攻撃後の地面まで落下途中と言う1番無防備な瞬を狙って、オーズが攻撃を仕掛けて来る。それを見て慌てて飛び出したけど、落下して来るチョッパーを抱き留めるのが精一杯で、サンジ君を助けには行けなかった。
その結果現在この場で意識を保ち残っているのは、僅か三人となっている。……私、ウソップ、ゾロだ。
チョッパーは私の腕の中で意識を失っていて、そっと物陰にチョッパーを隠すように寝かせる。皆、戦い、傷だらけだけど……諦めるなんてつもりは無いのだと伝わって来るから、私も勝つつもりでオーズを睨み付けた。
何だか懐かしい気がするメンバーに、私はクリマタクトを構えて雷雲を生み出しながら何が出来るかと考える。その時ゾロの声が響いた。
「ウソップ!」
「ん!?」
「俺が隙を作る」
「んぁ?なんの!?」
そう言った直後にゾロがオーズの手に剣を突き立てながら、上へと登って行く。それを見たウソップは、理解した様子で行動を開始する。
そうしてゾロとウソップが協力して塩を口に入れる事に成功した時には、ゾロが既にやられていた。でも、これで後はロビンの影を取り戻すだけ……!
でも実際には……モリアにそれを防がれていて、ゾロも既に意識があるかさえ怪しいのに敵の攻撃に晒されてしまう。その直後、ウソップが私の目の前で潰されてしまった。
私は作っていた雷を落としてから、ウソップの元へ駆け付けようとしたけど、オーズの攻撃はこちらに向いてしまう。今私がウソップに近付けば、ウソップを更に傷付けると気付き動きと思考が1瞬止まる。
その結果、そのまま私はオーズの攻撃をモロに受けるしか道が無くなってしまった。だって、クリマタクトで踏み付けてくるオーズの攻撃を防げると問われたら、私の力では防げないだろう事は火を見るより明らかだもの。
逃げるにはオーズの動きは早すぎて、それでも今動けるのは私だけだからと、無駄と思いつつもサンダーチャージして踏まれる時に僅かでもダメージを与えておこうと睨み付ける。1応身体に覇気は纏うつもりだけど……この巨体によるその威力を思うと、何処まで耐えられるかは未知数。
それでも、ただ殺されてなるものか!
けれども突然腰を力強く抱き寄せられる感覚があり、体が宙に浮く感覚に襲われる。そうして気付いた時には、暴れるオーズから私は離されていた。
その移動中に私は助けてくれた人物に声をかける。だって、逆の手にはウソップもいるのが確認出来ているから。
「助けてくれてありがとうございます」
言って顔を上げればルフィっぽい面影を持つ、巨大な人物でへっ!?と、妙な声が出る。だってソレは、ルフィだと私の本能が告げるから。
「まさか……ルフィ?」
「おぅ、そうだぜィ」
そうして私とウソップを降ろすと、オーズに声をかける。その姿を見て、何だかルフィが少しでは無くおかしいなと思うけど、この戦いに勝つ為には仕方ないのかもしれないわねと思い、細く息を吐き出す。
「おい、デケェの!!お前はいったい何を踏み潰してるんだ?」
それにしても、言われてみれば確かにルフィなのかもしれないけど、風貌が変わりすぎて驚く他ない。でも、簡単に皆の状況を話して、ルフィの邪魔にならないように少し離れる。
私に何か出来る事をと考えるけど、妙案は浮かばない。パワーアップしまくったルフィを見ながら、私とウソップはただ立ち尽くすしか出来なくて、下手に動けば邪魔になる現実がつらい。
オーズとの戦いにルフィは身を投じる。でも……それが許されているのは、僅かな時間だった筈だと思うのよね。
そう思って空を見上げれば朝日も登ろうとしているし、ルフィの変身の理由は思い出せないけど、短時間だけのドーピングだって記憶してるのだから、不思議なもの。下を見てみると、知らない人達が皆の周りに集まっているのが見えて、何かされては困るとウソップと頷き合ってから共に慌てて降りていく。
私は飛び降りるだけで済むから楽だけど、ウソップは降りてくるのに苦労してる様子で、連れて降りれば良かったかななんて少し思う。降りた先でルフィがああなった事情を聞けば、成程と思う。
ルフィは今圧倒しているし、上手くこのまま倒してくれたら取り敢えずはそれで良いけれども、ルフィの体が心配になる。本来出来ない事を、無理矢理体が行う事による肉体へのダメージは半端なものでは無いだろう。
だからと言って、今他に解決案がある訳でもない。脳内は今色々なそれが混ざり、私は混乱している。
「ルフィ……」
戦いを見上げていると、自然と眉が寄るのが解る。私は、ここで何をしているんだろう。
……どうしていつもルフィにばかり負担が行くのだろう。私はいつもたいした怪我もなく、守られてばかりだ。
オーズが倒れてルフィも地上に降り立つ。そのルフィが、地上に降り立つのと同時に苦しそうな声を上げながら影を解放していく。
戦いには勝ったけどルフィが倒れてしまうから、私はルフィの元へと駆け出す。倒れる直前でその体を受け止めれば、いつもより少し体温が高い事に気付く。
「ルフィ!」
ルフィを心配してウソップと共にルフィの傍に居る状態で、皆はどうやって影を取り返すかを話し合う。被害者達は本当にルフィに期待を込めて、悪意無くやったのだと分かるから、責める事は出来ない。
……でも、何でかしらね、苦しいのよ。胸が、切ないような苦しさを訴える。
その時振動と共にオーズが起き上がるのが見えた。私はルフィの頭を1度撫でてから、その場にそっとルフィを寝かせてクリマタクトを扱いやすい見晴らしの良い所へと移動する。
ルフィは戦いが終わってないなら起きるだろうし、起きなくても倒さなければならないのならば、倒すしかない。ここで負けたら、私はルフィを……大切な仲間達を喪う。
クリマタクトを強く握り締めて、前を見据えれば皆が起き上がるのが見えた。私はもう独りじゃない、だから、戦える。
ずっと……独りで戦ってきた。だから、誰かと戦うなんて仲間である彼等としかやった事は無い。
だから……ずっと苦手だった。なのに……どうしてかしらね。
苦手だった筈の〝共闘〟がいつの間にかやりやすく思えるようになったのは。何も言わなくても、分かり合えるようになって、それが……泣きたくなる程に嬉しい。
ルフィのおかげで弱ってるオーズだから、これは最後の仕上げだ。ルフィがロビンに声を掛けて、それだけで本来ならば3日は寝てる筈のロビンは起きて、微笑み返事をする。
それに合わせるように、ブルックも立ち上がる。ルフィがブルックに頼みがあると言った時点で、私の顔が自然に笑顔になっていくのが自分で解ってしまった。
「そう来ると思った!もう全員サポート体制に入ってるわ!」
「見てろ」
私の言葉にルフィは笑うと敵に向かい1言だけ発する。私はルフィのその言葉に合わせるように雲を作り出す。
皆がすぐに動き出したのを見て、タイミングを合わせようと深く息を吸う。タイミングを間違えば、これはなんの価値もないものになってしまう。
ルフィがロビンの手で上に向かうのを見て、私はそれを発動させる。今だと言われなくても分かるから。
「天候は雨!
フランキーとウソップが協力して、雨で濡れたオーズの体に冷気をかけて凍らせる。それに続いてサンジ君が、鎖をオーズに巻き付けた。
ブルックがルフィを投げ落とし、ルフィは拳を構えた。それに合わせてチョッパーがゾロに指示を出せば、攻撃により弱ったオーズをサンジ君が鎖で調整する。
「行って!ルフィ!!」
思わず叫ぶように、祈るように言葉が飛び出す。そこにオーズが反撃しようとして、腕が動かない事に動揺しているのが分かる。
「ダメージに気付かないのは、ゾンビの弱点ね」
「てめェの影だ。ケジメつけろ。ルフィ」
ロビンとゾロの声が聞こえる。他の被害者達も声援を送り、必死の形相でルフィを見ているのが分かる。
私は、痛覚がないのも、疲労を感じないのも強味だと思ってた。だってそれなら死ぬ迄ずっと戦えるから。
でも、きっと……そうじゃなかったんだわ。ロビンもチョッパーも、それは強みなんかじゃないと言うし、多分実際違うんだろうと今なら分かる。
準備の整ったそこへルフィの攻撃が届けば、オーズの骨は粉砕されて、動く事が出来なくなる。けれども喜びにわく人達の前で、モリアが立ち上がってしまう。
既に、朝日は登り始めている。戦いはまだ、終わってない。
「仲間なんざ〝生きてるから〟失うんだ!!」
モリアの言葉を、私は否定出来ない。モリアの考えを、私は否定出来ない。
大切な人達を、
……苦しい、わね。私もモリアの能力があれば、モリアの立場ならば……夢を叶える為に、もう二度と喪わない為に、同じ事を選択したかも知れないと思うから……。
そうしてすべての影を吸収したモリアは、ルフィと対峙する。巨大になったモリアと、満身創痍のルフィは、けれどもどちらも闘志がみなぎり手を出す事が許されない雰囲気を出す。
私達はただ、2人の戦いを見ているしか出来ないし、してはならない。ルフィを見詰めて、それぞれがその場から動かない。
「おい皆!!もう時間がねェ!!ちょっと無理するからよ!その後の事は、頼むっ!!」
ルフィが無理をすると宣言して、後を任せるというのならば、この後の事を任される為にも私達はルフィを見ている。ただ、ルフィの勝利を待つ為だけに、その未来を信じて。
被害者の会と名乗る人達は騒ぐけど、私達はルフィを見据える。この戦いで負けたら、私達はルフィとロビンを喪う事になる。
だけど私達は知っている。未来が分かるとかそんな事じゃなくて、ルフィがこの戦いに負けないという事を知っているのだ。
朝日が昇る。光が差し込む。
潰されないと、それはゴムだからだと言い切るルフィに、その心の強さに、だからこそ魅せられ、惹かれているのかも知れないと思う。私は、ルフィを……信じてる。
影を取られた被害者の会の女性が叫べば、それに合わせて被害者達が自らの影に声をかける。ルフィはそれを聞いて自分の影にも言葉を向けて、そして……ギア2とギア3を重ねて使った。
「ルフィっ!それは流石に看過できないわ!ルフィッ!」
見ているだけなんてもう耐えられなくて、私も参加しようと足を踏み出した時、ブルックが私の腕を掴んだ。それに視線を向ければ、静かに首を横に振り呟くように言う。
「それは、駄目です。ここは男のタイマン。1騎打ちに、手出しは……許されません」
分かってる。分かってるけど、ルフィがっ!
泣きそうになる私にブルックは、大丈夫ですよと言ってルフィへとその顔を向ける。ここに居る誰よりも付き合いの長い筈の私だけが、取り乱して……情けない、わね。
戦いにはルフィが勝ち、モリアは倒れた。影は順番に解放されていく。
しかし、勝ったにも関わらずルフィとロビンは体が半分溶けてしまっているし、他の被害者の会メンバーにもそんな人達が混ざっている。それを見て皆が叫ぶように名を呼ぶ。
「ルフィ!ロビン!」
私も2人の名を呼び、膝から崩れ落ちそうになる自分の体を必死で支えている。戦いには勝った筈なのに、大切な人達と別れねばならないのかと嘆きがその場を支配した次の瞬間、消えかけていた体は復活を遂げた。
それを見て皆は力が抜けたようになってから、大騒ぎになる。大歓声が沸き起こり、私は倒れて居るルフィの元へ行きそっとその体を抱き起こす形で抱き締めた。
ルフィの、鼓動が聞こえる。ルフィの体に、熱がある。
「良かった、ルフィ……生きてる……」
「ナミ」
誰が名を呼んでくれたのか、それを確認する事さえ、今は出来そうにない。ただ、意識のないルフィを私は、震える体で……強く、抱き締めていた。