翌朝目覚めるとサングラスをしていない、ドフィのアップがあった。瞼が閉ざされていて確認出来ないけど、確か瞳が赤かったななんて思い出す。
地球では赤い瞳は光に弱いから、サングラス必須なのよねと思えば、同じなのかなと思う。アルビノ……白兎と同じ症状だものね。
それにしても、本当に手を出さないとは思わなかったわ。昨日捻りあげられた腕には、いつの間にか湿布が貼られている。
ドフィが優しい事に違和感はあるけど、もしかして身内には優しい系で、私はその身内枠なのかななんて少し考える。出逢いが最悪でその後も会う度に犯されてきたからって酷い対応だった事に、少し申し訳ないような気持ちにさせられる程。
そっとドフィの腕から抜け出そうとしたら、ドフィの腕に力が入った。そして、甘えたような声が私から1瞬思考を全て奪い去る。
「ん……ナミ、どこ、行くんだぇ?」
……あ、天竜人喋りだわ。そう思った直後ドフィは飛び起きて、その頬を微かに赤らめた。
何だかそれが妙に可愛くて、なのに私を抱き締めたままドフィは私を離そうとしないからつい笑ってしまった。そんな私にドフィは溜息を落としてシェフに目の前で作らせるから、喰いたいものを言えなんて言い出す。
「そんな、悪いわ」
「何が悪いんだよ。まァ、気になるなら……その代わりに、何があったか話せ。それだけでいい」
「何がって……」
「〝シャンクス〟と呟いて怯えた様子を見せていた上に、赤髪から逃げて来た。何も無かったとは言わせねェ。……まさか、犯されたか?」
それに肩がビクリと反応するとドフィは飯は後だと言って、突然私をベッドに押し倒して来た。敵の攻撃とかがあったのかと警戒して辺りを見てみると、呆れたようにドフィが溜息を落とす。
それに首を傾げたら、そうだ、これがナミクオリティなんて意味のわからない事を呟かれる。それにしても、ドフィやロシーって本当に天竜人とは思えない顔立ちの良さよね。
「ナミ……」
「ドフィ?」
「赤髪は、お前の兄がわりで、師匠で、甘えられる泣き所だったよな」
「ちょっと待った!私は……!」
「俺が〝昔聞いた〟情報だ。……何してんだかなァ、まァ赤髪も〝海賊の男〟って事か」
「ドフィ?」
ふぅと息を吐き出してから、ドフィは突然私の着ている物を脱がせ始めて、まさかと理解した頃には産まれたままの姿にされていた。それに慌てて動こうとしたけど、それをドフィが許す事はなくてじっと私の体を見つめてくる。
それから成程なと呟いたかと思うと、私の体に手を伸ばして突然明らかに愛撫としか思えない動きで触れて来る。それにイヤイヤと首を振れば、ドフィは私の耳元に唇を寄せて軽くキスをしながら囁く。
因みにだが、耳へのキスは誘惑を意味する。即ち……お前が欲しいと、暗に訴えているという事である。
「……全て、俺が塗り替えてやる。だから、忘れちまえ」
「なに、言って……」
「ナミは、俺に愛されていればいい」
そう言ってドフィは私の胸を揉みしだき初めて、想定外の事態に反応が出来ない。そして、肌は既にドフィを覚えていてその手に、熱に、舌に、素直な反応を示してしまう。
「やっ……ぁだ!ドフィ……やめ!」
「クルな……行為中に、愛称で呼ばれるのは」
「ああぁ!ダメ!やぁだ!」
ドフィは糸で私の体を勝手に動かして、足を大きく開かされるとまるで私が望んでるような姿になってしまっていて……それにより頬がカッと赤くなる。こんな格好嫌と言っても、ドフィはまるで聞こえていないかのように秘部を視姦して来る。
「散々抱かれてきた後だとは思えねェ程に、ナミは全てが綺麗だな」
「もう、見ないで……」
「ナミは我儘だなァ。触るな、入れるな、揉むな、舐めるな、見るな……何も出来なくなっちまう」
「当然でしょ!?されたくないって言ってるのよ!」
キッと睨み付けると、ドフィはそんな笑い方出来たんだと思う程静かに微笑んだ。それと同時にそっと髪にキスをしてから、慈しむような眼差しで私を見詰める。
「赤髪の事を忘れるように、抱いてやる。俺が全て塗り替えてやるから……だから、そんなに悲しむな」
「いや!ルフィッ!私はルフィじゃなきゃっ!んっ……いやぁぁぁ!!」
言葉の途中で無理に押し入ってきたドフィに、私の唇は悲鳴を音にする他何も出来ない。でも、ドフィの言葉はいつもと違っていて……その違和感が拭えない。
「……特別、なんだなァ。赤髪の事が」
「なに、言って……」
「だから、傷付いてる。ナミは、俺に犯されてもこんなには傷付かねェ……妬けるな」
そう言ってからドフィは私の中に己の欲望を押し込み、痛みと圧迫感に苦しむ私をあやすようにそっと背を撫でてくる。その手はこれ迄強姦して来たそれと同じものの筈なのに、私の体は心の変化に敏感なのか、その手から感情が伝わってしまう。
ドフィが私を気遣っている事が、想っている事が伝わって来る。そんなの、気付きたくなかった。
ドフィのこの行為は、欲望の捌け口で単に凶暴で残酷で乱暴な暴力だと、その認識のままで居たかったのに。何が今までと違うんだろうとドフィを見て、その顔にサングラスが無い事に気付く。
その素顔を、その心を晒して、私に想いを伝えて来ている。そんなのは……狡い。
素顔で愛していると囁きながら私の奥へと自身を埋込み、全て忘れさせてやるからなんて言われたらどうしたらいいのか既に分からない。ドフィからの告白を、信じたくないのに……伝わってきてしまう。
「俺は、ナミが愛しい。ナミを、このまま国に連れ去りてェなァ」
「やァ……!ドフィ、辞めて!あっ……!」
私を本気で求めているのだと、伝えられる。体はその熱に翻弄されながら、高められる。
でも、私の心はルフィにしか触れて欲しくはないと泣き続ける。辞めて欲しいと、嘆き続ける。
自分の情けない喘ぎ声と、ドフィの甘やかな愛の囁きが耳に届いてしまう。それが苦しくて、自然と涙が零れ落ちるとそれに気が付いたドフィがそっとその涙を唇で拭う。
「塩辛いな……そんなに、つらいか」
「あたり、まえ、でしょ……。もう、辞めて」
「ナミが俺だけのものになるってんなら、会う度に犯したりしねェよ。だがな、お前は俺のものにならねェ」
そりゃ、ならないけど。私がルフィのものなのは、最初か……あ、違う。
そうだ、最初にミホークやドフィに犯された時は、私はアーロンに支配されていて〝恋人〟なんて居なかった。お金を渡されて、それを抱いてアーロンの元へ帰ったのだから。
そう思ったら、何処が娼婦じゃないのかと自嘲してしまう。ドフィが体だけでも良いと言うのならば、私はそれを演じてみようか。
どうしたって逃げられないのならば、何も得ないなんて事は出来ない。私はここに遊びに来たわけじゃないのよ。
「そうね、だから体をって?」
「ナミ?」
「私を娼婦として、体だけでも欲しいの?」
「当然だろう。心を求めても寄越さねェなら、体だけでもと願って何が可笑しい。それでもナミから何もかもを奪うだけって訳にいかねェから、何かをと思っている。それなのにナミは何も欲しがらねェ。だから、金を払うって……「なら、私がここに滞在する間の部屋と、飲食費を無料にして。それと、最低でも1回触れるのに、億は支払って」」
力ではかなわない。海上にいて現在どう足掻いても逃げられる状態に無いのならば、ただ、搾取されてはいられないのだから……泣き暮らしてなるものか。
私はここに稼ぎに来たのよ。時間を奪われるなら、それなりの対価を貰わなかったらやっていられないわ。
高級娼婦のように余裕を持って、艶やかな笑みを浮かべて見せればドフィは息を飲んだ。ドフィが優しくしてくれたからと心を開きかけた自分の愚かさに、泣きたくなるのを耐える。
だってそうでしょ。女海賊が1人で他の海賊に囚われた現実の中で、他にどんな選択肢があるのよ。
ただ、泣きながら犯されて、何も得られないよりは……お金の為だと自分を納得させるしか無いじゃない。だけど最低でも億を出せない奴に、触れさせるつもりは無いわ。
「……なら、中に出した分、払ってやるよ。それなら、好きにしていいんだな」
「嫌だと言っても辞めないなら、それくらい払いなさいよ。当然でしょ」
「……後悔、するなよ」
「私に娼婦でいて欲しいと願ったのは、貴方よ、ドフィ」
言って艶やかな笑みを深めれば、ドフィの喉が鳴った。それからは、これ迄はそれでも加減されていたのだと思い知らされる。
それでももう、私は涙なんて見せない。これは……ビジネスよ。
荒い呼吸の中でドフィを見れば、欲望をその瞳に宿らせながらも何故か膿んだ傷口に刃を突き立てられてでも居るような顔で、私を見ている。でも、それを望んだのは貴方でしょ。
そう思うのに、見捨てる事も出来ない自分の愚かさを内心で嘲笑いつつ、そっとその頬に手を伸ばして触れる。それだけで、ビクリと怯えたように震えたドフィに私は精一杯の優しさを込めて問い掛ける。
「どんな反応して欲しいの?望み通りにしてあげるわ」
「……俺を、求めてくれ」
「了解……。ドフィ、もっと……ね?」
演じる事は慣れているのよ。だから、望まれるままに演じてあげるわ。
そんな私がドフィにより意識を奪われ、次に目覚めた時にはバスローブ姿になっていて……どうやら今回も後の事はしてくれたらしいと分かる。体を起こしてみると、くらりと目が回り体が勝手にベッドに戻ろうとした所で、ドフィがいつの間にか近付いていて私を抱き留めていた。
「……ドフィ?」
「ナミは、女優だな。本当に、昔から変わらず残酷な女だ」
「何が、言いたいの?」
「なんでもねェよ。……部屋は用意した。専属の女のシェフも用意した。安心して良い。……金はどうする」
持って帰るには重いし、送ってもらいたいけど何処に送って貰ったらいいだろう。そんな事を考えていた私にドフィは分かったと言って頷くと、アイスバーグさん経由で送られるように手配してくれているのを見詰める。
驚く私に、無理させたななんて言って少し眉を寄せたけど……振り向いたドフィは既にサングラスをまた掛けていた。素顔の方が、威圧感無くて良いのに、ね。
そんな事を思っていたからか、無意識で手はサングラスに伸びて、それをそっと外していた。それを驚いた様子で見てから、どうした?なんて聞いて来る。
「兄弟なのね。ドフィとロシーって、やっぱり良く似てるわ」
「……やはり、ロシナンテは生きているのか」
「夢で見ただけだから、知らないわ」
「強情だな、相変わらず。まァいい。粥を作ってやるから少し寝てろ」
「ありがと……う?」
待って、今〝作ってやる〟って言った!?
慌てて寝かされたばかりのベッドから起きようとしたら視線で大人しくしてろと言われて、その後私が持っているのと同じ形のサングラスを取り出して身に付けると本当に部屋の片隅にあるコンロで何やら作り始めた。……もう、どれに突っ込んだらいいのか、既に分からない。
気が抜けるわと思い、小さく笑ってから、手の届く所に置かれている水に手を伸ばす。私はそれに毒があるかを確かめもせずに、口にしていた。