「まじかよ」
「これはひどい」
くっと笑いが漏れ、尚文がこちらをキッと睨む。
準備が整ったと呼び出されて王の前でパーティーメンバーを紹介してもらったのだが、「さあ、未来の英雄達よ。仕えたい勇者と共に旅立つのだ」という王様の声に、ワラワラと冒険者達は移動をして……。
錬5人、元康4人、樹3人、そして尚文0人。
俺は事前に人数の少ないところに参加すると告げているので誰もいない、と露骨な状況になっていた。
「う、うぬ。さすがにワシもこのような事態が起こるとは思いもせんかった」
「人望がありませんな」
人望の問題だろうか。この国の主教が三勇教であることとおそらく関係があるのだろう。
この国では盾の勇者は崇められし神ではないのだ。
少ない人数のパーティーと行動すると決めたことをやや後悔するも、手助けが一番必要なのは盾の勇者だろう。
「均等に3人ずつ分けたほうが良いのでしょうけど……無理矢理では士気に関わりそうですね」
「だからって、俺は二人で旅立てってか!?」
「いいじゃないか。正直低レベルの仲間より戦力は上かもしれないぞ」
「そりゃ、経験者がいるのは心強いけど、どっちもこの世界について何も知らないんだぜ」
まあ、力だってどこまで通用するかは未知数だ。
その上、強化方法は教えてもらったものの、他の勇者と違って効率のいい狩場とかもしらないし、それどころか、現地の仲間がいないからどこに何があるかすらわからない。
「あ、勇者様、私は盾の勇者様の下へ行っても良いですよ」
赤毛の冒険者の女性で、レザーの装備の駆け出しっぽい女性だ。
豊かな髪を後ろで縛ってまとめている。
気品を感じるので、貴族の子女かもしれない。
装備とのちぐはぐさがあるが。
「えっと盾の勇者様、刀の勇者様、私の名前はマイン=スフィアと申します。これからよろしくお願いします」
どうやら気さくな相手らしい。
盾にも思うところがないようで、尚文とも距離が近い。
かわいいしグラマーなのでグッドだ。
「よろしく」
尚文は彼女を見てでれりと表情を緩めている。
まあ、冷遇されている中、ようやくまともに相手をしてくれるところだから仕方がないか。
「他にナオフミ殿の下に行っても良い者はおらんのか? ……おらんようだな。しょうがあるまい。ナオフミ殿はこれから自身で気に入った仲間をスカウトして人員を補充せよ、月々の援助金を配布するが代価として他の勇者よりも今回の援助金を増やすとしよう」
そう言って、尚文は銀貨800枚、他の勇者は600枚もらった。
俺の分を考えるとパーティーで1400枚使えると言えるか。
**
「これからどうします?」
「まずは武器とか防具が売ってる店に行きたいな、これだけの金があるのなら良い装備とか買えるだろうし」
「そうだね」
刀以外の武器が使えないのは確認している。
そうなれば条件の同じ尚文は盾以外の武器を使えないということだ。
武器は難しいだろうが、盾と防具は必要か。
「ウエポンコピーはどうする? こっそり? それともちゃんと話す?」
「ウエポンコピー?」
「同種の武器をコピーして強い武器を使えるようになるらしいよ。あるかないか知らないけど、そのスモールシールドから龍鱗の盾にチェンジ! とか」
「まじで!」
「とはいえ、店としては物がなくなるわけじゃないとはいえ、コピーされ損だから、バレた時を考えると素直に話したほうがいいかもなーって」
「ああまあ、そりゃそうなるか。勇者やるんだ。敵相手はともかく、店相手に悪いことなんてできねえよ」
方針は決まった。
ケド。マインを見つめる。ニコリと笑顔を返してくれる。
うん。かわいい。
彼女はスキンシップが多い。
だから、こっそりと、接触で好感度が上がるよう魔法を使った。
**
「お、お客さん初めてだね。当店に入るたぁ目の付け所が違うね」
「ええ、彼女に紹介されて」
「ありがとうよお嬢ちゃん」
「いえいえ~この辺りじゃ親父さんの店って有名だし」
「嬉しいこと言ってくれるねぇ。所でその変わった服装の彼氏は何者だい?」
「親父さんも分かるでしょ?」
「となるとアンタは勇者様か! へー!」
気の良さそうなおっさんである。
職人肌っぽいし、この店の品は彼が作ってるのだろう。
「勇者は自分の武器しか装備できないみたいだよ」
「話は聞いたけど、それってまじで呪いだな」
はあと大きくため息を吐きながら、尚文は武器をちょんとつついてバチン! と弾かれていた。
「はあ。じゃあ、盾と防具だな」
「盾はあるだろ?」
そこからの尚文はすごかった。
ウエポンコピーの説明に、武器屋の親父は泥棒じゃねーかと言い始め、尚文はものはなくなっていないだろと続け、そんなこと言ったって、ただで持っていかれるようなものじゃねーかと続け、もちろんただとは言わないさと話が進むうちにだんだんと条件がまとまっていき、いつの間にか宣伝をすることを条件に3割でコピーできるようになった。
「おおー、すごいよ、尚文。交渉とかするまでもなく、役に立つものは何でも差し上げますだったから交渉事ってまともに経験したことなくて」
「まあこのくらいな。魔法鋼鉄製なら手が届くか? おい、勇は絶対いいやつ買っておけよ」
「いや、俺はいい武器をもっているから節約することにするよ」
小太刀を菊一文字に切り替える。しゃりりと鞘から引き抜くと、いかにも切れそうな刃が光る。
「すごい武器じゃないか」
「城で手に入れたんだ」
「お前、うまいことやってるな……」
尚文にもあげたいところだが、盾の勇者へ協力してもらうのは難しいだろう。
すくなくても、実績をなにか積んでからだろうか。
鎖帷子に装備を変える。
尚文も魔法鋼の盾と鎖帷子のため、コンビみたいである。
「まあ! すてきですわ、勇者様がた!」
肩や背中とちょこちょこと触れてきていたマインはいつの間にか背中から抱きしめるようにもたれかかってくる。
「それじゃあそろそろ戦いに行きましょうか勇者様」
「おう!」
「はーい」
ようやく戦闘である。
刀の勇者「美人冒険者マイン! 狙わなきゃ!」
ほんとに狙っちゃうんすか?
追記
女神関係の知識が二次のみなのでWeb版読んできます。更新は土日で。