朦朧とする意識の向こうから微かに聞こえて来た声が、私が何処かに運ばれていることろを止める人間が居る現実を教えてくれる。アレから、どれくらいの時間が過ぎたんだろう……?
ふわりと香るのは、知っている香り。強いラム酒を好む人なのだとわかるその香りは、けれども脳を覚醒させてはくれない。
「その子は私の知人でね。返しては貰えないかね?」
それに対して怒号が響き渡り、私の身体が土の上に落ちたのが分かる。……今の内に、逃げなきゃ……早く、帰らないと。
シャンクスと、ベックが心配してる。ヤソップとルーが暴れ出すわ。
皆に逢いたいな。ルフィに、逢いたい。
その時誰かの手の温もりを感じた。なのに、瞼は開こうとしない。
「ルフィ……」
「助け出して抱き上げた瞬間にそれを言われると、微かに苛立つね。……ルフィじゃなくて悪いが、ここは移動するよ?」
「ん……」
「随分と薬が効いてるようだね。それにしても、少し見ない間に1段と良い女になったようで……少しばかり心配だよ」
知ってる声なのに、誰なのかわからない。でも、私が知ってるその人はこんなに優しい声じゃ無かった気がする。
いつもはもっと、揶揄うような、意地の悪い……。なのに、どうしてかな、これもまたこの人の本心なんだって気がするのは。
意識が覚醒した時、妙な頭痛に苛まれた。……随分と珍しい薬を使ってくれたみたいね。
神経系の麻痺かなとは分かるけど、身体の感覚的には後遺症とかが何もなさそう。……だとしたら最新作ね、私に効く神経系で後遺症が出ない煙タイプは存在してなかったもの。
感謝する気は当然無い。でも、そんなものを作れる存在が世の中に居るのだと、そしてそれが当然のように流通してしまう世界なのだと思い知らされる。
身体を起こして軽く頭を振って、目眩の有無を確認した時グラリと傾いだ身体を支えてくれた太い腕。知ってるその香りにギョッとして顔を見れば、心配そうな顔をしてるその人がいた。
「……助けて、頂いて、ありがとうございました」
「再会の挨拶の第一声がそれとはね。久しぶりだね、ナミちゃん」
「レイリーさんにおかれましては、お変わりないご様子。安堵致しました」
「……硬いよ。ナミちゃん、硬い」
いや、だって、そうは見えない事も多いけど……。寧ろ思えない事も沢山してるけど、この人は、生きる伝説よ?
ルフィの師匠で、
他にどんな挨拶があるってのよ。……あ!
「レイリーさん、電伝虫持ってますか!?」
「あるよ?」
「貸して下さい。連絡しないと、心配してるわ……!」
「……変わらないな。見た目ばかりいい女になって、中身は何も変わってない」
呆れとも嘆きともつかない声で言われたのに、その眼差しは何処か優しく、眩しそうに私を見る。状況把握が出来なくて、でもそれより早く連絡しないと……!
いつもは宥め役になってくれるベックも、私が関わると何するか分からないところがあるのだ。ベックの兄馬鹿レベルは、既に測定不可能な領域。
どうしよう、なんて言えば良いだろう。連絡先聞いてて良かった……!
「既にシャンクスの右腕になら、連絡してある。だから慌てなくていいよ」
「……え?」
「〝パパ〟に、連絡しておいたと、そう言ってるんだよ」
その言葉と同時に手渡されたビブルカードを手にして、泣きそうになる。早速役立ったみたいだと実感したのと、力が抜けたから。
今度ロケットか懐中時計でも用意して、ビブルカードはそこに入れておこうかな。そう思って小さく笑う。
あぁ、でも……声くらい聞きたかった。いや、聞いたら泣いてたかもしれないから、聞かなくて良かったのかも。
そう思いつつはたと冷静になって頭を下げる。何から何まで、お世話になってしまったわ。
「ありがとうございました。あ、買物した物はどうなったんだろ?」
「シャッキーの所に届けて貰うように頼んである。私はナミちゃんを治療してから、シャッキーの元へ案内する事になっているから、まだ休んでいて構わないよ」
支えられた状態にある事にその時気づいて、ありがとうございましたと言葉を重ねた時、レイリーさんが可笑しそうに笑い出した。何事かとその顔を見たら、怖い子だと言われて余計に混乱する。
どう考えても怖いのはこの人だ。私なんて比べるまでもない位に弱いし、知識も不足してるもの。
「シャンクスの誇る自慢の右腕を、あそこまで本気にさせるとはね」
「へ?」
「……自覚は無しか」
「あの?私、確かにベックには、可愛がって貰ってますけど、その……特別とかそういうのじゃないと思うんです。幼い頃から知ってるから、愛着があるとか、そんな……感じ?」
今、ロープレ系のゲームなら下に字幕が出ているだろう。ナミは、混乱、している……!って。
そんな私を見てレイリーさんは抑揚に頷き、そっと私の長くなり過ぎた髪をひと房手にする。それだけの動きで、魅せられてしまう。
うわ……。女慣れってか、遊び慣れてるわぁ。
「確かに彼は、ナミを特別には思っていないらしいね」
「そうでしょう」
うんうんと頷くと、レイリーさんが愚かしいレベルで鈍いなと言い出すから、流石に少しイラッとする。なんで再会して早々に、こんなに馬鹿にされねばならないのか。
愚かしいって何よ。それに、鈍くもないわ。
そう思いつつも膨れる訳にもいかない。何せ相手はレイリーさんなのだから。
「彼にとってナミは特別ではなく、日常なのだそうだよ。ナミの幸福が、彼の日常。……意味が分かるかい?」
「……分かりません」
「素直だな。……彼にとってナミちゃんは、守るのが当然で、害されれば許すつもり等皆無であり、それでいて自ら傷付けたり壊す事は有り得ない。そんな、常に傍にあるのが当然とも言える絶対の不可侵的存在である。と……そういう意味だ」
なんか、難しい事言われた気がするわ。……えっと?
ちょっと待って、冷静に思い出してみるから。……でももしその言葉が真実なら、それって〝特別〟より、ずっと重くない?
そう思ってレイリーさんを見たら、体調は大丈夫かいなんて聞かれて素直に頷く。そんな私にレイリーさんは、ニッコリと笑った。
「なら、2年でどれ程成長したか、魅せてもらおうか」
「イヘァ!?」
「それは、何語だね?」
ククッと魔王宜しく笑った冥王様は、驚きの余り硬直したままになっている私の手をとり、その掌に口付ける。掌へのキスは懇願を意味するけど、こんなにも懇願が似合わない人がいるだろうか。
そのまま手首にキスしてきたと思ったら、額に、頬に、瞼に、唇に……。もたらされた熱い口付けと、支える為だった筈のそれが抱擁に変わって行く現実に動揺する。
「まっ……て!レイリーさ……!」
「ナミ、今はその呼び名は間違いだ。分かるね?」
それにより浮かぶのは師としてのレイリーさんで、ならば師匠かと思うけど私の師匠はシャンクスとベックだから……。そう思って、私は真っ直ぐにレイリーさんのその瞳を見つめて問い掛ける。
「……先生?」
「いいね、腰に来た」
それは不味い。私にその気は無い。
「待って先生!私、そう、お風呂!お風呂に入りたい!」
「……仕方ない子だね。いいだろう。洗ってあげよう」
そんなの望んでない!いくら私がそう言っても、レイリーさんは私を簡単に脱がせると半地下の隠れ家に設置されてるその浴室へと、私を誘拐するように連行して行った。
シャワーを強く出されて、それが頭の上から降って来る。人の事だけ脱がせて、自分は脱いでいなかったから濡れ鼠になってるレイリーさんに、1人で入ると主張しても許されはしない。
「ナミが奉仕してくれると約束するなら、風呂は1人で入ってもいいよ?」
「なっ……!!」
「随分、成長したものだね。だが……相変わらず男達に狙われ、あしらいきれずに犯されたらしいな」
カッと頬が熱くなる。そうだけど、そんなの言われて冷静でなんて居られない。
そんな私の反応に相変わらず初心で可愛いと言って重ねられた唇は、私の抗議も何もかもを奪い去る。するりと入って来た滑った感触に、反射的に顔をそらそうとするけど頤を掴んだ指は力強く、私の動きを簡単に封じてしまう。
嫌だと言う思いと、何をされようとしているのかを知っている自身の経験から、怯えて硬くなってる私の口腔をレイリーさんは簡単にほぐそうとして来る。蠢く強靭な舌が、甘ったるい官能を伝えて来るのだ。
「やっ……ぁ……!」
口蓋から喉まで1気に舌を差し込まれて、息苦しさに目の前の胸を押し返そうとした。けど、逆に伸びてきたレイリーさんの腕に腰を抱かれて、逃げ場のないままに深くまで犯される。
溢れてきた唾液ごと強く吸われて、1瞬息が止まりそうになる。全身から、力が抜けて行く。
「……甘いな、相変わらず。身体ばかりが成長したようで、先生は心配だ」
「先生……も、許して……」
「ふむ。ナミちゃん、煽るのも成長したようだね?」
そんなもの成長以前に持ち合わせてた記憶が有りませんけど!?そう言いかけて、けれどもいつの間にか手にベッタリとつけていたボディーソープで身体を洗われ始めてしまえばそんな言葉を紡ぐ余裕は無い。
全身を泡立てられながら、わざわざ掌や指先で敏感な所をいじり倒してくるのだから。掌と身体の摩擦で泡立つそれが、肌を傷付ける事なく快楽だけを与えてくる。
「あっ……あぁっ……!!」
明らかにボディーソープのそれだけでは無い物で滑りが良くなってるその場所を撫でて、大きくなってしまってる敏感な所をくちゅくちゅと粘着質な音を響かせながら刺激して来る。命令する事に慣れた声が、壁に手をつくように命じてきて、逆らえないままに従えば雄を求めるその場所に硬い凶器が押し付けられた。
「やっ、やだぁ!」
「逃げられると思うなら、逃げてごらん。だが、その時は四肢を切り落とされる覚悟はした方がいい。……逃げる1番のタイミングは、行為の後……それまでは従順なフリをして、可愛がられていた方が逃げやすいよ」
穏やかなその声とは裏腹に、荒々しく猛る熱塊が侵入を開始する。いきなりの質量に驚いた身体が、引きつった声を出させるけど、そこに来て殆ど前座が無かった事に気付く。
いつもなら泣いて縋るまで、挿れようとさえしないと言うのに。何がこの人を変えたのだろう。
「先生……?」
「前座無しの経験は、案外少ないと踏んでね。違いを楽しみなさい」
楽しめるか!そんな言葉は喘ぎへと変わる。
抵抗するような内壁を叱り付けるような勢いで、ズブッと鎌首まで1気に収めると、後はもうじわじわと熟れる粘膜がすするに任せて、ゆるりと腰を打ち込んで来る。それだけで目の前が真っ白になり、感想はなんて聞かれた瞬間理性を打ち砕かれていた私の唇から、言葉が勝手に落ちて行く。
「はっ……ぁ……!すご……おっき……ぃ……!」
「っ!可愛い事を……!!」
その言葉と同時に背後からかかる重圧が増して、上から降り注ぐシャワーがボディーソープを押し流していくのを感じながらも、ただ壁に縋るように上半身を押し付ける。鋭く最奥まで穿たれ、結合部分がグチュッと隠微な音を立てているのを聞いてしまう。
突き立てられた肉塊に絡まり、周囲の柔襞ごと窄まりの中に落ち込んで行く。内側から膨張して来るような強烈な熱が、私の全てを支配する。
悲鳴を上げる事さえ叶わないその圧力に、私はくぐもった声を漏らすばかり。そんな私に、レイリーさんは囁く。
「ナミがのぼせ上がるまで、しっかり奥を洗ってあげよう」
それはお風呂の熱に逆上せるのか、レイリーさんから与えられる快楽に逆上せるのかな。勝手に……いいえ強制的に、奥まで洗うという名目で弄ばれた私の記憶は、そこで途切れている。
反響するお風呂場で、水の音さえかき消す様な私の喘ぎ声が谺響して、レイリーさんの息遣いが耳の奥に残る。抵抗の声は嗚咽にまみれて、それでも尚続く快楽地獄から抜け出す手段を私は持ち合わせてはいないのだ。