※この作品はR-18です。

性勇者様のやり直し   作:もこもこ@

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033 勇者の隠されし力?

 

 人垣が割れ、リファナが国の魔法使いによって奴隷の呪いを、今まさに解かれようとしていた。

 リファナは激しく抵抗するが、口は封じられ、両手は騎士に抑えられている。

 抵抗はできない。

 

 魔法使いが持ってきた杯から液体が零れ、リファナの胸に刻まれている奴隷紋に染み込む。

 

(奴隷じゃなくなった)

 

 奴隷紋が、リファナと尚文をつなぐ鍵だった。

 たが、すでに心の扉は開かれている。

 尚文はリファナの信頼を勝ち取っている。開放は彼女の信頼の証明にしかならない。

 

 本当に、茶番だ。

 

 けれど、そんなリファナの心を全く理解していない盾の勇者は絶望に崩れ落ちた。

 

(かわいそう? それとも、苦笑?)

 

 あんなに信頼されているのに、信じられないの? 

 他人事だからそう思う。

 けれど、しょうがないか。この国の殆どは尚文を裏切っていた。敵だった。

 自分も尚文の味方ではあったが、絶対の仲間ではなかった。

 尚文の仲間はリファナだけだった。

 そして、きっと尚文は奴隷だからこそとリファナの絆を考えていた。

 

 だから、奴隷から開放されてしまったことで、仲間がいなくなったと思って崩れ落ちたのだ。

 

 尚文は、崩れ落ちながらもどこかアルカイックに笑う。

 それは、己か、世界に対してか。

 

「この……卑怯者!」

 

 奴隷から開放されたリファナは助けてくれた勇者である元康の頬を叩く。

 

「私は! 尚文様が! 好きなんです! 愛しているんです! 憧れの勇者様は本当は傷つきやすい普通の人間で、だけれど私のために気を使って、育ててくれて、ご飯を作ってくれて、無理一つ言いつけなくて! 自然と人を助けようとする人で、少し悪巧みが似合う人で、──私の勇者様なんです!」

「け、けど、奴隷だなんて!」

「私を奴隷にしたのは、波のせいで壊れた村に殺到した、この国の人間です!!」

 

 リファナは、まくしたてるようにあれこれと尚文のいいところを語っては惚気、勇者にふさわしいのだ、憧れの相手なのだ、好きになったのだ、愛しているのだと語った。

 その様子は、嘘一つ感じなくて、元康は静かに頭を下げた。

 

「すまない。奴隷にされたからってひどい目にあっていたって誤解していた」

「あ、いえ、その、私の方こそ勇者様にごめんなさい」

 

 ペコリと頭をさげるリファナ。

 元康は女性有意が強い感じがあるが、聞く耳がまったくないわけじゃない。本人が明確に好意を示したことで、女性優位の元康は自分が何かを言う話ではないと理解したようだった。

 

 槍の勇者はリファナの好意を信じた。

 けれど、この世界に来てから本当に信じられるものを持たなかった勇者は全く信じず、目に映らず、一人絶望していた。

 

(ああ)

 

 ああ、これが勇者の秘密。

 

 尚文からはオーラが漏れていた。絶望的な、背徳的な気配。光り輝く勇者にふさわしくない、呪いのようなヘドロの気配。

 ドロドロの怒りの汚泥が漏れていた。

 

 きっとそれは飲み込まれればちょっとしたレベル差を覆す力。

 盾の力であっても、20は上の相手を封殺できそうな気配。

 

「怒り、絶望? 悪趣味な力」

 

 きっと、勇者が自分ではかなわない……それこそ、信頼する仲間を失ってもかなわない壁に出会ったときにその壁を壊す力。

 

 自分であればこの力を向けられても負けない自身がある。

 だが、尚文が同レベルになったあとであればしのげる自信はなかった。

 

「勇者には裏側がある」

 

 前回の勇者は思えばシンプルだった。女神に力を与えられ、世界を救うために降臨した勇者。

 努力に応じて強くなり、一人で敵を倒せてしまった。

 簡単に魔法を覚えレベルが上がり、隔絶した力を持った。

 

 四人いる勇者は正直弱かった。けれど、だからこそ仕掛けがある。

 使い捨ての爆弾か、複数いるからこそ高められる何かが。

 

「仲間に捨てられるかもしれない。そのくらいで発動するんだから、きっと一回こっきりじゃないと思うけど」

 

 その程度で発動して死ぬなら、仲間がひとり死ぬだけで勇者が死んでしまう。非効率だ。

 数回は死なずに使える力だ。おそらく、リスクがあるとわかっていても状況的にしょうがないからと使える程度の要求。

 

「リスクはそこまで重くないはず。だったら、一度は経験してもらうべきか」

 

 場合によっては自分も使わなければいけない力だ。リスクは知っておきたい。

 自分の飛び出そうな怒りを抑えるように胸を掴む尚文をじっと見つめる。

 

 尚文は強い。けれど40前後でどう頑張ってもまだ自分には届きえない。

 だからこそ、秘密を知りたい。

 

 死をなかったコトにはできない。けれど、肉体の欠損程度なら治してあげるから。

 

 仲間にする考えではない。最低のクズ。そう思いつつも、勇者皆のためだからと尚文だけを見つめる。

 

 けれど──悪しき心は決して許されないのか。

 尚文以上に勇は心を揺さぶられることになる。

 

 




ラフタリア「尚文様はいい人なんです!」
元康「いや、嘘だろ」
リファナ「尚文様めっちゃ好きなんです! 愛してるんです」
元康「じゃあしょうがないな」
ラフタリア「なんでですか!?」

正直、奴隷に優しいけど戦闘は強制してくると好きだから従ってんのなんか文句ある? では説得力が雲泥だからね!

尚文の貞操はあと僅か。
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