べていいよ?」
豪華な料理と言ってもギトギトとした肉ばかりというわけではなく、種類も豊富だ。
食べやすいものが多いので、ちょこちょこ食べているが、ラフタリアのように山盛りにして食べる気にはなれない。
「決闘だ!」
……は?
**
「元康はアホだな」
「でも、奴隷なんて最低ですよ。勇者が仲間にすべきではありません」
「たしかにな」
尚文がリファナを奴隷として連れていると知った元康は尚文に突っかかったのだ。
決闘しろ、俺が勝ったら彼女を開放しろと。
あのリファナが解放を望むとは思えなかったが、決闘は成立してしまったらしい。
二対二ならともかく、一対一では尚文に勝ち目はなさそうだ。
(まあ、ラフタリアならともかく、リファナは奴隷から開放されたからって尚文から離れないか)
成長アップの補正分奴隷のままのほうがお得そうだが。
「勇の連れている子も奴隷なのか?」
「え? そうなんですか?」
まあ、指摘は当然か。
けど、どうするべきだろう? 彼女は自分から仲間になりたいと一緒に戦いたいといった。奴隷から開放しろと言われればそうするところだが、仲間として今後も連れ歩くなら、成長補正を考えても外したくない。
「そうだよ。尚文のリファナと一緒に売られてたんだ」
そう言うと二人の勇者は表情を歪める。
「彼女は俺たちが来る前の波の被害者で、家族や村をなくして奴隷になってしまったんだ。だから、波からみんなを守りたいと一緒に戦いたいって仲間をしている」
「だからって奴隷は……」
「知ってる? 勇者の奴隷には成長補正がかかるんだ」
奴隷成長補正、ステータス補正がかかる刀を見せる。
「なるほど」
「多分奴隷と同じで仲間にかかる装備もあるだろうから、それが見つかれば奴隷をやめるところだけど、勇者以外で子供が魔物と戦おうと思ったらこの補正は必要だ」
「……従魔にも同じように補正をかける方法がありそうですね。竜やフィロリアルを勧める理由ですか?」
「奴隷の髪の毛や爪で開放されたから、従魔でもそうなると思う」
「なるほど。そういうことなら仲間にも奴隷になってほしいが、難しいだろうな」
「だろうね」
錬は納得したようだった。成長補正を羨ましそうに見たのがわかった。
奴隷になって強くなれるのであれば名目上の奴隷ならいいんじゃないと言ったところか。
「奴隷は良くないことです」
「波がなくなれば家族や家を失って奴隷になる人は減るだろうね」
村でも不作や魔物被害が大きいと、補填で長男以外の子供を売りに出す農家は多いらしく、奴隷商は冬前に村々を回って奴隷を買い集めるらしい。厳しい世界だ。
とはいえ、大半が労働目的の奴隷になる。
奴隷と言えば奴隷であるが、大切な労働力、「高価な財産」という面もある。
要は家畜である。羊、馬、牛、奴隷。
こう並べればサボれば働かせるために鞭を打つのであって苦しめるために鞭を打つのでないとわかるだろう。
もっとも誰もがちゃんとした生活を送ったわけではないだろう。
美人なら性的な意味での奴隷になっただろうし──ラフタリアのような亜人は狩られて奴隷になったのだ。
いい扱いはされてないだろう。
とはいえ、奴隷解放なんて勇者の仕事ではないだろう。そもそも、世界史から考えても奴隷解放なんて簡単なことだとは思えない。
「そうですね……僕ら勇者はそんな人達を助けることにもなります。仲間を強くするための奴隷システムの利用であれば……その必要がなくなったり本人が求めるなら開放すると誓うならひとまずおいておきましょう」
「もちろんだよ」
樹はそんな人達を利用するなんて許されないと義憤に駆られている。
実際、扱いが悪い奴隷は本当に悪いので、現代の日本人からすれば仕方がないといえば仕方がない。
苦渋の決断であると顔が言っていたがひとまず元康のように決闘を申し込んでくるきはないようだった。
四方を観客に囲まれた闘技場に元康と尚文がやってきた。
まあ、創作ではみんな奴隷少女にうほってなりますけど、リアル奴隷少女(汚)は割とみんなドン引きしそう。
ハイライトのない女の子を性欲の対象にするって結構敷居高い感。
原作ではマインへの八つ当たり的な感情で買ってましたねー。
追記--
勇者たちは勇に奴隷のこと突っ込むよねって指摘にたしかにね!と思ったので説得のシーンを追加しましたがちゃんとかけているかは不明。
難しいっすね!
第二の波のあとの見たい勇者は?
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尚文
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元康(固定)
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樹
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錬