城の通路を歩く。
メルティはかわいい相手だった。
とても感じやすい体にそれなりのレベルがあるせいか、快感をそれなりに受け止めることもできているようである。何度かこなせば快感に気絶することも無くなりそうだ。
女性を感じさせるのは楽しいが、気を失った相手にするのはあんまり面白くない。
寝ている間に感じるように経験を積ませるのはそれはそれで面白いのに、不思議である。
こっちの人間は皆丈夫なので前ほど手加減が必要ないのは楽しいところだ。
次はもっと可愛がってあげよう。そんな気持ちでウキウキしていると、若い兵士が向こうからやってくる。
「刀の勇者様! 波ではありがとうございます!」
「あ、うん。尚文と村人の保護を行っていた部隊の人、だよね?」
波では村1つ分以上の範囲が戦場になる。
城の若い兵士を経験値で釣って城の戦力も巻き込んだがうまく行ったようで、彼はレベルがだいぶ上がっているように見える。
「そうです! 前々から応援させていただいていましたが、おふたりともさすがです!」
「そう言ってもらえると嬉しい。城の人たちには色々助けてもらってるし」
最初は城の余り物をもらっていたが、最近は方方から珍しいものを集めてきてくれている。
「それで、その。刀の勇者様ってメイドやってるメル様と仲がいいって聞きまして」
「メル様?」
同じ城で働く同士だが、様がつくようだ。
まあ、城で働くメイドの中には令嬢もいるのだし、メルさんもその一人なのだからしょうがないといえばしょうがないが、仕事場の人はメルさんとよんでいた気がする。
彼の目は同系や憧れに別の色が少し混じっていた。
「自分、彼女の父親が領主の村の出でして。領主様の姫様みたいな。城でそんなふうに呼べないので、メル様って呼んでるんです」
なるほど。繋がりがあるならしょうがないね。
貴族はみんな偉い人な領民からすれば、メルさんもまたお姫様のように映るだろう。
もしかしたら子供の頃の英雄譚のお姫様役に勝手に登場させていたかもしれない、などと考えてちょっとムッとする。
メルさんはもう自分のものである。
「それにしても、メルさんがどうかしたの?」
「いや、その。勇者様は知ってるのかなって、城でも話をしてまして」
「知ってるって何を?」
浮かんでいた気持ちが沈むのがわかる。
きっといい話ではないと彼の顔色から察した。
もしかしたらメルさんの不審な態度の原因かもしれない。
「あの、メル様が嫁ぐらしいって……。城のみんなは相手は勇者様に違いないなんて笑ってたっすけど、メル様はその割にはなんだか悲しそうに笑ってたから、もしかしたら違うんじゃないかなって」
「いや、俺も知らない……俺じゃない」
なるほど。嫁ぐのかあ……俺以外の相手に。
まただ。そう思った。
ああ、彼女の言葉の意味はそうだったのかと納得している自分がいた。
彼女のサヨナラは別れを告げていたのだ。
彼女はここに来て真っ先に抱いた人間だった。
会うたびに何度も抱いた相手だった。
騙されるみたいに押し切られて、そのくせ年下相手とどこか甘やかすみたいな女性だった。
気に入っていたんだろうな。そう思う。
胸に走る痛みがそう告げていた。
「だ、だったら、取り返してきてくださいよ! きっとメル様は勇者様を待ってますから!」
「いや、──」
彼女は自分から離れていった。迷惑をかけたくないとか、そんな気持ちがあったのかもしれない。
けど、何も言わずに去ったのだ。
彼女相手には一切の避妊をしていなかった。だから、もしかしたら子供を宿したかもしれないとも思っていた。
でもだからこそ体が動かなかった。
最後の言葉が勇者の力になりたいと、自分ではなく勇者と言ったのもあるかもしれない。
今までの数多の女が頭によぎった。俺の子供を生みながらも俺を夫と父と思わない女達。
勇者を通してもらった女神の祝福としか受け取らなかった彼女達。
ズキンと大きく頭が痛む。
どうしろというのだ。勇者の強権で彼女を奪って──どうするというのだ。
夫にでもなるつもりか。求められていないのに。
助けることはできてもその後が全く思いつかなかった。
だったらそれは助けることにならない。
「彼女は助けを求めなかった」
「そ、そんな! あ、待ってください、まって、勇者様!」
勇者を求める声が煩わしくなって走って駆けた。
若い兵士の静止する声を振り切って。
その様子はまさに逃げると言ってよかった。
成功体験が人を強くするように、トラウマが勇者の立ち向かう力を削いでいるのでした。
本人から助けてと言われていたら立ち向かうことができたかもしれない。
けれど彼女を追わなかったユウにはその機会は与えられなかったのです……。
敵には無双するのに敵以外には弱いユウ。
あ、あと、皆様の応援のおかげで前の話の更新時にR18日刊の1位になってました。
連載スタート時になった以来だと思うのでとても嬉しいです。
(みんなメルティ好きなのね! とか思ったとか思わなかったとか)