※この作品はR-18です。

五等分の想い出   作:siguma 

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一花「起きない貴方に口づけを」

 

 

「…………やっちゃった……」

 

 まるで殺人を犯した犯人のように、ベッドの前に一人立ち尽くす。ベッドには赤い血の染みや凄惨な死体などがあるわけじゃないけれど、そこにはスヤスヤと気持ち良さそうにフータロー君が眠っている。

 女優にあてがわれる部屋は主演でなくとも豪華な内装で、一人用の部屋と言ってはいても、ベッドはダブルだ。だから身体の大きなフータロー君でも容易に寝返りを打てて、今は熟睡してしまっている。

 

 どうしてこんなことになったのか、一先ず状況を整理しよう。

 

 フータロー君が私と一緒にホテルにいる理由は、私に勉強を教えるため。私が引き起こした退学騒動は、フータロー君がマンツーマンで勉強を教えてくれることで解決した。若い男女がホテルで勉強を教えあうなんて、いかがわしくしか聞こえないが、まあそういうことなのだ。

 

 日中は女優業があるから、今までのように図書室で教えてもらうわけにはいかない。こうやって遠くのほうで撮影をすることもあるから、家に帰れないことはしょっちゅうあって、互いの都合が合う場所と言えばこんなホテルの一室しかない。今日も今日とて、撮影が終わるとすぐに勉強に励んでいた。

 姉妹の目を盗んで、彼と一緒に登校することはもうできない。けれど、夜中、ホテルの一室で二人きり。そんな状況下で勉強を教えてもらうのは、私にとって心底嬉しいことだった。

 私だけを見てくれて、私だけにつきっきり。そんな拙い独占欲が未だに自分の中に渦巻いてることを自覚しつつも、彼と喋りながら勉強に励む時間が私はこよなく好きだった。

 

 しかし、彼が面倒を見ている生徒は何も私一人じゃない。私と同じぐらいお馬鹿な生徒を四人も持っていて、しかも自身の勉強にも時間を割く必要がある。私に勉強を教えたあとは帰るのがかなり遅くなるから、十分な睡眠時間が取れていなかったのだろう。今日も随分と眠たげな目をしていた。

 

「ねえ。元気なさそうだけど大丈夫?」

「あんまり寝てないんだよ。ここ最近、寝ようと思ったら逆に目が冴えてしまってな」

 

 心配してそう尋ねたら、目を擦りながらそんな言葉が返ってきた。「それなら今日はもう大丈夫だよ」なんて言っても、「そうやって勉強から逃げるつもりだろ。言っとくが、授業範囲が終わるまで逃がさねえからな」と勘違いしてくるのだから、こちらは苦笑するしかなかった。本当は君ともっといたいのだから、せっかくの二人きりで勉強なんていうチャンスを逃す訳がないのに。

 

 本人がいくら大丈夫だと言い張っていても、睡眠不足は思わぬタイミングで身体に不調を起こす。気づいたら玄関で寝ていただなんてのはまだ良い方で、突然道端でフラッとしてしまい、足がふらついてそのまま車線に……なんてことになったら目も当てられない。だから私は、昔二乃から貰っていた睡眠薬を彼に飲ませようとした。

 

 「飲んで」と言っても「いや要らん」とすげなく断られるのは目に見えていた。それに無理やり渡したところで、家に帰って飲むかと言われればそれは怪しいところだろう。

 むしろフータロー君なら寝る時間を削って、私たちのためにプリントを作成してたりしてそうだ。実際に昔そんなことはあったし、たたりが生じて玄関で倒れていたりすることもあった。いつになったらちゃんと寝るかどうかすら分からない。それならいっそ、こっそりと飲み物に睡眠薬を入れ、ここで一休みしてもらおうと思っていたのだ。

 

「でもまさか、こんなに効力が強いとは……」

 

 壁にかかった時計をちらりと見る。短針は既に十一の数字を指していて、窓をのぞくと綺麗な夜景が広がっていた。はあーっと大きな溜め息が、綺羅びやかな夜景に消えていく。

 

「起こしても、全然起きないし……」

 

 フータロー君が寝始めてから、既に四時間は経過している。身体を何度揺さぶっても起きる気配は一向にない。むしろ朝になるまでこのまま寝ているのではないかと考えた方が自然だ。

 ベッドの前に立ち尽くす。フータロー君の髪が枕の上に綺麗に広がっていて、整った顔立ちがありありと見て取れる。こう見ると鼻筋も通って、身長も高い。目立ちはしないがかなりのイケメンの部類に入るのだろう。姉妹が四人も惚れてしまう理由がよく分かる。

 

 普段の目つきの悪さも、目を閉じているおかげで鳴りを潜め、今は子供のようにスヤスヤと寝息を立てている。彼の寝顔を見ていると、昔行った花火大会を思い出すが、今はそんな想い出に浸っている場合ではない。なにせ起きてくれないと非常に不味いのだ。

 

「明日も撮影はあるし、私もちゃんと寝ておかないと……」

 

 そう、明日はフータロー君は休みかもしれないが、私はお仕事が入っているのだ。こんなところで突っ立っている場合ではない。長丁場の撮影だから、しっかりと睡眠を取っておかなければならないのだ。

 それでもベッドはフータロー君が独占しているからどうしようもない。ソファーがあるにはあるのだが、そんなところで寝たら身体を痛くしそうだし、何よりまともに寝れる気がしない。だからフータロー君を先ほどから何度も起こしているのだが、如何せん、全然起きる様子が見受けられない。

 

 一応、解決策はあると言えばある。それでも……。

 

「恥ずかしいって言うか、なんと言うか……」

 

 ベッドが一つしかないのだと言うのなら、その隣で添い寝すれば良いのだ。そうしたらすべて丸ごと綺麗に収まってくれる。

 

「でも、それは、ちょっと……」

 

 私も人並みの羞恥心は持ち合わせているつもりだ。膝枕は別に構わないが、添い寝とまでなると話は別だ。

 それにフータロー君からすれば、起きたら何故か隣で友達が寝ているのだ。そんな光景なぞ恐怖しかないだろう。下手な勘違いをして、うろたえてしまう可能性もある。

 そもそも、これは私が我慢すれば済む話なのだ。恥ずかしいと言っても数分もすると慣れるだろうし、フータロー君のことだから私が隣で寝ていてもたいして驚かなさそうだ。

 しかも撮影と勉強のダブルパンチで正直とても眠い。ハードな撮影だったから身体が気だるいし、勉強で頭も使ったから脳も疲れている。ここでうだうだと言い訳をこねている間にも、さっさと早く寝てしまいたい。

 

 襲ってくる眠気にはやはりあらがえず、フータロー君が起きないようにと祈りながら、のそのそとベッドに這い上がった。ベッドは私のもののはずなのに、自由に手足を伸ばせない。身体を縮こまらせて、ひたすらその背中を見ているばかりだ。

 背中を向けられているからその寝顔は見えないけれど、こうして見ると背中がとても大きい。調子に乗って手で触れてみても、女の私とは違う、男らしい背中だ。ゴツゴツとしていて、かつ程よく筋肉がついている。

 未だに寝息を立てていることに安堵しながら、こっそりと触れる手の面積を増やしていく。初めは遠慮がちに触っていたものも、探究心が抑えられず、今度はシャツの中に手を入れてみたりなんかもする。

 

「……あったかい……」

 

 人肌の温もりとは、まさにこの事を言うんだろう。冷淡でさばさばした人だと捉えられがちだが、実は身体も心も暖かい人なのだ。姉妹にも、私にも嘘をつかず真摯に接してくれたことから、そのことについては見に染みるほどに味わった。

 

 こっちを向いてくれたりしないかな。こうしている間にも途中で起きて「仕方ねえな……」って言いながら私のことを抱き締めてくれないかな。そんな淡い恋人のようなことを夢見ては、にへらと頬が緩んでしまう。

 でも今はまだ、この距離感で。つかず離れずのこの関係で良い。いつかはずっと隣にいたいけれど、今はまだ──

 

「っ……!?」

 

 その背中をぼんやりと見つめ感傷に耽っていたら、突然、彼の身体がモゾモゾと動いた。背中に触れていた手を咄嗟に引っ込めて、接触しないようにと、より一層、身体を縮こまらせる。

 

「っ……、…………っ……」

「え、えっと……っ、その……」

 

 寝返りを打ったフータロー君が、私の真正面で無防備に寝顔をさらしている。少しでも顔を動かせばキスできそうな程には顔が近くて、その落ち着いた寝息も今は鮮明に聞こえる。

 もしかするとこれは夢なんじゃないんだろうか。実は寝ているのは私の方じゃないんだろうか。頭の中が混乱してきて、頬っぺたを強く引っ張ってみる。しかし依然としてやはり痛みがあるから夢ではなさそうだ。

 壁に背をつけ、息を潜ませる。縮こまっている私の正面に、大好きな人の顔が目と鼻の先にある。寝返りを打ってもなかなか起きず、むしろ当初よりも深く寝入っている気がする。

 

「……起きない、かな……」

 

 心の中に、拙い悪戯心が芽生えてしまった。いけないことだとは分かっているが、それでも、少しぐらいなら……。

 起こさないように、その頬に優しく手を触れさせる。互いのもどかしい距離をゆっくりとつめる。目を開けないでと祈りながら、このまま起きたりしないかな、なんて思っている自分がどこかいることに気づいてしまって、はからずも苦笑してしまう。

 髪と髪が触れる。頭を少し上げてみて、頬のところにまで顔を近づける。

 そうして意を決し、瞳をぎゅっと瞑ったあとに。もどかしいその距離をゆっくりと詰めて……。

 

「…………しちゃっ、た……」

 

 寝ている君が起きないように、頬に口づけを交わした。唇じゃなく頬にだけれど、そんな甘いキスを君に贈った。

 

「……起きないのが、悪いんだよね……」

 

 勢いづいてしまったのか二度目のキスを再び交わす。一度や二度ぐらいたいした差などないのだから、続けて何度も、何度も。

 痕に残るといけないから、強くキスをするのは遠慮した。キス痕をつけると独占欲が刺激されるだろうなと予想はつくけれど、起きた時に誤魔化す術を持っていないから今は無理だ。

 

「……でも、ハマりそう……」

 

 ただ頬に唇を触れさせているだけなのに。相手は寝ているから、何一つ反応は返ってこないのに。それでも悪いことをしている感覚があって、どうにも背徳感が刺激される。

 

 フータロー君が起きないのを良いことに、腕を広げてえいっと抱きついてみる。抱き枕にしては大きすぎるけれど、温もりが直に伝わってくるから気持ちいい。私専属の抱き枕になってくれたりはしないだろうか。

 力加減を調節することすら忘れ、子供のように抱きついて甘える。おでことおでこをくっつけて、唇同士が触れあうまで距離を詰め、そのスリルを一人楽しむ。

 

「可愛いなぁ……」

 

 寝顔が妙に愛らしくて、再びぎゅーっと抱きついた。どうか起きやしないとたかをくくってるから、胸が当たっていてもお構いなしだ。

 私はこんなに君のことが好きなのに。君はまだこの気持ちに気づいてくれないなんて。鈍感かそれともニブチンとでも罵ればいいのか。それでも以前よりは意識してくれているから、まあ許してあげよう。

 

「……あれ?」

 

 本能のままに抱きついていると、お腹の辺りに妙な違和感を感じた。肌の温もり等という言葉では形容できず、温かいというよりも熱い。熱い体温を持った何かが、さっきから腹部に何度も当たっている。

 その違和感が気になったので視線を下に移す。お尻を壁の方にずらして、何が当たっていたのだろうと探ってみる。

 目を凝らす。見間違えかと思ったのでぱちぱちと目を瞬かせる。それでも相も変わらず、フータロー君のズボンは妙に膨らんでいて……。

 

「っ……!?」

 

 これって、これって、もしかして。保険の授業で習ったアレだろうか。実際にエッチなビデオでも何度か見たことがあるからそうなんだろうけど、まさか、フータロ君が──。

 

「……勃起、してるってこと……?」

 

 その単語を言うのは憚れたけど、この状態はつまりはそういうことだろう。男の人が、性的に興奮したらなってしまうその現象。実際には寝ている時に生理現象でよくなるらしいけど、自分は胸を押し当てていたりしたから、生理現象かどうなのかの判別がつきづらい。

 

「わー……うわー……」

 

 うわ言のように言葉にもならない言葉を漏らす。知識としては知っていたけれど、こうやってまざまざと自分の目で見るのは初めてだった。それも好きな人のなんて尚更だ。

 

「苦しい……、のかなあ……」

 

 たとえこうなっても、無理に射精はしなくて大丈夫ということは知っている。けれど、こんなに苦しそうに腫れている姿を見ると、本当にそうなんだろうか?と疑ってしまう。実際に出さないと当人はすごく苦しくて、今も夢の中で苦しんでいるんじゃないかと。

 偶然、手が当たったふりを装って、ズボンの上からゆっくりと擦っていく。特にこれといった反応が返ってこないから、思いきって、ズボンのベルトを外してみる。

 つけていたベルトはたいして複雑な作りではないのに、外すのに妙に手間取った。緊張がそうさせているのか、あるいは焦燥感がそうさせているのか。理由ははっきりとしなかったけれど、長い時間にわたる格闘の末、ようやくベルトを外すことに成功した。

 ファスナーをジーっと下まで下ろす。噛み合ったホックの部分をゆっくりと外し、ズボンの布地を左右にはだけさせる。

 

「ぱんぱん……」

 

 穿いているパンツはやけにぴっちりとしたもので、下着の上からでも陰茎の形がくっきりと分かった。グロテスクと言えばそれまでなのだけど、これがいつか自分の中に入るんだろうかと考えたりすると、可愛らしく思えてくるから不思議なものだ。

 男性の下着の構造はよく知らなかったから、そのままずいっと下に下ろした。ようやく外に出れたと言わんばかりに勢い良く出た男根は、熱く、とても大きかった。

 

「うわー……わー……」

 

 再度、似たような言葉を漏らす。今この場で起きられたらもうどうしようもない。偶然手が当たって……なんて言い訳も通用しないだろう。それでも好奇心は今さら止まってくれず、今度はゆっくりと、前後に擦り始めた。

 

 経験がないから、丁度良い力加減というものが分からない。けれど、拙い手つきで何とか刺激してみる。一瞬、いっそ口でも……と思ったが、そこまでの勇気は私にはなかった。今はもう、一心不乱に手を動かすだけで精一杯だ。

 親指と人さし指を輪っかの形にして、小刻みに亀頭の辺りを擦っていく。しばらくするとくちゅくちゅと淫らな水音が聞こえてきて、見ると先端の辺りから粘っこい液体が出てきていた。

 

「気持ちよく、なってるってこと……?」

 

 眉をひそめてくぐもった声を出すフータロー君の顔を見て、そんな独り言をぽつりと漏らす。あのフータロー君でもこうやって反応してくれるんだと分かったことが、より一層、さらに私を勢いづける。

 

「フータロー君は、おちんちんを擦られて気持ちよくなってるんだー」

 

 どうせ聞こえてないことを良いことに、言葉責めに似たようなことをしてみる。言ってる本人の方が恥ずかしいのだけれど、淫語を口にすると妙に身体が熱くなってくるからやめられない。

 

「お姉さんに、知らない間におちんちん触られて、それで無様にびゅーって射精しちゃうの?」

 

 濡れきったショーツに手を伸ばす。筋の辺りに指を這わせて、フータロー君を苛めている手の動きと共に、自らの秘部を苛めていく。

 

「さっきから、ずっと気持ち良さそうだねっ……」

「…………」

「同い年の友達にっ、性欲処理させて……っ、恥ずかしくないの……?」

「っ、…………」

「あっ、今反応した……。やっぱりっ、気持ちいいんでしょ……」

 

 一瞬起きたのかとドキッとしたが、快楽にただ身体が反応しただけらしい。くちゅくちゅと鳴る淫らな音と合間って、私もいっそう気持ちよくなってくる。

 寝ている好きな人を使って、一人でオナニーだなんて。しかも勝手に手で奉仕しながら、言葉責めをしているだなんて。自分はそんなエッチな子じゃなかったはずなのに、今はもうすっかり沼にハマってしまっている。こんなに気持ちいい自慰なんて覚えたら、普段の指を使うだけのオナニーに戻れる自信がない。

 

「ほら、びゅーって射精するんでしょ」

「…………っ……」

「良いよ。お姉さんにいっぱいかけて。……全部受け止めてあげるから」

 

 そう言い残して、身体をもっと密着させる。フータロー君のおちんちんが自身の割れ目に当たるように手を動かして、ふしだらな音を響かせていく。

 

「むっり、……イキっ……、そうっ…………」

 

 肉棒を掴んで、その亀頭を必死に秘部に擦る。とろんと目を溶けさせて、最後にありったけの力を陰茎に加えると。

 

「っ……、、~~~~~~っっ……!!」

 

 フータロー君が射精したと同時に、びくんと大きく身体が震えた。目の前がチカチカと真っ白になって、徐々に視界がおぼろげに消えていく。

 陰部は白く染まった精子によって汚され、つんとした匂いが鼻にまで漂ってきてクラっとしてしまう。けれど癖になりそうな匂いで、再び頭の中がチカチカとしていく。

 それにしても、自慰なんてしないだろうに射精した量が少し少ないように思える。もしかして最近一人で慰めたりしたんだろうか。真偽は分からないが、ともかくこの場を何とかしなくては。

 

「証拠隠滅だから……」

 

 お互いの性器にまとわりついた精子を指で取ってみて、何となく口に入れてみる。あまり抵抗感のない味だったから、今度は下半身にまで顔を動かし、フータロー君のおちんちんをぱくりと口にする。

 アイスキャンディーを舐めるかのように、舌でぺろぺろと竿を舐めていく。しょっぱいのが妙に癖になってしまい、もう少し出ないかなと尿道のあたりを強く擦ってみる。

 

 我慢汁や精子が残らないように綺麗に舐め取ったあとは、ティッシュを二・三枚手にとって、シーツについた精液と共に、ついた唾液を一つも残らず拭き取っていく。

 元とまったく同じように、下着をあげて、ベルトをはめ直し。乱れたシーツが元通りになったかどうかを確認するために、一先ずベッドから下りて確かめてみる。

 

「……悪い子だなあ、私」

 

 今度は大の字になって寝息を立てているフータロー君を見て、そんな言葉をぽつりと漏らす。ズルい子とでも言えば良いんだろうか。恋人でもないのに、フータロー君を使って一人勝手にエッチなことをしてしまった。

 

「ねえ、起きてる?」

 

 返ってくる訳のない問いを投げ掛けて、今度はフータロー君の上にまたがった。重そうに顔を歪めるから一瞬躊躇したけれど、やはり気にせず、まるで今から性交でもするかのような体勢を取る。

 

「……何で襲ってくれないのかなぁ」

 

 フータロー君なら大丈夫なのに、と付け足して、上からその寝顔を見下ろす。気持ち良さそうに眠っていて、少々悪戯をしたところで起きなさそうだ。

 それにさっきも悪戯ばかりしていたのだから、今さらキスの一つや二つぐらいで──。

 

「…………」

 

 ゆっくりと顔を近づける。両手をその顔の横について、押し倒すような形で距離を詰めていく。

 

「……キス、しちゃうよ?」

 

 ほんのわずか、顔を動かせばキスできるぐらいにはもう余裕がない。思い詰めたような表情でフータロー君のことを見つめては、そのままゆっくりと目を閉じる。

 

 まあ、いいや。

 

 あんなにいっぱいエッチなことをした訳だから、今さら唇にキスぐらい──

 

「…………何してんの、お前」

「~~~~っ!?」

 

 聞き慣れた声が、耳に流れてくる。思わず目を開けて、口をパクパクとさせる。

 

 目の前では困惑した顔のフータロー君が、怪しげに私の顔を見つめ返してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きるなら起きるって言ってよ、もうっ!」

「そう言われてもだな……。いつのまにか何故か寝てたしな……」

「そ、それはフータロー君が悪いんでしょ! だってフータロー君ってばいつのまにか居眠りし始めたんだもん」

「……本当か?」

「ほ、本当だよ」

「嘘はついてないか?」

「……う、嘘じゃないよ」

「まあ別にそれはもういいが……。それで、さっきは何しようとしてたんだ」

「……い、言えないっ!」

「いや言えよ。どうせくだらないことだろ」

「とにかく言えないってば言えないのっ! 何が何でも絶対に!」

 

 

 

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