料理を始めた私は、既にパウリーの存在を失念していた。鼻歌を歌いながら、同時進行系でいくつかの料理を作って行く。
ヒジキとかはタッパーに入れて冷蔵庫。肉や魚は仕込んで置いといて、後で焼いたり蒸したりしてから冷凍庫に入れておくつもり。
野菜も茹でて水を切ってから、棒状に形を整えながらまた水を絞って、そうして冷凍しておくだけでお手製の冷凍ほうれん草等に出来るのよね。切って鍋に入れるか、切って皿に乗せれば良いのだからどうにかなる筈。
冷凍食品のカットほうれん草の、切れてないやつ自宅版って事です。自分でカットして使いましょう。
小松菜やキャベツは、芯の所が凍らせて解凍した時に変な食感になってしまうので、芯だけみじん切りにするか、芯が芯と分からないくらいの繊切りを作って、冷凍しておけば、こちらは生のままで保存可能。スープ作ったり、炒め物作る時に少し混ぜ込めば良いので、使い切れないで腐らせそうな時には便利な対応術だったりするのよ。
凍らせる時にポリ袋で1回分ずつに初めから分けておけば、冷たい野菜に触らなくて良いので、どうやって冷凍しておくかが使い勝手の善し悪しを大きく左右する。即ち、パウリーのそれをどうしたものかと繊切りキャベツ見て悩んでるという訳です。
キャベツは適当に対応してから、ご飯をたまに炊いてる形跡を見付けて、それならばご飯を炊く時用に雑穀を1回分ずつに分けたそれを用意しておけば、多少は野菜も摂取できるでしょと用意して行く。今日の分としてはトマトと豆、それに肉を使ったスープを用意しておけばいいかなと思う。
最悪朝スープだけでも飲んでくれたら、どうにかなるでしょ。ご飯にかけて、チーズ乗せて焼けばリゾットになるし……ただ、それやる時はご飯の為に味がぼやけるから少し自分で調整して欲しいけど、そこは期待できないだろうと分かってる。
そうして料理に夢中になっていた私が夜ご飯を作り始めたのは、作り始めてから1時間半程過ぎてからだった。そのメニューは、このウォーターセブンの特産とも言えそうな水水肉を使った物。
水水肉の生姜焼きと、先に紹介したトマトベースの水水肉のスープ。そして、中央にポテサラを置いた簡単シーザーサラダ。
それの仕上げを始めた頃にパウリーが落ち着かない感じで私の周りをウロチョロし始めたので、仕上げながら器を用意して貰った。それに盛り付けるとそのまま運ばせるという、通常なら暴挙とも言える行動をパウリーは簡単に受入れてくれる。
そのついでに作り置き用のそれらの味見をして貰い、そちらの味も調えておけば後は粗熱が取れるまで放置だ。帰り際にそれぞれ片付けて行けば多分1ヶ月は食事に困らない筈。
「美味そうだな……」
「そう言って貰えると嬉しくなるわね。箸とか小皿とかってどこ?」
「あァ……出すから待て」
「飲み物どうする?」
「……酒?」
「あァ……うん、解った。ビールならそろそろ冷えた頃だと思うわ」
なんか買い物してる時やたらビール買い込んでると思ったけど、冷蔵庫はビール入れだと思ってる口かと理解する。酒呑みは何故か1人で酒を呑むのを拒む傾向があるからと私もビールを貰う事にして向かい合わせに座る。
そうして缶のままで、簡単に乾杯とか言ってビールを口にした。グラスなんぞこんな場合は、単に洗い物を増やすだけで価値はない。
何に乾杯なのかは既に関係無いのだ。酒が呑めればそれで良し。
それが酒呑みという生き物なのだから。それから食べ始めれば、パウリーが驚きの視線を向けて来る。
「何?まさか不味かった!?調味料とか何か間違えてた!?」
「いや、美味い。想像してたのと違って、マジで美味い」
「……失礼な男ね。まぁ、良いけど」
そう言ってクスクスと笑えばパウリーは私から視線を外さなくなり、そのまま食事を進めている。何か顔についてるのかしらと少し気になるけど、私はとりあえずそれを食べて行く。
その食事の途中、パウリーが妙な事を言い出した。それに対して、私は質問の主旨を理解出来なくて首を傾げる。
「破廉恥女は……いつも無防備で楽しそうだが、なんだってそんな気楽に生きてられるんだ?」
「へ?」
「……初対面の時は、麦藁に守られてるだけの知恵袋的な存在なんだろうと思っていた。次に会った時は敵だと認識していたが、その時にはルッチに襲われて大怪我してたんだろう」
何を聞きたいのか分からないけど、私は嘘をつく必要も隠す必要も感じなくて素直に頷く。そんな私の目の前でポテサラを口に入れてから、それをビールで流し込むようにしているパウリーを眺める。
……ポテサラ、美味しくなかったかな?ハムの代わりに水水肉みじん切りにして混ぜ込んだんだけど。
「その次に会った時は、そんな状態なのに、敵だった俺やアイスバーグさんを庇い、気丈に立ち向かった。……強い女だと思わされたが……実際は違ったな」
「違ったって……?」
「ただの、強がりだった。……お前、相当な甘ちゃんだろ」
「私は、自分から強いとも弱いとも名乗った事は無いけど、世間のお嬢さん達よりは強いと自負してるわ」
何せ元々がナミちゃんだもの。中身が私なのは、残念極まれりって感じだけどね。
「……男の部屋に女が気軽に入るか、普通」
「え?パウリー何かするつもりなの?」
「そうだ」
パウリーの言葉に冗談キツいわと笑えば、パウリーは深い溜息を落とした。そんな様子に少しイラッとした私は、おかしくない筈よ。
無言で立ち上がると粗熱取る為に出してあった、作り置きのそれ等を容器の外から触って温度を確認する。いい感じだわとそれ等に蓋をして、それぞれを冷蔵庫や冷凍庫に入れて行く。
タッパーや袋に入ってる物を記入してあるので、後はそれぞれの食べ方……とは言っても、暖めろとか、刻めとかそんな指示だけど、それを紙に書いて冷蔵庫に貼り付けた。その時パウリーに背後から腕を伸ばされて、即座にそれを躱す。
そんな私にパウリーは猫みたいだなと言う。なんだって突然、私で遊ぼうとするのか。
「冗談は辞めて。私はパウリーが私を心配して気にしてたって聞いたし、私もパウリーの怪我とか気になってたから様子を見に来たら……別な意味で心配になって、余計な事しちゃっただけよ」
「スープはまだこんなにあるのか」
「えぇ、今食べたスープよ。作ってあれば、朝寝坊したとしてもスープ位はお腹に入れて行けるでしょ。人間夜は食べなくても、朝だけは抜いちゃダメなんだから!」
そんな私にパウリーはありがとうと言うから、もう冗談タイムは終わったのだと力を抜く。そして、食べ終わった食器を見てそちらに戻ろうとした所で突然声が聞こえた。
「ロープアクション!」
「ひぇ!?」
咄嗟の事で対応出来なかった私は、ロープで縛り上げられて身動きも取れずにいる間にベッドへと投げ落とされる。混乱しつつパウリーを見詰める私にパウリーは言う。
「何かするつもりだって言った男に、簡単に気を抜くな」
「な、によ、それ。素肌が晒されてるだけで赤くなるような男に、私をどうこう出来るとは思わないけど……まさか、女縛るのが趣味なの?」
「ロープを扱うのは慣れてるが、女を縛る趣味なんかねェよ!」
「なら解きなさいよ!私はルフィのモノで、他の男に興味なんて無いのよ!」
私の言葉にパウリーは顔を真っ赤に染めて、少し視線を反らした。こんな照れ屋がどうしようってのよ。
まったく……チェリーだと言われても納得できそうなウブさなのに、どうしてこんな阿呆な事をするのか。そう思っていたら、パウリーが突然私の身に付けている武器を器用に取り去り少し離れた所に置く。
「パウリー?返して、それは……」
言葉は途中で紡げなくなった。だって私を見るパウリーが、男みたいな顔してたから。
「ナミ、だったな」
「……そう、だけど?」
「万華鏡って、知ってるか」
「知ってるけど……?」
どうした。パウリーは頭でも打ったのか。
本気で心配になって来た私がパウリーを見上げていたら、パウリーはそれに疲れたような顔で、少し困ったような視線を向けて来る。万華鏡とかどうでもいいから、早く解いて欲しい。
無駄に上手く縛られていて、私の技術でも抜け出すのは難しいのよ。……脱臼してそれを元に縄から抜けるのは、時間は短縮出来るけど目の前に捕らえてる対象者が居る時にはリスキー過ぎる。
「お前は、万華鏡と似ている。……その時々で姿を変えるがどの姿も綺麗だ。その上で、触れられそうで触れられねェ」
「褒めても何も出さないから、解きなさい。この体が美しいのも、顔が可愛いのも変わらないし、知ってるわよ。今なら冗談で済ませられるから、ね?」
「悪いな……色々な姿を見て、それでも、どの姿も好きだと思わされた。止まれねェよ」
そう言ってパウリーは、身動きの出来ない私の衣服を器用に取り除いて行く。ここに来てどうやら本気らしいと分かれば、私にも考えがある。
まだ体力は戻りきってないけど、覇気を腕に纏えばもしかしたらロープを切れるかも知れない。そう思って落ち着こうとした私の肌に、パウリーの唇が触れる。
それに体がゾクリとして、冷静になんかなれなくなる。嫌だと思って、身を捩るけど覇気を纏えていない私のそれでは完全に無意味。
指が違う、舌が違う、唇が違う、嫌……っ!私はもう、ルフィ以外に触れられたくないのに……!
「いや、やめて……お願い、パウリーの前ではもう、素肌見せないようにするから!ね、辞めて!」
「素肌、見せろよ。全てを見せろ」
「やだやだ!止めて!もうやだ!」
「暴れると、肌が傷付くだけだぞ。職人のロープは刃物以外じゃ切れねェ。このロープで船を持ち上げられるだけの強度があるんだって事、考えれば分かるだろ」
そう言われたと思った直後に少し腰から下のロープが緩められて、それを利用して逃げようと足を動かしたらそれを掴まれて、大きく足を広げた状態で固定される。しかも固定する直前に、下着類も含めて布の全てを奪うと言う器用さ。
でも感心してる場合じゃない。どうしたら良いの。
羞恥心なんて感じてる余裕は無くて、必死で身を捩る。なんで、こんな事になってるのか全く理解出来ない。
「や……だ!もうやめて!パウリー!」
私の言葉を完全に無視して、パウリーは足の間に顔を埋めるからそれに悲鳴が出る。嫌だといくら言っても辞めてもらえず、それどころか弱い所を吸い上げるようにされてしまえば体は勝手に反応を示す。
「体は……抱いてくれと言ってるがな」
「言ってない!辞めて!」
「……ホント、気が強いな」
そう言いながらパウリーは自らのそれを取り出して、勝手に押し付けて来る。これまでだって、こんな事は何度もあったのに……どうしてかな、悲しくて胸が痛むの。
きっと、ロビンの元へ案内してくれたり、大波から助けてくれたり、共に戦ったから仲間に近い何かを感じていたのだろうと思う。でも、それだってサンジ君ともあったのに……それとはまた違う悲しみが胸を貫く。
パウリーのそれが容赦無く押し込まれて、体だけはそれに悦び反応する。でも、心が罅割れるように悲鳴をあげる。
「ぃゃ……ルフィ……助け、て」
思わず口にしたそれにパウリーがピクッと反応したかと思うと、直後に耳元で私に言う。その時パウリーの手は、私の腰をガッシリと押さえていた。
「男に抱かれてる時、他の男の名を呼ぶのは感心しねェな。破廉恥女……いい声で鳴け」
そうして始まったピストン運動に、激しい突き上げに……逃げたくても完全に上半身を縛られている。足も開かれた状態で固定されていてはどうにもならない。
いやだと悲鳴を迸らせても、パウリーのそれは止まる事なく、奥に熱いものが放たれた。それにより胸が確かに軋んだ。