実を言うと、私には誰にも言えない秘密の話がある。それもバレたらこっぴどく怒られる系の。
発端は先日のフー君の「腹減った……」発言にまで辿れるだろう。焼き肉定食焼き肉抜き等という変わった定食しか頼まない彼は、珍しくそんな言葉を私の目の前で漏らしていたのだ。それも心底お腹が減った……みたいな顔をして。
いつも思っていた。それっぽちのご飯の量でいつもご飯は足りているのだろうかと。食べ盛りの男子高校生が、ご飯とみそ汁と漬け物だけで、午後の授業を乗り越えられるのかと。
だからこそ「ねえ。そんなご飯の量で足りてるの?」と聞いてみた。まどろっこしい遠回しなやり方で聞くのは私のスタイルじゃなかったから、あくまで真っ直ぐ直球に。すると返ってきた返事は「実を言うと、けっこう腹は減ってる」だとのこと。
そうなるともう放っておける訳がない。こっちはいつもお腹を空かせている末っ子を姉妹に持つのだ。食べ過ぎはともかく、腹を空かせている人は放っておけない。
ゆえに自然とこんな言葉が口から出た。「お弁当、私が作ってあげるわよ」と。
姉妹のお弁当作りを一任されている私にとって、一人や二人増えたところでさして負担にはなるわけない。それも見ず知らずの他人のためではなく、愛する姉妹と愛する彼のためだ。そこに面倒という感情を持ってくる方が筋違いだろう。
相変わらず優しいんだか優柔不断なのか分からない彼の遠慮の言葉は聞かなかったことにして、その日から作るお弁当が一つ増えた。もちろん私が忙しい日には彼に学食で済ませてもらう日もあったけれど、それでも栄養面を考えたメニューを考慮して、学校のある日は極力毎日お弁当を作ってあげた。
「美味しい?」と尋ねてみて「ああ旨い」って言われるのはとても嬉しかった。それに何より、毎日彼の空っぽのお弁当箱を洗っているだけで幸福感に包まれた。たぶん結婚したら毎日こんな感じなんだろうな、とそんな幸せな夢を見ながら。
そんな何でもない日常が続いていた日に、とある雑誌でこんな記事を見た。「夏真っ盛り! 男性の精をつける方法!」だなんてくだらない記事だ。
ティーン誌の記事なんてどれも内容が過激で、退屈なものばかりだけど、そういったものを見て暇潰しをするのは案外好きだ。だからその日も、コンビニで何となく買った雑誌を流し読みしていたのだ。そうしたらそんな下品とも言えるような記事を目にしてしまったのだけど。
初めは下らないと一蹴しようかと思ったけれど、興味本位でその記事の中身を目にしようかなんて邪な考えが生まれてしまった。大丈夫。ちらっと中身に目を通すだけ。将来のために知っておいて損はないし、何より、精が出ると言ってもイヤらしい方面ばかりの意味ではない。夏バテ対策も兼ねて、そういった記事を載せた等の経緯もあるだろうと。
私が良く耳にする精のつく食材といえば、鰻や牡蠣だとかのタンパク質や亜鉛が豊富に含まれた食材だ。論理や理屈は分からなかったけれど、それが男性の精をつける食べ物だと言うことは、昔からテレビでもやっていたから知っていた。
雑誌の中でもそれらの食材はやはり上位にランク付けされていて、他にもアボカドや鶏卵や山芋等があったことにはちょっぴり驚いた。そんなものが果たして本当に効くのだろうかとも怪しんだ。
だから夏休み、プールに誘ってきたフー君を後々家に呼び出して、それらの食材をふんだんに使った昼食を何度もご馳走した。お弁当の代わりに、作ってあげてるのだと。あんた放っておいたら毎日カップ麺とかの健康に悪そうなもんばっか食べてそうだわと心配する振りを装って。
始めは丁寧に固辞されたものも、勉強を教えてくれた今までのお礼だと突っぱねると、渋々ながらも口につけてくれた。箸を進めるにつれて、その顔が美味しそうな表情に変わっていったのを思い出すと、今でも頬が緩んでしまう。
精のつく材料を使って、昼食をご馳走する。姉妹も誰もいない二人きりの時間を狙って、フー君に腕を奮った料理を作ってあげる。そんな些細な企みは思ったよりも楽しくて、「旨い」と言ってくれる彼の言葉が私の何よりのモチベーションになった。
で、今に至る。そう、疲れたフー君が私の隣で昼寝をしているこの状況だ。
私とフー君以外に誰もいないリビングは、クーラーが効いていて過ごしやすい。昼食を食べたこともあってか、睡眠欲が程好く刺激される。だからこそフー君も気を抜いて、こんな間抜けな寝顔を晒しているのだろう。見るとよだれを垂らしていたりして少し可愛い。
だが、視線を下に移すと、そこには可愛らしいなんて言葉で形容できないものがそそりたっていた。そう、フー君のフー君だ。
男性が寝ている時にそうなってしまうというのは知っていたけれど、まさかフー君もこうなるとは思っていなかった。恋愛なんて言葉とは対局に位置しているような人で、こっちが無理やり土俵に上がらせないと意識すらしてくれない。今までそういうような認識が既にできていたからこそ、フー君も男の子だと分かってしまったことが、嬉しく、少し怖くもあった。
「触っても、起きないわよね……」
触ると言ってもフー君のフー君に触るだなんて意味ではなくて、身体を窓側の方へ向かせるという意味だ。仰向けになって四肢を投げ出し、興奮したブツを主張させているその寝相は、いろんな意味で私の心臓に悪い。
とりあえず腕の辺りに手を触れさせ、そのまま横にごろんとさせようとする。しかし思ったよりフー君の身体が重いせいで、なかなか寝返りを打ってくれない。
「……んっ……」
「っ、……!」
些細な寝息でさえ、この状況下だと心臓に悪い。精のつく食べ物を調子に乗って食べさせていた私がもちろん悪いのだけど、それでもここまで元気になるとは思っていなかった。
しばし、寝返りを打たせようと格闘する。ありったけの力を込めて、何とか視界にそのブツを入れさせまいと四苦八苦する。それでも俄然として何も状況は変わらず、むしろシャツがはだけてきているので状況は悪化している。
「こ、こんなのどうすればいいのよ……」
放っておくという選択肢も脳裏によぎったが、それもすぐに否定する。他の姉妹がこの光景を目にしたら間違いなく戸惑うし、そもそもこんなことになったのは私のせいだ。私が何とかすべき問題だろう。
フー君を起こすことも考えたが、こんなにぐっすりと気持ち良さそうに眠っている光景は、なるべくなら邪魔したくない。それに起きた時に自身の下半身の状態に気づいて、それから私の存在にも気づいて……なんてことになったらもう地獄絵図だ。そこからまともに顔を見合せられる自信がない。
毛布で隠してもこの大きさだと隠せ切れないし、それも途中で起きたりされると最悪だ。取れる選択肢がほとんどもうない。
本人に気づかれることなく、それも姉妹が帰ってくるまでにこれを何とかする必要がある。一応、何とかできなくもないのだが……。
「いやいやいや! それはっ、その……」
一人はしたない妄想に耽っては、必死に首を振って否定する。いくらなんでも、私が勝手に処理する訳にはいかないだろう。
それでも、ゴールだけを考えればそれが最善策なことには変わらない。こうやってうじうじと悩んでいる間にも、フー君がいつ起きるか分からないし、姉妹が今にも帰ってくるかもしれない。
ちらっとその寝顔を盗み見る。そうしてドアを見て、下半身に視線を移す。
「…………」
シャツがはだけてしまったお腹に手を這わす。触ると思ったよりごつごつとして、うっすらと筋肉があるのにびっくりした。
円を描くように指をつーっと触れさせ、起きないかどうかを探る。相変わらずすやすやと気持ち良さそうに寝息を立てていて、起きる気配が一つも見受けられない。
「何でもない。これは何でもないから……っ」
誰にもしてる訳でもない言い訳をその場で溢し、続けてシャツのボタンを一つずつ外していく。本来ならそんなことをする理由もないのだけれど、お腹が苦しそうだったから何となく外してあげた。そこにはさしてこれと言った意味もないはずだ。
お腹の真ん中の辺りにつーっと指を這わせ、返ってくる反応を一人楽しむ。寝苦しそうに、鬱陶しそうに寝息を漏らすのが、嗜虐心をほんのわずかに刺激した。
バレないように苛めているのをしばし楽しみ、そうして目線を下の方へと移す。手を伸ばすかどうかで躊躇したが、思いきって手を伸ばしてみた。
ズボンの上からでは細やかなことは分からないが、それでもフー君の性器が大きく、熱くなっているということだけは感覚で察し取れる。
何となく、ズボンの上からそれを揉んでみる。これだけで射精しちゃうかもなんて不安もよぎったが、そこは運良く耐えてくれた。 調子に乗って長い時間触っていても、フー君は起きる気配がない。
「…………誰も、いないし……」
自然とベルトに指が伸びた。カチャカチャと乱暴にベルトを外し、そのまま下着をずいっとずらす。
「あっ……」
まず脳裏によぎったのは、後悔という二文字だった。いきり立った陰茎が、一定のリズムで脈を打ち、今か今かと触られるのを待っている。両手で覆ってみても先端の方は見え隠れするし、鈴口から白い透明な液体が漏れ出ていた。
下着をずらし、意中の人の性器を手で触ってるところなんて、誰かに見られたらおしまいだ。それこそフー君がいつ起きるのかなんて分からないし、姉妹もそろそろ帰ってくる時間だろう。
それでも、悩ましげに悶えるフー君が可愛くて。私が触って興奮させて、いるのだという事実が、やけに私を調子づかせて。どうにも手が離れてくれない。
「いっち、にー…………いっち、にー…………」
不慣れな手つきで、肉棒を上下に擦る。エッチなビデオでしか見たことがなかったから見よう見真似だけど、これがなかなか効果的なようだった。
まるで夢見の悪い夢を見てるかのように、くぐもった声をフー君が漏らす。眉をひそめて、不快そうにしてるその顔が、私の隠れたサドな部分を刺激する。
「可愛い……」
いつも男らしくて、かっこいいフー君が、こんな情けない姿を目の前で私に見せてくれるだなんて。為すがままにされるその格好が、妙に愛らしくて、いっそ抱き締めてしまいたいとも思った。
両方の手の平で覆うようにして上下に手を動かす。力加減は分からないけど、あまりにも強すぎると痛いと聞くから、弱く、それでも気持ち良くなってもらえるようにと力加減を何度も調整していく。
「…………」
少し気になったので手を動かすスピードを緩めながら、顔を性器の近くまで寄せてみた。ちろっと舌を出してみて、鈴口に溜まった白い透明な液体を舐めてみる。
「……美味しくない」
それがまず初めに出た率直な感想。エッチなビデオだと女優さんが美味しそうに舐めてるから勘違いしていたけれど、どうやらあれは演技力の賜物だったらしい。ひたすらしょっぱいだけで好んで舐めたいとは思わない。
それでも理性が止まってくれなかったから。顔は近づけたまま、その陰茎を口に含んだ。
徐々に奥の方まで性器をくわえていく。左手で根本の方を執拗に擦りながら、舌を男根に這わせていく。
熱い。とても熱い。血管が脈打ち、生々しさが舌を経由して直に伝わってくる。喉元のところまでその竿が突っ込まれているから上手く呼吸ができない。苦しい。むせてしまう。
「っ、……んっ……」
それでも口内が犯されているといった感覚が、妙にゾクゾクと来てしまって。フー君が起きたらどうしようとか誰かに見つかったらどうしようなんて不安感も、全て快楽に変わっていることに気づいてしまって。今さらもう、止められる訳もなかった。
鼻の中に充満する男らしい匂いにクラっときながら、うつ伏せになり、膝だけを立たせ、下着に手を伸ばす。
既に湿ってしまった下着をずらし、膣内の方に人差し指を入れる。一花や三玖は中に指を入れずに自慰することは、部屋を共にし一緒に寝ていた時にこっそり知っていたけれど、それでも私は指を入れないと満足しなかった。口内がフー君に犯されていることに幸福感を覚えながら、必死に指の抽送を繰り返す。
「っ……んっ、……!」
どうしようもないところまで来てしまっている。どうしよう。ここで止めようか。というか、実はフー君は既に起きていたりしないだろうか。そんな葛藤や逡巡が頭の中でぐるぐると巡りながら、それでも自慰をやめられなかった。
まるで獣のように荒い息を鼻から漏らしながら、意中の人の性器を口にくわえて、一人慰める。本当なら、フー君とこのまま身体を交わしてみたかったけれど、それは今の時点では許されていない。
私に振り向かないフー君が悪いんだから。こんなはしたないことをしているのは、いつまで経っても私のことを好きになってくれないフー君のせいなんだから。そんな言い訳を心の中で溢しては、さらに激しく、膣内を指で掻き回す。
「ふっ、……っ、んっ、……!」
果てる時の感覚は、普段してる自慰から何となく分かっていた。目の前がチカチカとして、脳がくらっとなってくる。意識が遠退くような感覚がして、次第に満足感が満たされる。何度したって飽きることはなく、やめられない。
それが今まさに、私に訪れようとしていた。普段よりも幾分か果てる速度が速いような気がする。何時もより激しく自慰してるからと言われればそれまでなのだが、フー君の性器をこうやって口に含んでいるのも理由にあるだろう。
淫らな水音を室内で響かせる。ぴちゃぴちゃという音と、くぐもった喘ぎ声が、寂しく部屋の中に響き渡る。
そうして次の瞬間。目の前がチカチカっと白く瞬き。
「~~~~っっ!!」
まさかフー君まで果てるとは思ってなかった。絶頂に達すると共に、白濁液が喉元に注ぎ込まれる。大量の精子が流れ込んできて、否応なく飲むことを強制されてしまった。苦しみながらも美味しそうに喉を鳴らして、大好きな人の精子をごくりと飲んだ。
そうして多大な幸福感に包まれたまま、腰が砕けて、身体を震わせ。未だ出てくる精子を一滴残さず吸い取るようにと、夢中で肉棒を吸い取ると──
「…………なあ、二乃」
「なに?」
「お前、寝てる時になんかしたろ」
「してない」
「いや、だって着てるシャツになんか違和感があるんだって」
「気のせいじゃない?」
「気のせいな訳はないんだが……。でも、悪戯をされたっていう痕も特にないし……」
「ところで、フー君に聞きたいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「なんか夢とか見なかった?」
「夢?」
「そう、夢。別に見てないならいいんだけど」
「……お前に言うのもなんだが、酷く気持ちの良い夢は見たな。ふわふわとしたっていうか、目覚めるとスッキリした夢っていうか」
「そ、なら良かったわ」
「何が良いんだよどういうことだよ……。やっぱりお前なんか俺にしたろ……。ちょっ、おい逃げんな! だから何でさっきからそんな顔真っ赤にしてんだよ! やっぱ心当たりあるだろお前!」