お風呂上がりにチョッパーにお願いして私達は、早速穴を開けてもらった。これで明日からピアスを出来ると言われて、素直に喜び合う。
「もっと上等な石で、ピアスを作ってもいいんじゃないですか?」
「この石が持つ効果に惹かれて用意したのよ。ロビンの怖いマイナス思考発言治して欲しいもの」
「あら、自分を責めるのが趣味なナミには言われたくないわ」
それから私とロビンは見つめ合い、同時に吹き出すように笑う。それにサンジ君は嬉しそうに笑った。
「「だから、これでいいのよ」」
声を揃えた私達に、サンジ君は納得したように頷いて、小鳥の囀りはいつ聞いても幸せな気持ちになりますなんて言う。それにロビンは楽しそうに笑うから、帰ってきてくれたんだと心から思えた。
翌朝、いつもの様にシャワーを終えた私はロビンとお揃いのピアスを身に付けて、ドレスアップをする。脱衣所から出て皆にその姿を披露して見せれば、その変身ぶりに皆が言葉を失った。
ふふん……どうよ、素材が良いから超絶美人になれるのよ!と、内心でふんぞり返りつつ表面的には艶やかに笑う。
そして、稼いでくるわ!と力強く言葉を口にした瞬間、ルフィが気を付けろよなんて言う。それは何だか凄く苦しそうで、どうしたのかと私の方が心配になる程。
「クリマタクトと短剣は持ってくし、大丈夫よ。1人の方が騒ぎも起こされないし、逃げやすいから安心なの」
「ナミさん、俺が稼げたら良いのに……!」
「サンジ君は子供達をお願い。私、数日帰れないから……!お金だけは定期的に届けてもらうから、安心してね」
「ナミさん!」
感極まった感じのサンジ君が抱き着いて来ようとしてる事に気付かず、私はロビンの方へと体の向きを変えていて、傍で潰れているサンジ君を見て少し驚いた。でも今はそれよりも、ロビンなのよ。
「ロビンから貰ったこの宝石、本当に使っちゃって良いの?」
「誰の身も飾らないなら、価値はないでしょう。私もサーからくすねて来ただけだもの。気にしなくていいわ」
「ありがとう。3~4日で帰るから、それ迄お願いね」
私の言葉に皆も頷いてくれたから、私は戦場へと足を進めて行った。遊ぶ為、運が良ければ稼げるから、そんなんじゃないわ。
カジノとは、稼ぐ為の場所よ。計算して、読んで、考えて、金を得るの。
そう思って居たけど……泊められている豪華客船の入口で私は足を止めざるを得ない。招待状が無い場合は、手配書を含めて良いらしいけど、身元がわかる有名な誰かのパートナーとしてしか乗船出来ないらしい。
この島の人達の半数程はその招待状が配られているらしくて、でも被災した人達からその招待状を盗むのは良心が咎める。どうしたら良いかしらね……。
忍び込むか、それとも適当にパートナーになってくれそうな男を探すか、よね。でも、今はまだ日が完全に登ってはいないとはいえ、こんな時間帯では忍び込むにはクリマタクト便りだけど、入ってからの事を考えたら本当に困ってしまうわ。
その時肩を叩かれて振り向くと、そこには想像していなかった人物が立っていた。視線だけでどうした?と問い掛けてくれるその人物に、私は何も考えずに飛び付いてしまう。
「シャンクス!ちょうど良かった、あのね、私あの船に乗りたいの!」
「……俺にパートナーが居るとは考えねェのか?」
「え?いるの?シャンクスって女買うけど恋人作らない主義だと思ってたけど。……それなら、仕方ないわね。私、やっぱり適当にパートナー探すわ」
そう言って離れようとしたら、腰を抱かれて動けなくされた。何よっとシャンクスを睨めば、他の男ってのは許せねェななんて言われて1緒に乗ってくれる事になった。
相変わらず過保護で優しいシャンクスに、私は素直な心の内を晒してギュッと抱き着く。身長差、本当に減ったなぁなんて考えながら。
「シャンクス、ありがとう!大好き!」
「無邪気だな、お前」
何処か呆れたような声でそんな風に言われたけど、無邪気で何が悪いのよ。ムッとしてシャンクスを見たら、優しく頭を撫でつつ低く囁かれた。
「それなら、少し2人で楽しむか」
「そうね、とりあえず今夜迄に五千万ベリー位は元値の他に得なきゃね。部屋代もちゃんと半額出すから安心して。良し、行くわよー!」
「……なんにも、伝わってねェ」
シャンクスが何やらブツブツ言ってるけど、気にしてる余裕は無い。それにしても、もう変装に近いレベルの正装なのに、よく私だってシャンクスは気付いたわね。
そう思いながら入口に近付くとシャンクスの腕に自らの腕を絡めて、ボーイに艶やかな笑みと共に宝石を差し出す。それによりやうやうしく渡されたチップを確認して手に取ると、シャンクスと共に船の中へと進んで行った。
ある程度進んだ所で足を止めると、私はこの後どうするつもりなのかを確認する。でも、やっぱりシャンクスって身長あるのね……ルフィだとヒールはいてるからってのもあるけど、私の方が背が高いのに。
「シャンクスはどうする?部屋取って休んでる?」
「部屋は招待されてるから無料だ。ナミも1緒に使えばいい。これが部屋の番号だが……前にも増して金の亡者だな、お前」
「んー……ルフィが考えなしでね、船のお金使い過ぎたから少し稼がないといけないのよ。そこに来てこのカジノ船よ!稼げと天使が囁いてるわ」
「……いや、流石に天使はそんな事囁かねェだろ」
その時脳裏でコニスがヘソ!とか言いながら、頑張って稼いでくださいねって笑う。うん、やっぱり天使が囁いたんだわ。
「そんな訳だから、稼いでくるわね。シャンクスは好きに過ごしてて。付き合わせてゴメンね!」
「何がそんな訳なんだよ……」
シャンクスの言葉に私は何かを答えるだけの余裕も無く、奥の方へと足を進める。さぁて、まずは何から手を出すかよね。
カジノの花形であり、女王と呼ばれるルーレットは細工されていなければディーラーの癖さえ見抜けば何よりも稼げる私の独壇場。とりあえず、癖を確認しないとかしらね……。
シャンパンを配って歩くボーイから1つグラスを受取り、癖で毒を確認しつつ口に含めば問題無いとわかる。まぁ、これに含まれてたら不特定多数を狙った無差別系になっちゃうんでしょうけど。
横目でディーラーの動きを確認していたら、シャンクスが近付いてきて私の隣に立つからどうしたの?と視線で問い掛ける。
「……傍に居させろ」
「邪魔しないなら、良いわよ。私が台に近付いたら、話し掛けたり触れたりしないって約束してくれる?」
「分かった。ついでに護衛してやるよ」
「ふふ、助かるわ。有事の際のみ、触れて良し!」
「生意気な!」
そう言ってシャンクスは私の頬をうにっと抓るから、ヤメヘー!と情けない声を出して解放してもらう。子供のように笑うシャンクスが、本当は強いのだと言う事は身を持って知っている。
シャンクスが守ってくれるなら、何も怖くは無い。そう思って笑えば、何故かシャンクスがその頬を微かに赤く染めた。
……そっか、私正装してるからそれなりに見えて照れてるのね。ナミちゃんの体だったから、可愛いしスタイルも抜群だものね。
そんな事を考えながら見ていたディーラーの動きだけど、真面目で変な癖のない機械のような動きをする人だと理解すれば、良い相手だわとほくそ笑む。食事代、ドレス代、最初に支払った宝石の代金、そこに本来ならば宿泊代金と本日の稼ぎ……即ち明日の元手が必要だけど……シャンクスは宿泊代が無料だと言ってくれたから少し気が楽になる。
勝利の女神は私に微笑む。何せ私は、女神を愛しているもの。
歩き出した私に、シャンクスは着いてくるけど本当に何も言わない。私が台に近付くと、ディーラーが視線を向けて来た。
それににっこりと笑ってから、回転するそれを見詰める。回るそれを見て全額をbetする。
「赤の27」
周りはどよめくけど、計算上確実に入るわ。そして、そこから躊躇い無く黒、黒、赤と数字も含めて1発当たれば数百倍と言われる賭け方を続けて行く。
積み上げられていくチップに、周りは既にざわめく事さえしない。私も途中から完全に音を遮断して、意識を集中している。
そんな時にシャンクスの覇気を感じて、集中力が途切れる。仕方無くて私は数字までは無理と諦めて、色だけの指定に留めてからシャンクスに視線を向ければ、シャンクスが私をそのコートの中に隠した。
「シャンクス?」
「……やはり、ナミか?」
その声に、ビクリと体が震える。それは、ドフラミンゴの声だったから。
待って、じゃぁまさか、このカジノ船ってドフラミンゴの船なの?
でも、被災地になんて綺麗事をドフラミンゴが売り文句にするとは思えなかったし、何よりシンボルとして使ってる海賊旗が印されてなかったわ。どういう事?
「……俺の女だが……名を教えるつもりはねェ。何の用だ、天夜叉」
「招待客の中でも来るはずもねェと思っていた相手が、同伴者有りで姿を見せりゃ挨拶くらいしに来るだろ。その女……紹介しちゃ、くれねェのか?」
私が思わずシャンクスに抱き着き、身を震わせればシャンクスが私を抱く腕に微かに力を込めた。その腕の力に、漏れ出る覇気に、やはりドフラミンゴは危険なんだと再認識させられる。
「紹介するつもりはねェよ」
「そうか。だが、女は俺に挨拶したいんじゃねェのか?」
その言葉の直後にシャンクスが剣を抜いたのが分かった。その為に起きた騒ぎに、けれども私へと伸ばされた糸をシャンクスが切ってくれたのだと分かれば、少しだけ緊張感が薄れる。
大丈夫、シャンクスが居てくれるから、何も問題なんて無いわ。大丈夫、怖くない。
「俺はな、天夜叉……無駄に戦う事を好まねェ。だからこそ大抵の事は笑って許してやる。だがな……俺は友人や仲間に手を出そうとする奴は、絶対に許さねェ!」
「その女はどちらに含まれてんだ?」
「仲間に決まってるだろう。元々俺のクルーだ」
「ほぅ……?」
「俺が見付けて、拾って、愛でて、育てて、守って来た大切な仲間だ。変なちょっかい出すなよ」
恐ろしい程の緊迫感により、何人もの人間が気を失い、または腰を抜かす。呼吸を出来なくなった人達もいるのが分かるけど、今は私にも助けに行く余裕は無い。
今は、世界で1番安全なこの腕の中で、守られていたいの。巻き込んで、ごめんなさいと心で謝罪しながら、シャンクスに抱き着く腕に無意識で少し力を加える。
「……そうしてろ。確実に守ってやる」
私は声を出さずにそれにただ頷く。それに対してシャンクスは瞳を細めるから、どうやら正しかったらしいとわかる。
「……どうやら俺の女は疲れたみたいでな。休ませてもらう」
「フッフッフッフッフッ!この船は既に陸を離れている。部屋でなら、好きに過ごしてくれよ、VIPの招待客なんだからなァ」
その言葉を受けてシャンクスは私の稼いだお金を部屋に運ぶよう指示してから、私を横抱きにして歩き出す。そうして運ばれる中で、私はシャンクスに小さく謝罪する。
「ごめんなさい。知らなかったの、知ってたら、乗らなかったわ」
「……そうだろうと思ってたから、気にすんな。俺も〝伝え忘れていた〟から、慌てて傍に来たんだしな」
「シャンクス、ありがとう」
シャンクスのシャツに顔を埋めて言葉を口にすると、シャンクスはどうやら笑ったらしかった。そのまま運び込まれた部屋は、無駄に広かった。