盾の勇者と槍の勇者の決闘は槍の勇者の勝利に終わる。
しかし、世界への憤怒を抱いた盾の勇者は隠された勇者の力を発揮しようととして、
リファナに抱きしめられる。
その様子に欲しくて仕方がなかった真実の愛を感じた勇は過去を思い起こす。
それは勇者として召喚され、仲間を好きになったけれど、どんなに努力しても愛しても勇者だからと愛を返してもらえなかった過去だった。
勇者でなくなればもしかして、そんな思いで勇者としての責務を果たすべく魔王と対峙する。
しかし、彼女は勇者と同じように力をもった人間だった。
勇者として世界を守りたいと思っていた勇は躊躇なく相手を殺し、役割を遂げる。
けれど凱旋する間もなく日本に戻されてしまった。
自室で鏡に映る自分の顔は殺人の罪や決して叶えられない未来に苦しむ暗い表情だった。
ラフタリアは少し離れた場所から勇を見ていた。
いつだって大したことがないとばかりに確かな余裕を感じさせていたはずの彼は自分の親友とその主である盾の勇者を羨むように見ていた。
何故かその時、ラフタリアには自分より幼い子供が、親のいない子供が暖かな両親に抱かれる同じ子供を見ているように感じた。
大切な愛を溢れんばかりに込めてくれた両親を失い、村を襲われ、奴隷となった自分とどこか重なるように錯覚した。
相手は勇者なのに。
手を伸ばしたところで届くはずのない距離を感じるその儚い様子にラフタリアは何かを言わなきゃと近づいてゆく。
思えば。
思えばいつの間にか距離が変わっていた。
最初は奴隷を購入しに来たクズだと思っていた。
優しさを見せる盾の勇者様と違ってこの勇者は買った奴隷に関心がなかった。
傷ついている仲間に対する目ではなく、厄介で汚い生き物への目だった。
こんなやつが勇者なはずがないと心のどこかで思っていた。回復魔法もすごかったし、盾の勇者様と一緒にいたけど、偽物だと思っていた。
本物の盾の勇者様の仲間になれてリファナちゃんは羨ましい。あんなに仲良しで、あんなに距離が近い。
変わったのはあっちから歩み寄られたから。
魔物との戦いで、飴をもらって、口に含むととても甘くて、懐かしかった。
おいしい食事以上に村での日々を思わせるものだった。
えらいね、がんばったねラフタリア。
いい子だと父に褒められてお母さんには内緒だよと飴をもらって、なめたことを思い出す。
喜んだのがわかったのか魔物を倒すたびに飴を押し付けてくる相手に、悪い人ではないのかもしれないと思った。
変わり始めている。
そう思ったのはいい夢を見たあの日のことで。
ぼんやりとした感覚の中で、穏やかな波のない海の中に潜ったみたいな感覚で幸せだなって、何もかも失ってからもう感じることがないはずの暖かさを感じたあのときのこと。
そして、全身から香る勇者様の匂いに心地よいものを感じて、そう気づいた頃には避ける気持ちはほとんどなくなっていた。
そうして段々と戦闘にも身が入り始めて、でもどこか遊びの延長だった。
優しい、かもしれない人に見守られた安全な狩りだったから。
**
「でも、俺は助けに行くよ。一人でも。落ち着いたら、追ってきてくれると嬉しいな」
そう言ってひとり駆けるユウさまは確かに勇者だった。
理想の何でもできる助けてくれる勇者様。
でも行ってしまう。待って、助けて!
……ほんとに?
追ってきてほしい。
彼の心を感じるお願いの言葉。
盾の勇者さまなら、他の勇者様ならどうだっただろうか。
もしかしたら守ってくれたかもしれない、立ち上がれる勇気をくれたかもしれない。
でも彼は一人波へと向かった。勇者として、助けるべき相手を助けに。
助けてほしいなら。
その場で待てばよかった。ラフタリアは力があった。無力な村人じゃなかった。だから優先順位が低かった。
けど、最後には助けに来てくれただろう。
ああ、でも。
勇者らしい心根を持つ彼と一緒にいたいなら、助けてもらうだけじゃ駄目なんだ。
先に進む彼以上に足を動かして追わないとたどり着けないんだ。
怖くて、震えて、涙が出て。
それでも足に力を入れて立ち上がって。
「ユウさま」
初めてちゃんと名前を呼んだ気がした。
「来たの?」
たどり着いた先にいた彼は言葉だけはそっけなかった。
けど、その表情には確かな喜びが見えた。
嬉しいと思ってくれる。それだけで胸が暖かくなる。
「私は、戦います。最後まで一緒に、戦います!」
「勝手にしたら」
ぷいと背中を向けて駆け出して。
追ってくるのを信じてくれるその態度を嬉しく思った。
**
長いようで短い間一緒にいたからわかる。
ユウさまは勇者だけど、同時に自分と同じ、泣いても意味がないことを知っている泣きそうな子供なのだ。
彼が私にしてくれたように、温かいものをあげたかった。
だからずんずんと歩いて彼の前に来て、きて……なにをいえばいいのだろう?
えと。あと、うと……。
「あ、あの」
「……なに?」
どこか焦点の合わない視線。私を見てない瞳。
どこか遠くを見えないものを見ようとしている。
なんとかしたい。ユウさまみたいに、彼が私にしてくれたみたいに。
あのとき飴をもらったみたいに。でも都合よく飴なんてない。だから、えっと、その
「ご、ご飯食べましょう!」
「はっ?」
場違いなものを見る訝しげな瞳。うぐぅと声が漏れ、恥ずかしくなるが、何も思いつかなくなったのだから、出てしまったのだから仕方がない。
「お腹、減りましたから!」
「あんなに食べてたよね……?」
いいからいいからと強引に手を取るとされるがままにたちあがって。
実はもうそれなりにお腹はいっぱいだったけれど、嘘だったとは言えなかったから、パーティー会場に戻るとバクバク食べて、部屋に戻る頃にははちきれそうになるお腹にボタンをいくつも外すことになった。
「は、はちきれそうですっ」
「限度も知らないの?」
呆れたように笑う。
そう、笑った。
苦しかったけれど、あそこで手を引いてよかった。
そう思った。
あらすじを書くのに苦戦してたとか言えない。
ラフのヒロインパワーはちゃんと上がってるかなー?