そんな時目覚めたパウリーが、私達に協力するように船大工達に言ってくれる。パウリーが目覚めた事が分かった瞬間に、怪我が心配で駆け寄った私にパウリーは少し視線を反らしたと思ったら、耳迄赤くして叫ばれてしまった。
「ハレンチ娘、あまり無防備に近付くな!っとに、足も胸も丸見えだろうが!」
普段より露出少ない方だと思うのよ、私?
焼け焦げて何も着てないとかでなし、アーロンに引き裂かれて下着丸出しの時とも違うし……。何が問題なのか分からないわ。
今の流れではちょっと言い出せなかったけど、そんな私とパウリーの言葉に船大工達は微かに笑った。いつもの空気を感じたのかも知れない。
けれどもその直後に、船大工達はパウリーに抗議する。暗殺犯に何故、協力しないといけないのかと船大工達は言うのだ。
実際、私やチョッパーが麦藁の1味である事は変わらないし、私はそれを恥じ入るつもりもない。そんな時にパウリーは暗殺犯は別に居て、ルフィ達に守られたのだと言ってくれた。
それにより私達に船大工達が協力してくれる事となり、少しだけ肩から力が抜ける。人探しは、人海戦術が1番確実だから。
「おい、ハレンチ娘!」
「その呼び方……!」
「駅に行くんだろ、案内する」
パウリーからの呼び方に抗議すれば、続いた言葉に確かに駅の場所知らないと気付かされる。だから私は、それに素直に頷いた。
「えぇ……!ありがとう」
そんな私達のやり取りの中で、戸惑いの声が谺して行く。波紋のように広がるその戸惑いは、やはり協力など得られないかと息を吐くのには充分な状態。
初めからチョッパーと2人の予定だった。それにパウリーが加わってくれただけで、御の字だと言える。
そう思ってチョッパーに行こうと声をかけたのが早かったか、それともパウリーが叫んだのが早かったか。いや、叫んだとは少し違うかしらね。
「ゴチャゴチャ言ってねェでケジメつけろ!ガレーラの名を折る気か!!」
パウリーが突然怒鳴れば全員がシャキンとしてヤガラを出せとか、協力すると言ってくれる。それに私は自然と笑顔になり、チョッパーに視線を向けた。
チョッパーもまた嬉しそうに笑い、私は方角を書いた紙をチョッパーに渡してパウリーの後に続く。チョッパーが頑張って探すからなと言ってくれて、私はお願いねと叫ぶように答えた。
私がヤガラちゃんに乗り込む瞬間、パウリーが小さく舌打ちしたと思ったら同じヤガラちゃんに乗り込み、事もあろうに私を自らの膝に乗せた。何が起きてるのかと思ったら、動くなと言われてしまう。
ヤガラちゃんを操縦しながら、パウリーは言う。
「体から力抜いてろ。飛ばすが、落とさねェように支えていてやる」
「どうして……」
「そりゃ、こっちの台詞だ。……どうして俺達を庇った。俺は……実際の所戦いにもならなかった。お嬢ちゃんは、俺達を庇わなきゃもう少し戦えただろう」
言いながらもパウリーは、ヤガラちゃんを本当に恐ろしい程の速度で動かしてくれる。それにより少し体から力を抜くと痛みが身体中を駆け巡り、1瞬呼吸を忘れる程。
どうして、さっき薬飲んだのに……!
「体が緊張していて気付かなかった痛みが表面化してるだけだ。着いたら起こしてやるから、数分だが寝てろ」
「パウリー……なんで……」
「体使う仕事してんだ。動き見りゃ状態はわかる。……話は後だ。……麦藁の代わりにはなれねェが、今度は俺に守らせてくれや」
妙に優しい声だと思った。そして、片手で私の目を覆うようにするから、体をパウリーのそれに預ける形を取らせてもらう。
ありがとう、少しだけ……休ませてもらうわ。
それを言葉にできたのかは、分からないけど……仲間や家族以外の傍で眠れたのは、随分久しぶりな気がする。ふと意識が浮上すると、時間を教えてくれるパウリーに、ありがとうと言ってまた眠るのを2分おき位で繰り返していたら、そんなに心配かと呟かれたけど……当然である。
ロビンは、私達の大切な仲間で、私の他では唯一の女のクルーで……親友なのよ。ロビンの傍なら安心して寝られるし、ロビンとならば自然と笑える。
ロビンもまた、私の側に居ると安心できるのだと、そう言ってくれてる。これが依存でもなんでも構わない。
私にとっても、ロビンにとっても、互いに互いが大切な存在なのは間違いないのだから。1人で犠牲になるなんて許さないわよ、ロビン。
だからどうかまだ行かないで。必ず守るから、だから……1緒に生きて。
駅が前方に見えた時、汽笛の音が聞こえた。気のせいであればとパウリーを振り向き尋ねれば、天候を見て早めたのかも知れないと言う。
巫山戯ないでよ!!もう少し、もう少しでロビンに手が届くのに……行かないで、ロビン!
陸が見えた所でヤガラちゃんにお礼を言って、剃で駅へと突進する。体に痛みなんて、何も感じない。
今感じるのは焦燥感と、胸の軋みだけ。遅い、私の足、早く動け!
「ロビン列車を降りて!私達は誰とでも戦うから!」
ロビンが世界と私達を天秤にかけて私達を選んだように、私達もロビンの為に世界と戦えと言うのならば、戦ってみせるから!だから……!
ホームについた時にはちょうど出航したタイミングで、足から力が抜けて私はその場に座り込んだ。……どうして、私はいつも……何も出来ないの……?
後から来たパウリーが心配そうに声を掛けてくる。駅員の視線も感じる。
でも、立ち上がる気力さえ湧かない。だって、ロビンはもう、海列車で出発してしまった。
「泣いてんのか、まァ、その、気持ちは……」
「政府の馬鹿共めー!ロビンを返せー!」
心から叫ぶ。だって泣いてもロビンは帰らない。
取り返せなければ、ロビンを喪う。喪えば2度とかえる事は無い。
そんなのは嫌。私はロビンを必ず奪い返してみせる。
どんな海でも船があるなら超えてみせる。私は航海士……その為に存在してるのよ!
だから振り向いてパウリーに願う。船を貸してくれと。
それをパウリーが止めるけど、止められて止まるようなら私達は海賊になんてなってない。仲間を見捨てるような人は、麦藁の1味には存在しない!
「私が航海士として1緒にいて、沈ませる訳無いでしょ!?何年航海士やってると思って……っ!?」
言葉の途中でパウリーに抱き上げられた私は、声を飲み込むしか無かった。移動させられた先で下ろされるまで、私はただ、襲い来る波の威力に呆然としつつ体に触れられた瞬間に走った痛みに声を抑える事しか出来なかった。
この規模の波が何度も……。確かにそんじょそこらの船では壊されて終わる。
でも……私達は、喪えないのよ。ロビンを喪う訳には行かないのよ!
全身ずぶ濡れになりながらも、助けてくれたパウリーに礼を言ってから私は立ち上がる。考えないと、ロビンを助ける方法を考えないと……。
「ハレンチ娘!待て!」
「ロビン……」
「っとに、調子狂うな。……葉巻臭ェのは、我慢しろよ」
「え?」
「濡れて、血が滲んでる。気付かれたくねェだろ。着とけ」
そう言って上着を貸してくれたパウリーを見上げた時、突然知らない人に名前を呼ばれた何事かと思って話を聞けば、手紙が置いてあったと言う。そんなもの良く見つけたなと思いつつ、置いてあった場所に案内してくれるのに着いて行き……アホはアンタよ、サンジ君!!と、心から思った私は多分正しい。
上着に袖を通させてもらいながら、ペンキでデカデカと男共はアホだから読まんでよしと書いてある物を見付けたのだ。他に書いてある物により、私の名前が恥と共に知れ渡ったのだと知る。
この1味の中では、まともな方だと思ってたのに……!
アホがいる。阿呆が居るわ!
ロビン、早く戻ってきて!私1人じゃ耐えられない!
そう思いながらもとりあえず手紙を読む。泣いてる暇なんて無いわ。
ロビンこそ、今きっと泣いてるから。心で……泣いてるから。
とりあえず気持ちを引き締めて、良いように解釈してみる。警戒心の塊になっていても、これが偽者からの手紙だとは絶対に思わなくなるから、あえてこういう伝言方法を取ったのかも知れないわ。
そうよ、サンジ君は賢いんだから。公式ではナミちゃんよりサンジ君の方がずっと賢いのよ!
手紙の中は大半がラブレターで要領を得ない。暗号文になってるのかなと考えて、そんな事して伝わらないリスクを思えば何処かに普通に書いてある筈だと気付く。
だって私もそうしたし。前半のところを読んで、読むの止めたくなるような事を書くのがある意味で1番効果が高い。
だからと思ってその先へと視線を向ける。それにしても、文字が綺麗だわ。
「……何が書いてあるんだ?」
「待って、前半無駄なラブレターだから……」
凄いわ。きっとこれなら誰もが読むのを止める。
サンジ君が私を好きとかって話をこんな時に、嘘なんじゃ無いかと思わされるのよね。誰にでもこうなるんじゃないかって。
実際ロビンに対してと私に対しての扱いに、差がないように思えるのも大きい。……私の方が弱いから、とか、そんな理由なんじゃないかなって……。
そんな事を考えていた矢先に見付けたのは追伸から先。そこに必要な事が書かれていた。
『海列車にロビンちゃんを確認したので俺も乗り込む。それと袋に詰められたリーゼントのでっかいチンピラとウソップも積み込まれて行くのを確認した。海列車にも電伝虫はいると思うので早めに連絡する。なので町で手に入れた、その子電伝虫を持っていてほしい』
その先にも何か書いてあるけど、やっぱり必要のない物だから、サンジ君は隠す意味で書いたのだとわかる。良かった、サンジ君がロビンの傍に居てくれる。
私はそこに来て漸く内容をパウリーにも伝える。それから子電伝虫を受け取り、チョッパーと合流する為にヤガラちゃんに乗り込んだ。
その時駅員の2人に食料と酒を中心に、食料をありったけ仕入れて来て欲しいと頼む。それと甘い物があればそれも多目にと。
渋る2人の駅員さんに困り、膝に手をついて少し前屈みになった状態で呼吸を整え、もう1度頼む。お願いと。
その瞬間2人が元気に駆け出してくれたので、流石はナミちゃんの肉体。可愛いってお得ねと思ったら、突然後ろから頭を殴られた。
「誘惑してんじゃねェ!まだまだお嬢ちゃんな癖して!」
「パウリーがイヂメタぁー……。ナミ、悪い事してないのにぃ……」
泣き真似してやればパウリーが本気で焦った様子を見せるので、揶揄うのを止めてチョッパーと合流する為の移動に専念する。そう言えば今のを幼い時にやったら、効果なかったななんてどうでもいい事を思い出した。
私なら幼い時のナミちゃんにやられた方が威力あると思うけど、世の中の男は違うのかしら?
それともベックが強敵すぎただけ?
それからチョッパーを探し出すのには苦労しなかった。何せ大声を出しながら移動してくれているから。
見つけてくれと言ってるようなものだものね。それにしても、ルフィとゾロは何処まで飛ばされたのかしら。
ロビンと殺さないと言う約束があっても、海に落ちてしまっていたり、水路に落ちていては事故死になる。……本当に、心配だわ。
今日からクーラーのある生活です。ひゃっほい!