確実にその首を捉えたと思ったのに、攻撃しようとしていた筈の足を掴まれて1気に割り引かられてしまえば、大きくM字に開脚させられる事となる。その刹那、羞恥と屈辱に震える身体を必死で抑え込んだのは、このままでは好きにされるだけだと言うのが分かるから。
私は細く息を吐き出すと軽く眼を伏せる。心を落ち着けなければ、冷静にならなければと念じながら。
けれどもそんな私に向けられるのは、多少では無い嘲りを含んだ艶やかな男の声。声だけ聞くと、凛々しくも聞こえるのに……。
「……抵抗はもう、終わりかい?」
「私、苦しむ趣味は無いのよ。ねぇ、教えて」
「ん?」
「何が目的なの?」
溜まってるの?それとも、反応を試してるの?
そう思ってイゾウさんを見れば、足の間に身体を入れて閉じられなくしてから、私の首筋に軽く歯を立ててきた。それに身体がビクリと揺れると、いい反応だと小さく呟いて頭を撫でて来る。
けれどもその行動と向けられた言葉には、大いなる矛盾があった。だからこそ、私の混乱は加速する。
「目的……ねェ。そうさな、余りにも傲慢なその思考が鼻についたから、泣かせてみたくなった……って所かね」
「……傲慢な、思考?」
「誰にでも反応して乱れる。身体は淫乱な男好き……そんな事を考えてるんじゃないのかい?」
考えてる、けど……。それの何処が、傲慢な思考なのか分からない。
だからなのか、思わず言葉が口をついてでる。だって実際私は……。
「私は、誰にでも簡単に抱かれてる!抵抗も出来ないで、身体はいつも男を求めて……!」
「それを、傲慢だと言ったんだよ。お姫さん」
「分からないわ……」
私の言葉にイゾウさんはクスリと笑うと、私の流星錘に手を伸ばしするりと自分の手足のように扱い始める。それに嫌な予感がして身体を震わせると、イゾウさんは美しく微笑み、それに目を奪われてしまった1瞬の内に衣服を下着ごと剥ぎ取られてしまう。
すると、それ迄身に付けていた衣類の代わりに深紅の紐で身体を縛り上げられてしまう。手馴れたそれは、私の抵抗等意に介する様子さえ無い。
「やっ!いや!」
「この状態で俺相手に、力で敵うと思う方がおかしい。男と女の差、経験の差、その上恐怖に萎縮している筋肉。……そうだろう?」
妙に優しげな声で、現実を突き付けられる。それをでも、その通りですねだからお好きになんて言える筈もない。
見事な亀甲縛りに対して、凄い技だと尊敬してる場合でも当然ない。けれどもそんな最中に囁かれるそれは、悪魔の甘言を思わせる。
「恥ずかしいなら、これを着ても良いよ」
親切めかして言われたそれに視線を向ければ、亀甲縛りに用いている紐と良く似た深紅の長襦袢を差し出して来た。つまりは、初めからこうするつもりで来たのだろう。
それでも、何も着てないで紐だけ身に付けてる状態よりはマシかと考えて、差し出された長襦袢を受取り袖を通せばイゾウさんは満足気に頷いた。理解は出来ないけど、とりあえず腰紐だけでもと思った時、身体を簡単に反転させられて後ろ手に戒められたまま椅子へと移動させられる。
そこへ座らされると同時に、1瞬戒めを解かれたと思った瞬間に逃げようとしたのに、直後背もたれの後で腕を縛られてしまう。これでは簡単には解けない。
その時僅かに傷んだ背中により、ビクリと体が反応すると、イゾウさんは宥めるように背後から項に口付けてくる。それに声を押し殺していたら、優しげな声で囁かれた。
「暴れると傷が開くからね、大人にしてな」
「こんな事をイゾウさんがしなければ、私が暴れる必要は無いんですよ!?」
「俺は……ナミちゃんで遊びたい」
名を呼ばれてもこんな状態では嬉しく何ともない。ただ怒りに任せて言葉を放つしか、私には出来ないのだ。
「巫山戯な……っ!?」
言葉の途中で両腕を縛っている紐が流星錘だと気付けば、無理に解けないと判断して声も失う。……切れて、しまうかもしれない。
形ある物はいつかは壊れる。それは武器であり、長年共に過ごして来たこの流星錘も同じ事。
ベルメールさんが、私がまだ幼かった頃にノジコとお揃いで用意してくれた物。何かあると敵を殴ったり縛り上げるのに使って来たコレは、そろそろ年季が入りすぎて弱っているのにも気付いてはいた。
だからこそ、怖い。失うかも知れない。
愛情を形で示して貰えた大切な証なのに、失うなんて耐えられない。ベルメールさんとノジコの2人と、いつでも繋がっている証のように思えてならない大切な物なの。
「止めて……壊したく、ないの」
「分かるさ。だから、これを使ったのだからね。……大切な物だと分かるからこそ、使う事にした」
そんな事を言いながら、イゾウさんは私の足を強制的に肘掛へと固定して、大きく割開かれたそれを少し離れてマジマジと見詰める。その眼差しは、明らかに展示物か何かを鑑賞するそれ。
まるで無機物にでもなったような錯覚を抱かせる静かな眼差しが、声を出す事も許さない。それから恍惚の笑みを浮かべたイゾウさんが、言葉を紡ぐ。
「美しいね。着ている方が、より卑猥に見える」
「いや、こんな……の……!」
「縄がこれ程似合うのは、1種の才能だ。誇っていいよ」
誰が誇れるんだそんなもの!とは、言えないけど。娼婦と呼ばれる、それを生業にしてる人達だって〝私縄が似合うのよ〟と誇る人はそんなに居ないだろう。
そんな思考が、つい恨みがましい視線となって現れてしまう。そんな私にイゾウさんはクスクスと笑い、けれども何故か冷徹な視線が向けられる。
その冷徹な瞳は何を意味するのかと、じっと見詰める。私を褒めるその唇で、その眼差しは明らかなる矛盾だから。
そしてそれが怒りの感情を宿しているのが伝われば、余計に分からなくなる。どうして、イゾウさんが怒ってるの……?
怒りたいのも、悲しみたいのも私の筈よ。なのに、どうして……?
「……ナミは、誰にでも抱かれたがると言ったが、これ迄に手を出した男の名をあげてご覧よ。少なくとも、雑魚は居なかった筈だよ」
「え?」
「俺が把握してるのは、極上品だけだが……お姫さんは有象無象に回された経験でもあるのかい?あると言うなら、謝罪して……もう虐めないと誓約してみせる。さて……どうだい?」
言われて、私は考える。誓約なんかして貰わなくても良いけど、イゾウさんの言葉は確かに気になったから。
それに虐めないというなら、これ以上される事なく解放して貰えふかも知れないと期待したから。思考の渦に入ると、他に何も聞こえなくなる事を忘れて、私はナミとして生まれ直してからのそれをゆっくりと思い出していく。
何度も危ない目には合ってきたけど、シャンクス達の教えもあり、クリマタクトや短剣の他に鉄笛や鉄扇、流星錘を用いて何とか全て逃げて来たわ。唇を重ねた相手でさえ、ある程度名前の知られた人だけだと気付く。
おマセなエースにファーストキスを、その後、シャンクスから挨拶のキスをされて、アーロン達にはそういう意味では触れられなかったし、触れさせなかった。海賊達からも、奪われずに生きて来て……ルフィに、再会した時に唇を奪われたのよね。
そうして回想していくけど、確かに他の誰かで代わりになるような人はただの1人もいなかったように思う。そう思って顔を上げると、納得した様子でイゾウさんが頷いた。
「想像以上に、恋敵は多そうだね」
「へ?」
「まァ、どれを見ても極上品の男達である事に変わりは無いね。……数人、聞き流せない名も含まれては居たが、今の俺にそれを責める権利は無いからねェ」
「イゾウ、さん……」
待って、まさか……私、声に出してたの?
いつもは数式とか化学式だけを声に出してた筈なのに、どうして今回は全てを。それ以前に、何だろう……イゾウさんが醸し出す空気に圧されて身体が、震える。
覇気じゃないし、殺気でもない。これは、何?
「それともナミは、それすら当然だと傲慢に開き直るかい?」
その言葉に首を横に振れば、いい子だと笑ったイゾウさんが筆を取り出して敏感な場所を擽り始める。それに反応する身体を楽しそうに眺めながら、イゾウさんは言う。
「目移りして当然だよ。それだけの良い男が、全力でお姫さんを求めて奪い合っているんだ。よろめかないお姫さんが寧ろ可笑しい」
「そっ……なの!当然、でしょ!?」
「いや、よろめいて当然だよ。特にお姫さんは、母性本能が強い甘い性格の子だ。……何故よろめかないのかが、俺には不思議でならない」
言いながらイゾウさんは筆で弱い突起を刺激して、身悶える私に艶やかな笑みを向けて来る。声を抑える私を不思議そうに見て、何処まで耐えられるかなと言いながら目を布で覆い視界まで遮って来た。
口を開けば喘ぐ事になるからと耐えれば、イゾウさんは筆を両手に持ったようで、突起を自由に動く筆と、それ以外の場所を自由に動く筆に分けて来る。イヤイヤと首を振ると、それでなくても身体が刺激に反応する度に紐が擦れて、全身が刺激されているのに、それがたまらなくなってしまう。
「……っ……ぅ……」
「あさましい、はしたない、私は淫乱だ……そんな風に考えているのかい?」
他に、なんだと言うのか。そう思っても言う事が出来ない。
唇を強く噛み締めて居なければ、声が出てしまう。望まぬ行為にも関わらず、鼻につく甘い声を……発してしまうのが自分で分かる。
「俺も含め、ナミを求めているのは最高級の男達だよ。それに、力で敵う筈がないだろう。その上、そんな男達は経験がどうしても豊富だ。若いお嬢さんが、それも……肌で天候を予見できる敏感な子が、快楽に抗えたら既に人間じゃないよ」
「……ぁ……!」
「ナミの罪は、淫乱な事でも、誰にでも抱かれる事でも無い。己の価値を知らず、傲慢な思考で己を貶める所さね」
そう言ったと思った直後、筆が遠ざかり代わりに舌が、唇が、女の体で最も敏感な所に触れる。ピチャピチャと淫らな音を響かせながら、身動きの取れない私を平然と高めて行く。
身体が痙攣するように震えて、目の前が白くなりかけた時、ピタリと動きを止めた舌と唇がそっと離れて行く。それに、身体は残念だと嘆くけど、私としてはホッと息を吐き出していた。
乱れる呼吸の中、良かったと、助かったと思うのは、恋人以外にイかされる罪悪感だけなのかな。なんでか、その事自体が、罪であるような、そんな気がしている。
男に感じて腰を振るのは、はしたない事であり許されない事だと、そう感じているの。なのに、身体は明らかに悦び今もイかせてと泣いている。
「身体はMの素質があるのに、精神は気高いとは……生きにくいだろうね。だがそれでも……1級品の男達を〝誰にでも〟なんて言葉で、その辺の凡庸な男共と1緒くたにした罪は重いよ」
「私は……間違った言葉は、使ってないわ……!私は、ルフィの……!」
「……お姫さんは、潔癖だね。海賊に向かない」
当然のように紡がれた言葉に、声を無くす。それは驚き過ぎたからだ。
「え?」
「SEXか愛か、そんな事を考えるのは無駄だよ。お姫さんは嫌いな男に抱かれるなんて出来やしない。そんな事になれば、舌を噛むだろうさ」
そう言ってまた筆で刺激を与えてくるこの人は、私をどうしたいのか。身体は疼き、男の熱を咥え込みたいと願い伸縮を繰り返すのが分かる。
すぐに入れて、掻き乱して、気持ち良くしてと身体が叫ぶ。だと言うのに、愛のないそれを私が耐えられないとはどう言う事なのか。
私は、誰に対してもこうなるんじゃないの?
「だが、その愛の形が違い過ぎるようだね。恋人、家族、友情、そのどれを見ても……愛である事に違いは無いさ。その中で恋人に向けるそれを特別視して、他を無理に拒もうとした所で、相手が悪過ぎる。諦めて、全て受け止めてしまいな」
そう言ったと思ったら、熱いものが挿って来るのが分かった。声を掛ける事も、口付けする事も無く、ただ中に。
「やっ……あぁぁ!!」
「お姫さんの性格じゃ、どちらにしても拒める筈も無いのに己を責めて、壊れるしか道は無い。なら……自分を守れない男が悪いと開き直って、抵抗せずにいた方が双方楽しめる。……まァ、この行為自体をお姫さんは苦手なようだがね」
そう言いつつも入口を押し広げてゆっくり、ゆっくりと挿って来るのが分かる。見えないから余計に敏感に、イき損ねたばかりの身体はそれを歓喜で迎え入れて、拒む気配もない。
そこで耳元に唇を寄せて、そっと〝ナミは悪くないよ〟と囁かれるのと同時に目隠しを外された。それにより見えた美しいその顔は、愛欲に満たされていると告げて来る。
「快楽を求める事は、悪い事では無いよ。それに……お姫さんの身体は、本物の名器だ……!」
「いやぁぁぁ!」
叫ぶ私にイゾウさんは海賊らしい笑みを浮かべると、腰を進めながら言う。優しげな声で、海賊らしい顔をして……。
「叫ぶと人が来て、この姿を見られるかも知れないが、見られたいのかい?」
「ゃ……ぃゃ……!」
声が掠れて、出なくなってしまう。そんな私にイゾウさんは良い子だと囁きを落とすと、腰の動きを激しくして何度も奥まで穿って来ては、私を翻弄する。
だと言うのに弱い所を避けて、イけないように調整しつつ楽しんでいるのを伝える。浅い呼吸を繰り返しながら、誰にも知られないように声を押し殺す私を、イゾウさんは時に愛しげに撫でては身体に紅い華を散らして行く。
それにより揺れる身体を紐が刺激して、けれどもそれだけではイク事が出来ずに悶えるばかり。はしたなく濡れるこの身体の何処が、美しいのか……既に分からない。
肘掛に縛られた足が痺れを伴い、次第に感覚が薄れて行くのを感じながら、熱くなる身体を持て余してイヤイヤと首を横に振る。そんな私の様子に笑ったイゾウさんは、紐を軽く摘み、グイッと引っ張る事で身体にくい込ませてきた。
その刺激に思わず喘ぎ、中にいるイゾウさんを強く締め付けてしまう。それによりイゾウさんは小さく呻くと、容赦無く私の中に熱いモノを迸らせて、腰を小刻みに揺らしながら最後の1滴まで注ぎ込もうとしてくる。
引き抜かれた後もイケなかった身体は、相変わらず熱を持っている。欲しい欲しいと訴えるそれをぐっと抑え込んで、必死で呼吸を整えて行くしか私には出来ない。
「……最後まで、イかせてとも言わず、声も最小限に抑えるとはお見逸れした。なァ、俺のお姫さん……快楽は悪じゃないよ。達する事も、快楽に溺れる事も、必要な事だ」
「私、は……」
「……誰かに刷り込まれてるね。ナミ、このまま解かずに放置してあげようか?」
「や!やだ!助け……!「なら、教えておくれな。誰に、快楽は悪い事だと言われたんだい?」」
取り乱す私に囁くイゾウさんの言葉に、今の姿では無い頃の記憶が戻りそうになり、消える。だから、素直に答えるしかなかった。
このまま放置されたりしたら、困る。でも、何も分からないのだ。
「わか、ない。……おぼえて、ない、の……」
「そうか……。仕方ないから、解いてあげるよ」
その言葉と同時に解かれる拘束。そうして流星錘を返され、そっと抱きしめるけど、腕は小刻みに震え力がろくに入らないし、足は全く動かない。
そんな私にイゾウさんは笑い、頭を撫でるとヒョイッとベッドに移動させられてしまう。身体が動かされた事で痛み、けれどもそれにより漸く足を閉じられた私にイゾウさんはニッコリと笑った。
「ただ、辱めるつもりなら、あのままにしておけば良かったのは分かるね?」
問い掛けられて、確かにと思う。拘束されてもいないのに、足を広げたまま動かないでいたら、それを望んでるようにしか思われないでしょうね。
そう思って俯けば、イゾウさんの声が困ってるのだと知らせて来る。私は、どうしたら良いのかもう分からない。
「俺は、ナミを辱めたいのでは無く、泣かせたかったんだがね。まァ、今回の事でだいたい分かった。次はもう少し上手く、泣かせてあげるよ」
「結構です!」
「身体の紐も、解いてあげよう。それとも、その姿のままでいたいかい?似合うから構わないとは思うけどね」
言いながら紐を引っ張り刺激して来る。それにより息をつめるとイゾウさんは手が滑ったと言いながら紐を揺らして、刺激を与え続けて来るのだ。
「やァ、ひど……い。も、やめ……!」
「……先程いけなかったから、紐の擦れるそれがつらいだろうね。いきたくなったら、おねだり……してごらん。勿論、挿れてと言うおねだりも大歓迎だよ」
「死んでも、しないわ!」
強く睨み付ければ、イゾウさんはその頬を緩める。そして、煽るのが上手いねと言いながら、動けなくなっている私の身体を、紐でわざと刺激していく。
そうして私を弄びながら、イカせる事なく朝までかけてゆっくりとその紐を解いていく。紐が完全に解き終わるその瞬間まで、声を必死に抑えながら耐えていた私は、体力も気力も尽きかけているのを理解していた。
結果として、紐が取り払われた瞬間、深紅の長襦袢の他の何も身に付けていない状態で、明らかに行為の跡を遺す身体をそのままに、意識を失ってしまった。中に出されたそれに、対応する余裕なんてものは当然無いままに。
そんな私をそのままに、部屋だけを綺麗にして去って行く男の気配を何となく感じていた。部屋に残されたのは、深紅を身に纏う力無き存在のみ。