「ぴいぴい! がえりおんなの! よろしくなの。おとーさま」
卵の殻からひょいとでてくると、目をぱっちりとひらき、こちらを見るとそういった。
「知識があるのかー」
「おやからひきついだなの」
手を差し伸べると無邪気にすりすりと顔をこすらせてくる。生まれたての子供が知識があること、名前を名乗ったことから、親の知識を継承しているのだろう。
驚くことだが、それが竜なら当たり前なのか、あの弱そうなドラゴンだからできたことなのかはわからない。
しかし、俺をお父様と呼ぶ割には血のつながった親にそっけない。
鳥系と同じく刷り込みというか、生みの親より育ての親なのだろうか。可愛いからいいけど。
ペットはいい。かけた愛情分だけなついてくれて可愛いものである。
「おおー」
ぴいぴいと鳴きながらきゃっきゃと動き回る子ドラゴンにラフタリアは目を輝かせ、しっぽをブンブンと揺らしている。
「さっすが、勇者様ですな! いやあ、生まれてその場でしゃべるドラゴンなんて初めてみました!」
「勇者が孵化させて獣魔契約をした物は特別な成長をするらしいよ」
教会の知る事実として、過去フィロリアルを育てた勇者が聖鳥の聖人と呼ばれていた。
通常のフィロリアルとはかけ離れた姿だったと伝わっている。
「どうですか? 勇者様に孵化いただいて、私どもにお売りいただくのは。高く買い取りますよ」
「それで、勇者が孵化した特別性ですって高く売るって? 小遣い稼ぎは必要ないよ。尚文にでも頼んだら?」
「残念ですがそうしましょう!」
奴隷商とのつながりはそれなりに使い出があるだろう。
ただ、勇者には奴隷の成長補正があるのだ。
それを考えるとレベルの低く、資質の高い奴隷こそが勇者にとっては良い奴隷だ。
そして、資質はともかく、レベルが低ければ安い。金を使わない客に特別良くはしないだろう。
仲間もそこまで増やす気のない現状ではそこまで重用することはないだろう。
あ、でも
「山賊とかって捕まえたら売れるの?」
「ええっ! 健康でよく働けそうなのなら高く買いますよ」
ぐふっと怪しげな笑みを浮かべて奴隷商は答えた。
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「盗賊なんて殺したほうが早いですよ?」
盗賊を捕らえて大儲けと思ったがそう答えが帰ってきた。
商人を襲ってたらふく蓄えてそうなのに、というと、盗賊にも二種類あると言われた。
「お金のある盗賊と、お金のない盗賊です!」
「まんまじゃ?」
「お金のない盗賊は村を追い出された人間や法を犯して街から逃げたようなのがなるので、ろくな装備や技術がない場合が多いんです。女だけで森に入ったり、旅人を不意をついて襲ったりします。でも、そんな人間が大金を持って歩いているはずもなく、結局装備は悪いままで、お金なんて貯めません。お金のある盗賊はもと冒険者だったり、戦うことに自信があるものや頭のいい人が集団をまとめていて、商人を集団で襲ったりします。奪った馬を使って襲ってきたりと侮れない相手なんです。居場所を見つけるのも大変で、見つけてもすぐ逃げちゃうから騎士団が討伐しないとどうしようもないんです」
力の強い獣人の村を襲う盗賊なんてそうそういませんけど、村ごと襲われることもあるんですよ! とプンプンしながら力説するラフタリア。
確かに、退治してお金になる盗賊というと難しいかもしれない。盗賊個人を捕らえても奴隷として売れるだけで、それだって健康的な成人レベルでしかなく、特段活かせる技能もないだろうから、安値だろう。
そもそも、運ぶ手段も問題だ。
どこかに向かうために馬車を進めて、盗賊を捕まえて売りに戻るなんて手間だ。
……儲ける仕事なら冒険者たちがすでにしているか。
要するにアジトを見つけられなければどうしようもないのだろう。誰も知らないどこかの森の奥にあるアジトを見つけなければ。
つるつるした肌のガエリオンを胸に抱いて考える。
前回の波では村を救ったがそれは盾の勇者と一緒の行いだ。ボスは他の三勇者が倒しており、波の功績という意味では正直そこまで大きくはない。
盾の勇者が評判が悪いこともあり、その分自分に押し付けられている感じがあるが、そもそも下から二番といったところだ。
「実績も作っておくか」
獣人と同じく、従魔も成長のためにはレベルを上げるのが一番だそうだ。
ラフタリアにもいずれ必要になることだから、必要な訓練になるだろう。
やることは決まった。
奴隷商と必要な相談と、アイテムを売ってもらい、行動に出ることにした。
次回、数多の主人公にヒロインや商人と出会うための噛ませ犬にされた盗賊たちの恨みの逆襲が始まる!!
中世ヨーロッパでは強盗騎士というのがいたそうですよ。
戦争時は騎士、平時は強盗をしていたとか。
彼らは騎士が持つ決闘の権利を悪用して、決闘だ! 金よこせ!と襲いかかったとか。
一般の市民が突然難癖つけられて騎士に襲われるんですから怖いですよね。
うーん、無力な美女に決闘を挑む強盗騎士、エロい感じしますね!