熱い、ルフィの吐息が肌に掛かる。それだけで、肌が粟立つのを感じてそんな自分が浅ましく思えてしまう。
でも……何か言葉を口にする隙もなく、ルフィの雄が私の中に埋め込まれる。その衝撃に耐えて、声を必死に押し殺す私に、ルフィは背後から首筋にキスをして来た。
「ンンっ!」
「ナミ……可愛い声を、聞きたい」
巫山戯ないでと睨む為に振り向けば、ルフィの欲望に燃える瞳とかち合う。それだけで私は何も言葉を紡げ無くなる。
惚れた方の負けなのよね。だから……私はルフィに勝てない。
ルフィの動きは明らかに暴力的なのに、怪我を気遣うように動いてくれてるし、私に体重をかけるような事はして来ないから理性を完全に失ってるって訳でもなさそうで……。もう、ルフィの莫迦!
「鍵、しめさせて……!普通に、ううん、好きに抱いて良いから!」
「ナミ……」
ルフィの動きが止まる。視線を向ければ泣きそうな顔したルフィがいて……捨て犬みたいな顔で、私を見ているのが分かる。
「……誰かに見られるくらいなら、死んだ方がマシ。私は、元々……こういう事、苦手なのよ」
惚れた相手にしか触れられたくも見られたくもないし、でも、惚れた相手だと恥ずかしいから……。でも、実際は私が弱くて何度も他の男にされてる。
ルフィとの事だって、最初の時はまだ惚れてはいなかったと思う。それに、ルフィ以前の件に関しては、誰のモノでも無かったから、寧ろお金になったんだからって開き直ってる部分も多少はあった。
問題はその後で……でも、ルフィはそれを気にしなくていいと言ってくれる。そんな男、なかなかいないと思うのよね。
そっと腕を伸ばして鍵を掛ける。それによりルフィが少し離れて私の中から抜けるから、その腕を掴んでベッドに放り投げる。
それくらいの腕力はこの航海で身に付いたわ。お陰でこれくらいなら、難無く出来るようになってるのよ。
投げ飛ばした衝撃で背中の傷が確かに痛みを訴えたけど、今はルフィとちゃんと向き合いたいから、逃がすつもりは無いのよ。そう思いながら、私の方から驚いているルフィに覆い被さるとその唇を奪う。
実際強姦の被害者となった女性がその時の恋人とその事件の後、7割は別れていると言う調査結果もある。言葉や行動で被害者である恋人を責めて別れるケースが、その中でも1番多い。
次に、気にしてないよ、君は被害者だよと言いながらも気にしていてギクシャクして別れるケース。最後が無言で消滅するケース。
そう考えたら7割の男は被害者である筈の女を許せないのだとわかる。……そう考えたら、ルフィは中々に貴重な存在よね。
特に、それが2度、3度と繰り返して起きて居る事を思えば……そして、それが起きる前から警戒して気にしないで良いなんて言える男が……どれだけいるのか。そっと唇を離して私はその耳元に囁く。
「ねぇルフィ……。私ね、この傷を負った時、本当は死のうとしたのよ」
私の言葉にルフィがビクリと体を揺らしたから、その肩を押さえて自らルフィを中に埋め込んで行く。今、ルフィを逃がしてなるものか。
この傷と言っただけで、明らかに獣につけられたようにしか見えない傷だと即座に理解してくれた、ルフィの野生動物みたいな所が好き。感情の捌け口を探して足掻いてる状態でも、私を気遣ってる事くらい嫌でもわかるわ。
「……っ!……ふっ」
「ナミ……?」
自ら埋め込む事で自分に来る刺激を最小限にしていても、これだもの。どれだけこの体の感度は高いのか。
気遣うように名を呼ぶルフィを見て、そっと微笑む。そんな私にルフィは戸惑いを隠さない。
「逃がさないわよ。良いから、聞いて」
「……おぅ」
とりあえずルフィを半分くらい自分の中に埋め込んだ所で、私は色々な意味で限界だったので動きを止めて言葉を続ける事にした。それがルフィにはもどかしいみたいだけど、我慢してもらおう。
「犯されてる段階でね、死のうとしたのに……死ねなかったの。……死ぬのってね、案外簡単なのよ。なのに、出来なかった」
日本じゃあるまいし、人が溢れてる訳でも、無駄に医療が発達してる訳でもないこの世界では、本気になれば自殺しようとした人間を助ける事なんてほぼ出来ない。死ぬつもりだったのに、気が付いたら病院なんて事はほぼ有り得ない。
誰かに助けられる事を想定しての自殺未遂以外の、自殺未遂はほぼ成立しないのがこの世界。それでも自殺しようなんて人が少ないのは、簡単に命が失われる環境だから。
戦時中は自殺しようとする人間が少ないのと同じ事。平和な国程、自殺の希望者が多いなんて……皮肉よね。
「舌を噛もうとしたらね……ルフィの顔が浮かんだの」
「……俺の、顔が?」
「そうよ。身勝手にも私の体や命を私の好きにしちゃダメだって言われた時の事を、思い出したわ」
ルフィはいつの事なのか思い当たったようで、私の顔を見て小さく笑った。そして、多分その時の気持ちと今の気持ちに変化はないのだろうと思う。
人は変わる。変化して行く。
良くも悪くも。その中でも、ルフィのこういう所って変わらない気がするのよね。
「それで、死ねなかったの。私が死んだら、ルフィはどうなるかなって思って……」
「そっか……」
「まぁ、抵抗しきれなくて、犯されて傷だらけにされてるんだから、結局悲しませただろうし、心配もかけたと思うけどね……。でも……」
「ん?」
不思議そうな顔をしてるルフィがいて、ルフィに余裕が無いのも分かってて、こんな事言っていいのか分からないけど……でも……。私の体が震えて、ルフィが心配そうに私を呼ぶ。
「……ナミ」
ルフィの腕が伸ばされて、私の頬に指先が触れる。その手をそっと押さえるように自らの頬に触れさせて、私は息を吸い込む。
多分、今伝えなかったら後悔する。だって、2度とこんな事言えないと思うから。
「……〝帰りたい〟って、思ったの。ルフィの所に、帰りたいって……」
「ナミ」
「ルフィ……好きよ。大好き。私の帰る場所が、いつの間にか変わってたの。故郷じゃなくて、ルフィの所に帰りたいって……そう思ったのよ」
ルフィは私の言葉に嬉しそうに笑って、それから体を起こすと私の体を優しく抱き締めてくれた。その時のルフィの顔は見えなかったけど、嘆いたり怒ったりしてる雰囲気じゃないからそれはそれでいいかなと思える。
そっとルフィの頭を抱き締めた時、ルフィから小さくごめんと囁かれて、へ?と思った直後、私の足をルフィが持ち上げて私の体は垂直に落下した。即ち……隙間なく繋がる事になった訳で……。
押さえきれなかった悲鳴が私から発せられて、ルフィが小さく呻く。予想してなかったから理性で色々抑えるべき所が抑えられなくて、奥まで貫かれた形となった私は体に力を入れておく事が出来なくなった。
恐ろしい程に跳ね上がっている心拍数と、荒い呼吸に振り回されながら、へにゃへにゃとルフィに体を凭れさせたら、ルフィが私の頭を撫でながら悪びれも無く言う。
「嬉しかったのと、なんか、中途半端がやだったから落としてみた。……怪我は、大丈夫か?痛くなかったか?」
心配するところ、今は間違ってるから……!
「ルフィの、馬鹿……!も、ちから……入んない……」
「ナミ、悪い」
「なによ」
「今ので元気になった」
「……馬鹿なの!?どうして、そうなるのよ!?」
「ん?ナミが可愛いからだろ」
意味が……分かりません。誰か私に分かる答えをください。
「んー?」
「なによ」
「鍵閉めたら、ナミを〝好きに抱いて良い〟んだったよな」
その言葉により、確かに口に出した言葉であった為に、私は二の句がつげずにそのままルフィが満足する迄、その熱を受け止める事となる。でもその途中でルフィが時々暴走するように激しく動いたから……何度となく意識は遠のきそうになった。
いつもなら休ませてくれるような時も、容赦無く突き上げられて掻き乱される事で、やっぱりルフィが今色々抱えているのだと分かる。でも、だからこそ私は何も気付かない方が良いのだろうと言う事にも気付いてしまう。
ルフィから言い出すまでは、ただ受け止めるだけでいるのが良いような気がしているの。だから時々その頭を撫でて、私からキスをするに留める。
私に出来るのは、それだけ。そう思った時、ルフィが苦しそうに言葉を発した。
「ナミは……俺の、傍に、ずっと居てくれるよな……」
「物理的に不可能にならない限りは、ルフィにいらないって言われるまで、ずっと……傍に居るわ」
「……重いって、こと、初めて知った」
私はそれに何も言葉は返さずに、その頭を撫でる事にした。今ルフィは自分で乗り越えようとしてるから、私の軽い言葉では役立てないと分かる。
船長として、フラフラ出来ない。決断が必要だと思ってやったら、離反者を出した。
これから先への不安と、責任の重圧。ただ、仲良しこよしの船旅では無くて、私達は海賊だから……。
辛いだろうと思うけど、男のクルーには言えないとも理解出来て、ルフィをただ撫で続ける。泣いてもいいし、迷ってもいい。
間違えたら、1緒にやり直すから……。だから、独りにならないで……。
「ルフィ……」
「ん?」
「今は〝船長〟じゃなくて良いのよ。2人なんだから〝ルフィ〟として、私を抱いて」
「……甘やかすなってのに」
喘ぐようにルフィは言うけど、それは無理だわ。私はルフィがどうしたって可愛いのだから。
「それは無理よ。私、ルフィが愛しいもの」
「ナミ」
「大丈夫よ。ルフィはルフィの思うままに生きて、進んで良いの。私は何処までだって連れて行く。その為の航海士だから」
「ん……。俺の航海士は、ナミって決めてるから、離さねェぞ」
「うん、離さないで……。傍に、いさせて」
少しでも役立てているのならば良い。ルフィの縋るような行動が、なんとも嬉しく感じてしまう私は、クルー失格なのかもしれないけれど。
甘やかしてるのか、甘えているのか。そんなのはどっちでもいい。
ルフィが生きて、傍に居てくれる。そして、私も生きてルフィと共に居られる。
それが今は1番大切で、重要な事だから。考えるべき事も、やるべき事もあるけど、きっとこうして心の荷物を預け合う時間も大切だから。
「ルフィ……大好き」
「馬鹿っ!ナミを壊したりしねェように頑張ってるってのに!」
「……ルフィ?」
「あァ!クソ!どうなっても知らねェからなっ!」
顔を真っ赤にしたルフィに私はうんと言って頷いた。それから数時間後……朝がやって来た。
朝日が黄色く見える。ルフィの体力って、底無しなのかな?
「……ナミ、大丈夫か?」
「気にしないで良いわよ。私が誘ったと言うか、襲ったんだし」
「だから、甘やかすなって……。怪我、悪化してねェか?痛みは?……熱は、少し高いか」
ルフィの心配の仕方が何となく自分と似てる気がして、1緒にいると似るってこういう事かなと少し思う。だから、少し甘えてみる。
「そうね、シャワー浴びたいから、連れてってくれる?」
「わかった。その間にベッド直しとく」
「……ルフィが成長してる!」
「お前なァ……」
眉を八の字にしたルフィに可愛いなぁと思って抱きつけば、ルフィから優しいキスが降ってくる。本当に平和な時間だと思う。
シャワーを終えて戻れば体は多少ふらつくけど、他には特に問題も無いからと傷の手当をして行く。チョッパーの言っていた通り、肩の傷はもう跡も残って無くて凄いなと感心しつつ治療していけば、ルフィが背中はやってやるから大人しくしとけと言い出す。
それに頷いて任せれば、昨夜のそれが奇跡ではなく本当に出来るのだと知らされて、内心で拍手喝采している私にルフィは言う。
「着替え、適当に出しといたから……ゆっくり着替えて来いよ。それと、雑炊ありがとな。美味かった」
ルフィからのお礼が何だか少し気恥ずかしく思えて、素知らぬふりをしてみせる。だいたい、私からだなんてそんな証拠はどこにも無いのだから。
「……雑炊?何の事かしら?」
「なんも知らねェ酒場のオッサンが俺に5人前持ってくるかよ。んで、そんな事に気が回るのは、ナミ位だ」
そう言って包帯を巻き付けてから、ルフィは私の頭を軽く叩いて部屋を出て行く。それを見送り、ルフィの用意してくれた服を見ると大きく3と印字されたキャミソールとミニスカートで……この組み合わせってと小さく笑いながら、私は着替えを終わらせた。
どんな服を誰が着てたとか、そんな事を覚えてなんか居なかったけど、こうしてそれを見れば案外思い出すものね。何が起きるのかは分からないし、覚えてないけど、とりあえず平和ではない1日が始まるのだけは、間違いなさそうだと微かに笑ってしまった。
もうすぐ我が家にクーラーが設置されます!おめでとう私!