「また、ここに戻ってくるとは思いませんでした」
「別にラフタリアを売りに来たんじゃないけどね」
城を出た俺たちは、他の勇者に提案したように魔物と契約をすることにした。
なにせ、盾の勇者組と別れているため、今パーティは自分とラフタリアのみである。
戦力的には自分がいればなんとでもなると思っているが、勇者の裏システムらしき、感情の爆発による強化、あれはどうも本人の意志だけではどうしようもなさそうだ。
万が一不意に発動して行動不能になった場合、危険になる可能性がある。
かと言って、各勇者に同行することを考えると柔軟な行動が可能なメンバーが好ましい。
わざわざ奴隷を増やす気はないことを考えると、魔物を仲間にするのは足になる面も考えると最適だろう。
「いつまでも卵じゃ困るしね」
ポンポンと卵を軽く叩く。
からの奥に感じる大きな生命力。
正直、あのよわっちいドラゴンより強くなりそうな予感がする。
親からして、翼も生えており、空も飛べるだろうことを考えればたびには悪くない。
「ほう、ドラゴンの卵と申しましたか!」
大仰に喜ぶ奴隷商の腹が揺れる。
人の他にも魔物も取り扱っているとのことで、縁もありここを尋ねることとした。
「ああ、孵化させた上で契約したい」
「なーるほど! いえ、お客様がどこでその卵を手に入れたかなど詮索(せんさく)する気はまったくございませんとも! それでは孵化器をお渡ししましょう。とはいえ、もう孵化しかけのご様子。少々お待ちいただければ無事孵化するでしょう」
踊るようにくるりんと回転すると、孵化器をテキパキと卵に装着する。
少しずつ暖かく、強くなっていっていた卵は、装着の瞬間柄熱いほどの熱と力を帯び始めた。
「ほ、ほんとに直ぐなんですね」
「レベルを上げさえすれば成長もすぐらしいし、人間と違って技がなくてもステータスで勝負できるから魔物は仲間に丁度いいよね。まあ、主人より強くなるととたんになめられたり反逆されたりするらしいけど」
扱いが悪いとそうなる。それもあり、竜騎士なんかは肉親以上に愛を注ぐ。そのせいで相棒が死んだときはその精神的苦痛で引退するものも多いとか。
個人的に言えばペットは毛がふかふかしたのがよいと思っている。ドラゴンはかっこいいが、撫でたり愛でるのに不向きである。
「あ、あの、その、ドラゴンって強いですよね?」
「そりゃまあ、それなりにはね」
なにがいいたいのかとラフタリアを見れば少し不安げにこちらを見ている。
「まあ、大きくなれば食事をいっぱい取るからリファナレベルじゃ済まないご飯量になるだろうから準備大変だと思うけど、食事の準備はラフタリアの仕事だから」
男女同権が叫ばれる中、食事を女性が用意するものというのは古い考えかもしれないが、すべてを同じにしてまずい食事を食べる必要があるのだろうか。
稼ぐほうが稼いで、うまいほうが作ればいいのである。
相手が作れないなら? 作れる相手を増やせばいいじゃない。
勇者であった時期も、日本に戻ってからも食事を自分で用意したことなどなかった。
「はっ、はいっ!」
逆に、ラフタリアはもともと母親から多少なりともならっていたようであるし、リファナを手伝う形で尚文を手伝っており、年相応には料理ができた。
決してうまくはなく、最低限の点数であったが、それでも自分で作るよりマシであるとわかっている。
仕事を押し付けたことを嫌がるどころか喜ぶあたり、ファンタジー世界の女性らしく、家庭内のことは女性がやる物的な意識なのかもしれない。
女性優位のメルロマルクもいろいろかと思ったが、そもそも身体能力格差の大きそうな獣人だと別なんだろうか。
ぴちり、ピシリっ
小さく、そして確かに響く殻を割る音。
直ぐとは言ったが、これほど早くとは思わなかった。
机に置かれた卵は罅を大きくしていき、割れる。
「ぴいいー……なの!」
割れた卵を帽子にして、クリクリとした目の可愛らしいドラゴンが卵から出てきた。
なのリオン誕生!
変な語尾は視覚情報のない小説の味方!
いえ、どこぞの魔砲少女を変といったわけでは…!