サニーに戻った私は、図書室に今描きあげた図面を置いてから蜜柑の様子を見に行く。相変わらず元気そうな様子に少しホッとして肩の力を抜いてから、私はお風呂場に向かう。
海水にも浸かってたし、魚の居る湖にも落ちたから、ルフィに言われたのもそうだけどなんか臭いのは気になってたのよね。その時ルフィがサニーへと戻って来るのが見えて、何かあったかなと思いながら服を脱ぎ始めたらルフィが窓から入って来た。
「きゃー!!」
「……何度も見てんのに、悲鳴あげる事なくねェか?」
「う、五月蝿い!する時と、お風呂は違うのよ!」
「……風呂も大概いつも1緒に入ってんじゃねェか」
「お黙り!」
私の言葉を受けてルフィは黙ったようだったけど、それと同時に動いて私をその腕に閉じ込める。ルフィから、太陽と汗と、土の匂いがして……ずっと、本当にずっと皆を探し回ってたんだとそれにより思い知らされた。
ルフィは何も着てない私を抱き締めたまま、黙っていて……そのままただ髪を弄っている。何がしたいんだろうと思うけど、久々に近くに居るからか少しだけ幸せだなとか考えてしまう自分もいるのが困りもの。
「ナミ」
「ルフィ?」
「……風呂、1緒に入ろう」
「どうしたの?ルフィがそんな事言うなんて。具合でも悪いの?」
熱でもあるのかとその頬を両手で包んで額を付き合わせれば、ルフィが馬鹿か!?なんて怒鳴るので思わず耳を塞いでしまう。馬鹿とは何よ、馬鹿とは!!
そう思ってキッと睨み付けたら、ルフィが心底気に入らないって顔で私を見ていて……。なんだろうと思った所で私の闘争心は消え失せてしまっていた。
そんな私の腕を掴んで風呂場に押し込んだルフィは、すぐ行くからなんて言っていて……。まぁ、良いかと思って私もお風呂に入るようにお湯を溜めつつシャワーを浴び始める。
頭からお湯を被っていたらルフィの入って来る音が聞こえて、そちらに視線を向けるとルフィが入口で立ち止まっていた。そして、何故か放心したような顔で私の方を見ている。
「ルフィ?」
「ナミが、綺麗すぎて……驚いた」
「褒めても何も出ないわよ。……頭と背中洗ってあげるから、こっち来て」
「おぅ!」
そうして嬉しそうに応じたルフィの頭を洗いながら少し話をしてみれば、私から知らない匂いがしたのが耐えられなかったと繰り返し言うので、ルフィは匂いに本当によく気が付くななんて思う。ミホークの麝香ならまだしも、他の誰の匂いでもルフィは敏感に感じ取る。
ドフィはコロンか何か使ってるけど、シャンクスは特に何か使ってる訳でも無いのに気付いたし、凄いわよね。シキは葉巻の臭いがあるから、それが気に入らないのかな。
「痒いところとか、無い?」
「大丈夫だ。寧ろ気持ちいい」
「なら良かったわ」
ルフィの頭を私用のシャンプーで洗い終えて綺麗に泡を流した時、ルフィが不思議そうな顔で私を見た。なんだろうと思って首を傾げると、ルフィは徐にその唇を動かす。
「ナミとロビンって違うの使ってんのか?」
「……よく、気付いたわね。私はラベンダー入りで、ロビンのはカモミール入りなのよ」
「最近、サンジも似てるけど違う匂いがしてたのは?」
「本当に、凄いわね。サンジ君はシャンプーとリンスだけ頼まれて作ったのよ。レモンミント配合でね。因みにゾロはペパーミント配合のボディーソープだけよ」
「良くわかんねェけど、ナミの蜜柑と少し皆違う匂いがして、その他に本人の匂いがあるから、似てるけど全員違う匂いだなと思ってたんだ」
ルフィって動物なのかしら?チョッパーなら分かるけど、ルフィに指摘されるとは思わなかったわ。
そんな事を思いながら、どうしてそれぞれ配合を変えて作ったのかとかそんな話をする。その間もルフィの頭にリンスしてトリートメント効果が出るようにしてから、泡立てたタオルで背中をゴシゴシと磨いていたんだけどね。
「他の場所は自分で洗ってね。私はこれから自分を洗うから」
「ナミの事、洗ってやろうか?」
「できるの?」
「シッケーだな!エースとかサボとも洗い合ってたんだから出来るに決まってんだろ!」
決まってる?
決まってるの?
そう思ったら笑えて来て、ついクスクスと笑ってしまう。そんな私にルフィは不満そうだから、謝りながらお願いしてみる事にした。
その為に先にルフィの方を終わらせて、頭のリンスも綺麗に洗い流してあげる。すると私としては、1仕事終えた感が半端ない。
その流れでルフィの前に座った私は、ルフィにお任せしてみたけど……。その指が妙に器用に動くから、嘘でしょうと思う。
想像してたのと違って丁寧に洗われて、その指の動きが繊細で気持ちいい。……ヤバい、寝そう。
「ナミ、眠いか?」
「だ、いじょう、ぶ」
「眠いんだな。良いぞ寝てて。寝てるナミ洗うの慣れてるからな」
それは、寝てるんじゃなくて……その。えっと……気絶してるとかって言うんじゃ?
そう思ったけど、チラリと視線を向けたらなんか物凄く優しい顔で私を見てるルフィがいた。それを確認したら、顔が真っ赤に染まってしまう。
そんな私にルフィは嬉しそうに笑うと、寝てても起きてても好きでいいぞなんて言う。だから私は、返事にならないと分かっていて唸るしか出来なかった。
私を洗い終えたルフィは浴槽にダイブして、その場で力が抜けてへにょーっとしてるのを見てしまえば、沈まないでよ!と言いながら水着以外の鞄ごと海水に浸かってしまった衣類を洗面器で洗ってしまう。
そんな私をルフィは楽しそうに見ていて、洗い終えるのを待ってルフィが言う。水着は既に外に干してあるから、ここには無いのだ。
「ほら、ナミも来いよ」
「ハイハイ。……本当にお風呂が広くなってこういう意味では助かったわね」
「俺は狭いのも良かったと思うぞ。風呂でくっついて居られただろ」
そう言ってにししっと笑うルフィに、馬鹿かっと叫んだ。けど……そう言えばルフィ、チョッパー、ロビンは能力者だからって、私呼ばれるといつも1緒に入ってたわねと今更気付く。
でも、流石にルフィが入る時毎回1緒に入るのってどうなのよ?
正確には毎回じゃないけど、ルフィが入浴する時の3回に1回は1緒に入ってるわ。チョッパーが入る時は3回に2回で、ロビンは毎回ね。
他の2人は良いとして、ルフィは異性なんだし、いくら恋人とは言えどもルフィと1緒に入る頻度が多過ぎるんじゃ……。って、そう言えばルフィってお風呂に入ったついでに襲うとかして来ないわね。
機能が無いとか、欲望が無いとか、そんな事は無い事は知ってる。散々抱かれてきた訳だもの。
だとしたら……もし、我慢とかさせてるなら悪いわよね。やっぱり今後はサンジ君とかゾロに言って、ルフィをお風呂に連れてって貰うべきかしら?
ブルックも仲間になったし、その方が安全そうよね。男は男同士じゃないと話せない事もあるだろうし、うん。
「ナミ、どうした?」
「ルフィって、お風呂場では襲って来ないなって」
「ンな事したらナミが逆上せるだろ。元々体力少ねェの分かっててやるかよ」
……いや、確かにそうなんだけどね。普通の入浴だって危険な場合もあるから、浴室とかでの性行為は確かに良くないけど……ルフィがそれを知ってるとは思わなかった。
それが顔に出てたのかルフィはシッケーだなと繰り返すけど、失敬では無くシッケーな時点でもう、ただ可愛いだけなんだけど。そう思っていたらルフィが風呂出てからやればいいだろなんて言い出すから、なんの為に今入ったのよ!?と叫んでしまったのは不可抗力だろう。
「ナミから変な臭いしたのが嫌だったからだ」
「ルフィ……」
「ナミから、いつもと違う匂いがするのは嫌だ。そういう時、ナミは無理してる事が殆どだからな」
声を失う私にルフィは触れる程度のキスを落として、愛しそうに私の頬を撫でるとそろそろ出るか!なんて笑う。それに頷いてお風呂を終えた私は顔が赤いのは、お風呂で逆上せたのよと自分に言い聞かせながらサニーの甲板に衣類を干してしまう。
干し終えた私を見て、ルフィが手招くから近付くと頭を拭かれて、それで使ったタオルをそのまま干そうとするのを止めた。それを受け取り、洗いに行こうとしたらその途中にある図書室でルフィに背後から抱き締められた。
もう、臭くないと思うんだけど、どうしたのかな。まだ、匂いが残ってたかな?
「ナミ」
「なに?」
「抱きたい」
「だから、今お風呂入ったばかりで……」
「……嫌か?」
問い掛けておきながら、辞める気の無さそうな動きでルフィは服の中に手を入れて来ていて、私は観念して部屋に行こうとルフィを誘ってみる。サニーを誰かが見付けたら……誰かが帰って来たら、ここだと不味い。
でもルフィは待てないと囁きを落として、ソファに私を押し倒した。動きは乱雑なのに、私に触れるその手が優しくて……元々ルフィに抵抗なんて出来る筈ないのに、更に抵抗力を奪われてしまう。
重なる唇が想いを伝えてくれる。逢いたかったと、無事で良かったと……そして、愛していると。
私の想いも、伝わっているのかな。触れ合う素肌が妙に心地よく感じる。
「ルフィ……」
「ナミ、挿れるぞ」
腫物を扱うように大切に扱ってくれるルフィに、私は笑って頷く。愛しい温もりに漸く触れられて、触れて貰えて、私は幸福だと自覚する。
帰ってきたかったのは、この場所なんだとルフィの腕の中で強く思う。ルフィの熱が中に入り込むのを感じて声を押し殺していたら、ルフィの手が背中をなぞるように動きその指の動きに体がビクッと反応してしまう。
「んっ……ぅ……!」
「誰も居ねェから、声を……聞かせろよ」
「やっ……!」
「何処まで我慢できるかな?」
「恥ずかし……っ!から、やっ!」
「いつもの事だけどよ、それ……煽ってるだけだって、自覚しろよ?」
どの辺が煽ってるってのよ!?と言葉にしようとして、与えられる甘やかな刺激に声を出す事が出来なくなる。重なる体、触れ合う肌、絡み合う舌、交わる視線。
このまま溶けて二度と離れないですめば、どれ程良いだろうと思わないと言えば嘘だけど……。離れているから、こうして触れ合った時幸福だと思えるのかも知れない。
ルフィの頬を軽く撫でて、そっとその体に抱きつけば、ルフィの動きが少しだけ乱暴になる。余裕のないルフィの表情に、私の方が煽られてしまう。
飢えた獣を思わせるそれに翻弄されながらも、ルフィの事が、私には誰よりも愛しいと想うのだ。体の内側に感じる熱に、とりあえず終わったのかなと思って、私はルフィの体からそっと手を離した。