少し落ち着いた所で、この場にいるメンバーで情報交換をしようと言う話になり、それなら何か飲み物とか買って来ようかと提案したらルフィに抱き着かれて阻止された。どうしたのかな?
ルフィもゾロも手配書があって買いに行けないから、私が行くのが1番自然だと思うんだけど……。甘えたいだけかな?
「ルフィ、お腹すいてないの?」
「なんか、ナミを1人にしたくねェ」
「同感だ」
「俺はナミに大人しくしてて欲しいぞ!……俺が買ってくるよ。ルフィもゾロも手配書出てるもんな。ナミを休ませててくれよ!」
「「おぅ!」」
その会話が何だか私だけ置いてきぼりな感じがして、少し膨れていたけど、そうしていてもいい事は無い。なのでとりあえずルフィの食事代は安くないからと言って、チョッパーに買い出し用にお金を渡せばじっと見詰められた。
可愛いけどどうしたのかなと思ったら、船の経費だよななんて聞かれた。だから素直に、自分のポケットマネーだと答えたら何故か思いっきり呆れたような視線を向けられる。
無言のままにチョッパーが降りて行くと、ルフィが私に寝てろとか言うので、膝を少し借りる事にしたけど……寝られる訳があるかとか内心で呟いてしまう。そうしていたら頭をルフィが撫でて来て、それが妙に気持ちいい。
髪を弄るルフィの指先が、私に優しく想いを伝えてくれるような気がする程に、繊細な動きをする。かと思うと時々悪戯して来るから、やめろの意味でルフィの腰に抱き着いた。
するとルフィがウッと言って動きを止めたので、ウソップとも戦ったし私と動き回ってた間に腰でも痛めていたらしいと判断する。それが少し心配でルフィの顔を見るために頭を動かしたら、ルフィが呻くように言葉を口にした。
「ナミ、頼むから頭を動かすな。流石に連続攻撃はキツイ」
「ルフィ……?」
どうしたのかなとその様子に思って名前を呼んだら、少し舌っ足らずな感じになった。どうやら私の体は既に眠る気満々らしい。
「だいぶ寝惚けてるし……!橋からの2連続かよ……」
「ルフィ、まァ……頑張れよ」
そんな会話が聞こえる中で私がウトウトし始めると、ルフィとゾロの会話が聞こえて来た。それは何処か気遣うような声も含まれていて、少し胸が痛くなる。
「ナミは、1人だと寝れねェんだったか?」
「昔はそんなん、無かったけどよ。アーロンのせいだろうな。食事も、鎖も、ナミには変な癖無かったんだ」
「なんだ、虫は昔から駄目か」
「あァ、虫は駄目だな。だってよ、クワガタをゴキブリって言ったんだぜ!?」
「……まァ、嫌いな奴にはそう見えるだろうな」
2人の会話は私の事を話してはいるけど、何だか普通に雑談な感じがして不思議に思う。そんな中で私の意識がふっと落ちた。
それからどれくらいの時間が経過したのかは分からないけど、夢も見ないでいた私は体を強制的に動かされたような気がした。その直後、どうやらチョッパーが帰って来ていたようで、声を掛けられた事で目覚めた私はゆっくりと体を起こす。
「少しは眠れたか?肩は大丈夫そうだけど、背中とか酷いんだから、無理すんなよ。……熱、低いな」
額に手を当ててムムっとしたチョッパーがルフィを振り向いた。そして何故か、私にではなくルフィに問い掛ける。
「ルフィ!ナミまさか鎮痛剤勝手に飲んだか?」
「よく分かったな。飲んでたぞ!」
「ちょ!ルフィ!」
慌てる私にチョッパーがギロりと視線を向けてきた。こ、怖い……。
「……解熱効果のないやつを渡しとくから、そっち飲んでくれよ。低体温症になりかけてる。……さっき水にも落ちだだろ。体力も消耗し過ぎてる」
それからチョッパーに叱られつつ食事をしたので、味をよく覚えてなかったりします。はい。
食事をしつつルフィがそう言えばサンジは?と問い掛けた事で、私はチョッパーのお小言から解放されたけど、チョッパーの言葉にルフィが怒鳴るようにして確認するから、チョッパーは少し威圧されてしまう。
そんなチョッパーを抱き締めて庇えば、ゾロから胡乱な視線を向けられたけど……気にしないもんねー!だ。チョッパーが可哀想じゃない。
そう思って抱き締めていたら、チョッパーも私に身を預けてくれる。本当にそれが可愛くて、お互いにくっついていたらゾロは呆れたように私とチョッパーを見てから、低く言葉を紡ぐ。
「全員覚悟はあった筈だ。仮にも〝敵〟として現れたロビンを船に乗せた」
前半は私とチョッパーを見て言葉を放ち、後半はルフィを見ながら言ったゾロは、黙ってる私達を順に見てから言葉を続けた。その間ルフィは何も言わない。
「あの女は〝敵〟か〝仲間〟か」
チョッパーが伝えてくれた言葉は、事態がもっと悪化する事を示す物だった。私の見たそれの通りならば、ロビンは私達を〝生きて次の島へ無事に到着〟させる事が目的。
ロビンが敵ではないと確実に言えるのは、私はその〝知識〟があるからで、だからこそどう説明したら分かってもらえるのか分からない。年長者だからなのか、それとも踏んで来た場数の違いなのか、ゾロがこの場のまとめ役と進行役を1人で担ってくれている。
「ロビンが目論んでるのは、市長暗殺ね」
「そう考えるのが妥当だろうが、誘き寄せる罠とも考えられる」
「ゾロ」
思わず睨めばゾロは軽く首を横に振る。そして刀に指を掛けた。
「俺はどっちにも揺れてねェ。どちらかに揺れていたら、逆だった時に出足が鈍っちまうからな。それに……」
そこで言葉を止めて、ふっとゾロが笑った。その視線は何故か私に向けられていて、意味が分からないと思う。
チョッパーは私とゾロを交互に見つめ、私を庇うようにゾロを睨んだようで、ゾロが苦笑した。そして、私を真っ直ぐに見据えて、言葉を紡いだ。
「ナミの時に、あんなにもわかりやすく俺達を庇ってたのに疑っちまったからな。これでも、反省してる」
「ゾロ……」
「ナミはあの時俺とウソップは助けたのに、ルフィの事は突っぱねた。……あの頃から、ナミが〝甘えられる相手〟はこの1味の中じゃルフィだけだったんだろ。そのナミが今、全力で信頼しているロビンが敵だと判断するには、少しばかり無理がある」
ゾロの言葉に私は少し動揺する。でも、ゾロは更に言葉を続けた。
「それでも状況的に見れば、ロビンの行動は〝黒〟だ。だがな……ナミよりも長くそうやって生きて来た女だから、1概に言えねェってのが正直な所でもある。それでだ、ルフィ……事が起こるとすりゃ今夜だ。〝現場〟へは?」
「行く」
現場へ行く事のリスクと、これ迄に〝普通〟に集まってる情報から導き出せる事を伝えれば、チョッパーはそれに反応して、仮面の奴に悪い事させられてるんじゃねェのかと言ってくれる。それを受けてゾロはそれが吉で、凶はロビンが最初からそいつらの仲間だったと言う話をする。
体が、緊張と恐怖で小さく震える。だけどこのままでは何も出来ないからと、私はルフィに最終的な決断を促す為に問い掛ける。
「私達の目的は何?」
「ロビンを、捕まえるんだ!」
迷いなくルフィは言葉を口にすると、食べかすやらを払いながら立ち上がる。そして、立ち上がりながら言う。
「じゃなきゃ、なんもわからねェよ」
「だがよ、世界政府が20年捕まえられねェんだろ?」
ゾロの言葉に、けれども他に手段は無いしチョッパーもヤル気になってる状態で私は声も出せずに頷くばかり。そんな私達にルフィは言う。
「じゃあ、行こう」
強くなっている風が帽子を飛ばさないようにルフィはそれを押さえて、前を見る。私はチョッパーを離して、後に続く為に立ち上がった。
私達は揃って
「ナミ、この位置ちょっと遠いぞ!」
「腕伸ばして飛んでいけば良いじゃない。……騒ぎが起こってからね!」
「確かに、こっちが先に騒ぎを起こせばそれを利用されるだけだ」
そんな会話の中で、チョッパーが望遠鏡で本社前を見て少し怯えた様子を見せる。それが何だか癒し効果を私に与えて、少しだけ気持ちが楽になった気がした。
その時、ゾロが私を睨むように見て来たからどうしたのかなと思って首を傾げると、低く唸るような声で問い掛けられた。
「ナミ、お前こうなる事をいつから知ってた?」
「え?」
「お前、時々頭痛で倒れるが……何か見てるだろ。未来か何か」
ゾロの言葉に背筋を冷たいものが走る。でも、慌てないのよ私。
確証は無いし、私は悪魔の実の能力者じゃないもの、誤魔化せる筈よ。落ち着いて、知らぬ存ぜぬで通せばいい。
「何言ってるの?頭痛は頭痛よ」
「ナミは、驚いた時や想定外の事が起きた時〝へ?〟とか〝ふぇ?〟とか〝え?〟といった1音から2音程度の声で反応する。だがよ……知ってるとナミはその声を出さねェ」
「……っ!」
「声を詰まらせた時は、それはだいたいが、合ってる時か、その先どうするか考えてる時、他は言いたい言葉を飲み込んだ時だ。そして、無言でいるのは、その事を知ってる時と考え事をしている時。……ナミお前、未来を知ってて、黙ってたな?」
どうしよう。どうしたらいい?
確信的な様子で紡がれる言葉に、私は明らかに動揺してる。でも、そうよ、いくらでも言い訳は出来る。
「……未来なんて、見えないわ。私は悪魔の実の能力者じゃない。知ってるでしょ」
「それは、知ってるけどよ。確かにナミはたまに、未来見てるとしか思えねェ行動とるよな」
ルフィがゾロに賛同すれば、チョッパーまでもが頷く。でもね、今回の件はルッチさんでさえ納得させた言い訳があるのよ!
いつまでもベックに手玉に取られてた阿呆な私とは違うのよー!って、ベック相手なら誤魔化せる自信は今も無いけどね。
「ロビンが姿を消すのは、未来を見る力なんかなくても予想してたわ。ここは、政府の要塞に近過ぎるもの」
「どういう、事だ?」
チョッパーの問い掛けに、青雉と会った直後であり、エニエス・ロビーまでこの島から電車1本で行ける事等を列挙するとゾロの表情が変わった。それから推察と予測が立てられたのだと話したら、敵は政府かよとゾロが嫌そうな声を出した。
それに頷いて私は本社に視線を向ける。誰かを見ていたら、視線の揺らぎで作り話だとバレそうだと思ったから。
「私は、いつも〝最悪の状況〟を想定しているの。その想定は、点として入る情報を線にした上で、考えうる限りの物。……それが違っていればいい。最悪のそれに対応できるように、想定してるのだから」
「確かにな」
「最悪より1つでもマシなら、応用も利く。でも、そもそもの得ていた
そう言って笑った私に、ルフィがふぅんと言ったので、視線を向けると、少し黒い笑みを浮かべたルフィがいて、ゾクリとする。この表情をしたルフィは、少し厄介なのよね。
「……それ、仲間の為にしかやってねェって事だよな。だから、いつもナミだけが被害者になる」
それか。そっちで怒ってたのか!
やだどうしよう、怖いけどその顔好きです。そんな事を考えていたら、ゾロが突然私の頭を軽く撫でて来た。
「……変な事言って悪かったな。確かに未来が見えてんなら、敵に捕まる訳ねェよな」
「そう、ね」
うん、見えるの原作だけだから、原作を変えようとしてる私に関する所は見えないのよね……。でも、見えてたら何か変わっただろうか。
そう考えて、変わらなかったかも知れないと思う。特に、ドフラミンゴとミホークに関わる所は変わらない気がした。
他はルフィとか、ゾロとか、サンジ君に傍にいてもらっていたら、助けて貰える可能性もあるけど……七武海とか四皇が相手じゃそれはまだどうにもならない。寧ろ被害が大きくなる可能性が高いから、結局は同じ道を選んだ気がする。
だとしたら私は、自分の未来を知っていた場合今の状態より悪い事になっていた可能性もあるわねと少し思う。そうなると、生きていたかも微妙な所よね。
これ以上、誰の負担にもなりたくない。そう思って顔を上げたらルフィが私を見ていて、困ったような顔をした。
「あんまり考え込むなよ。ナミがなんか1人で考えると、碌な事しねェからさ」
「……なによ、それ」
「ナミは、自分を鑑みない作戦しか立てねェから、結局ナミを助けたい奴らが全ての計画壊すだろ。そんで、最悪の事態になる。だったら周りに言っとくか、自分も守れる計画立てろよ」
言われてから思い返せば、確かにその通りかも知れないと気付いてルフィを見る。ルフィなのに、なんか賢そうな事を言ったわ。
「ナミお前、今シッケーな事考えてんだろ!お前そういうのだけは顔に出てんだよ!お前、俺の事馬鹿だと思ってるな!?」
「根本的には考え無しの無鉄砲だもの、そう思われて当然じゃない」
「酷ェ……」
思わず本音を零せばルフィがいじけてしまい、それを宥めていたらゾロとチョッパーが楽しそうに笑った。でも、この時私の脳裏には、アーロンに襲われたあの日の事が鮮明に映し出されていた。
あの日、ルフィが言うように私がもっとちゃんと説明していたならば、少なくともアーロンを討ち取って皆を奴隷にしなくて済んだんじゃないかなって、思えるから。これ迄は何度やり直せても同じ事をすると思っていたけど、ルフィの言葉を受けて、やり直せるなら……皆にも協力してもらうだろうなと、初めて思えた。
暗い思考の中でいじけるルフィを宥めつつ、どうやらこれで、未来がどうとかは何とか誤魔化せたらしいと、私はホッと息をついた。風は、1段とその強さを増している。
こちらに掲載するために確認していたら、誤字脱字がやばい事になっていて焦りました。「市長」は「視聴」だったし、「ゾロ」は「ぞ」だったし……。