「おいしっ! 城で出された料理もうまかったけど、やっぱりこれぞ異世界の醍醐味って感じだな~」
「ふふっ、ゆっくり味わってくださいね」
「ああ。武器屋も良かったし、マインのおすすめに外れはないな。助かるよ」
倒すのは簡単なのに、採取しようとすると、巨体のせいで恐ろしく時間がかかった。
衣や牙、爪、眼球、血など、それぞれを剥ぎ取りするため、容器や道具を買いに行ったり、実際剥ぎ取りをしたりと大変だった。
結界を張った影響で死体に集る魔物がいない点だけは焦りつつもしっかり処理をした俺をよくがんばったと褒めてあげたい。
その後、草原に行く頃にはもう夕方になっており、おそらく街に戻ってるなと数件の宿をあたってようやく二人を見つけた。
美味しそうなご飯に腹がなる。
「あ、ユウ様」
「おい、やっと戻ってきたか。最後のレベルアップからあんまり経験値が来なくなったから心配したぞ。なにやってたんだ?」
マインはぱあっと表情を笑顔に変えたが、尚文のほうがお怒りのようだった。
マインの隣の席につくと、尚文がまだ食べ始めだった料理をぐっと差し出す。
ホカホカの料理はチーズと、なんだろう? じゃがいもだろうか?? ホクホクして美味しい。
「ドラゴン倒してたんだ。倒したはいいけど、素材回収で時間がかかって」
「初日でドラゴン倒すなよ……」
「でもおかげで色々素材も揃ったしね」
どんと机に乗せられた袋。
中身は4等分された素材だ。
眼球などの数が少ないものは尚文用の袋にだけ入っている。
もちろん卵は別に分けている。
「バルーン相手にしたと思ったらドラゴン素材か。……ドラゴンシールド。こりゃ、ほんとに近場じゃ怪我一つしなさそうだな」
「まあいいんじゃない? 仲間を守るにしても自分が死なないのは最低条件でしょ?」
「とはいえ、まだドラゴンの攻撃を防げるほどではないんじゃないでしょうか? そもそも、こうなると私が足手まといでしょうか」
確かに、3人で強いモンスターを狙って養殖するとなると、防御の高い尚文はやりやすいが、逆にマインが危ないか。
「効率で言うならしばらくは二人で戦ってもらいつつ、経験値だけ送る感じが良いのかな?」
「そうでしょうね。草原先の森を抜けるとラファン村があるのですが、その先に初心者用ダンジョンがあるんですよ」
「ダンジョン。胸が躍るな」
「戦闘経験を積むにもいいかな?」
駆け出しの冒険者が挑むレベルらしく、二人のように装備と力が揃った状態なら問題のないレベルらしい。むしろやや物足りないレベルかも知れないとのこと。
今日倒した魔物についてや異世界で見聞きしたもの。
尚文は話もうまいなーと感心する。
異世界を本当に楽しんでいる。
俺も最初はそうだったかなと微笑ましく思ってしまう。
「てなわけでさ、マインにはすごい助けてもらってさ」
「いえいえ、所で勇者様? ワインは飲まないのですか?」
「ああ、俺はあんまり酒が好きじゃなくてな。つか、ユウは飲むんだな……」
「水代わりだからね。ワインやビールをよく飲んだなー。飲める水が沢山あるとこってそんなに多くなかったよ。教会の井戸は祝福されていたから飲むのに問題なかったけど。そもそもアルコール度も低いから慣れれば大したことないしね」
「なるほどな」
飲んでみると味は悪くない。
渋みもないし、ちゃんと酒を楽しめる味の良いやつだ。
日本でなら千円ワインのカテゴリーだろうがそのへんは比べるのが悪い相手だ。
うーん、奮発してるな。まあ、支度金もあるし、初日だしね。
いきなりせせこましくいくより、さっさとやる気をだしてレベルを上げて行くほうが正解か。
「尚文は大学生だったんでしょ? 大学のサークルで飲まなかったの?」
「ああ、新歓とかでな。でも、俺、酔わないんだよ。ムキになったやつにスピリタスを飲まされたけどぜんぜんでさ」
スピリタス……アルコール度数96度という、世界最高のアルコール度数を誇る酒で火がつく。
酒というか、アルコールだ。
そのことをマインにも伝えるとジュースを飲んだほうがマシという感じなんですね……と呆れていた。
酔えないなんて損だな。
まあ、俺も酒より女のほうが好きだけど。
「じゃあ、俺は先に眠るよ」
「勇者様、お疲れさまでした」
「寝坊しないでねー」
「お前こそ飲みすぎるなよ」
小さく手を振って尚文は部屋へと向かっていく。
テンションは高そうだが、疲れているようにも見える。
あれはぐっすりだろうな。
「それじゃ、マイン、改めて乾杯しようか」
「なににたいしてですか?」
「もちろん、君との出会いにさ」
美しい赤髪が乏しい光できらめかせる。
異世界ってすばらしい。
どうやってもっと仲良くなろうかな。
そう思いながらワインを楽しむ。
しょうがないね。お酒を飲んでるマインはえっちいからね。
しかたがないね。