それぞれの2年
仲間達はそれぞれの場所でそれぞれの特技を……いや、特性を活かすように修行を積んでいた。無論、苦手を克服する事を望んだ者も居たかもしれないが、まずは長所を伸ばす事を最優先にしていたのは間違いない。
だがまずは、それぞれがその道の天才としか言えない存在である事を念頭に置いて頂きたい。そんな彼等が、本気でその道を極めようとした事の恐ろしさは、筆舌に尽くし難いものがあると言えるだろう。
つまりは、その分野において右に出る者は居ないような状態にそれぞれが育っていたと言える。例外があるとするならば、船長たるルフィと、戦闘員であるゾロ位なものだろうか。
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薬学知識を追加で身に付けられたのは、大きな収穫だろう。そういう意味では、サンジと知識面で重なるところも増えていると言えるのかも知れない。
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医食同源の言葉が意味する所を知った彼は、再会後はきっとチョッパーやナミと共に情報や意識の擦り合わせを行うのだろう。ただ、この2年ある意味〝新人類〟としか言えない者達に囲まれていた彼は、精神を大きく摩耗してしまった事だけは間違いないと言えるだろうが。
同じく〝偉大なる航路〟にいたブルックは剣山島から始めた見世物としてのそれを足がかりに〝ソウルキング〟としての活躍を始めていた。作詞作曲は勿論自分で行い、演奏しながら歌うと言うハイスペック。
そんな彼はけれども、宝玉の出した曲もまた歌う事があった。彼は言う、宝玉は大切な人であり、本人の許可を得て演奏し、歌っているのだ……と。
それによりソウルキングが自らのそれの他に歌うのは宝玉作のみであるのがまた大きな話題となり、手配書でしか知られていない宝玉の素顔を知る人物としても有名となる。同時に宝玉の売上も爆発的に増えてしまい、今やナミの貯蓄額は考えたくもない金額になろうとしていた。
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途中で会ったサンジとは、役割が違うからと別れを告げてその修行を執り行う。彼女が得たのは、通常では知り得ない情報と言う知識と、それに伴う人脈作りだと言えるだろう。
勿論、革命軍は単なる旅行会社や研究一辺倒な組織では無い為、充分過ぎる程に戦闘経験も詰めただろう事を思えば……ある意味最強になろうとしているようにも思える。世界の全てが敵であった彼女が〝誰かの為に強なりたい〟と願った事が、どれ程の効果を産むのか……それはこの先で、皆と再会した時に知る事が出来るだろう。
そんなロビンの恋人である
結果として彼は、ベガパンクが兵器的な発明をしていたその場所に住み着き、自らをも改造しながら再会の時までを繋いでいた。……その犠牲になった老人と子供には、心より謝罪したいと後に話を聞いたロビンが涙ながらに語る事となるが、そこは割愛しよう。
〝偉大なる航路〟ボーイン列島に飛ばされてしまったウソップは、ナミやサンジならば気が狂うだろうと言える程の虫の中で生きていた。……いや、ダイエットに勤しんでいたと言うべきか。
その場所で彼は嘘や虚勢ではなく、本物の〝狙撃の王様〟となるべくヘラクレスンに師事をして、それ迄は関わる事も無かった植物に関する知識を得て行く。……ついでに殺虫成分なども学んでくれたので、再会後は植物を育てている女達から喜ばれる事だろうし、チョッパーやサンジとの共通話題も得られる事だろう。
〝偉大なる航路〟クライガナ島シッケアール王国跡に飛ばされたゾロは、ヒヒと戦い血にまみれながら鷹の目の男ジュラキュール・ミホークに頭を下げ師事を願い出ていた。どれ程見苦しいと言われようと、強くならなければ何も守れないのだと……己は未熟なのだと言う現実を彼は知ったのである。
無論ナミの仲間であり、ナミの恋人たる男のクルーであるゾロは、多少と呼んでは差し障りのある八つ当たりも受けつつの日々を強いられる事となる。その場には当然
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毎週季節が変わる厳しい自然環境の中で、猛獣の犇めくその場所で、ルフィは頬を緩ませる。その瞳には、愛しさを滲ませながら。
「この島、ナミが喜びそうだな」
「ナミちゃんが?」
「知らない島に行く度に、瞳を輝かせて〝測量してくる!!〟って飛びだそうとするんだ。それに、動物好きだし、植物も好きだから喜ぶと思う」
ルフィの言葉にレイリーは苦笑を隠さない。僅かな時ではあるが、共にすごした経験もある為に何となくナミの思考回路を理解しているのも理由の1つだろう。だが、レイリーには知り得ない多くの事を知っているルフィには、ナミの喜ぶ姿しか目に映らないのだ。
「動物は多いな。だが優しい彼女は、動物が好きなら肉は食べられないとか言うんじゃないか?」
「言わねェよ。必要な量だけは無料なんだから、命に感謝しながら美味しく残さず食べなきゃダメって、毛皮までしっかり何かにするぞ」
「……逞しいな」
思わずといった体でレイリーが呟けば、ルフィはにししっと笑う。そして、樹を見詰めて穏やかな声を出すから、レイリーは多少目を見張る事となる。
「動物も魚も生きてるけど、植物も生きてる。世界に生きる全ての生物が、他の生物の命を奪う事で生きてるから、可哀想だと考えるなら何も食う権利はないと言われた。野菜だけを食べる事で命を奪ってないと言うのもいるけど、野菜も生きてるだろうがってさ」
「それは、確かにそうだがね。生きているから成長し、実をつけるのだから」
「だからこそ、命を分けてもらって生きてる以上、残す事、捨てる事はしちゃいけない。なんでも使い果たせって言われて育ったんだ」
「育った?ナミちゃんとは海賊として生きてる間の仲間だろう?ルフィはそれ程長く海賊としてやってきたのか?」
不思議そうに問い掛けるレイリーにルフィはあれ?と首を傾げる。ナミから聞いてないのかと。
「俺とナミは幼馴染って奴で、でもガキの頃からナミの中身あんま変わってねェから、俺を育てたのはナミなんだよ。あの頃は、ナミが小石で動物仕留めて鍋作ったりしてくれてたぞ」
「……そうか。少しではなく驚かされた」
そんな会話をしながら先生や師匠と呼んで欲しいと願うレイリーの思いに気付かず、レイリーと呼び捨てにするルフィは厳しくも暖かな修行の日々を過ごす事になる。基礎的なところはナミに聞いていたルフィの成長は早く、レイリーも苦笑を隠せない。
ルフィは多くの事をレイリーに語った。大切な仲間の事、喪った兄弟の事、憧れてやまないシャンクスの事。
そして何よりも、大切な家族であり、仲間であり、恋人でもある、危なっかしい少女の事を。大人なのに子供で、強いのに弱い彼女について語るルフィは、その時だけは子供のような雰囲気を見せない。
それをレイリーはゆっくりと聞きながら、けれども甘やかす事無くルフィを鍛え上げていく。彼等は未だ知らない、火拳のエースが頂上戦争を生き延び、その後の戦争で行方知れずとなった事を。
その頃我等がヒロインナミは、小さな空島ウェザリアにて師事をしていた筈のお爺ちゃん達を従えつつも、帰って来ない巫女様を思い出しては小さく微笑みながら勉強に力を入れていた。執筆や作詞作曲も勿論行っているが、空島ではお金を使うチャンス等無いに均しいのだ。
「巫女様、幸せにしてるかな」
「おいおいおいおい、ナミちゃんや。ここを破壊しようとしていた兄ちゃん達の方は、気にならないのかの?」
私の呟きに即座に反応したハレダスさんに、私は少しだけ笑ってしまう。どう言えば正しいのだろうか。
勿論心配ではあるけど、同時に信じてもいる。そして、叫びたくなる程の恐怖を感じてもいるのだ。
「彼等は戦いに行きました。それは元々負け戦。それを彼等はわかっていて、それでも家族の仇討ちの為、落とし前をつける為にと行われた戦争です。……心配ですが、私はこれ以上関われません。運命がどう変わったのか、変わらなかったのか、私には分からないのです」
「それは……?」
「巫女様もそうなのでご存知とは思いますが、私も、未来を少しだけ知る力がありましたが……知ってると変えちゃうからってその能力奪われちゃったのよ」
極力明るく見えるように笑う私に、お爺ちゃん達はそれは仕方ないのォと笑い返す。それを受けてホッと息を吐き出して、静かに笛を手にすると思い浮かんだ曲を吹き始める。
そんなナミの様子を見て、ハレダス達は同時に思うのだ。もしも運命を知っていて、その戦争で大切な人が死ぬと分かれば確かにこの子は無理をするだろうと。
そして、本来死なない筈のそれが結果運命が変わってしまって失われた時、自らを責めて生きる事を放棄しかねないと。だからこそ、心配していても空元気でも出してくれるのならば、とりあえずそのままでいさせようと決めたのだ。
それに……新しくなった武器を用いるナミは、既に人外の生物にしかお爺ちゃん達には思えなかったのである。天候の化学とは、確かに危険な物ではあるが、ここまで危険な武器ではない筈なんじゃがな。
……何故、こうなったのか……と内心で泣いていたとか居ないとか。そんな彼等の目の前で、雷や風を操り楽しそうに笑う少女がいた事だけは間違い無い。
海軍本部と王下七武海、そして白髭海賊団による頂上戦争より2年。〝偉大なる航路〟シャボンディ諸島。
その場所で、新たな物語が始まろうとしていた。それぞれがそれぞれの場所で、世話になった人達に礼を告げて約束の地を目指して移動を開始していく。
「巫女様に、宜しくお伝えください。本当に、お世話になりました」
「気を付けて行くんじゃぞ。雲で降りるとは、無謀に思えんじゃがな」
「雲の道を作りながら行きますから、大丈夫です。最悪地面が見えてれば降りても支障がありませんから」
「成程、ナミちゃんは人間辞めたんじゃなァ」
それならば納得じゃのと笑うお爺ちゃん達に、私は頬を膨らませる。酷い言いがかりだわ。
「失礼な。私はか弱い美少女航海士よ!クリマタクトも改良されたし、日常生活でも航海士としての知識が役立てられるようになったから、もう村娘Aとは言わないけどね!」
「自分を知らんとはまさにこれじゃな」
「まァ、それがナミちゃんじゃろう」
「あまり男達を泣かすなよ!元気でな!」
そんな言葉に見送られて、私は泣かされてるのはこっちよ!と叫びつつウェザリアを後にした。降りて行く事を考えて、ナミちゃんが二年後に着ていたデニムのズボンとビキニと言う姿を基礎とする事にしたのだ。
勿論腰には流星錘等の武器を身につけてるし、カーディガン位は羽織ってるから完全に同じではなけどね。それでも、カーディガンとズボンの他はビキニなので、ある意味スカートからズボンに変わっただけと言えるのかも知れない。
そうして降りてる途中で見えたのは、雲を伝って移動してるピンクの存在。場所を考慮すれば、何処かへの移動中による〝偶然の再会〟と言うのも考えられなくはないけど……。
私の知識が無くなってるとはいえ、流石にここで会うのはおかしいでしょうと思う。集合して、魚人島に行くのが決まってるからこれは未来の知識では無く通常の知識。
その他にある知識は、島の名前とかだけ。でも、島の名前とかをウェザリアで得てないのに知ってるのに関しては、単純に通常の知識として認識されたって事だろう。
けど、それは同時にルフィがその場所に行くという意味でもあるわ。つまり、ドレスローザを私が知ってるなら、そこでドフィと会うはずで、ここはシャボンディ諸島だから本当におかしい。
でも、途中で雲に座って様子を見ていた私に気付いたドフィが近付いてくれば、おかしいとか言ってる場合ではなくなってしまったけど。だって、実際目の前にいるんだもの。
つい、その姿を見詰めてしまうのは、幼い頃のドフィと無意識に比べるからだろうか。それにしても……。
「大きくなったわね……」
私の半分もなかったあの小さなドフィが、何食べたらこうなるのかしら?
ロブスター?ロブスターのせいなの?
ロブスターにはそんな効能があるの!?
「……ナミ、思い出したのか」
「え?」
「いや、経験して来た、んだな」
「ドフィ……」
「お帰り、俺のナミ」
その言葉と同時に、雲の上で強く抱き締められる。でも、この雲時間で消えちゃうから危ないんだけどね。
そんな事を考えていたら、ドフィが震えてるのに気付いてつい抱き締めて頭を撫でてしまう。強がりで、優しくて、でも、不器用な子だと知ってるから、つい。
「ドフィ、ただいま」
「ナミ!!」
そのままドフィと少しくらいは会話もしたかったけど、この雲の上に居るのは危険。だからと思いそれを伝えれば、近くの島に用事があるらしいドフィに誘われて場所を移動した。
それが、天竜人の住むその場所のお膝元だと気付いた時はつい心配になってドフィを見てしまう。安全な仲良しこよしな関係性では、有り得ない事を知っているから。
「……そんなに心配するな。折り合いは既についてる」
「でも、ドフィは……」
「ナミ、お前本当に変わらねェな」
そう言って笑うドフィを見て胸が傷んだのは、罪悪感からだろうか。ドフィが私をここに帰してくれたのに、私は何も知らずにドフィを拒み続けて……これ迄にどれ程、ドフィを傷付けただろうかと思うから。
家族から否定される事がどれ程苦しいか、私は知ってるのに。ドフィにそれを知らなかったとはいえ、してしまったのだ。
でもドフィは私の様子に楽しそうに笑うばかりで、特に何も言わない。ただ、幼い頃と同じように見て来るとは思わなかったと、切なそうに瞳を揺らされた。
「ドフィ……お仕事なのよね?」
「そうだが、今回は後暗い事はねェぞ」
「今回はって……。まぁ、仕方ないわよね。それでも、気を付けて行ってきてね」
「ナミも来るか?」
当然のように向けられた言葉に、肩から力が抜ける。この子は何を言ってるのか。
「私、お尋ね者なんだけど?」
「そんなもん、ナミが俺のファミリーに戻れば解決する」
「ドフィ、私は……ルフィの、麦藁の1味の航海士よ」
譲れないものがあるからと、ハッキリ言った私にドフィは分かってると言ってホテルの1室に残して出掛けて行った。ドフィから、御両親の事を聞くのは、酷かな……。
そんな事を思いながら、ソファに腰を降ろす。それだけで、随分身体が疲れてたのだと自覚した。
……勝手にお風呂入ってたら、ドフィ怒るかな。でも、寒いし……。
浴室を見つめながら本気で悩みつつ、私はドフィの帰りを待つ事にした。ドフィが帰ってから、いいと言われたら使おうとそんな事を考えて。