目覚めた私は体を起こしてみて、動ける自分に少し驚く。……物凄い回復速度だわ。
そんな私に皆が声を掛けてくれて、この先の行動について話し合う事になった。何せ荷物の全てを、アクアラグナに持って行かれてしまったのだから。
「
「預けてあるって、何処にですか?」
サンジ君の声に視線を向けてから、話してなかったかな?と少し思い出す。いつかルフィに必要になった時とかにと思って居たそれ等は、使い道だって定まってなかった。
空島の金塊から手に入れた額には及ばないかも知れないけど、何も無いよりはずっと良い。どうにかなると言うか、するしかない。
「出版社に。書籍の売上の半額預けてあったから、それ持って来てもらうように手配するわ。それを使えば、新しい船も中古なら買えると思うの」
私の言葉にロビンが柳眉を歪めて、それはナミのお金よねなんて言う。サンジ君やゾロもそれに頷くから、笑ってしまう。
「私の全てはルフィのモノよ。ルフィが進む為に必要なら迷う事ないじゃない。……でも、船の関連はルフィが起きてからじゃないと。だからとりあえず今は、最低限必要な物だけ各自買いに行きましょう」
「……俺も刀がな」
「アクアラグナにやられて刀とか売ってるか不安ね。……刀買えるだけ持って来させられるかも、すぐだと分からないし。ちょっと待ってて」
そう言って窓の所で鳥笛を吹いて、クーちゃんを呼んで事情を話すと百万ベリーをポンと手渡された。いや、羽だけど。
それに対して1部返却の書類にサインを求められたので、それに頷いてサインすると追加で頼むかもとだけ伝えておく。それにクーちゃんは笑って飛び立つから、それを見送ってから皆の元へと戻る。
そう、実は刀って結構高額で、それもゾロの求める物ってなると中々ね。でも、二刀流じゃゾロの強さは半減しちゃうからどうにかしないと。
「という訳で百万ベリーが今の軍資金ね。これを元手に最低限の所は揃えましょ。大きい物はルフィと相談して決めないと」
「……ウソップがナミの金銭感覚終わってるって言ってたのなんか、わかった気がする」
チョッパーがそう呟いて、私が首を傾げるのと同時にゾロはとりあえず刀を売ってるかと、金額確認して来るから足りなければ貸してくれと言う。それに笑って頷くと、食料はアイスバーグさんからお金が出ると言われているから大丈夫だと言われた。
なので、残るはチョッパーの医療品とロビンや私の備品だと言う話になった。それなら私は少し、別行動してもいいかしらね?
「私、アイスバーグさんに話しておきたい事があるから、ロビンにそこ任せたいんだけどいいかな?」
「構わないわよ」
「ロビンちゃんを買物に!?危険だ!」
「俺が1緒に行くよ。今度はちゃんと連れて帰るから!そうしないとナミ困るだろ?」
心配して騒ぐサンジ君をチョッパーが宥めてくれて、私はそれに笑うとロビンに全額渡すのもアレなので半額渡した。それからロビンにチョッパーの必要な物も合わせてそれでどうにかして欲しいと頼む。
残りはベッドサイドに用意してもらってる、サイドボードの中に片付けておく。それを皆が見てたのは分かってるけど1応言葉でも伝える。
「必要なら使って構わないから、使ったら報告して。また取り寄せるから」
私の言葉に全員が頷いてくれて、サンジ君の料理を皆で食べようとしたらルフィがのそりと体だけ起こして来た。それを見て、寝てても食べられるように進化したのかと全員で呆れつつも笑い、ルフィへの食事作りが終わってからサンジ君は買い足しに出かける事に決まる。
ゾロは刀の販売があるかと、その金額確認へ。チョッパーとロビンは買物へ。
サンジ君はルフィが食事を終えたらその後片付けをしてから買物へ。ルフィは寝てるので今は除外。
ウソップはもうここに居ないし、フランキーも傍には居ない。私はアイスバーグさんと話しておくべき事があるので、何日も寝ててシャワー浴びてなかったから、浴びてからアイスバーグさんの元へと向かう。
ガレーラカンパニー本社兼アイスバーグ自宅〝跡〟仮設本社。そこへ私は足を進める。
私達に用意して貰った仮設住宅もそうだったけど、恐ろしく立派なのが現実感を奪う。これで仮設とか意味わかんない。
私達の部屋として用意された所には、二段ベッドが3個と、普通のベッドが2個、4人がけの丸いテーブルと椅子に、食卓テーブル8人がけを備品として用意してくれていた。私とルフィが普通のベッドを使わせて貰っていたけど、それは治療の為。
だから、二段ベッドもロビンとチョッパーが1緒に使い、ロビンが上の段を使ってたのだ。チョッパーとサンジ君は出入りが多いから下の段で、ロビンとゾロが上の段。
余ってる形になってるベットに、私はそろそろ移動かなと思ってる。だけど、ウソップが帰ればウソップがそれの上の段を使うとか出来るしなんて考えてた。
けど、ルフィが治れば絶対上の段で寝たがるわよねなんて思う。そうなると私は1段のベッドをこの先も使う感じかしらね。
そんな風に1人で納得しつつ、本社に入れば何も言ってないのに船大工達がアイスバーグさんの元へと案内してくれた。本当にメリーの恩恵ね。
「失礼します!」
船大工が先に中に入って少し会話してから私に入るように言ってくれたので、入室してみると中にはフランキーもいて、あら!と思わず声が出る。
そんな私にフランキーも、お?なんて反応した所でアイスバーグさんがペンを止めて私に向き直った。
「ンマー、目覚めたか。死にかけたと聞いたが……」
「ウチの船医は優秀なので、ほぼ完治しました」
「それは良かった。……それで、どうした?食料の買い出しなら、金は俺の所に請求するように話を付けてあるが」
「それについてはありがとうございます。私はこの島について少し話をしたくて来ました」
私の言葉にアイスバーグさんは立ち上がると椅子を用意してくれて、座るように言われる。なんか、面接みたいで少し懐かしい。
それから私はこの島の地盤が沈みつつある事と、津波に弱過ぎる点を考慮して話をする。厳島神社の造り等を例に上げながら、波が来ても壊れない建築構造についての話もして行く。
その話を聞きながら興味深そうにしているのは、何故かフランキーもで2人の顔は職人のそれだ。流石は兄弟弟子と思う程にこんな時の顔は似てる。
そう言えば、怒った時の顔がココロさんとフランキー同じなのよね。気づいた時笑いそうになったけど。
「釘を使わねェ上に置いてあるだけって手法は確かに応用出来そうだな。俺も今調度この島をどうしたら浮島に出来るかと考えていたところでな。ンマー……情報助かる」
「こちらこそ助けて頂いています。航海士としての視点と、過去に読み漁った書物の知識のみで申し訳ありませんが、少しでもお役にたちましたら幸いです」
「お姉ちゃんは……船の設備で欲しいものとか有るのか?」
「お金もアクアラグナに持って行かれたから、あっても考えないようにしてるわ」
会話の途中出差し込まれたフランキーからの質問に答えると、良いから言うだけ言ってみろと言われた。なので私は、思いつく限りの皆が欲しがっていたものを伝えて行く。
そして、洗濯機と扇風機とクーラーが欲しい事と書斎が寝室とは別に欲しい事を告げれば、寝室が書斎になってたのがおかしいだろうがよと言われてしまった。……船の部屋数考えたら、仕方無いじゃない。
ついでなので、本棚には扉があると嬉しいと言えば、確かにリスキーだなお前らの船なんて言われる。それから宝玉である事に話は移行して、それが落ち着いた頃には書斎はどう足掻いても必要みたいだなとしみじみ言われた。
そうしていたらアイスバーグさんがパウリーに会ったかと聞いてきたので、素直に横に首を振れば心配していたと教えてくれる。確かに私も心配だったからと家の場所を聞いて、私は顔だけ見せてきますとその場を後にしたのだった。
この時私は完全に忘れていた。フランキーがこの先に進む為の船を……サニー号を造る予定だと言う事を。
そして、この世界に無かった洗濯機等が作られる事になるのだと言う事の重要性に、全く気付いてはいなかった。とは言え説明できるのは全自動じゃなくて、昭和のにほい漂う二槽式洗濯機なんだけどね。
実際プロはこの二槽式洗濯機を今も活用してる。自分で調整出来るから汚れ具合とかに応じて使い分けられるので、クリーニング店や美容室では全自動とかは使われてないのだ。
なので家電量販店に行くと、今でも二槽式洗濯機はちゃんと販売されてたりします。興味があれば探してみてください。
外に出てみれば既に日は傾き始めていて、早く行って早く帰らなきゃと思う。遅くなるとチョッパーとロビンが気が狂ったみたいに騒ぎそうな気がしたのだ。
崩れた町並みの為に少し不安だけど、多分合ってる筈。そう思いつつ教えて貰った家に程なく到着するだろう頃、背後から声がかかった。
「破廉恥女?」
「あら、パウリー。良かった、どうしてるかなって思って、顔見に来たのよ」
「……俺も、気になっていた。お前……ら、の様子が」
「話、今できる?」
妙な区切り方で話してたけど、体調悪いのかな。言うなれば殿を務めてくれてたのだから、大怪我してる可能性も充分に考えられるわよね。
「……俺の家が近いから、そこでいいか?」
「えぇ。あ、時間的に食事どうする?」
「何もねェから出来合いのもん買ってくか」
何か適当に作るという発想にならなかった時点でまさかと思い、つい言葉を音にしていた。それは、余計なお世話極まりない事だとは理解しているのにである。
「……調理器具はある?」
「あァ、1人暮らし始めた当初、挑戦しようと1通り揃えたからな」
揃えたけど使ってないって奴かと溜息を落として、温めるだけで食べられる物を少し作って行く事を決める。何とも心配だ。
気分はお母さんである。そうと決まればと、家にある調理器具や調味料を確認しながら、食べ物の好き嫌いを確認しつつ買い物をして行く。
「パウリー、彼女かい!?アンタに彼女!?」
「なんだその驚き方。俺も女経験くらいあるぞおばちゃん。それとコレは「彼女ならオマケしとこうかね」」
「彼女です。オマケして下さい「おい待て、オマケに釣られただろお前」」
何が悪いというのか。私は肉屋の店主からいくつかおまけして貰いながら、私はウキウキした気持ちで食材を買い込む。
その時パウリーは小さい時から……なんて話し始めた肉屋の店主にパウリーがおばちゃん辞めろ!辞めてくれ!と叫んでいて何だか可愛いなと思って眺めていた。
その後バツが悪そうにしながら、買ったものはパウリーが持ってくれたので手ぶらで家に向かって移動を開始した。
この世界は冷凍庫も冷蔵庫もあるから、スープと惣菜と冷凍食品作って行こうと決めただけ。難しい物は作らずに、簡単なものだけいくつか作り置きしとけば良いだけだものね。
「ガスコンに火を付けるくらいは自分でやってよ?」
「それ以前にお前、料理出来るのか」
「5歳から海で生き抜いてきたから、1通りは出来るわよ。先に味見だけしてね。薄味で最初作るから、好みに応じて味整えるわ」
「その見た目で料理出来るのか」
無礼者め。ナミちゃんも料理できたわ!
まぁ、イマドキ風な見た目だからそう思ってる人も多いのは知ってるけど、サンジ君が仲間になる前は私もナミちゃんも料理を担当してた事は知ってるのよね。ナミちゃんは有料だったらしいけど。
とりあえず……ルフィにだけは作らせないと決めてるけど。ルフィがエースの為にお粥作るって言って、物体Xを作った日をふと思い出す。
その時に恐ろしい現実を打破しようと作り方をいくら教えても覚えなくて、その後も全てを物体Xにしてしまったのだから、ある意味才能なのかも知れない。それともあれは幼少期だけで、今はもう普通に作れるのかしら?
案内されるままに部屋に入ると、思いの他綺麗で驚かされる。料理しない様子だったから、掃除もしてないのかと思ってたわ。
そんな失礼な事を考えていたのが伝わったのか、パウリーはその顔辞めろと言いながら奥へと1人で進んで行く。それに着いていく形でお邪魔させて貰い、キッチン用品を出してもらうと箱に入ったまま手付かずのそれを見て小さく笑う。
冷蔵庫には飲み物と出来合いのお弁当。それと酒。
冷蔵庫には氷が入ってるだけ。うん、なんか日常生活が見えて来たわ。
「勝手にいじるわよ」
「おおー、任せる」
待たせてる間とりあえずと思ってビールを渡して、2時間待っててと言うと素直に頷かれた。……よし、お婆ちゃん頑張るわ!
こうして私はパウリーの食料事情改善計画に動き出したのだった。その様子をパウリーがどんな事を考えながら見ていたかなんて、この時の私に考える余裕はなかった。