※この作品はR-18です。

波間の向こうを目指して(新・本編)   作:夢枕 七変化

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ゾンビ達との戦闘

 私達の意見は特に纏まる事は無かったけど、敵に囲まれている事だけは三人の共通認識とした。なので私はそのタイミングで二人に塩を渡しておく。

 ゾンビが口を開けた時、使えば多少は効果があるかも知らないと言う考えで渡した。けど、強いメンバーには説明も出来ずに、更には渡しそびれてしまったのでそれが少し気掛かりだったりする。

 そうして応接室に戻ると明かりの1つもなくて、ホグバックもシンドリーちゃんも姿が見えない。呼びかけると蝙蝠もどきがいて、部屋に案内すると言い出した。

 でも、私は覚えているのよ。……よくも、墓場の真ん中に置き去りにしてくれたわね……こ、怖かったんだからぁー!

 キッと睨み付けて、言葉を口にすれば蝙蝠は少したじろいだ。私は多分涙目だろう。

 

 「嘘ばっかり!アンタの達、島中のどいつもこいつもグルなんでしょ!?」

 「そ、そんな人聞きの悪い事を言わずに……」

 「また、性懲りも無く〝ご案内〟だと!?」

 

 ウソップの言葉に私も続くように言葉を口にする。蝙蝠の名前、覚えてあげないんだから!と意味の分からない事を考えながら。

 

 「そこが本当の冥界への入口かしら?折角だけど、私達、今すぐお暇させて頂くわ」

 

 チョッパーはドクターともう少し話をしたいと言うけど、その辺を無視してドアに向かう。けれどもドアは固く閉ざされていて、しまったと思った。

 その時にはモナ・リザをモデルとしたと思われるゾンビがチョッパーに襲いかかっている所で、心臓が嫌な音をたてる。チョッパーを守らなきゃ……!

 慌ててモナ・リザもどきの大きく開いた口に塩を投げ込みチョッパーを解放するけど、その間に他のゾンビ達も動き出してウソップがそれに応戦する。泣きながら逃げ惑うチョッパーを気にかけながら口を大きく開くゾンビには私が塩を、それ以外にはウソップが燭台の蝋燭を投げて戦う。

 でも、それにより本気になったゾンビ達は案外強くて、しかも疲れを知らないときた。塩で影を解放するか、炎でその身を焼き尽くさない限り永遠に動き続けるコイツらは、この場ではある意味無敵に近い。

 ……こんな時、エースが居てくれたらなんて考えた私は駄目な上に情けない姉よね。そんな事を考えていたからか、私はウソップとチョッパーと共に暖炉へと追い詰められてしまう。

 どうしたらいい、こんな袋小路で……と思った直後、ゾンビ達の攻撃がこちらに向かって来ているのに気付く。それにより咄嗟に、私が二人を庇わなくてはと前に出ようとした。

 それをウソップが止める為に掴まれ、それによりバランスを崩した私がチョッパーに倒れ込む。その結果クルリと壁が回転して、後ろへと転がり出てしまった。

 どうやら隠し通路だったらしいそれに、今来た道を戻る訳には行かないからと三人で頷きあって走り出す。戻れば危険なら、何処か少しでも安全な場所がある可能性の残る先へ進む道の中で、少しでも休める場所を求めて走るしか無い。

 成程、ゾンビが沢山いるのが見えたのはこういう事かと思いながら、私は二人と共に廊下を駆け抜けて行った。途中で姿を見せるゾンビに悲鳴を上げつつ、口を開けて襲い掛かる彼等に塩を投げ込んで行く。

 そうして追いかけて来るゾンビを1体でも多く減らしつつ、逃げ惑う私達。そんな私達がゾンビ達に追い立てられて逃げ込んだ部屋は、メイドだと紹介されたシンドリーちゃんの写真が大量に飾られている部屋だった。

 

 「改めて見ると、綺麗な人ね。使用人のシンドリーちゃん」

 「本人の部屋か?」

 「自分の部屋にこんなに自分しか写ってない写真飾ってたら、相当なナルシシズムよ。まぁ、私には関係無いけど、話したりした感じでは、そんな様子は見受けられなかったわね」

 

 だからこそ、どうなっているのだろうと考えながら部屋の中を物色していたら、新聞記事を見つけて何気なくそれに手を伸ばす。因みにナルシストと言うのは日本人の造語で、ナルシシズムからのナルシシストでナルシストと変化したものである。

 部屋の中を探るつもりで見て見れば、完璧にシンドリーちゃんのファンが作ったシンドリー部屋としか思えない。恐らくはここにある衣類も全て、シンドリーちゃんの関連だろう。

 でもそうなると彼女が〝メイド〟である事が可笑しくなってくるわね。新聞を開き記事を読めば、全てシンドリーちゃんの事が書かれていて、それの1番最後のページには、シンドリーちゃんの死亡が伝えられている。

 それの日付は十年前。即ち……シンドリーちゃんは十年前に死んでいるという事だ。

 記事にある生い立ち等を見れば、メイドである事なんて有り得ない。そうなれば……と思い返してみても、彼女に番号は見当たらなかった。

 けれど、彼女もゾンビである事に間違いは無いだろう。番号が無いということは、彼女が初代の創作ゾンビである可能性が高いかしらね。

 その事を2人に伝えれば、本当にゾンビだったのだとウソップとチョッパーが騒ぐので、塩を取り出して言う。これは、大切な事案だもの。

 

 「肉体はその能力を、影はその性格や戦闘スタイルを反映するとしたら……私達を追ってきてくれてるだろうルフィ達の性格をしたゾンビに会ったら、これを口に入れてさっき私がやってたみたいに影を解放して!」

 「影を?」

 

 チョッパーの言葉に頷く。だって、そうでしょう。

 

 「ブルックは影を取られたと言っていたわ。そして、ゾンビに塩を投げ込んだら影が飛んで行った。なら、あの影は本来の持ち主の元へ帰ったと考えられるわ。それならルフィ達と性格の同じようなゾンビを見たら、塩で解放するしかないじゃない。ゾンビは影の戦闘能力が大きく反映されるのに、体がずっと動き続けるのよ。燃やすか塩で影を解放するかなら、塩の方が可能性あるじゃない」

 

 と言うか、それしか可能性無いじゃない。ルフィが影を取られてしまった後ここを追い出されてしまえば、考え無しのルフィなんか、1瞬で消え失せるわ!そんな事、許せるものですか。

 チョッパーは先程口から黒いものを出して動かなくなったゾンビを思い出したのか、小さく頷いてくれる。けれどもウソップは納得出来ない様子を見せた。

 

 「でもよ、あのルフィから影を取れるか?やり方はわかんねェけどよ」

 「食べ物で釣るとか、嘘ついて騙して隙を作るとか、いくらでもやりようはあるわ」

 

 ウソップの言葉に答えれば、2人はハッとした顔で確かになんて言う。なので私はもう少し情報が無いかなと、室内を物色して行く。

 そうして見付けた宝箱に瞳を輝かせたら、中からゾンビが飛び出して来た。そのゾンビに驚いて、私達は外へ飛び出してしまう。

 

 「残念~!!財宝置場はここじゃねェよ~っ!!」

 

 外には絵画から飛び出したままになっているゾンビが待機していて、ウソップが渡してあった塩を口の中に打ち込み浄化しつつ、逃げ場を作ってくれる。流石は狙撃手と言いたくなる腕前で、見事に塩をゾンビの口の中に打ち込んで行く。

 それにより本当に動かなくなったゾンビを見て、ウソップとチョッパーはこれなら逃げ切れるかも知れないと頷きあった。私は自分用に3個程塩を残して、後は2人に塩を託す事にしてしまう。

 ウソップは狙撃手なので、上手く口に入れて浄化しながら進んでくれる可能性があるかなと思ったのが大きい。チョッパーは力があるから、上手く押さえ込んで口に塩を入れられるかも知れないもの。

 それにしても〝財宝置場はここじゃねェ〟ね。という事は、何処かに財宝置場があるという事だわ。

 もしもこの時ナミ達を探している、強者メンバーが揃って墓場のところにいると知っていたら、3人は泣きながら来た道を引き返していただろうと考えると、何とも間が悪いとしか言えない。何せナミの心は、既に財宝に向いてしまっているのだから。

 なので当然、ルフィ達に負けた墓場のゾンビ達が正座させられて問い詰められている事をナミ達は知らない。そちらの状況も折角なので、少し紹介させて頂くとする。

 

 「鼻の長ぇ男と、オレンジの髪の長い綺麗な女と、トナカイみたいな狸。それと歩くアフロの骨は、ここを通ったか?」

 

 そんなルフィの問いにシラを切ろうとして、内輪揉めから全てを話してしまうゾンビ達に、明日は無いかも知れない。何せゾンビは余計な事を口にしてしまったのだから。

 

 「お前だって噛んだだろ!」

 「皆で襲った」

 「言うなよ!」

 「だってよ、あの体だぜ!?襲うだろ!」

 「女の肌とか、久々だったな」

 

 ゾンビのその言葉にフランキー以外が全員殺気立ち、フランキーでさえ不愉快そうな様子を見せる。だが、ゾンビ達はその事に気付かずに会話を続けていた。

 

 「素直に怯えてくれて可愛かったよなァ」

 「肌がピチピチで、鼻がちゃんとしてりゃいい匂いしたんだろうなって……おい、なんか、ヤバくないか?」

 

 そうしてゾンビ達は、麦藁の1味強者組の怒りを受けて原型を留めているのが奇跡の様相となった。この事をナミがもし分かっていたら、最強メンバーとの合流をせずに逃げ回るだろうと言う事を考えれば、最弱トリオがそちらの動きを知らなかったのは不幸中の幸いと言えるのかも知れない。

 ところ戻ってナミ達はと言えば、3人仲良く研究室を覗いていた。縫い合わされた傷跡が生々しいシンドリーちゃんを相手に、ホグバックは会話をしながらゾンビを制作している。

 中にいる2人は自然に思える。彼等が本当に創り出した者と、創られた物であるとは考えたくも無いわね。

 それに、もしもそうだとするならば、ホグバックは見た目が好きなだけで中身はどうでもよかった事になるわね。それなら、人形でも良かったでしょうに。

 ……ナミちゃんの容姿なら、中身が私でも別な誰かでもいいのかって話だ。極端な話、見た目が私で中身がフランキーとかでも許されるのか。

 ……考えたらなんとも言えない位、ヤダなって思う。ナミちゃんの見た目をしたフランキーとか、凄く嫌。

 そんな事を考えながら3人で会話をしていた為に、私の注意力は散漫となっていた。ここが敵の巣窟だという事実を、失念してしまっていたのだ。

 

 「そんなに中が気になるならば、入って見れば宜しいのに」

 

 そんな声が突然聞こえて、私達は研究室に逃げ込む他無くなってしまった。更に言えば、それを言った相手の声や口調が明らかにブルックなのだから、嫌な気持ちにもなろうと言うもの。

 しかもそれが原因で、ホグバックに研究室を覗いた事がバレてしまい、私達は絶体絶命のピンチに陥っている。けれどもホグバックは怒り狂う事無く、どちらにしろもう時間だと言って笑う。

 ……どうやら逃げ出すには遅すぎたようだと気付いたけど、打つ手は見付からない。戦って倒すか、負けて殺されるかって状況かしらね。

 挟み撃ち状態にされた私達は、とりあえずより強そうなゾンビの方を向く。即ち、ホグバックとシンドリーちゃんを背後に置く事になる。

 これだけの敵に囲まれていて、勝ち戦に持って行けるとは思えないけど、クリマタクトで姿を隠すには少しばかり時間も足りない。仕方なく短剣を引き抜く為に手を伸ばした所で、言葉を向けられる。

 

 「おお、麗しのお嬢さん。そのようなセクシーポーズを取られるとは……。折角です。パンツ……見せてもらっても宜しいですか?」

 「……ナミ、こういう事か。影の持ち主にこうして似るって訳だな」

 

 ブルックもどきの言葉に、ウソップはそう言って納得してくれる。だから私は頷きながらもブルックもどきに微笑みを向けて、ゆっくりと短剣を引き抜く。

 その直後何気無い様子で私達の元へ歩いて来るブルックもどきが、恐ろしい速度で剣を抜いたのが分かってしまい短剣で応戦するけど2人を庇いきれなかった。小さく舌打ちする私に、ブルックもどきは感心したような声を出す。

 状況を飲み込めてない2人は、シンドリーちゃんの元へと移動したブルックもどきを見て、嬉しそうに逃がして貰えるのかと盛り上がる。とりあえず庇えなかったけど2人に異変は見受けられないわね。

 ……と、私も揃って頷いてから走り出した。けれどもその直後、2人がその場に倒れるのを確認すれば私は咄嗟に2人を支える為に短剣を足に戻す。

 

 「二人とも!しっかりして!!」

 

 2人を抱えて逃げるなんて出来ない。でも、置いて行く事も、戦って勝つ事も出来るとは思えない。

 ……ルフィッ!

 

 「あまり、麗しいお嬢さんを傷付けたくは無いのですけどね」

 

 そう言いつつブルックもどきが近付いてくるから、私は2人を庇おうと2人の前に立つ。そして、再び短剣に手を伸ばしたけど、私が短剣に触れるより早く斬られたのが分かる。

 

 「……2人を庇っていなければ、避けられたとお見受けします」

 「買い被りよ……私は、か弱いんだから」

 

 これ、後から来るやつだわと思いながら、負けを悟る。それでも2人を庇おうとクリマタクトで2人の姿を消そうと準備していたところで、体に走った衝撃により私の意識は暗転した。

 間に合わなくて……ごめん。守りたかった、のに。

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