※この作品はR-18です。

性勇者様のやり直し   作:もこもこ@

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053 勇者会議その2

 

「つまりどういうわけだ?」

 

グラスとの別れは、イコール波の終わりを意味していた。

盾の勇者パーティーを加えたボス攻略は簡単に終わったらしく、素材を分けてもらうと魂喰刀という新しい刀が開放された。

 

兵士たちの大歓声でもって戦いは終わったが、祝いのパーティー前に勇者で集まったときにすべてを話した。

ややこしい事態になるのは明らかだが、グラスの姿を見ている人間は多い。隠し立ては不可能だった。

キョトンと首をかしげる槍の勇者の元康。グラスという異世界の勇者に出会ったこと、その実力は他の勇者並であることを告げる。

 

「それって勇さんが波を起こしていた側の人間だということではありませんか!?」

「そもそも波の真実はゲームでも語られていなかったからな。別に敵対しろと言われたわけじゃないんだろ? ――正直、今敵対されても勝てる気がしないしな」

 

負けイベントは好きじゃない。そう言って剣の勇者の錬は黙ってしまう。ゲームとして物事を一番捉えている錬だがメインストーリーには興味がないらしい。サブクエストに熱中してしまうタイプなのかもしれない。

 

「そもそも、俺たちは波に対して無知だからな。呼ばれたから、仕方がないから波に対処しているが。そもそも、グラスとやらの目的は何なんだ? お前はどうするつもりだ?」

 

ギロリと睨みつけてくるのは盾の勇者の尚文だ。ゲーム知識のない彼は盾だということでの差別から、やや目の前の問題に終始しがちだ。

波についても仕方がないから対処している面があり、真実など考えたこともないようだった。

実際、教会でも王国でもさほど波について深い情報はなく、波が人為的な事象かもしれないことすら初耳である。

 

「俺だって初耳だよ」

「勇はグラスって子につくのか?」

 

彼女はこちらを味方のように扱ったが、はっきり言って初めてあった子にあなたは私の世界の勇者ですと言われてもなという感じである。

 

「その気はないよ。グラスのいた世界が日本だったり、前に勇者をしていた世界だったりしたら考えたと思うけど、どっちでも特定の武器しかもてない勇者武器なんてなかったし、一緒じゃないと思う。だったら、仲良くなった相手のいる世界優先かな」

 

そもそも、事情のしれない怪しい存在がお前は俺の世界の勇者だ!と言われてもはあ、としか言えない。

日本の警察官なら市民を守るが、いきなり『実はお前はアメリカ国籍を持っている。アメリカに来てFBIになれ!』と言われても、いや、日本守りますけど? ってなるだろう。

目の前で襲われていれば助けるだろうが、味方になるかと言われれば否だ。

 

「そうか。まあ、そもそも異世界の勇者だからといって敵対すると決まったわけじゃないしな。――けど、波についてはもっと知るべきだ。おまえたちはなにか知ってるのか?」

 

尚文が他の三人に声をかけるものの、皆答えが「定期的に起こるイベント」「それによって魔物が発生する」「真相は明らかになっていない」だった。

 

「ゲームでもだが、この世界の人間も波についてほとんどしらないよな。のんきなもんだ」

「勇者にまかせてたからじゃね? 結局、そんなに困難なわけじゃないし、人数いるしさ」

 

やはり、波は勇者頼みのイベント扱いか。

実際、国も兵士たちも勇者に任せれば大丈夫という感が強い。

今回の波での兵士投入も提案しなければ行われなかっただろう。

 

「……よくふたりとも態度を変えずに接せますね。敵かもしれない方と会議をするのは不毛です。僕は先に戻らさせていただきます」

 

そう言って樹は部屋から出ていってしまった。

呆れるようにため息を吐く錬。

 

「信頼できなくても協力はできるだろうに。現時点で勇に勝てる勇者はいないだろう。なら、疑うより先に利用してでも強くなるべきだろう」

「可愛い子なんだろ? 次回は俺も会いたいなー」

「なんにせよ、情報は必要だ。勇、次の波でもしまた出てくるならもっと話を聞いておけ」

「了解。みんなもなにか情報知ったら教えてね」

 

**

 

黙っておく選択肢はなかったにせよ、事情もわからず共有したのは良かったのか悪かったのか。

樹や尚文には強く警戒されたようだ。波の真実についても、知らずとも勝ち続ければそのうち収まるという意識があるため、情報へのプラスより不信感のほうが勝ったようだった。

それでもしっかりと協力の順番は同じで! と言われるあたり、皆、したたかではある。

樹には流石に拒否されてしまったが。

 

「あ、あの、ゆう様……」

 

会議の後、宴までどうしようと城の中を歩きながら世話になった職人たちや兵士たちと挨拶しているとメイドのメルさんがやってくる。

一瞬明るくなった表情がどこか重く暗いものに変わっていく。

 

「どうしたの、メルさん」

「い、いえ、その、あの……ごめんなさい。なんでもないです」

 

ふるふると首を左右にふるメイドの彼女はしょんぼりと視線を落としてしまう。

 

「どうしたの? 宴まで時間はあんまりないけど」

 

二人で休んでいく? 腰を抱いて腕を優しく撫でるとぱあっと表情を輝かせる――ことなく、言葉にならないまま口の中でもにょもにょと話して――強く押し返すようにして離れてしまう。

 

「あ、あの、またこの世界を守ってくれてありがとうございます。私も、微力ながら勇者様のお力になりたいと思いますので! ――さよなら」

 

そう言ってかけて行ってしまう。

メルさんは城の人間に色々声をかけてくれるみたいで、城に戻るたびに素材を集めてくれる人間が増えてきた。安くても種類が多いと意味があることが伝わり、城努めの人間の家族からも集めているらしく、いつも強化されてウハウハである。

彼女と会うと性欲も解消されるしとても役に立っている。

 

エッチに関して前向きではないものの、流されるままに受け入れてくれる彼女に断られたのは初めてである。

 

何が彼女の態度を変えたのだろうか。

日本ではたくさんの女と関係を持ったが、抱くと情を持つようで、恋人以上の関係を迫ってきたり、他の女との関係を解消するように迫ってくる女は多かった。

一人に絞るなんて不可能だったので、大体抱いてごまかしてしまったが、逆に思いつめたり、いい思い出にしようと決意したりする女性もいた。

表情からあまりいい方向ではなさそうだ。

そう思った頃には通路を曲がり姿が見えなくなってしまった。

 

「今度、様子を聞いてみよ」

 

宴のあとはマインと約束してるから、次の波で戻ったときにでも確認しよう。

 

――ふと、子供ができたのではないだろうかと思った。

だが、子供を孕ませるのは勇者の仕事の1つである。この世界でも勇者の子供は推奨されている。

メルさんはあまり位が高くないらしいが貴族の娘らしいので、むしろ家族ならパーティーを催してもおかしくないレベルである。

暗くなるようなことではないかな。

 

前の世界ほどではないにせよ、こちらの世界でも同じ。生まれた勇者の子供はフォーブレイという国に集められて教育されるそうだ。もしかしたら、国に仕えるメイドとして、そのへんが気になっているのかもしれない。

 

こちらの世界でも人の場合、一年近くかかるそうなので、まだ時間がある。正直、生まれる頃には波が終わってるかもしれない。

 

なんだかんだで、この世界は前の世界以上に勇にとっての障害がなかった。だからこそ、何でもなんとかなると思っていた。

 




メルさん「――さよなら」

 ①追いかける
→②追いかけない

ああ、その選択肢を選んでしまいましたね!?
妊娠したなら喜ぶに決まっているよな、だから違うかな? というトラウマ勇者ムーブ。
真相はいかに。いや、バレバレかもしれませんね!

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