いつまでも帽子を借りてる訳にもいかないからと、ルフィにそれを返せば、ルフィから強がり……と耳元で小さく囁くように言われてしまう。その直後レイリーさんはハチやルフィとこれ以上の話は後にしようと言って、ハチを背負い立ち上がった。
戦いに参加しないとレイリーさんは断言して、君達で乗り切れと言うけど……ルフィはどうするつもりかな。表からは、海兵達が降伏を推奨すると言う声が聞こえて来ている。
「俺達は巻き込まれる所か……完全に共犯者扱いだな」
「〝麦藁のルフィ〟の噂通りのイカレ具合を見れたんだ。文句はねェが……。
ローちゃんの呟くようなそれにキッドがそう答えると、レイリーさんは楽しげに笑う。それから私を見て、君が宝玉かと面白そうにその表情を変えた。
それにビクリと身体が震えたのは、シャンクスが私を狙ってた時の雰囲気と近いものを感じたからだろうか。……でも確か、この人はルフィの師匠になる人だから、悪人では無い筈。
そう思った時、シャンクスもミホークも、ましてやサンジ君やロシーだって、悪人では無いのだと言う事を思い出す。でも……抵抗出来ずに、関係は持ってしまった。
……とりあえず、不用意に近付かないのが1番よね。できるだけ、ルフィのそばに居よう。
「長引くだけ兵が増える。先に行かせて貰うぞ。宝玉の味見も出来た事だし……もののついでだ。お前ら、助けてやるよ!!表の掃除はしといてやるから、安心しな」
キッドがそう言って去るのを見送れば、楽できてよかったわねと声を掛けるよりも早く、私が今そばに居たいと願った人物と、治療の為に私を預かると言っていた人物が不機嫌そうに立ち上がりその背を追い掛けてしまった。……ある意味尊敬するわ、その、瞬間的な連携。
3人仲良く、喧嘩しながらも並んで歩く後ろ姿に脱力する。ローちゃんも、ルフィも、小さい頃から何にも変わってないわ……。
随分成長したのね……とか思ってた私の感動を返せ。そして私はこの場合、どうしたら良かったのかしらね。
「ナミ、動けるか」
「えぇ、問題ないわ。……ゾロこそどうなのよ」
「ナミ程重傷じゃねェよ。……動けるなら、行くぞ」
私はゾロのそれに頷き、歩き出す。その時1応確認とばかりに皆に視線を向けた。
ケイミーはフランキーが背負い、その護衛をサンジ君が率先してやってくれてるけど、実際戦いになったらそうは行かない筈よね。ならば……。
実際予定通りには行かなくても、ある程度の心積りはしておいた方が良い。そう言えば、私の治療するならゾロの治療も1緒にして貰うのかな?
だとしたら、どのタイミングでそれを行うつもりなのかな?
「ブルック、フランキーは今戦えないから、ケイミーとフランキーの護衛、任せるわ」
「ヨホホ!畏まりました」
レイリーさんは戦わないと言ってたし、ハチを背負ってる。チョッパーには治療の為にも、ハチに着いていて貰いたい。
「チョッパー、ハチをお願いね。ロビン、チョッパーとハチの護衛をお願い」
「おう!」
「任せて」
「おや、私の護衛はしてくれないのか?」
揶揄うような声音で告げて来るレイリーさんに、思わず胡乱な視線を投げ付けたのは許して欲しい。手が使えなくても、本来ハチの護衛だって此方からは不要な人物が、何を言ってるのか。
ウソップはそれでも真面目というか、優しいから、その言葉に俺が援護射撃してやるよと言うので泣きたくなる。ウソップ……なんていい子なの。
「ナミさん、俺は?」
「サンジ君もゾロもどうせルフィと1緒になって暴れるでしょ!?指示なんか要らないじゃない!そもそもね、こういう時指示を出すべきは船長のルフィ、そのルフィが居ないんだから、本来ゾロがやるべきなのよ!?」
「ナミがやった方が的確だろ」
そう言ってニンマリと笑ってから、ルフィとの付き合いも1番長くて深いからなと続けられれば、真っ赤にもなろうというもので……。そんな私を見て、言ったゾロだけでなくサンジ君までに1緒になって、珍しく声を合わせて笑うと、違いねェなと言う。
こんな時ばっかり息がピッタリなんだから……。とりあえず、ゾロが虐めたと言ってロビンに抱き着くと、帰ったら二人とも私が叱っといてあげるわなんて、幼い子に言うように言ってくれる。
そもそも、ルフィが全然隠してくれないのがいけないのよ。跡とか隠せないようなところにつけるし、皆の前でキスするし……!
「ルフィのばーか……」
「ナミ、こんな時に寂しいとか言ってんなよな。この隙に脱出しよう!」
「誰が!寂しいなんて言ったのよ!?」
無意識で呟いていたそれに反応して、妙な事を言うウソップにウガー!って気持ちで叫ぶように返事をしたら、皆の視線が突き刺さった。そして無言のまま、生暖かい視線を向けられてしまったのがどうにも気に入らない。
なのに皆そんな事は無かったかのように、直後に発せられたゾロの言葉に頷いて、動き出してしまう。……私も続くけどね!?
「続くぞ!!1気に突破する!」
「ではお前達……はぐれた場合、13番GRで落ち合うという事に」
レイリーさんの言葉にゾロが頷けば、ウソップが分かってねェよ絶対なんて騒ぐ。それを無視して、レイリーさんは巨人に視線を向けてどうするのか問い掛ける。
こんな時、バギーやシャンクスを殴って指導してたからこその余裕を感じられて、尊敬する。私もそのうちこうなれるのかしら?
「爺さん!!麦藁の仲間達……!!またいつか、どこかで会えたら、この恩はきっと返す!!ありがとうな!!」
巨人のその言葉に続くように、奴隷1歩手前達がお礼の言葉を紡ぐ。それを受けて、ウソップが答えているのを聞きながらルフィの後を追いかけて行った。
その背中が見えるようになった時には、大暴れしている三人が居て、私は痛みとかが原因では無い目眩に襲われる。なんで……こんな大騒ぎになってるのよ……?
嗚呼……ルフィが増えた。そう思ってふらついた私をロビンが支えて、仲良しねなんて笑うから、本当にねと力無く返事をしておく。
「おいおい、イキナリこれかよ……!」
「あの二人も当然の様に能力者か!!」
「スン!!スンゴー!目を疑いますね!!」
上からゾロ、サンジ君、ブルックである。それを見て暴れちゃってるとか、気が早いとか言ってる割に呑気そうなそれぞれのクルー。
そういった色々なものを引っ括めて、レイリーさんは頼もしいと言って少年のような顔で笑う。彼から見たらこの程度ではまだまだ、可愛くて仕方ない事だろうと思えば、その反応も分かるけどね。
それにしても……縮んでるルフィが可愛くて、抱き締めに行きたいとか言ったら怒られるかな?でも、小さい頃のそれとはまた違うルフィの縮んだ姿、可愛い……。
新世界で会おうと約束して、三人は別々に歩き出す。中央を迷い無く進むキッドと、私達の合流を待つルフィ、そして少し戻りながら脇道へと進むローちゃん。
それ等を横目で確認してからルフィの元へと足を踏み出した時、ローちゃんが私を能力で移動させて当然のように抱えるから、少しではなく驚いてしまう。何事かとローちゃんを見れば、大人しくしていろと言われてしまった。
「麦藁屋、後で送って行く」
「ん?……分かった。ナミ!後でな!」
「ちょっと!?ルフィ待って私……!「ナミ、行くぞ」」
そうして歩き出したローちゃんは、入口にいた巨体の海賊を解放した。そのままその男を仲間に引き入れ、歩き出す。
そうして進み、少しした所でペンギンと書かれた帽子の人が声を掛けてきた。こんな人、覚えてないけどな……。
「泥棒猫だよな?船長とは付き合い長いの?」
「本日初対面ですが!?」
「そりゃねェって、船長もコラさんも、ずっと探してたみたいだし」
私の言葉を軽く否定したのはキャスケット帽子の人で、私はその言葉に息を飲んだ。ずっと、探してたって……?
「ローちゃん、どうして探してたの?」
「……会いたかったからに、決まってんだろ!!人を庇って、守って、大怪我して、その癖笑って自分の命捨てようとしやがって……!なんも変わってねェ!!庇われる側の気持ち、少しは考えたらどうなんだよ!!」
突然の怒号に、ローちゃんのクルーでさえビクつく。それでも、私には悲しんでるようにしか見えなくて……そっとその頬に手を伸ばす。
1度身内に入れた人間を全力で守るローちゃんの性格を考えたら、辛かったよねと思うから。何も覚えてなくても、ううん、夢の中での知識しか無くても、ごめんねと思わなくもないのだ。
「ごめんね、今度からもう少し上手く庇うから」
「……庇うなって言っても無駄だろうから、もうそれでいい。船に戻ったらさっさと治療するぞ」
脱力した様子で言われたそれに私は首を横に振る。ゾロの治療はどうしたとかそういう事じゃない。
「駄目よ」
「あ?」
「私、ローちゃんの船には行かないわ。いくら相手がローちゃんでも、今は敵船。しかも潜水艦じゃ出られもしないじゃない。だから行かない」
私の言葉にローちゃんは薄く笑い、無防備な癖して頭は悪くねェから楽しいなんて言うから、意味が分からない。でもとりあえず……無事で、良かったわ。
夢の終わり方の問題で、ローちゃんとロシーが無事である確証が無かったから。そして、あれが夢でしかないと信じていたからこそ、あれが現実だったらしいと知ってから、無事が確認出来た今は幸せだなと思う。
あんなに小さかったのにね。恐らくは病のせいで、成長が遅かったのだろうとしか思えない位小柄だったローちゃんが、人間の枠内に収まりそうな範囲で、高身長な良い男に育っているのが何だか感慨深い。
その時キャスケット帽子の人が、ローちゃんに声を掛けた。視線を向けるとそこに居たのはキッドで、戦闘中らしい。
ただ、その相手が頂けないわね。聖書を持ってないから、パシフィスタの方だと分かるけど……戦わない選択肢は、無さそうね。
「ローちゃん、降ろして」
「ナミ?」
「戦いになるわ」
私のその言葉に溜息を落とし、そっと下ろしてくれたのは、戦うのに両手が必要だからでしか無さそうな様子。その証拠に呆れと心配をその瞳に宿して私を見下ろしている。
「……その傷で戦うつもりか」
「この程度、怪我のうちに入らないわ」
……入ります。もう、正直立ってるのもしんどいです。
でもね、敵の前でそんな情けない事言えないし、この場を早く抜けて治療して貰わないと、ルフィの所に帰れないじゃない。
だからってここまで強がる必要は無いのだけどね。さっきハチとのやり取り見られてるし、あんまり情けない姿ばかり見せたくないのよ。
私がクリマタクトを構えて、雷雲を生み出して行けばローちゃんもまた戦闘態勢に入る。何せ相手さんが先にローちゃんも敵として認識したのだから、これは不可抗力である。
そんな状態でも喧嘩を始めるキッドとローちゃんに、そんなんだからゾロとサンジ君ばりに、あんた達がデキてる話が量産されるのよと溜息を落とす。そんな事を考えていたからか、背後からも敵が迫ってると知り、ローちゃんの隣に移動した。
「私も、熊と戦うので良いかしら?」
「……わかった。なら傍を」
ローちゃんの言葉の途中で、剃を用いて熊の背後に回り込み短剣でその腕を肩から落とす為に体重を掛けて振り下ろした。でも……硬い……!
何とか右腕を落とす事は出来たけど、バチバチ言うだけでまだ倒れてはくれないし、爆発してくれる気配も無い。その上、着地と同時に振り向いた熊が口から何かを出そうとする。
だけど着地の衝撃で痛む背中が動きを阻害する。これを一撃で破壊できるようになるルフィや、それと張り合える実力者になるローちゃんを思えば、今の自分がどれ程情けないかを痛感させられてしまう。
その時、景色が歪み気が付いたらローちゃんの横に移動していた。それにより状況把握出来た私は、自嘲しつつ唇を動かす。
「ローちゃん、ありがとう」
「ナミは、アサシンだったのか」
「違うわよ。私は……」
言いながら私は、熊の上に先程用意していた雷雲を用いて雨を降らせると、それにより全体が濡れたのを確認しつつ雷を落とす。つまり、レインテンポとサイクロンテンポの合わせ技である。
「……見ての通り、か弱い美少女航海士よ」
「か弱い?」「見ての通り?」
キッドとローちゃんの声が重なる。それに対して私は、何か異論があるのかと、無言のまま笑顔で問い掛けてみたけど、それに対する返事は無かった。
でも、私1人の攻撃だと後少しダメージ足りないわね。力が足りないのか、雷の威力が足りないのか……。
この場合両方かしらね。そう思った時、キッドがその鉄の塊と化した腕で熊に最後の1撃を与えて破壊してくれた。
それでもまだ、戦いが終わらないのは明白。何せ……。
「何体、送り込んだのかしらね……?」
「熊が、もう1人!?」
「良く見ろユースタス屋……。後2人だ」
「チッ……どうなってやがる……!!」
パシフィスタが二体……目の前に現れたから。それも背後の海兵を敵として数えるならば、ローちゃんとキッドを中心にするとYの文字を描けるような布陣になっている。
厄介ね……。本当に。
「ナミ、下がってろ」
「ローちゃん!?」
「今のお前は、預かってるだけだ。治療のために連れて来て、怪我させたんじゃ流石に顔向け出来ねェ」
「でも……!」
「……海兵の方を「宝玉センセー、俺のサポートしてくれよ。想像以上の実力者で俺としては、戦って貰いてェ」」
ローちゃんの言葉を遮り、熊の攻撃を躱しながらキッドは言う。それにいきり立つようにローちゃんは声を荒らげながらも、やはりその攻撃を躱すのだから流石だと思わされる。
「ユースタス屋!!」
「ん?なんだよ〝ローちゃん〟」
「お前から消してやろうか……」
「ハッ……!遊ぶのは、これの始末を終えてからだろ!!」
私はとりあえずローちゃんの元へ近付き、背後からまた狙わせて欲しいと頼む。それにローちゃんは嫌そうな顔をしてから、渋々了承してくれた。
下手に下がれとかって押し問答するよりも、その方が安全だと踏んだらしい。それにホッと胸を撫で下ろしながら、私は想像もしてなかった形での戦いに身を投じた。
これでHPに掲載してある所に追いつきました。
今後本編は、HP掲載速度に合わせた更新となりますので、時間も不定期、頻度も不定期となります。
ご理解の程宜しくお願い致します。