女性優位のメルロマルクで本当に女性に選択肢があるかといえばそうではない。男と女に身体能力の差はさほどないが、やはり女性には月のものや妊娠すればその間動けないなどの男性と比べれば不利になる点が確かに存在するからだ。
けれど、教育と言った面ではさほど差をつけずに行ってもらえたのは幸運なことだったと言える。
男爵家となれば正直村長とさほど変わらないのだ。村数個、というのがよくある男爵であり、長子となればともかく、女となればいずれ家を出ていく人間であり、求められるのは夫を支え、相手の家を支え、我家とのつなぎを作ること。いい嫁をもらったと思ってもらうこと。
そんな中、王城にメイドとして上がることができたのは幸運である。なぜなら恋愛ができるからだ。
己を見初めてもらい嫁に行くことができる。
領と付き合いの深い商人の後妻、妾なんかもよくある話の中、一人に一心に愛される可能性のある嫁ぎ先だからだ。
特に王国の騎士などは一生城務めを行うものも多く、貴族では
ないものの、良い給料、よい生活ができる。
城の人間とも仲が良ければ騎士の支えにもなるし、次男三男の働き先の紹介も期待できるよい相手だ。
城の仕事はとてもおもしろかった。王都は刺激が多い。
休日に友人と行く劇など感動で涙を流してしまった。
正直相手探しにちょ~っと熱意がかけてしまったのは認める。
そんな私がある日であったのは、ぶつかったのは一人の子供だった。
「ゆ、勇者様っ!? こちらこそごめんなさい!」
「ううん。怪我もなかったから」
勇者と言う存在にどんなイメージが有るかといえば、歴戦のツワモノ、ドラゴンを打ち倒す英雄。
そんなイメージと違う可愛らしい姿だった。
黒髪の、いかにも異邦人らしい装いで確かに勇者なのかもしれないと思った。
尻もちついてしまった私に手を差し伸ばしてしてくれる。
目が合う。その瞳にどこか諦め、疲れ、そして寂しさを感じた。家出をして森に隠れてわんわんないていた弟みたいだと思って誘いに乗ってしまった。
ーーすぐに手を出されてしまい、可愛い弟は違うことを教えられてしまったけれど、それでもあの目が気持ちに残り続けていた。
**
行為を重ねるごとに気持ちも重なっていく。
そうしていればどこか一枚強い壁があることにも気づく。
なんとかしてあげたいという思いと、自分では無理だろうという思いが同居している。
ユウ様は迷子のままのようだった。それはきっと弟と違って自分が帰る場所ではないからかもしれない。
城に入れば色々と噂を聞くことが多い。
だから、ユウ様の相手をしているのが自分だけではないと知っている。勇者なのだからまとめて面倒をみてもらえばいいのよ、私は槍の勇者様派だけど、と笑う友人は新人騎士様との婚約が決まりそうらしい。
次回の長期休みで実家に連れてってもらうの、と笑っていた。
私は、どうなるのだろうか。
ユウ様にはたくさんの相手がいて私はその一人でしかない。
ずきりと胸が痛む。
いつの間にか自分こそが執着し始めていておかしかった。
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王女さまとも良い仲になったみたいと聞いて正直すごいな、と思った。うちのユウ様はすごい。
捨てられるかもしれない、という気持ちは心の端っこにあった。でも、そのときはきっと自分がしてあげることが何もなくなったときだろうとも思う。
城に来るたびに会いに来てくれるユウ様を愛おしく思い出していたから。
ユウ様の抱える異常性には気づいていた。女性を抱いているときに少しだけ安堵していて、でも不安と寂しさは消えない。
もしかしたら愛する人に裏切られたのかもしれない。
信じられなくて疑っていて、距離をおいているから寂しいのかも。私は最後まで味方でいよう。
そう思ったから。
子供ができてしまった。
私は自分のお腹を擦る。ここにもう一つの命が宿っているという事実に不思議な気持ちを何度も抱く。
ここにはユウ様の子供が。
授かりもの。母は子供を授かるたびに幸せに笑って、それが素敵だと思っていた。自分もそうなるのだろうと無垢に信じていた。でも、ーーもう役に立てない。
体を交わせない。心を拭ってやることができない。
ユウ様はどう思うだろうか。
明かす、明かさないと悩んでいるうちに、私は別の方に嫁ぐことになった。
家の力を使って圧力をかけ、ユウ様の邪魔をするかもしれないとする相手に、ああ、これが最後の手助けになると感じた。
みっともなくすがって、受け入れてくれないと罵倒する自分の姿を想像して、そんなことをして彼に傷をつけるより、あえなくても応援したいと未来を選ぶことにしたのだ。
それに、私にはこの子がいるのだから。
母親になるのだ。私は、この子を守ってあげなきゃ。
自分より大きな貴族の家。きっとできることはなにかある。
そう思ってーー向かった先で相手が私をなんのために引き取ったかを知ることになる。
今日も鞭が私を叩く。
ヒュンと風を斬って鞭が私を叩く。肌を切り裂き、心を傷つける。抗議することの無駄を理解してからはただ子供のいるお腹をかばうことだけ考えていた。
「獣に味方する愚かな勇者達! 信徒として盾と刀を許してはいけない!!」
波を超え、国を守る勇者のユウ様になんてことを考えるのだと、できればひっぱたいてやりたいと思っても自分にはできないのだ。
「ゆ……」
ユウ様助けて。その言葉が漏れてしまいそうだったからぎゅっと口を閉じた。
私はユウ様を助けたいと願っていたのだから、助けを求めて足を引っ張りたくなかった。たとえ聞こえるはずのないここであっても。
ーーでも、助けに来てくれた。
ギュッと抱きしめられたその先にあるその瞳は熱っぽい温かいものが宿っていた。迷子の子供のものじゃなくて、一人の女性を求める熱い瞳だった。
(ああ、良かった)
だれが迷いを断ち切ったのかはわからない。
けれど、ユウ様は変わったのだとわかった。
その後は色々あったけれど、国家と三勇教を欺き剣を向けたとしてイドルは財産を没収され、ユウ様の財産として贈与された。今私は王都に大きな屋敷に住んでいる。
再び利用されてしまわないように、ユウ様の妻になったのだ。
これからも彼を助けてよいのだと、また一緒に入れることが嬉しい。
しかし……大きな屋敷である。城の友人たちが手伝ってくれることになっているし、いずれ人を雇うとメルティ王女様より言われているが、今はユウ様と仲間二人の四人だけだ。
あれをしなきゃ、これが必要だと頭の中で列挙して……まず最初に行う事を考える。
「おはようございます、旦那様」
隣に眠っていたユウ様が目を覚ましたのを感じた。
窓からはまばゆい光が部屋に指していた。
RPG的には拠点を手に入れた感じですね!
入り口付近に立っているメルさんを選択するとパーティーの選択やら好感度が上がっているキャラとのエロシーンが見えるようになってる的な……。
そのうち妊婦ばかりいる屋敷になりそう感。