※この作品はR-18です。

性勇者様のやり直し   作:もこもこ@

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067 終戦。

 

 だれからもダメージを受けない以上、これを戦闘と言っていいのかわからないくらいだ。目の先にある城の中に彼女はいる。

 

 早く会いたい、少し怖い。

 そんな逸る気持ちに力加減を間違えそうになる。気持ちを切り替えなくては。雨あられと突いてくる点の攻撃である元康の槍を手で払い落とし、軽く蹴り飛ばす。

 

 手加減に手加減を重ねているはずだが、強化魔法を重ねがけしてしまったせいで加減をしても彼らの防御を簡単に超えてしまう。多少まともに受けられているのは盾の勇者である尚文だろうか。

 

 でもその尚文も戦線に戻るたびに空高く打ち上げられるせいでだんだんと戻ってくるテンポが悪くなっている。

 全身を泥だらけにしながら肩で息をする様になった。

 

 皆の訓練をしていたおかげもあり、皆の力量は予想の範囲内といったところだろうか。

 弓の勇者の樹の攻撃力が思ったよりはずっと高いものの、ダメージ無しの範囲である。強化魔法を使わなければちゃんと相手になっただろうが。

 

 逆に、協力としては勇者より仲間の育成を依頼してきた錬が一番弱い。

 剣筋は悪くない、というよりとてもきれいで勇者の中で唯一武道経験を感じさせる。ゲームもVRMMOでリアルに近いこともあるのだろう、剣の振り方がわかっている感じだが──実践用ではないなと感じた。

 技を効率的に放つことにかけては一番だが、それだけだ。

 一人で高めたその強さは連携のかけらもない。錬のDPSは最高かもしれないが、パーティーでのDPSは下がっているように見える。

 技を放ち続ける遠・中距離戦から、入り乱れる混戦になった瞬間に樹から何度も『邪魔しないでください!』と怒鳴られお互いに機嫌を悪くしている。

 

 偶然邪魔になっているのではなく、錬や元康を使って射線を塞いでいるのだが、そういうのがわからないらしい。

 まともに指揮できそうな尚文が戦線にろくに残れていない以上仕方がないのかもしれない。

 

 勇者が組むとパーティで経験値が入らなくなるからって連携をおろそかにしすぎたか。

 

 魔法による生体感知で、ガエリオンがだれかと一緒に戻ってきているのがわかる。なぜラフタリアはその場に残ったのだろうかという心配はあれど、作戦はうまくいったのだとわかった。

 

 もうすぐだからと尚文を狙わないでいると、仲間にバフを掛け直したり、避けようとしたところにエアストシールドが配置され、回避の邪魔になったりとダメージはないものの、イラッとくる。

 

 立ちまわりも悪くなく、一足先に戻ってきたフィーロに乗ることで機動性を上げ、リファナと連携しながらうまくしのぎだすようになってきた。

 

 ダメージが与えられないことを理解して足回りを狙ってくるのもうざったい。毒や麻痺、視界を防ごうともしてくる。

 

 どれも受けた瞬間に解除するが、煩わしいことには変わりない。これがヘイトを稼いでいる状態だろうか。

 これで防御力が追いつきさえすれば簡単には対処できないだろう。

 

 **

 

 くそっ、くそ、くそ、なぜだ!? なぜあたりもしない。

 

 勇者になったはずなのに。だれより強くなれるはずなのに。

 まだ足りないのか。また守れないのか。

 だれより剣の腕が立っていたはずの自分。

 

 巷を騒がせる殺人事件に不運にも遭遇してしまい、怯える幼馴染の前に立った。

 大丈夫、自分は強いと信じていた。

 なのに、つかみ合いになって、あれほどゲームで見ていたはずの刃物に怯えて動きを止めてしまい、刺された。

 

 もっと俺が強ければ。ゲームではなく本当の強さがあれば。

 だから俺はだれより強くなるために一人で戦った。

 仲間と経験値を分け合っていては強くなれないから。

 

 なのに、今もこうして戦えないでいる。

 ダメージを与えられず、足止めさえできない。

 

 弱職であるとあざ笑った尚文はあの強大な力に抗(あらが)っていた。空高く殴り飛ばされて泥だらけになってもすぐに戦線に戻ってきた。腹立たしいがあいつの声に合わせて戦うと戦いやすかった。

 同じようにスタートしたはずの樹はその一撃が俺よりずっと強力だった。尚文になにか言われなくても俺や元康の攻撃に合わせて戦っていた。

 

 コイツラは、俺の先を行っていた。

 

 **

 

 戦いは、ドラゴンが女を背負ってやってきたことで終わる。

 無力感にうなだれた。

 俺は何も変わっていないと。

 力があれば守れたはずなのに。

 

「レン様、だいじょうぶですか?」

「ウェルト、バクター、テルシア、ファリー……。見ただろう、俺は弱い。他の勇者についていったほうがいいかもしれないぞ」

「俺たちはレン様についていきます」

「レン様なら必ず強くなります」

「そうですよ、それに強くなればいい話ですから!」

 

 俺たちもがんばりますから。そう言って手を差し伸べられる。

 ああ、そうだな。

 

 弱職の盾と、同レベルの弓に差をつけられたのは仲間の差だろうか。こいつらと連携すればもっと強くなれるだろうか。

 

 ──まずは聞き出すところからだな。

 

 錬は少しだけ自分以外の強さに目を向けることにした。




錬は比較的勇者の中ではまっとうな関係で、逆に存在感薄いところありますよね。
ボコスコにされて、でも他の勇者はそれなりにあがらっているのを見て少し意識が変わるの巻。

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