(だいじょうぶだいじょうぶ、ちしきはあるし、やれる……)
自分で誘ったことだったが、彼のは説得に応じてかベッドの上に上り……ぎしりと音を立てる。
ビクリと体が震えた。近づいてきた。近くにいる。
それだけで心臓が、鼓動がどくどくと鳴り響く。
何年も人とあっていない自分にはなんというか、彼の存在は劇物である。
これほどに興奮することは今までなかった。
(これが恋をするということかぁ……)
絶対逃したくない焦りや、孤独からの開放の安堵やそれを失うことの不満など、複雑な感情が絡まっての動悸であったが、彼女の頭はポジティブにそれを捉えていた。
勇者であれば抱けば見捨てることはないという打算の強い行為を後押しするのに丁度いいせいもあった。
絆は自分をオレと呼ぶ。
姉と妹に囲まれ、上から下から可愛がられていた。
だからこそ彼女たちの興味を持たない釣りや男の子の遊びは家族から独り立ちするような特別感もあり、のめり込んでいた。
そのせいか、男の気持ちにも女の気持ちにも中途半端なところがあった。
性欲を男にも女にもいまいち向けることができなくて閉じこもったままだった。
けれど、運命と出会ったと思ったことでその興味は一心に勇へと向かっていた。
(うわああっ! 肩が触ったああぁ!)
反対側を向いているため、目では見えないものの、勇者の優れた感覚が伝えてくる。
入り込んできた彼の体と自分の体が触れ合った瞬間を、その熱を。
(うわあ、わああ! 年下のくせに、年下なのに!)
見た目こそ同じくらいだが、実年齢では結構差がある。学校に通ってないが、通っていれば高校生と中学生である。
おねえさんのはずだが、この状況では年上ブルなど到底できそうにない。
ほんの少しの差であっても、自分より背が大きく、男らしくなり始めているその体は絆の心を揺さぶるには十分すぎた。
(よおし、よおし、あっちを向く、あっちを向くぞっ!)
このまま黙っているとおそらくそのまま朝になるに違いない。
向こうも勇者である。まさか黙って下着を脱がして性交、となるはずがない。
全ては自分次第。勇気を出すんだ、勇者でしょ!
男女関係の勇気も勇者に含まれる勇気なのかはわからないが、絆は振り向いた。
そうして、目があった。
(うわああああ、めがあったああああ!!)
勇の目はなんだか面白いものを見るような視線であったが、絆にとっては興味を持ってみてくれている視線に見えた。
優しげな瞳にこれはお互い同じ気持ち! と例えそうではなくても進める気だったがやる気になった。
(まずはきす!)
まずも何も、出会って名前を知って即ベットにはいる前にすべきことはたくさんあるはずだったが、絆の目的はやって引き止めることなので問題はなかった。
「す、するから!」
何をと聞き返す間も与えず、顔を近づけ……歯と歯が当たる。
頭突きのような形のキスは強い痛みを与えた。
(やっちゃったああああ!?)
脳内では完璧だっただけに、この失敗は痛かった。
もしや痛がって離れてしまうのではないか。急に恐怖が心を襲う。
体が自然と震えだしたが、そんな絆を何かがそっと包む。
「そんな緊張してたらうまく行かないよ」
体をそっと抱きとめ、ゆっくりと触れるだけのキス。
二度目のはずのキスは、けれどゆっくりとした動作のせいか唇の柔らかさが存分に伝わってくる。
(えっちだ……)
この柔らかさはやばい。本当に人体にあっていい柔らかさなのだろうか。おかしい。エッチ。
胸がどきどきする。とても柔らかくみずみずしい。
それだけにこの閉鎖的な世界で大した手入れもしていない自分がなんだか恥ずかしくなる。
姉妹に強く言われて元の世界ではそれなりに手入れをしていたし、炎天下で釣りを続けていた割には肌が強かったのか大したダメージはなかったと思う。
勇者になってからは体も丈夫になったのか、手入れなしでも十分なほどだった。
だが、過去異世界で国家総力でメンテされ、日本に戻ってからも魔法を加えた健康法を習慣として続けていた勇である。
身体の欠損ですら治す回復魔法やその高レベルの自己治癒能力が合わさればただでさえ若い肉体年齢はこれ以上がないほどに艷やかである。
肌はきめ細かく、水を浴びても弾きまくってしまう。
男に対して抱いていたどこか汚いイメージは消え去り、その匂いに包まれる心地よさもあり、絆の性欲のスイッチは簡単に入っていた。
男性がいない環境下(しかも経験無し)がどこまで気をつけているかみたいな。
まあ、冒険中でも女を抱いたりする冒険者だとそういうの気にしなさそうですけどね。
え? 三次元のキャラには毛が生えないはず? トイレなんていかない?
そうかも知れませんね……。
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全員さほど好きではない