手の甲から唇が離れたと思ったら、シャンクスが捨て犬を思わせる瞳で私を見て来るから呼吸が止まるかと思った。だって、そんな瞳で見て来るのに、表情は優しく微笑んでいるから。
「ナミ、愛してる。お前が頑固なのも、ルフィしか見えてねェのも分かってるが、逃がしてやれそうもねェ位、愛してる」
「だ、め……」
声が、震える。私は何をされても、シャンクスを嫌えないと自分で分かってる。
シャンクスの言葉に、嘘偽りが無い事も、冗談とかじゃないのも全部伝わって来る。でも、だからこそ駄目だと思う。
この想いを受け入れたら、それはルフィを裏切る事になると思うから。だから、私は首を横に振りながら必死になって逃げようと試みる他に、選択肢は存在していない。
「ナミ、バスローブ姿で、
血の気が引く音を聞いた気がした。指先の感覚が、1瞬にして失われたのが分かる。
「天夜叉か俺か、二者択一だ。俺から逃げて、天夜叉に抱かれるか?」
「ひ、どい……」
「何が酷いんだよ。逃げ道はやったろ。金の為に俺を受け入れるか、俺にただ、犯されるか、俺は嫌だからと天夜叉に泣き付くかだ」
その先は言葉にせず、シャンクスは選べと私にその眼差しで言ってくる。お金が、逃げ道なのは分かってる。
私は……どうしたら、良いの?
「……っ!酷いのは、どっちだよ!」
そんなシャンクスの言葉と共に、腕を掴まれたと思ったら強く抱き締められる。シャンクスの服が濡れてシミになり、そうして私は自分が泣き続けていた事を知る。
優しく私の頭を撫でてくれるシャンクスに少し甘えそうになるけど、今それは不味い。とりあえず距離を置きたいと思って身じろいだら、シャンクスが耳元に唇を近付けて当然のように宣言して来る。
「……ナミ〝抱く〟ぞ」
「や!嫌よシャンクス!私の意思はどうなるのよ!?」
「これが、精一杯の譲歩だ」
そう言ってシャンクスは私の唇を塞ぐと、その状態で私を抱き上げて〝ベッド〟に移動した。2人の体重がかかっても問題の無さそうなベッドに沈められて、それでも唇が私から離れる事は無い。
私の体を拘束しようとしないのは、それだけの実力差があるからだと言うだけじゃない。シャンクスは分かってるのよ、私がシャンクスに何も出来やしないって。
出来るのは嫌がって泣く事と、逃げようとする事位なもので……その内の逃げる行為が無駄である事を、逃げた方が危険である事を教えられている私には、どうする事も出来ない。でも、お願いシャンクス、止めて……!
声にならない悲鳴が胸の中で谺響する。精一杯の抵抗でシャンクスの舌を噛もうとしたら、愉しそうにシャンクスが笑った。
それからそっと唇が離れて、私の頬を優しく撫でて来る。その手も、眼差しも優しくて、だからこそ切なくなる。
「ナミは、甘いな。今のが精一杯の抵抗か?」
「シャンクス……」
「噛みちぎる事が出来る筈も無い程度に噛み付いて……それじゃァ、甘えてると思われるぞ」
「ね、もう止めようよ。私は「抵抗したきゃしてていい。勝手に抱くから気にするな」」
気にしないなんて出来る筈もないのに、シャンクスは私の両足を持つと足の間に頭を、いいえ舌を這わせてくる。それに私が何かを言うよりも早く与えられた刺激に、敏感な場所への愛撫に鼻にかかったような甘い声が自分から発せられる。
「あぁ!んぅ!あっ……シャンッ……クス……!」
「イク直前で辞めて、俺を入れてやるから安心しろって」
「やァ!そこで、喋っちゃ……やぁ!」
「……可愛い奴」
弱い場所であると言うだけとは思えない程に簡単に体は上り詰めようとして、体が勝手に痙攣し始めた所でシャンクスは動きを止めると本当に熱く滾る雄を入口に押し当てて来た。それに首を振ったら、自然と涙が零れ落ちたのが自分で分かる。
「……綺麗だな、ナミは」
「やだ、やめ……!」
優しく目尻に唇を寄せて来たシャンクスは、そっと涙を唇で拭うとゆっくりと中に押し入ってくる。嫌だと思うのに、体は、肌は歓喜に震えて粟立つ。
「あっ……はぁっん!」
「本当に、麻薬と似てるな、ナミの体は……」
そうして半分位まで埋め込まれた所で体が勝手にビクッと反応すると、シャンクスはん?と言ってその場所を重点的に攻め始めた。それにより悲鳴を上げれば、シャンクスの手が私の腰に添えられてそのまま強く掴まれる。
「ナミ、好きなだけ泣け。全て、受け止めてやる」
どういう事かと尋ねるよりも早く動き出したシャンクスにより、私の声は言葉にはならず明らかな嬌声が迸る。1気に最奥まで穿かれるように突き上げられてしまう。
更にはその途中に見付けられたらしい弱い所を攻めるようにピストン運動が繰り返されては、言葉など何も口に出来る筈もない。声は、私の意思を無視して喘ぎや悲鳴となり漏れ出す。
「あっ……!やぁああァァぁァァ!!」
「くっ……!いい、締め付けだっ!出すぞ!」
言葉と共に奥へと放たれる熱いものに、嫌だと首を振っても当然辞めて等貰えなくて、その刺激に反応して全身が痙攣し目の前が白くなる。直後に弛緩する自らの体に、とりあえず終わったのかなと荒い呼吸の合間に思う。
「ナミ……」
優しい声で名を呼び、優しく私の頬に手を添えて、そっと触れる程度のキスをされて……。霞む視界に、全身が心臓になったかのように脈打つ自分の体に、どうしていいのか分からなくなる。
「ナミ、ここからが本番だ」
「え?嘘……終わったんじゃ……」
「何言ってる。まだ俺は枯れてねェよ。たっぷり注いでやるから、何も考えなくていい」
そうして始まった腰の動きに、私は喘ぎなのか拒絶なのか分からない声を出し続ける。時折聞こえてくる優しい声は、何処か苦しそうでただひたすらにもう止めてと繰り返すしか出来ない。
「ナミ!」
「あっん……ルフィ……」
決してシャンクスをルフィと間違えた訳じゃないけど、助けを求めると言うよりもまるで間違えたかのように、愛しさを乗せて無意識で零したその名がシャンクスを獣から猛獣に変えた。乱暴とは違うけど、間違いなく壊されると思う程に、恐怖を感じる程の快楽を与えられて私は震える。
そんな私にシャンクスは喘ぐ以外の事を禁じるように、それ以外をする度に体に跡を遺される。自分の喘ぐ声と、中からか外からか既に分からない淫猥な水音、互いの荒い呼吸音だけが室内に谺響して、私はただ涙を零し続けていた。
私が自らの意思では指1本動かせなくなった頃、シャンクスは私の中に己を埋めている状態で電伝虫に手を伸ばすと、海賊の顔で笑った。それにより背筋に冷たいものが走る。
「ナミ、声……抑えとけよ」
止めてと声を出すよりも早く、シャンクスが私の弱い所を責めながら電伝虫を使い始めた。こんな辱めを受けるなんて思ってなかったけど、こんなの誰にも聞かれたりしたくないと必死で声を抑える。
けどそれをシャンクスは楽しそうに見ながら、妙にゆっくりと話をする。それは部屋のクリーニングを頼むものだったけど、受話器が置かれるのと同時に慌てて唇を動かす。
「待って、人をここに呼ぶなんてやだ」
「ナミは、俺のモノだって自覚しろ」
「違う!私はシャンクスのものじゃないわ」
「俺のモノだって、認める迄抱いてやる。俺はその為ならナミを誰かに見せる事も厭わねェ」
「ヤダ!お願い、止めて……!シャンクス、お願い、だから……」
最後は声を震わせながらシャンクスに哀願したけど、シャンクスの腰の動きは私の言葉が終わると同時に再開されて、止まる事なく私を翻弄し続ける。そんな状態でシャンクスは私に言う。
「風呂で、綺麗にしてやるよ。……奥まで、な」
「も、む……り……」
「まだ3時間程度しか抱いてねェ。まだまだ始まったばかりだ」
窓に視線を向ければ日は高くて、こんな僅かな間にどれ程イかされたのかと思えばゾッとする程。シャンクスは胸の先端を指先で弄りながら私に問い掛けてくる。
「部屋を掃除してもらう間も、こうして俺にここで抱かれ続けるか、風呂で俺に綺麗にしてもらうか、どっちがいい?」
「やぁ!どっち、も」
「両方がいいのか?なら来たら少し見学して貰ってから風呂に行くか」
「や!やだ!シャンクス!」
「ナミ、答えは?」
「あんっ……ぁ……!あら、て……」
シャンクスはそんな私に残酷に微笑むと、耳元で囁く。優しげな声で、残酷に。
その顔と声で、海賊だったんだと認識させられる。その間も胸を弄る手は動きを止めては貰えなくて、中に埋められているシャンクスは脈動を続けている。
「シャンクスのモノで私の奥まで綺麗にして、だろ?」
ナミがそう言うまでは人が来てもこの場で抱いててやると最後に付け加えられては、シャンクスの望む言葉を口にするしかなくて、涙声でそれを音にする。どうしてとシャンクスを見ても、その瞳を微かに揺らすばかりで応えてはくれない。
シャンクスの望む答えを口にしてからは、風呂場に移動させられた。そのまま洗うと言う名目で散々に抱かれて、私の意識は深く沈んで行った。
水の流れる音が聞こえて、まだお風呂場に居るのかと浮上し始めた意識の片隅で思ったけど、体に触れている柔らかな布の感触がそれを否定する。視線を音の方に向ければ硝子の向こうで入浴中のシャンクスの姿が見えて、それによりまさかと思う。
人が入っている間は、風呂場がマジックミラーになっていたのだと気付けば、風呂場でされていた事を私は見られていたのだと言う事と、最初の入浴時に全て見られていたのだと気付く。という事は、シャンクスは分かっててお風呂場で私を抱き続けたんだと理解して、怒りとも悲しみともつかない感情が私を包む。
水の流れる音がコレだけハッキリ聞こえるなら、私の声も筒抜けだった筈で……。人が羞恥で死ねるなら、私は多分もう死んでいる。
シャンクス、どうして……?
〝俺のモノだって、認める迄抱いてやる。俺はその為ならナミを誰かに見せる事も厭わねェ〟
シャンクスの言葉が脳裏に響く。ここにいたら、私はまた……!
震える体は本当に清められていて、でも、寝ても居られないとシャンクスがシャワーを浴びている間にササッと正装して荷物を手に部屋を飛び出した。このままここに居たら、私は……狂ってしまう。
見世物にされるなんて嫌。シャンクスの考えが、分からないよ。
震える体を必死で動かして、泣くなと自分に言い聞かせながら休憩用に点在しているテーブル席へと腰を下ろせば、体が震えているのが体力切ればかりが原因ではないと気付く。耳の奥に、シャンクスの声が谺響している。
〝ナミ、愛している〟
〝体だけでも、離れられなくしてやる〟
〝ナミは、俺のものだ〟
嫌だ、止めて、違う。何度も繰り返されるその声に、その言葉に、私はそう返し続けた。
それでも、こんな事をされても、私はシャンクスを嫌えなくて……どんな形であれ、愛していると言う真実が変わらなくて……胸が張り裂けそうになる。
「シャンクス……」
そんな私に歩み寄る男がいる事に、その時の私は気付かなかった。それくらいに弱っていたし、混乱していたのだ。
隣に人が座った事で慌てて視線を向ければ、それはドフラミンゴで……逃げなきゃと思うのに、シャンクスに逃げればどうなるかと言われたばかりなのにと思うのに、動けない。糸で固定されてる訳じゃないのに、弱りきってる私の体と心が、ドフラミンゴに萎縮している。
こんな状態で、たった今自分で逃げて来たのにシャンクスと無意識で心の中で縋るように名を呼ぶ。シャンクス、助けて……!
「お前……赤髪に守られてた女か。……匂いも、体型もナミなんだがなァ?」
咄嗟に声音を変えて、私はそれに返事をする。甘えてどうする、自力で切り抜けなきゃ!
化粧して顔を変えていたから、それが幸をそうしてる。誤魔化して、逃げなきゃ。
「ナミ?人違いですわ」
そんな私にドフラミンゴはそうかと言って立ち上がると、にんまりと笑った。そして、違うなら違うでも構わねェと言って、当然のように手を伸ばしてくるから咄嗟に短剣でその伸ばされる手を退け、糸を切り裂いてしまう。
「……やはり、ナミか。その姿も良いな、美しい」
「私に、触らないで」
「赤髪には可愛がられたんだろ?報告は受けてる」
カッと1瞬で赤くなったのが自分で分かる。そうだ、私はそれを見られていたんだ。
彼等はドフラミンゴの部下であるのだから、報告だってするだろう。それが上手くすれば弱味にだってなるから、情報を得ない方がおかしいと、頭では分かってる。
そんな私の反応に、相変わらずウブで可愛いなと言って……ドフラミンゴは私の事を無理矢理抱き上げた。それに必死で暴れるけど、力が殆ど入ってないのが自分でわかる。
「や、だ!離して!」
「赤髪から、逃げてきたんだろ?騒ぐと見つかって連れ戻されるぞ」
「アンタと居るくらいなら、シャンクスと居るわ!離して!」
その瞬間に当てられた覇王色の覇気により、意識が朦朧としてしまった私は、それ以上抵抗も出来ないままにドフラミンゴに運ばれて行った。微かにでも意識が残っている私に、ドフラミンゴは小さく笑い本当に良い女だと嘯いているのが聞こえる。
シャンクス、助けて。シャンクス……。
体と心が疲弊して、優しく笑うシャンクスが脳裏にチラつく。シャンクス……貴方の心が、分からない。