新しい地域を攻め、開放し、王都に戻っては祝う。
魔王に占領された人類の国や街はそれこそ数数多出会ったが、パターン化された日々はある意味で余裕を生んだ。
今まで全く触れることがなかった死ぬかもしれない恐怖の世界は段々と己の成長を実感できる気軽さを勇に与え始めていた。
頑張れば頑張っただけ報われる世界はやる気を引き出していた。ただでさえ勇者としての力が与えられた中、実践で勇のレベルと才能は猛烈な勢いで鍛えられていた。
同時に、最前線を行く勇には悩みがあった。
それは、戦い以外の娯楽がないことだった。
テレビもない、ゲームもない本だって最前線に持っていくようなものはなかった。
娯楽のない田舎と同じで、そんな彼の周りに美しい仲間がいるとなればやることは決まっていた。
セックスである。
全身で性の快楽に溺れていたが、単に自分が気持ちよく慣れればいいという段階を超え相手を気持ちよくさせ、性の暴力で相手を支配するようなセックスに目覚め始めていた。
「はあ、ァ~」
最初はやや硬いところのあったお互いであったが、今はだいぶこなれてきていた。
王女はあまり自分から言い出すことはなかったが、武道家と魔法使いはしばし自分から誘いをかけてくるようになっており、勇はその都度相手をしてきた。
もっと、もっと上手になってヒイヒイ言わせてやろう。
どことなくいたずらっ気が出ていることを感じて日々楽しく過ごしていた。
そんなある日だった。
「あ、勇者さま。私子供ができたからパーティー外れるね!」
「へっ!?」
「まあ! よかったですね」
「羨ましい」
積極的におねだりをしてくる武道家はえへっと笑いながら自分のお腹をなでた。
ちょっと太ったかな? くらいにしか思わなかったが、どうやら妊娠したらしい。
ブワッと汗が出るのを感じる。
やればできる。
アタリマエのことだが、快楽の前に馬鹿になっていた。
これからどうしよう、そう言えば勇者の給料っていくらなんだろう。家を買うべきだろうか。
いや、その前に本当に俺の子? いやでも、他に相手なんていないか。あわわ。
子供? まじで?
そんなふうに完全に慌てていたが、皆笑顔で祝福していた。そこには一片たりとも悪い感情が見えなかった。
「あ、代わりは来てるから」
「うむ。侍と申す」
ぎゅうぎゅうサラシを巻いて、深い胸の谷間を作った侍ガールが現れた。
「あ、え? うん?」
「それじゃ、勇者様、元気な子供を育てるからね。みんなも頑張って!」
ばあ~いと大きく手を振って去っていった。
今までの積極的に愛を乞うてきた態度は何だったんだろう?
腑に落ちない気持ちになりながらも、モデルのように身長が高く引き締まった体躯の侍にドキドキしていた。
この時点ではまだ期待だけだった。
**
「それじゃあ、私も子供できたし下がるわ。引き継ぎは後輩の黒魔術師がするわ」
「うむ、勇者殿との相性は最高だったようだ。某も孕んでしまったから、聖騎士殿と変わるでござる」
「あう、黒魔術、使うとこなかった。魔法剣士と変わる」
「むふー、私も母親になれるなんて信じられないな」
こうして孕んでは交代、孕んではこうたいとメンバーが入れ替わってゆく。
タイミングが合っていないのか、最初のメンバーで残っているのは王女だけだった。
(なんでだれも避妊しないんだろ)
正直、追加要因は特別強いわけじゃなかった。もともと最初から連れているメンバーの時点で国家最高峰なのだから、どうしたって補充要員は似たりよったりのレベルになる。
勇が強くなっている分、仲間との力量差は大きくなるばかりだった。
勇者としての実力がガンガンあがっているため、別に苦戦はしていないが、仲間が強くならないのはちょっと困りものだった。
「アリシアはずっと一緒にいてくれるよね?」
「ええ。女神様の祝福をいただかない限りは」
「……」
女神の祝福が子宝に恵まれることを指していることは言うまでもなかった。
アリシアと別れるのが惜しくて、出そうになると他の女の中に挿れては出していた。
吐き捨てるような性行為はあまり仲間に評判が良くなかったが、どうでもよかった。どうせ一月もすればいなくなる人間だからだ。
(なんでだろ。魔王と戦いたくないのだろうか)
そりゃ、怖いかもしれない。
けど、異世界から呼び出された自分が戦っているのにとどうしても不満が出てしまう。
仲間の勝手さと、ひとり残っているアリシアに膨らみだす好意にもやもやしながら王都を一人歩く。
「トレイ」
「アリシア。会いたかった。怪我はないかい?」
「ええ、あなたの贈ってくれた防具のおかげで」
アリシアは男に両手を握られて笑っていた。
いつものニコニコとした笑いではなく、心からの安心から来た笑顔だった。
男は感極まったとばかりにアリシアを抱きしめ、アリシアは頬を染めていた。
「なんだよ……お前は俺のものだろ……?」
最初に抱いた信頼はいつの間にか愛情に変わって、独占欲になっていた。
誰も彼もが勇のものになっていたから、奪われることへの耐性がまったくなかった。
けど、どうすればいいんだろう。
最初からチヤホヤされた勇には人並みにしか女性との交流経験がなかった。それに、あの男ほどの教養やかっこよさを今すぐ手に入れられる気がしなかった。
だから、勇には誇ることができることは、見せつけることができるのは2つしかなかった。
勇者としての強さと、性で虜にすることだ。
その日から勇は仲間を抱いて抱いて、抱きまくった。
仲間だけでは足りないと、立ち寄る村街で女性を口説いてはベッドに連れ込んだ。
次第に待ってましたと言わんばかりに王都に戻ると女性が用意されており、乱交にふけった。
妊娠を恐れてアリシアを抱くことはできなかったが、それも避妊の魔法を覚えるまでだった。
狂えとばかりに相手を抱いた。
俺に惚れろと呪うように白い愛情を塗りたくった。
けれどもアリシアの笑みは変わらなかった。
子供ができる→パーティー離脱の図式に。
自分のものになっているはずの仲間たち。
けれど、本当のところは……