※この作品はR-18です。

波間の向こうを目指して(新・本編)   作:夢枕 七変化

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天然※

 いつも治療してくれる手とは明らかに違う、人間の指が背中に触れる。その骨張った感じが、誰かに似てる気がして内心で首を傾げた。

 それからはたと気付く。ゾロの手と似てるんだ。

 人の手で治療して貰ったのって、ドクターとマルコさん位かな。でも、どっちの手とも違うと思うのは、剣を使う手だからかしらね。

 

 「ナミ、手を祈る感じで前で合わせろ」

 「こう?」

 

 肘を曲げてお願いのポーズみたいに掌を合わせると、腕を包帯でクルクルと巻かれてしまう。何してるんだろうとローちゃんを見たら、そのまま横になれと言われてベッドにコロンと転がる。

 するとベッドの上に手を移動させられて、そこで固定されれば流石におかしいと思ってローちゃんを睨む。何してんのよって思うから。

 

 「ローちゃん!?」

 「胸とかの治療に、恥ずかしいとかって抵抗されても困るからな」

 「あ……そういう事?」

 「あァ……今はまだ、治療中だからな」

 

 疑って悪い事したなと思って体から力を抜けば、ローちゃんが私を見て何故か眉間に皺を寄せる。それから睨み付けてくるんだから、訳が分からない。

 それとも睨んでるんじゃなくて、お腹でも痛いのかな。医者の不養生?

 

 「どうしたの?」

 「警戒心が無いってより、疑う事を知らない感じだな」

 「へ?」

 「まぁ、今から胸の治療するのは、間違いじゃねェから良いが」

 

 ローちゃんは何を言っているのか。心から謎である。

 ビキニなので紐を解けば素肌が晒される訳で、そうして顕になった私の素肌にローちゃんは盛大に眉を寄せて、こんな大怪我放置してたのかなんて言われてしまった。けど、チョッパーが治療してくれたもの、放置なんてしてないわ。

 そんな事を話しながら治療を受けて居たら、ローちゃんが終わったぞと言う。それにより、ありがとうと笑ったのに何故かローちゃんは腕を解いてくれない。

 

 「ローちゃん?」

 「治療費の件だが」

 「ん?嗚呼……いくら?」

 「身体で払え」

 「時間が無いわ。多分この後すぐにコーティング屋探してとか、やる事お互い多いでしょ?あ……コーティング屋を紹介とかでどう?」

 

 直後、暫し互いに無言になる。それからローちゃんは何かに混乱してるのか、それとも頭痛にでも苛まれたのか、突然頭を抑えて私の顔をじっと見詰めてきた。

 

 「待て!……身体で払えって、何を考えた?」

 「肉体労働でしょ?怪我のリハビリ兼ねてるのかなって思ったんだけど……状況的に考えて時間も無いから、それは双方共に難しいと思うのよ。何か、違うの?」

 

 まさかこの状態で、ローちゃんはこの島で観光でもするつもりなのかな。それは流石にオススメしないわよ?

 

 「……鈍い鈍いとは思っていたが、まさか、鈍いだけじゃなくて、ナミお前天然か?」

 「そうね、この世界でもまだ人工培養での生命誕生は知らないから、天然の筈よ」

 「は?」

 

 ローちゃんが不思議そうな顔で私を見る。私は確かに、親の顔も、名前も知らないし、戸籍もないけど、人工授精しての培養とかで造られた人造人間(ホムンクルス)では無い筈よ。

 確かにそれを疑いたくなる可愛い顔立ちと、美しい肉体だけどね。だからって、そんなに驚く?

 

 「まだ、人造人間とか遺伝子操作とかをできるなんて、そんな情報ないもの。いくらベガパンクが優秀でも、現時点で情報さえ開示されてない技術を18年も前には、なし得てないと思うのよ」

 「……そうか、天然か」

 「うん、天然」

 「なら、仕方ないな。ここまでの天然とは、思っていなかったが」

 

 ここまでって、天然は天然でそれ以上でもそれ以下でもないわよね。それに、人間は全員今の所天然の筈。

 んー?

 ローちゃんは何を言いたいんだろう?

 ハッ!フランキーの事!?

 でも、自分を後から作り替えただけだから、フランキーも天然の筈よ。うん!

 そんな事を考えていたら、ローちゃんがヒョイっと私の両足を大きく開いて体を割り開いて来る。そして、ビキニの紐を解くと私を固定している包帯の他は、1糸纏わぬ姿にされてしまう。

 

 「ちょっ!!ローちゃん!?」

 「身体で支払えってのは、こういう意味だ」

 

 そう言い切るローちゃんの瞳に、深淵が見えた気がした。何も信じられないと、喪う事しか経験した事が無いとでも言わんばかりのそれ。

 恐怖なんて可愛いものだと言われているような、絶望を宿しているその瞳。恐怖程度ならば、飲み込んでやると言われているような気がしてしまう。

 

 「俺は、ナミがクルーになると頷けば、合意無し(・・・・)では、手を出すつもりは無かったが、敵船の航海士だと……命も魂も全て捧げていると言うなら、その船長の意思に従えよ」

 「何、言ってるのよ……?」

 「何って、敵船の船長に〝女を預ける〟なんてのは、可愛がってくれって意味だろうが」

 「ルフィにはそんなつもり……っ!!」

 

 言葉を紡げなくなったのは、割開かれたその場所にある敏感な場所を突然舐められたからだ。抵抗の声を出そうにも、今下手に口を開けば喘ぎしか紡げないのは自分がよく分かってる。

 濡れてない状態だから、指ではなく舌を使っているのだろう。迷いのない、機械的な動きは、どうすれば女の身体が反応するのかを頭で分かってる人間のそれだと分かる。

 

 「……っ……!ふっ……ぅ……」

 

 自分の呼吸音すら耳障りで、震える身体が恐怖からではないと気付いてしまう。つい数分前まで可愛い少年の面影を見ていた相手に、私は何をされているのか。

 腕を縛られているとはいえ、抵抗したくても足と手なら本来足の方が力もある筈なのに、抵抗が抵抗にならない。ならせめて、声だけは出すものか!

 

 「……強情だな。身体はもう、蕩けてるってのに」

 「ローちゃん、辞めて。私は「麦藁屋にその意思が無かったとして、治療費位は支払うべきだろう」」

 「だから、お金なら払うって……!」

 

 私の言葉にローちゃんは嗤う。そして、バカにしきったような声音で言った。

 

 「15億は、端金(・・)だったな。宝玉先生?」

 

 その言葉に身体がビクリと揺れる。まさか、それ以上の金額を示されるのかな。

 それは、流石に支払えない。あれは、ケイミーを助ける為に……でも、そんな事言える筈も無い。

 それこそ、仲間でも無い相手に懐事情が筒抜けなんて、そんな訳にいかないわ。それに、ケイミーにどんな弊害が出てしまうかも分からないもの。

 どうしたらいいのか、分からない。どうしよう、どうしたら……?

 

 「……そう、怯えるな。普通なら抱いて欲しいと金を抱いて寄ってくる女もいるような男に、その身体を抱いて貰えて、治療費の支払いも免除されるんだ。考えるまでもなく……可愛がられた方が得だろ」

 「巫山戯ないで……!私の身体はそんなに安くないわ!」

 

 いくら可愛いローちゃんでも、侮辱される謂れは無い。私に触れていいのは、ルフィだけよ……!

 キツく睨み付け乍言葉を口にすると、ローちゃんは蔑んだような視線を向けて来た。そして、嫌味ったらしく言うのだ。

 

 「こんな格好で言われてもな。まァ……俺は優しいから教えてやるよ」

 「何を……」

 「支払いを身体でするか、それとも最後まで抵抗して、ただ俺に犯された後で支払いをするかの2つしかナミには選択肢がねェ。俺は、この状況下でナミを抱かずに終わるつもりはねェからな」

 

 その言葉に怒りが身のうちから溢れそうになり、言葉が口をついて出る。無意識に、睨むその視線の鋭さが増していく。

 

 「巫山戯……!」

 「いい眼をする。……まァ、海賊稼業を選んだ男には……煽られるばかりだろうがな」

 

 そう言ったと思ったらまだ濡れ始めたばかりのそこに指が差し込まれる。嫌だと叫びそうになって、でも叫んでも近くにいるのはローちゃんの仲間だ。

 彼等がこの状態を知ったとして、敵となったとしても、味方にはなり得ない。だからこそ自力で逃げ出すしか方法は無いと理解して、無駄と分かっていながら包帯で縛られている手を動かして必死に抵抗する。

 

 「なんだ、可愛がられた後で金も支払いたいのか?」

 「やめっ!嫌だって言って……!」

 「俺は、止める気は無いと教えてやったし、選べる選択肢も示してやっただろう。……俺に突っ込まれる前に答えを選べよ」

 

 そう言って指を中で器用に動かして、私の弱い所を探し始める。そして、私の意志を無視して反応する身体に楽しそうな笑みを浮かべると、ある1点を擦り上げて来た。

 身の内から湧き上がってくる、望んでいない感覚に私は知らず悲鳴を上げていた。それにローちゃんが切なそうに瞳を揺らした事に、息を飲む。

 なんで……襲ってるローちゃんが、そんな顔……。いっその事、これが……悪い夢なら良いのに。

 身体は私の意志を無視して快楽に溺れようと腰を揺らす。もっと欲しいと言うように。

 もっと気持ちいい事をして欲しいと、涎を垂らしているのが、分かってしまう。理性では欲望を抑え込もうと躍起になってるのに、身体は貪欲に快楽へと流れてしまおうとしている。

 

 「身体は……素直だな。それで、どうする?〝お金払うから可愛がってください〟か、それとも〝治療費として、この身体を可愛がってください〟か……選べよ」

 

 羞恥で全身に震えが走る。いいえ、それ以上に屈辱で身体が燃え上がる。

 何か言ってやらなきゃ気が済まない。勝手に治療をすると言って連れて来て、その支払いを身体でしろなんて、暴利にも程があるわ!

 こんな愚行、許しちゃいけない。私やルフィから、治療してくれと頼んだ訳じゃないのよ!!

 押し売りにも程があるじゃない!でも、口を開こうとした瞬間、ローちゃんが身の内に埋め込んでいた指を蠢かせた。

 

 「ふ……ああーっ!」

 

 非難の言葉は、途端に妖しげな喘ぎに変わる。それでも言葉を告げようと口を開けば、ローちゃんは薄く笑ってグリッと内部を抉るように動かした。

 瞬間、抑えきれない喘ぎが漏れる。イヤイヤと首を振った時、ローちゃんは何処か羨望のような眼差しを私に向けて来て、先程からの言葉は演技で何か理由でもあるんじゃないかと思わされてしまう。

 

 「ろー……ちゃ……?」

 

 呼び掛けると私の眼を見て、ローちゃんは苦しそうな顔をする。でも、だとするなら、どんな理由で?

 ローちゃんの考えを知りたくて、じっとその顔を見詰めたら苦しそうに歪められるその顔。何を、苦しんでるの?

 

 「どうして、ナミはそう……甘いんだよ」

 「なに、言って……」

 「コラさんが〝犯しても無駄〟だと言っていた意味が漸く分かった。だけどな、もう……止められそうにねェ」

 「ローちゃん?」

 

 その瞬間指を引き抜かれて、いつの間にか剥き出しにしていたらしい滾るものをその場所に押し当てられる。熱く脈動するそれが、私の中に入りたいと言っているのが伝わって来て、背筋がぶるりと震えた。

 

 「や……だ!ローちゃん、お願い、止め……!」

 「……ナミはさ、怯えた顔、しない方が良いって、言われた事ねェか?」

 「え?ある、けど?」

 

 突然の問い掛けに答えれば、ローちゃんはそうだろうなと言いながら私の喉元に熱い唇を押し当てて来る。それにビクリと揺れた身体を抑え込むようにして、ローちゃんは狭い内壁をいっぱいに広げながら無遠慮に押し入って来た。

 

 「ひっ……や……ぁ……!」

 「ナミの怯えた瞳は、男の本能を目覚めさせる。無闇に見せない方が良い」

 

 濡れ方が足りなかったからか、本気で拒む気持ちが強いからか、恐ろしい程の異物感に引きつった声が漏れるのを抑えられない。そんな時に向けられた言葉で、脳裏にシャンクスが浮かぶ。

 同じような事、シャンクスにも言われたわ。けれどシャンクスを思い出した事により、身体が何故か弛緩してしまい、当然それに気付いたローちゃんが少し不機嫌そうな顔をした。

 

 「今、麦藁屋を思い出したか?」

 「ううん、シャンクスの……っ!」

 

 素直に答えかけて、その瞬間に変わったローちゃんの気配に身体が勝手に震える。どうして、怒ってるの?

 

 「赤髪屋か……。成程な、ナミは〝赤髪の女神〟か」

 「ろー、ちゃん……」

 「確かにナミは、最初の船長とか言ってたもんな。他の船にも乗っていたと……」

 

 見下ろす双眸に妖しい情念が揺らめいている。逃げなきゃと思うけど、既に埋め込まれているものがあっては、縛られているだけでもつらいのに、逃げようが無い。

 更には息苦しい程の圧迫感の下から、ジワジワと湧き上がってくる焦れたような感覚が、恐怖や不快感だけでは無いだろうと、理性に問い掛けてくる。それに泣きそうになる自分が情けない。

 もうヤダ。助けて、ルフィ……。

 

 「……っ!!その顔は、卑怯だろうが……!!」

 「ローちゃん?」

 

 ローちゃんはそう言って私の手を拘束していた包帯を解くと、跡が残っていないかを確認しつつ愛おしいげに唇を這わせる。その表情に、仕草に、私の呼吸は止まりそうになる。

 ふと見詰めて来るその瞳が、愛しさをたたえているから、許してしまいたくなる。受け入れてしまえと、身体が訴える。

 でも、私はルフィじゃなきゃ嫌なのよ。こんな事、望んでないの。

 

 「ナミ、好きだ」

 「え?」

 「ガキの頃からずっと、想ってた。なのに、危険に晒して、行方も掴めなくて、分かったのは、あれは未来のナミだったと言う事だけだった」

 

 確かに、今よりも未来に位置する私の筈ね。今の私には、その時の知識や経験は無いもの。

 

 「だから、助けないで欲しいと、そう願って……ナミが俺やコラさんを嫌って憎めばと、仕向けたが……」

 

 言いたい事が分かってきた。今の私に嫌われたら、ローちゃんの過去を私が助けなくなるだろうって、こんな事してるのね。

 でも、どうだろう。私は少し考えてみる。

 例えばこの場でローちゃんに逆らって、私が殺されたのだとして……殺された先で過去のローちゃんと会ったとして……。でも、きっと見捨てられない。

 自分を殺す相手だから。自分を傷つける相手だから。

 そんな理由で、人を見捨てられるとは思えない。私は、苦しんでる人を、困ってる人を、幼い子供を……素通りは出来ないだろう。

 

 「ローちゃん、無駄よ。何をされたとしても、私は変わらない」

 「ナミは、頑固だもんな……」

 

 そう言って切なそうに私の頬を撫でると、小さくそれでもごめんななんて言う。それに首を傾げてしまうのは、今の流れならここで止めてくれると踏んでいたからに、他ならない。

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