紅茶を飲んでいるアフロな骸骨に誰もが言葉を失う。アフロが残っているなら血管とか残ってても良さそうなものだけど、心から残ってなくて良かったと思う。
そんな事を考えていた私にルフィはごめんと言ってから、ゴースト
私を含めて嫌がるメンバーと行きたがるメンバーに別れたのだから、行きたい人が行けばいいのに、何故か平等に行く可能性のあるくじ引きとなってしまって、私は渋々それに参加した。それの〝ハズレ〟を見事に引き当てた私は、その場に崩れ落ちてしまう。
そんな私を見てルフィはサラリと言い放つ。ルフィの心は既に、新たな冒険の場所である目の前に見えている船にあるらしい。
「ナミ、嫌なら残ってても良いぞ。俺は1人で行って来るからよ!」
「だァめだァ!!ルフィが暴走するからお目付け役が必要なんだから……行けナミ!」
無情にもウソップに言われて、私は半泣きである。だって、お化け……怖い。
そんな私をロビンが後ろから抱き締めてくれて、可愛いわと頭を撫で回してくる。……ロビンがおかしい。
それに、怖がってるのわかってるのだから、行くの交代してくれても……。そう思って視線を向けるけど、ロビンは交代してくれる気は無さそうである。
にっこりと微笑むロビンに、内心でロビンのケチと募った瞬間、ルフィが言う。顔を見ればどうやら本気でいい事思いついたみたいな感じなので、甘えさせて貰おうかな。
「なら……〝サンジの準備が終わる〟迄、抱いててやるから、その間に震え落ち着かせろよ、ナミ」
そう言ってルフィが私をロビンから回収して抱き締めるから、その腕にホッと息を吐き出すとサンジ君が背後で唸る。それは本当に低い声で、でも、諦めた様子でもあるから内心でごめんと謝っておいた。
「あー……俺、後片付けの途中だった。終わらせてから行くから待ってろよ、クソゴム!」
どうやらサンジ君は私の様子を見兼ねて、時間をくれる事にしたらしい。因みに宴の前に作っていた赤紫蘇シロップは、宴の途中でサンジ君に質問されて作り方や使い方等を説明したら仕上げてくれました。
シロップ作りに使用した赤紫蘇は半分がふりかけに、残りの半分は醤油漬けに化けたので赤紫蘇を腐らせずに済んだと、サンジ君は喜んでました。そのシロップは水や炭酸水で割って飲むと美味しい上に、悪阻や夏バテに効果があり、他にも良い事は沢山あります。
甘い方がお好みなら、サイダーで割ると良いよ。他にもパンケーキやヨーグルト、バニラアイスにかけるのもアクセントになるし、色も赤いので素敵な感じになりますので、是非お試し下さい。
なんで説明口調かって?
現実逃避したいからに決まってるじゃない。やぁねぇ。
「ナミ、なんか現実逃避してんだろ」
「なんでわかるの!?」
「なんとなく、かな。……震えは、落ち着いたな」
「うん、ありがとう」
そうして私とサンジ君は、ルフィのお目付け役として1緒に行く事になったけど、行く前に宣言しておく事を私は忘れない。だって、叱られたくないもん。
「私は基本的に、ルフィの全てを肯定するわ!」
「「「阿呆か!!なんの為に行くんだよ!?」」」
「私行きたくないって言ったじゃない。知らないわよ」
ゾロ、ウソップ、チョッパーの声が重なったのにべーっとしつつ言葉を返してから、ルフィを追い掛ける。そうしてルフィを先頭に、サンジ君、私と続く形でブルックの船へ向けて登って行く。
後少しで到着すると言う辺りで、ブルックが上から私達を覗き込んでいて、流石のルフィも、実はお化けが駄目なサンジ君も悲鳴を上げる。でも、相手はブルックだからなぁ。
船に乗り込めば、ブルックが明るく自己紹介を始めた。それは何処か物悲しくて、切なさが胸に広がる。
ブルックのいる船は大きな物で、長い事海をさ迷って来たのが解る。甲板はギシギシと音を立てていて、中へどうぞと言われてもそれは……と遠慮したくなる程。
「だいたいよーナミお前〝宝船〟楽しみにしてたろ」
「宝船……ねぇ?」
「こいつが宝の番人なのかも知れねェだろ!な、骸骨!!」
そう言って本人ににししと笑うルフィを見て、こりゃダメだと思う。そうね、でも……ヤッパリ中を見せて貰おうかしら。
この〝ルンバー海賊団〟の船ならば、珍しい楽器もあるかも知れない。今では残って居ないような楽器があるなら、サニーに持ち込んだ方が良いと思うから。
「麗しきお嬢さん、私、美人には目がないんです」
突然掛けられた声に意識を向けると、途中ギャグ的発言を混ぜこみながらの挨拶に、私は小さく息を吐く。嗚呼、間違いなくブルックだわ。
骨だけだから声帯とかも無い筈なのに、どうして喋れるのか、筋肉がないのにどうして動けるのか、その辺は完全に無視してブルックの言葉を聞く。ルフィはそれを楽しそうに見ながら、ふぅん……と小さく声を落とす。
「パンツ、見せてもらっても……宜しいでしょうか?」
「見せるかっ!!」
咄嗟に私がブルックを本気で蹴り飛ばしたのは、不可抗力と言ってもいいと思う。骨身に沁みると言ったその言葉が、無駄に重い。
笑いを誘う為にそれをネタにされて無ければ、泣いていたかもしれない。だって私がブルックの立場なら、耐えられないだろうと思うもの。
そんな事を考えている私の行動に、ブルックは楽し気に笑うから私はその先の反応に困ってしまう。恐らくブルックは、本当に嬉しいのだと分かるから、苦しくなる。
でも、ここで泣いたら変な奴確定だしと思えば耐えるしかない。皆に私の事を話したから、多少の奇行は見逃して貰えるのだとしても、あまり極端な事はしたくないと思うし、ブルックは何も知らないのだから……。
ブルックがルフィからの変な質問に答えて、サンジ君からの質問にも答えようとした時、ルフィが言う。まるで太陽は必ず登るとでも言うように、冬は必ず春となるのだとでも言うように、当然の事として言う。
「そんな事よりお前、俺の仲間になれ!!」
「ええ、いいですよ」
サンジ君は叫ぶけど、ルフィが決めたならそれでいい。そう思って私はブルックに手を差し出す。
「宜しく……骸骨さん。私はこの1味で航海士をしてるの。名前はナミよ」
「……宜しく、お嬢さん。貴女は、私を怖がらないのですね」
「貴方は、優しい気配を纏ってるし、ルフィが仲間に誘う相手に〝悪人〟はいないもの」
名前を呼びそうになるのを耐えた私を、誰かに褒めて欲しい。そう思いつつ、笑顔を向けるとブルックは少し戸惑い気味に手を握り返してきた。
思っていたよりも冷たくないブルックに、生きてるのだなぁとしみじみ思う。骨だから、もっと冷たいと思っていたわ。
「ナミも賛成か!」
「えぇ船長!仲間に関しては、ルフィが決めたのならそれでいいと思ってるわ」
私が笑って答えたら、サンジ君が雄叫びを上げていたけど、気にしてる場合じゃない。急いで持ち込む物を用意して欲しいと言って、ブルックに必要な物を揃えて貰う。
それの途中で、嫌がるのが普通でしょうと言うブルックに、笑ってしまう。皆最初は嫌がると思うけど、ルフィが決めた事だし、貴方なら問題ないと思うわと……そんなような言葉を口にして、珍しい形の楽器達を纏めていく。
山積みになっている紙の中に、もう残ってないと思われていた幻の譜面等も見付けて、思わず瞳を輝かせた私はブルックに向き直る。借りていいかと聞く為に。
「あの、この譜面、貸し「差し上げますよ。……音楽が、お好きですか?」」
「えぇ、好きよ!この譜面はもう現存してないと言われていて、他にも廃れてしまった物が多いわ。これなんて調べても題名しか残って無くて……あ、これは題名が分からなくて歌詞だけ残ってるのよ!凄い……確かにここは〝宝船〟だわ!」
「……お嬢さん、貴女は……容姿だけでなく、心まで美しいのですね」
「へ?……あ、そんな事より、本当に貰っていいの?世界にこの曲達を復活させる為に、売り出したいって言っても怒らない?」
話をろくに聞いてなかった私は、譜面からブルックへと視線を移動させて、首を傾げる。それに表情が無いから分からないけど、ブルックは嬉しそうにしているような、そんな気がした。
「……曲が廃れるのは、忘れ去られるのは悲しい事です。どうぞ、手段があるのならば復活させてください」
「でも、描き写せば良いだけだもの、借りるだけでも……」
「いいえ、差し上げます。私は全て暗譜しておりますから、必要もありません」
そこで、譜面を見ると思い出すのかも知れないと思い至る。大切な、喪った、仲間達の事を。
それならばと思い、私は譜面を抱き締めるとありがとうと笑った。その瞬間、ルフィがこのピアノなんか音が違うと騒いでるのが聞こえて立ち上がる。
……まさか、チェンバロがあるの!?
このチェンバロとはピアノの前身であると言う説と、前身ではないが元になったと言う説があり意見は二分している。見た目は同じような形をしているけれど、ピアノはハンマーで叩いて弦を振動させて音を出す
ベートーヴェンやモーツァルトが使っていたのもこのチェンバロであり、それと同じ形の物は世界に3台位しか残って居ない筈。その中で音が出るのは2台、その1台は日本の音楽美術館にあり、ほぼ毎日、音が鳴らなくならないように演奏会が行われている。
つまり、歴史的価値の高い楽器の1つであると言う話なんだけど、これを語り続けたら多分それだけで数万文字になるので割愛する。そんな期待を込めて向かえば、予想通りにチェンバロがあり、私はルフィを押し退けて壊されていないかを確認するとブルックが背後で笑った。
「そんなに、楽器を愛してくださってるとは!お運びしましょう。貴女の元にあった方がきっとこの楽器も喜びます。……彼は、美しい女性が大好きでしたから」
それは、元の持ち主の事だろうか。ブルックは、今、その人を思い出しているのだろうか……。
そんな事を思って物悲しい気持ちになった時、ブルックが私に視線を向けてるのが分かり首を傾げる。どうやら、私の腰に視線があるみたいだけど。
「よく見れば腰のそれ、鉄笛ですね?珍しい物をお持ちですね」
「……これは、母がくれたの。戦う時の武器にもなるし、趣味として楽しむ事も出来るからって」
「素敵な方ですね」
「そうなのよ!!分かってくれる!?あのね」
そうして私がベルメールさんの事を語り出せば、ルフィが私を強制的に船に連れ戻すまでブルックは頷きながら聞いてくれた。そして、サンジ君が楽器や譜面を背負いながらブルックに言う。
「ナミさんに母親と姉について聞くと永遠に語るぞ。あの人極度のマザコンでシスコンだからな」
「ヨホホ!それは是非とも機会があれば、また拝聴したいですね!」
「……変な奴だな、お前」
サンジ君は優し気に笑い、ブルックは楽しそうにしていて、2人は今の1瞬の間に随分と打ち解けたらしいと知る。そうして船に戻った私達4人は、皆の反応を待つ事にした。
結果当然ながらウソップは怯えて現実逃避を始めるし、チョッパーはそれにつられて怯える。そんな中でブルックが、ロビンにまでパンツ見せろとか言うから何も考えずに蹴り飛ばしていたら、仲間にしたからというルフィの言葉にゾロが怒り狂った。
「おめェらはいったい何の為について行ったんだ!こういうルフィの暴走を止める為じゃねェのか!?」
「面目ねェ」
サンジ君は珍しく素直に謝るけど、私は謝らない。だいたい私は最初から言っておいたじゃない。
「何言ってるのよ、くじ引きで負けた程度の人選に何を期待してるの。私は、ルフィが決めたのなら、余程の事が無ければ止めないわ」
「これは余程の事だろうがよ!!」
ゾロの怒りを無視していたら、フランキーも含めて賛成意見は無さそうでアレ?と思う。ロビンは私と同意見なのか、特に反応が無い。
だから私はロビンに視線を向けて、どうやらこの船はこれからまた随分と賑やかになりそうねと言って、ロビンと小さく笑い合う。そんな私達に男達はルフィを甘やかすなと怒るけど、無理よねそんなの……と言ってまた2人でクスクスと笑い合った。