「てりゃっ!」
城門をでて少し歩くと広い草原にたどり着く。
ぽよんとスライムばりに自由に跳ねる敵はバルーン。
この世界では雑魚というとこいつらしい。
縦横無尽にピョンピョコ跳ねるが、──遅い。
駆けて、拳を握り、殴りつける。
ぱあん! 風船が弾ける音が響く。
EXP1を獲得しました。
「刀使えよ」
「いやあ、硬さを試そうかなって。うーん、全然問題ないね」
ザクザクとした口に手をのばす。
おいと静止する声が聞こえるが、噛まれた手には痛みすらない。
「まじかよ」
「うーん、全く強さがわかんないや」
俺は草原を見つめる。
魔物の気配を多数感じる。とはいえ、ほとんどがこのバルーンみたいな雑魚だろうが。
「尚文、パーティー組むね」
ヘルプで確認した同行者設定を行う。慌てるようにマインも設定をしたことを確認する。
「《範囲指定》」
手をかざすと薄緑の光の膜が、直径を一キロ程度の広さの四角形でで展開される。
「《敵意覚醒》」
範囲内に数多の赤いアイコンが現れる。彼らは競うようにこちらに向かってくる。
「なっ、波のように敵が──」
「ひっ、勇者様っ!」
「《ターゲット:敵意》」
すべての赤いアイコンにロックアイコンが表示される。
「《紅蓮の炎》」
そして、すべての魔物は燃え尽きた。
EXP1を獲得しました。
EXP1を獲得しました。
EXP1を獲得しました。
EXP1を獲得しました。
EXP2を獲得しました。
LVがあがりました。
・
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EXP1を獲得しました。
EXP3を獲得しました。
EXP50を獲得しました。
LVがあがりました。
EXP1を獲得しました。
EXP1を獲得しました。
画面を埋め尽くす大量の経験値獲得表示と、レベルアップの表示。
結構な魔物がいたんだなーと驚く。
「うーん、LV10か。やっぱり雑魚じゃレベル上がんないね」
「いやいやいやいや、一瞬で10は上がってる方だろ。何だよさっきの」
「範囲を指定して、魔物の敵意を抱かせ、敵意をもとにターゲットを特定して、炎で燃やしたって感じ」
「そんなことできるのか……範囲攻撃でいいんじゃ?」
「できるけど、炎で燃やしたらあたり一面火事になっちゃうよ?」
威力は範囲魔法の半分の上に、消費MPが5倍位かかっちゃうけど、乱戦時や都の奪回戦で雑魚がわらわらと群れている場合に、この攻撃は恐ろしいほどに効果的である。
威力は弱いのでボスや側近系の強い敵には全く効果がないが。
「す、すごいです! 勇者様ァ、いえ、ユウ様!」
「まあね!」
ぎゅっと正面からマインが俺を抱きしめてくる。するとハリのあるおっぱいが顔を咥えこむように挟んでくる。
いい柔らかさである。
「しかし、養殖感強いな……というか、二度目なのマジなんだな。俺、いらなくね?」
ていうか、4人とも……。と小さくつぶやく尚文。
確かに、現時点ではそうだが、2体同事撃破が必須なモンスターがいたりする場合もあるし、勇者だけができる儀式魔法みたいな物があるかもしれない。
特別な領域をいるボスに会うためには神官職の祈りが必要だった、ということもあった。
四聖の勇者とセットになっていることから、そのへんの可能性がないとは言い切れない。
「今だけだよ。レベルを上げれば同じくらい強くなると思うよ」
実際はこの世界でのレベルやステータスが加算されているのを感じるので、最終的には二人分のステータスになると思うが。
あれだけ派手に殺したのに、背中方向からバルーンが集まってくる。
「よし、じゃあ、次は俺が!」
「頑張ってください勇者様!」
「おう! 俺もかっこよくやるぜ!」
尚文は盾を右手に持って鈍器の要領でオレンジバルーンに向けて殴りかかる。
バシ!
ボヨン!
殴ったその場で跳ね返った。
「すぐに割れると思ったのに……。い、いがいと頑丈じゃないか」
オレンジバルーンは牙をむいて尚文に噛み付いてきた。
しかし、レベルが上ったせいか、盾であるせいか、その両方か全く痛みを感じていないようだった。
ぽこぽこがぶがぶ。
二人の子供同士がじゃれ合うみたいな殴り合いがしばらく続き……
それから3分後……ようやくいい音をたててバルーンは弾けた。
勢いがないから空気の抜ける風船みたいな音がすると思ったのに、音自体は俺が倒したときと同じ感じだった。
「良く頑張りましたね勇者様」
これはひどい……。
「うーん、パーティって離れても経験値共有できるのかな?」
「できるそうですよ」
「どうする気なんだ?」
ううむ。
「尚文はひとまずマインと二人でこのへんで経験値稼ぎをしててもらっていい? 俺、ちょっと強そうな敵を探して戦ってくるよ」
「……まあ、そのほうが早いか。夜には戻れよ。無理もだめだぞ」
「ユウ様がんばってください! 盾の勇者様はおまかせを」
「はあい。よろしくね」
**
「《風の加護》《飛翔》」
体を風が覆い、宙を浮き上がる。
鷹より速い速度で空を行く。
ドラゴンなんかの高速で飛翔する生き物ほどではないが、時速約100kmくらいはでているだろう。
びゅんびゅんとあたりの景色が変わっていく。
「あれ? 人里近くにドラゴンの気配?」
レベルもそんなに高くなさそうだ。
いかにも野生のドラゴンという感じで、山の中腹でならして平にした地面に寝そべっている。
空の上から見ると、日光浴をする羽のあるトカゲみたいに見える。
「よし、こいつにしよう」
「GURU!?」
『ぎゃ──ああ! 高レベル勇者だあああ』
ドラゴンの声とは別に、うだつの上がらなそうなおっさん声が聞こえてくる。
魔法を解除して地に降りると、ドラゴンの腹を蹴り飛ばす。
「GUGYAAAAAAA!?」
悲鳴を上げひっくり返されたドラゴンはよたよたと体を回転させると飛び立とうとして──
「三段突き」
菊一文字を開放して取得したスキルを放つ。
瞬速の一突きが三度同時に放たれる。
両の翼は切れ飛び、体を大きくえぐった。
『ま、待て待て待て、勇者よ、強すぎるぞ、こんな弱いトカゲを相手にするなんてどういう精神をしてるんだ! 強者として弱者をいじめるような真似はやめろ! 人を襲わない人畜無害のドラゴンだ!』
なにこいつ。
かつての世界で魔物は魔王の支配下にあり、魔王を裏切るような真似をするやつはいなかった。
……ドラゴンは誇り高い生き物というのが普通だが、この世界は違うのだろうか。
「レベル上げと素材がほしいだけだから、どんなドラゴンでもいいんだけど。襲わないってだけで別に人間に飼われているわけじゃないんでしょ?」
『ぐぬっ、死ぬことは避けられぬか。では、お願いがある。私は殺されよう。体もすべて捧げよう。だが、我が子を持っていってほしいのだ』
「助けてではなく?」
『まだ卵なのだ。このままおいて置かれるようなことになれば人にも魔物にも狙われる。運良く孵化できたとしても生きてはいけないだろう』
ドラゴンか。前回の勇者のときも移動のための足として時々飛竜を使っていた。
前回は拠点を取り返し、聖職者達によってはられた結界によって、それを目印に転移する魔法を使ったが、ここではそうは行かない。
移動の足はあってもよいのではないだろうか。
「……馬車馬みたいに使うぞ」
『勇者に育てられた竜は強くなれる。いくらでもこき使うがいい』
「わかった」
刀を振り上げる。
「《全力強化》《防御低下》《属性防御低下》」
自身を強化し、相手を弱める。
鉄も弾く竜のうろこも、だいぶ通りが良くなっただろう。
「紅蓮一閃」
炎をまとった一撃が頭から体まで真っ二つに切り裂いた。
よくあるゲームでできそうな魔法は大体できる刀の勇者様。
なお「ふあっ!? いきなりレベルがめちゃくちゃ上ったぞ! あいつ何倒したんだ!?」となっている模様。