全身くまなく愛されて、グズグズに溶けそうなそれは幸福より先に羞恥心が私を苛む。それを分かっているのだ、ルフィは。
羞恥心から逃れたくて、早く繋がりたくて、その熱を感じたくて、私はルフィに哀願する。もう、充分だから……辞めてと願いながら。
「ルフィ、もう……抱いて」
「ナミ、まだ駄目だ。それにしてもよ……」
「んぁっ!ルフィ、も、恥ずかしいから……お願い、挿れて……」
ルフィは私言葉を無視して、手や足に僅かに残るロープの跡を唇でなぞる様に動く。それが刺激になって、体がルフィを求める。
「誰だ、ナミを縛ったの。こんな跡残しやがって。……必死で抵抗してくれたんだな、ナミ」
「ルフィ……」
「傷に、なってる……」
「ルフィッ」
切なげに瞳を揺らし、苦しそうに言うルフィに、全力で抱きつけばルフィはごめんなと言って私の背を強く抱き締め返してくれる。その腕が、体が、震えている。
辛いのは寧ろ、私よりルフィの方だとこんな時強く思い知らされる。傷付けてごめんねと呟けば、ルフィがその顔を泣きそうに歪めた。
「俺が、守れなかったんだ。ナミが謝る事は何もねェよ」
「違うわ!ルフィは悪くない!私が、弱いから……」
「馬鹿ナミ。自分を責めんなって、言ってんのに……」
声を、体を震わせるルフィに、私は笑いそうになる。だって……私、酷い女なんだもの。
「それなのに、ダメね」
「ん?」
「ルフィ以外に散々好きにされたのに、私、ルフィに嫌われたり、捨てられたりしないって思ってるのよ」
耐え切れなくて自嘲するように笑えば、ルフィが首を傾げて少し不思議そうに私を見る。その瞳に嫌悪感は無いから嫌われないって所に間違いは無いと思うけど、何が不思議なのかな。
「なんで、そんな当たり前の事言ってんだ?俺はナミを離さねェし、ナミが離れようとしたら追い掛けて捕まえて、側に連れ戻すぞ」
「……ねぇ、ルフィ?私が他の人を好きになって出て行くとか考えないの?」
ルフィの言葉に胸はときめく。離さないでくれると言う言葉は素直に嬉しい。
迎えに来てくれるのも嬉しいけど、どうしてこうルフィは自信に満ち溢れてるんだう。こんな状態なら、私が尻軽で男なら誰でも良いって思ってると、そう思われても不思議はないのに。
そしてそれが真実なら、ルフィ以外がいいと飛び出したり裏切ったりする事も考えられるのに。どうしてルフィは私を疑わないの?
そんな私の疑問にルフィは少し黒い笑みで答える。その笑みを見た時、あ……これダメな質問だったみたいと気付いたけどもう遅い。
「ナミに、もし仮に俺より好きな相手が出来ても……ナミは俺を愛したままだ」
「……そう、かも知れないわね」
「なら、利用しない筈あるかよ。他にもっと大切な相手が居たとしても、ナミは俺を愛してて、抵抗なんか出来ねェんだから……毎日、抱いてやるよ」
「え?」
「他の想い人ってのに、顔向け出来なくなるくらい、毎日抱いてやる。それによ……俺は、航海士はナミって決めてるから、ナミが居ないと俺、遭難して難破して死ぬぞ」
「……卑怯だわ、それ」
絶対離れられないじゃないと私が笑えば、ルフィはそうだろと言って笑う。それからそっと掠めるようなキスをして来て、静かな声で挿れるぞなんて言うから頷く。
ルフィの熱を感じて、肌が粟立つ。このままずっと……繋がって居たいと思わされるくらい、私はこの温もりの中に帰りたかった。
「ルフィ……」
「ん。ナミ、お帰り」
ルフィを呼んだだけなのに、全て分かってるみたいにそう言ってからルフィは先程の件を蒸し返して来る。ナミが他に好きになる相手なんて、限られてるけど、そんな不安になる余裕もねェ位、愛してやるよと耳元で言われてしまう。
それによりゾクゾクと背中に悪寒に似た物が走るけど、私はそれが何処か楽しみであるかのようにも感じられてしまう。だからつい、ルフィのそれに笑いながら〝嬉しい〟なんて返してしまって、ルフィが中で膨張した。
それに悲鳴を上げる私を翻弄しながら、ピストン運動を続けながらルフィは私を愛しげに見詰めて問い掛けてくる。それは予想外のもので、思わず息を飲んでルフィを見詰めてしまう。
「ナミは……俺の初恋の相手なんだって事、知ってたか?」
「え?」
「ナミは俺の初恋で、最後まで愛して守ってくって決めてる。だから……目移りなんてさせねェよ」
その後で、聞き取れたのが奇跡のような声で、だからシャンクスが怖いんだけどななんて呟いたルフィ。それに、不安にさせてごめんなさいと思いながら、その体に抱き着き私からキスをする。
私は世界の誰と比べても、それがきっとベルメールさんやノジコでも、ルフィを優先してしまう。ルフィを守る為なら、どんな敵にも立ち向かってみせる。
私はもう既に、その位ルフィに溺れてる。私にとっては、もう……ルフィが全てなのよ。
「ルフィを、愛しているわ。……大切な人は沢山いるけど、ルフィより大切な人は、いない」
「……嘘だろ」
「なんで私の想いなのに否定するのよ。酷いわね」
ブーっと膨れて見せればルフィは訝しげな顔で私を見て、明らかに呆れてますって感じの溜息をついた。それに少しムッとして、わざと中にいるルフィを締めてあげればルフィが1瞬息をつめた。
「ナミッ!お前は、母親と姉が1番だろ。後、蜜柑」
「大切よ。愛しいわ。愛してるのは否定しない。……でもね、ルフィは〝最愛〟なのよ。……私が、甘えられる相手なんだって、自覚してよ」
言ってから恥ずかしくなって顔を背けたけど、耳まで熱くなってるから無意味かもしれない。そんな私にルフィは、嬉しそうに笑うとロビンとお揃いのピアスごと耳を舐めて来た。
「んっ……!」
「ナミ……俺、凄ェ嬉しい。俺、1生〝ベルメールさん〟と〝ノジコ〟に勝てねェ気がしてたからさ」
「私にとって2人は、守るべき大切な人よ。でも、いつからかな、甘えられなくなったの。……支えて貰ってたけど、甘えられなくなってた」
多分今私が甘えられるのは、ルフィと、ロビンと……シャンクス。他は甘やかしてくれたら、甘えられるかもって人は何人か居るけど、自分から甘えるなんて出来ない。
「ルフィ……」
「ん?」
「……もっと、ルフィの熱を感じさせて」
ルフィが中で硬さと質量を増して熱を高めるから、それだけでビクビクと体が震えてしまう。そんな私にルフィは雄の顔で笑うと、優しく出来ねェぞなんて初めからそんな気無かった癖に言うから、笑って頷いておいた。
私を抱きながらルフィは言う、本当は嫉妬で狂いそうだったと。帰らない私を心配して、おかしくなりそうだったのだと。
でも、私の言葉で全てが霧散したから今はただ、心のままに愛してやると言ってくれるルフィに、私もただルフィを感じたくて自らその体に足を絡ませる。私は、ルフィが欲しい。
ルフィの1番になんてなれなくていい。ルフィを1番に想える自分がいれば、それで良いの。
愛してる。心から……いいえ、魂から愛してる。
傍に居させてくれるなら、私はどんな事でも頑張れるから……でも、たまにこうして甘えさせてね。ルフィの肌に触れると、汗で濡れるその体が熱くて……何だか嬉しくなる。
汗で張り付いた前髪を鬱陶しそうにかき上げたルフィの姿に、胸が高鳴る。いつの間にかルフィの少年の時は終わろうとしてるんだなって、そう思えた瞬間、何だか私の方が少女になったみたいに湯だってしまう。
「……ナミ?」
「ルフィが、カッコよくて……」
「……ナミはいつも綺麗で、たまにメチャメチャ可愛い」
そりゃ、ナミちゃんの容姿だもんねと思っていたら、ルフィが笑う。本当にその眼差しに愛情が見えるから、私は赤くなったまま元に戻る事が出来ない。
「ナミの真剣になんかやってる姿は綺麗だし、何か作ったり歌ったりしてる姿は楽しそうで見てて幸せな気分になる」
……もしかして、ルフィが私に歌ってってよく言うのは、その為なのかな。私、そんなに楽しそうに歌ってたかな?
確かに歌う事は好きだけれど……。だからこそ、覚えているものを忘れない為に、思い出した時にそれを形にして、そのついでに……お金稼いでるんだけど。
「俺とかチョッパーを撫でる時の優しい顔に癒されてるし、誰かを庇う時のナミは哀しくなるくらい綺麗だ。蜜柑の事をやってる時は無邪気で可愛いし……」
途中で言葉を切ったルフィに首を傾げると、ルフィはそのまま腰を動かし始めるから、必死で声を抑えながらルフィを軽く睨む。そんな私にルフィは言う。
「俺に抱かれてるナミは、ただひたすらに甘い。どの姿でも、俺はナミが愛しい」
きっとそれは、私が何をしてるルフィでも愛しいのと同じなんだろうなって思って……。でも同時に、ルフィはこの容姿を褒めてたんじゃ無いって気付いて、私の瞳から勝手に涙が零れ落ちる。
美し過ぎるこの体により、得した事も多かった。けど、だからこそルフィが好きなのは私じゃなくて、ナミちゃんの肉体なんじゃないかって……そう思ってる部分があった。
ルフィが求めてくれてる能力だって、ナミちゃんのもので……。私は、だからナミちゃんの身代わりなんだって心のどこかでずっと思ってた。
だからこそ、嬉しい……。絶対に得られないと思っていたものを、ルフィは簡単に私に与えてくれる。
ナミちゃんでは無くて、私を想ってくれているのだと分かって、それだけで存在している今が幸福に思える。自分を、愛しく思えるの。
「ルフィ、愛してくれて、ありがとう」
エースの事で悩んでいたのに、それさえ今勝手に昇華してしまった。ルフィが苦しまない未来を、そうなってから考えようと自然と思える。
まだ起きてもいない未来に怯えて、ルフィの歩みを妨げる事だけは出来ない。私はルフィに自由に、笑って生きていて欲しい。
「ナミ……なんか、落ち着いたみたいだな」
「うん、ルフィに愛されてるって実感したら、心が落ち着いたみたい。私、本当にルフィにしかこういう事、されたく無いんだから……」
信じてもらえないだろうなと思いながら口にしたのに、ルフィはあァと1言呟くと優しく笑った。それは信じてるって言うよりも、わかり切った事を言われてるかのように。
「知ってる。ナミは、真面目だから元々性行為苦手だもんな。理性が強すぎて、本能で動く行為苦手な上に、ナミは恥ずかしがり屋だから苦手なんだよな」
「ルフィ……」
「でも、ナミは俺の事は求めてくれる。これでナミを疑えってのが無理だろ。……まァ、妬いて虐める事はあるけどよ」
ルフィが妬いてくれる。怒ってくれるのは、それだけ私を想ってくれてるからだと知っているから、私はそれに嬉しくなって笑う。
私はきっと、世界で1番恵まれている。誰よりも幸せな存在だろうとそう思って、少しでもルフィにその愛を返せたら良いと願いながらルフィの唇に自らの唇を重ねた。