深く深く眠っていた私が起きた時、私が抱いているのはルフィからルフィの上着に変わっていた。私は何があったんだろうと思いながら体を起こす。
そんな私に、おはようと笑ってくれるのは、いつもと変わらない皆。それに自然と笑えるくらいには、回復した。
「ごめんなさい、寝過ぎたみたいね」
「そんなに寝てねェし、これだけ稼いでたんなら、ずっと寝てなかったんだろ?眠くもなるよ!……少しは楽になったか?」
チョッパーが心配そうにそう言ってくれたので頷くと、安心した様子で笑顔を見せてくれる。私はベッドから降りると正確な金額分かってないのよと言って、送られている大金を算盤片手に数え始めた。
そうなるともう誰も私に話し掛けない。元々空島以前からあったお金は、色々な雑費で消えていたのでそこは計算から外す。
自転車操業を繰り返してた感じね。それは私の貯金を別にして考えればだけど、計算に入れた方が多分ウソップに怒られ……無いんだったわね、今は。
少し自嘲しながら、ここ、ウォーターセブンに到着してからの事を思い出して算盤を弾く。空島の宝を換金した事で得たのは8億ベリーで、その内2億ベリーをフランキーに取られたけど、船となって戻るのだから結果論だけならば安く済んだわ。
そうなるとこの時点で6億ベリー。その後ロビンを連れ戻した祝いの宴で1億ベリー消費して、残り5億ベリー。
私がカジノで稼いだ総額が約1億ベリーで、ドフィから3億、ミホークから2億、シャンクスから1億送られているから、今回は7億ベリーになった。なので合算すると12億ベリーが手元にあるという事になる。
端数とかは省いて、諸経費とかの計算も細かい所はまた別にするとして大まかにそんな感じ。でも、実際今は大金があるように思えても、ちゃんと計算すると余り余裕は無いのよね。
ルフィの食費がかからないから今回は凄く金銭的に楽だけど、1回のルフィの買い出しには数百万、下手したら数千万のお金が動く。その他食器は海だからどうしても割れやすいし、家具はこれ迄はウソップの継ぎ接ぎで何とかしてきた感じだったから、ここでどうにかしておきたい。
布とか医療関係の物はどうしたって必要で、私の紙やインクだって馬鹿にならない金額が動く。その他食費軽減の為と栄養面の関係で魚を獲る網とかの道具も消耗品だから、メンテしたり買い直したりしないといけない。
特に野菜育てたり魚を獲るのは、精神的にもやっておきたい所なのよね。冷蔵庫の中身を漁られても、魚が定期的に捕れるという現実はありがたい。
サンジ君や私、ゾロとロビンは兎も角他は1日食事を抜くのだってキツイみたいだし……ルフィに至っては明らかに戦闘能力が落ちる。更にはこの先は確か……あれ、今日って何日目の滞在なのかしら?
「サンジ君、私どの位寝てたの?」
「2、3時間ですよ。まだ昼にもなってません。……ルフィ連れて何処か行きますか?」
それなら今日はウォーターセブンに来てから13日目という事になるから、ログが溜まるのは明日か。まぁ、フランキーが船の完成までに欲しいと言った時間の事もあるけど……。
曖昧な記憶だけど、ログが溜まって直ぐに出発した気がするのよね。うん。
「ルフィとはそりゃ出掛けたいけど……その前にサンジ君、チョッパー、念の為に〝明日には出航できるように〟買い出ししておいて欲しいの」
「「……了解!」」
2人が気を引き締めた様子で声を出してくれるので、それに頷く。もしも私の曖昧な記憶が正しかったら、買い物終わらせてなかった場合困る事になるわ。
「ロビン、足りない物が無いかのチェックって出来てる?」
「えぇ、幾つか足りないというか、欲しい苗があるくらいかしら。夏野菜の苗は育ててるのがあるし、根菜もそうだけど……春蒔きの種と秋の苗が欲しいわね。網とかタオル等の消耗品は善意の寄付があったから大丈夫よ」
「なら、必要な苗や種、育て方の分かりやすそうな本を見付けたらそれも、悪いけど今日の内に買ってきてくれる?……ゾロはどうするの?」
黙っているゾロに視線を向けるとゾロは壁に寄りかかったまま、静かな声で言う。表情からその心理を読み解くのは、今は出来そうにない。
「……俺は残ってる。1人は居ねェと不味いだろ。コックが出掛けるなら、ルフィを連れ出して欲しいしな」
言われてルフィに視線を向けると、ルフィが上半身裸のままじっと私を見ていて……。あ、返してなかったと手にしたままの服に視線を向けて慌てれば、可笑しそうに笑われてしまった。
そして、私から服を奪い取るようにして手にしたルフィが、私の算盤を見て首を傾げる。それがなんか妙に可愛い。
「計算は終わったのか?」
「えぇ、少しの余裕が出来たから、安心していいわよ」
「なら、1緒に出掛けよう!美味い店見つけたんだ!」
ルフィの言葉に笑って頷くと、ルフィは迷わずに私の手を取るから、それに掴まって立ち上がった。そうして皆に行って来るわと言ってルフィと出掛ける。
それに皆が口々に気を付けてとか、楽しんで来てと言ってくれるから、少し気恥しい。歩き出して少しすると、ルフィがアイスを1つ買って差し出して来たので、それを何も考えずに受け取る。
アイスを私が持ってから、何故かルフィはそれをひと舐めして納得したように頷くけど、何がしたいのか。折角貰ったアイスだからとそれを口にした瞬間、ルフィがにこにこと笑いながら言う。
「間接キスって言うんだよな、こーいうの!」
その瞬間味も香りも何もかもが記憶から抹消された。……誰だルフィに余計な知識を与えたのは!
「ば、か……!食べられなくなるでしょ!?」
顔が熱を持ってるのが分かる。そっと顔を背けたら、ルフィがまたアイスを食べていて、もうっと思った直後に唇が重なっていた。
ルフィの口内で溶けて、ただの甘い液体になった物が流れ込み小さく呻く私からルフィはそっと唇を離すと、海賊らしい顔で笑ってみせる。それにドキッと胸が高鳴った時点で、私は1生ルフィに勝てないだろうと痛感させられた。
「食えないなら、こうして食わせてやろうか?」
「ルフィ……」
「ん?」
「残り、食べていいわよ」
「そうか?なら貰う」
ルフィはそう言うと私が手に持っている状態でアイスを食べ始めて、ちゃんと食わせろよなんて低く言う。アイスが手から無くなる迄だと思って、その羞恥に耐えていた。
なのに、アイスが無くなるとルフィはまるで当然のように私の手を、指の隙間迄じっくりとキスして来る。周りの視線も気になるし、何より手にして来るそのキスと、触れる舌が私を翻弄しようとして来る。
「ちょっ……ルフィ、やだ……」
「まだ、甘い匂いが残ってる」
「ルフィ……!」
外でなんて事するんだとばかりに睨めば、ルフィはゆっくりデートしようななんて明るく笑い、そっと頬にキスをして来る。私がそんなルフィに勝てる筈も無くて、その後も串物などて似たような事を繰り返されながら歩いて回るのは、楽しいけど恥ずかしい。
「ルフィの意地悪」
「……そりゃ、ナミが悪ィ」
「なんで?」
「鷹の目のオッサンと、シャンクスと、ナミをひし形のオッサン所から攫ったやつ。……そいつらと会ったのに、なんも俺に伝えようとしねェからだ」
ルフィの言葉にどうして知ってるのかと問い掛けたくて、でも問いかける言葉が出て来なくて、ただその場で動きを止める。そんな私にルフィは、気付かない筈ねェだろうと言って苦笑されてしまう。
それぞれ匂いがあるからなァなんて言って、詳しくはホテルで聞かせろよと囁かれては、頷く他に選択肢は無かった。確かにそれぞれ、独特の香りを身に付けているものね。
ホテルに入るとアイスバーグさんを救ってくれた人からお金は取れないと言われて、最上級の部屋に案内されてしまい、ルフィは儲けたななんて笑うけど私は少しでは無く恥ずかしい。だってこの勢いなら、1瞬で私とルフィがホテルを使ったと広まるだろうと思えたから。
「ナミ、それで、何があったんだ?」
ルームサービスをちゃっかり頼んでいたルフィはテーブルで肉を頬張りながら問い掛けてきて、それに私は少し力が抜けそうになる。……何かに似てると思ったけど、頬袋にご飯溜め込んでるシマリスとかハムスターと似てるんだわ。
「ルフィ」
「ん?」
「可愛い」
「ゴホッ!」
うん、頬袋にご飯詰め込んだ所で突っつくとこんな反応するわよねと、感心していたらルフィに睨まれてしまった。それから私は、ルフィと離れている間に起きた事をゆっくりと説明する。
船に乗る時にシャンクスに会った事、あのカジノ船がドフィの物だった事を話した。中にミホークがいた事も説明したらふぅんとルフィは言ってから、綺麗に食事を終える。
そうして、お皿に肉の骨を重ねるとルフィは手を拭きながら立ち上がった。何故か話さなくてもその3人に抱かれた事は分かってるみたいで、気配は剣呑なものになっているので少しでは無く不安になる。
だからこそ動くルフィに視線を向けて、どうしたのかなと見ていたら、ドアに鍵が掛かってるのを確認してからその瞳を僅かに細めた。それに体がビクリと反応する。
「ナミ、脱げ」
「ルフィ……」
「ナミ」
私がルフィからの〝命令〟に逆らえない事を、ルフィは分かってて命じている。震える指で服を脱げばルフィはじっと私を見て、それから1瞬で間合いを詰めると労わるように優しく、抱き締めてきた。
そんなに優しくされると思ってなくて、寧ろ怒り具合を考えたら乱暴に扱われると思ってたから少しでは無く驚いてしまう。ルフィの温もりに、その匂いに泣きたくなるのはどうしてだろう。
「ナミ……よく、耐えたな」
「ルフィ……」
「ナミとしちゃ、想定外だったろ。つらかったな」
私に、泣く権利なんて無いのに、涙が勝手に溢れ出る。そんな私の背をルフィは撫でながら、ルフィは私をその場に押し倒す。
そっと私の涙を拭って、男の顔でルフィは私を見る。その瞳には、欲情の色がハッキリと出ていて、なのに嫌だと思わないどころかそれが少し嬉しい。
「ナミが何か悪いとするなら、いい女過ぎるところだ。無防備なのも、可愛いのも、強がりなのも変えようがねェ」
「ルフィ……」
「でも、やっぱり少しは妬いてる訳だよ、俺もさ」
「ルフィ……抱いて……」
私は思わずそう口にしていて、ルフィはそんな私に薄く笑うと〝当然だ〟と耳元に囁きを落として、そのまま何とか身を隠していた最後の砦たるビキニの紐を解いてしまう。ルフィ以外に付けられた多くの跡をルフィはじっと見て、その跡をなぞる様に、重ねるように跡を残して行く。
「んっ……ルッ……フィ!」
「全部、塗り替えてやるから……煽るなよ」
「だって、あっ……!」
他の誰でもない、ルフィの唇に体が歓喜に震える。ルフィの指に、熱に、悦ぶ。
でも、与えられるだけなんて許される筈ない。私は、ルフィ以外に……何度も……。
「ナミ、今は余計な事考えんな。俺を……感じてろ」
「でも……」
「それとも、お仕置きされたいのか?」
「ルフィ……」
ルフィは私を見て、もしかして、とか言いながら問い掛けてくる。他の野郎どもに触れられてる時、ルフィの事を呼ぶのかと。
それに素直に頷くとその動きが止まり、それからよく生きてたななんて言い出す。でも、無意識なんだもん。
「ルフィの事、無意識で呼んじゃうのよ。ごめんね、ルフィが狙われるかも知れないのに」
「海賊が他の海賊とか海軍に狙われるのは当然なんだから、ンな事気にすんな」
そう言ってルフィは笑うけど、その目元が少し赤いから照れてるんだなぁって思う。それが可愛くて、私は幸せだなと痛感させられていた。
身体中にある全ての跡に、ルフィは愛撫を繰り返す。私はそれを受けて、必死に声を押し殺す事しか出来ない。
甘やかな全身へのキスと言う罰は、こうして幕を開けた。