フランキーがサンジ君が1度ここに来て、私が食費用にと置いて行ったお金を手に買い出しに向かったと教えてくれた。その時に子電伝虫を持って行ってくれていて、それにより連絡を取ればゾロと1緒にいるのだと言う。
「そう……良かった。早くしなきゃ、海軍はもうすぐそこよ。連絡がつかないのはモンキーちゃんだけね」
シャッキーは笑うけど、その連絡がつかない人が何よりも心配なのだ。なんと言っても、世界一のトラブルメーカーなのだから。
寧ろ、トラブル製造機と呼んでも差し支え無いだろう。今頃何をしでかしているだろうか。
「ルフィ……」
「ナミちゃん、大丈夫よ。そんなに心配しないのよ」
「シャッキー……」
縋るようにシャッキーを見て、名を呼ぶ私を背後から抱き締めてくれたのはロビンで、その様子にシャッキーは可笑しそうに笑うとロビンにウインク1つ。そして言う。
「取らないから大丈夫よ。……ビブルカードを君達に渡しておくわ。彼はコレを頼りに来るでしょ?」
「海岸に面した〝42番GR〟がいい。そこに船を回し、全員を集めろ。……少々慌ただしいが、それぞれの〝2年〟を乗り越えて、いよいよ再出発の刻だ!!」
「なら、俺ルフィ達を迎えに行くよ。騒がしい所を目指せば良いんだろ」
「そうね、騒がしいところにルフィとその仲間達が居るわ」
シャッキーの言葉に反応してビブルカードを受け取ると、レイリーが言ってくれたそれに従い指示を出す。そんな私にチョッパーが確認するように言ってくれたので、それに頷いた。
するとチョッパーが巨大な鳥を呼んで、その背に飛び乗る。それに反応して近付く私にチョッパーは少しだけ呆れたような顔をするけど、こんなに大きな鳥中々出会えないじゃない。
チョッパー良いなぁ。私も背中に乗りたい。
じっと見ていたらチョッパーは鳥に何かを伝えて、鳥がそっと羽根を広げてくれるからそれに手を伸ばす。触れてみると案外フワフワで……。
「……ナミ、本当に動物に弱いな」
「フワフワ……」
「時間、ねェんじゃなかったのか?」
「もう少しだけ……」
「こりゃダメだ。……ロビン!」
そうして強制的に鳥から引き離された私は、酷い……と呟くけど、チョッパーは無慈悲にも出発してしまったので私はロビンから離れると船を動かすように皆へと指示を飛ばす。その時ふと腰に回された腕。
驚いたのと同時に重ねられた唇は、優しい。でも、今ここには、シャッキーも居るんだけど?
「餞別に貰っておこう。ルフィの手助けに行ってくるよ」
「悪戯しないでください。私は〝ルフィのもの〟なんですから」
そんな私とレイリーの様子を見て、シャッキーがクスクスと笑う。それから振られたわねとレイリーに声をかけるから、私は慌てて頭を下げる。
シャッキーはそれに気にしないのよと言いながら、レイリーの耳を摘んで船を降りた。それに抵抗しないレイリーと、軽々と歩くシャッキーがなんだか微笑ましい。
本当に、二人にはお世話になりっぱなしだったわ。いつか、恩返しが出来たら良いと思いながらも、現状サニーが動くと言う当たり前の現実に皆と喜び合う。
42番GR海岸〝麦藁の1味〟集合場所……そこに到着するのとほぼ同時に、ブルックが空から降りてきた。どうやらトビウオライダーズの中にも、無事な人達や回復した人達が居たらしい。
再会を喜び騒ぐそれを眺めて、ロビンと顔を見合わせると樽に腰を降ろしたブルックが私の名を呼んだ。それに首を傾げると、バイオリンからギターに変わったそれを鳴らしつつ、ブルックは言う。
「2年ぶりに~……。パンツ……見せて貰っても宜しいで「2年前も見せた事無いわよ!!」しょゲブ!!」
思わず言葉を遮り叫ぶように言葉を口にしつつ、蹴り飛ばしてしまっていた。因みに優しい私は、覇気は纏ってないのでご安心を。
ただね……マルコと足技対決出来るくらいの蹴りの威力は手に入れてるけど。あの修行の日々の中で、私だけが覇気を纏い続けての持続力と体力強化を徹底的に叩き込まれたり、双方覇気は使用不可での戦闘訓練なんかもあった。
それの中で武器を奪われた時の為にと色々教えて貰ったけど、どうやらマルコは足技が得意なようで、それを重点的に教えられたのが大きい。結果、今ブルックは甲板で寝転んでいる。
「さ……再会の感動で……ホラ、私……胸が、震えてる……!!ガフッ!!私……震える胸……ないんですけどー!!ヨホホ、ヨホゴフッ」
「大スターが痙攣してるぞ」
ウソップはそんな事を言うけど、今回のはブルックが悪いもん。私、謝らないから!
「どいつもこいつも、成長してないんだから……」
「悪化しやがったナミよりはマシだ。……よくもまァ、この俺様から逃げ出してくれたなァ……?」
突然背後に現れたフランキーから逃げて、私はロビンに抱き着く。そして、潤んだ眼差しで助けを求める事にしたのだ。
ロビンなら、私を助けてくれる。だから私は、ずっとロビンを探してたんだもの。
「ロビン聞いて!フランキーがね、私をサニーに閉じ込めたの!!私、買物にも行かせて貰えなくて……それで……抜け出したら怒り出して、私、監禁されるなんて嫌で……!!」
「フランキー……。貴方、私のナミに何してるのよ……?」
「ちょっと待てロビン!冷静になれ!ナミを1人にしたら今はヤバイだろ。何人に狙われてると思って「だからって監禁していいとはならないわ!!クラッチ!!」」
「うぎゃ~!!」
ロビンは私を両腕で抱き締めて、別な腕で頭を撫でてくれながら、フランキーにクラッチしてみせる。器用な事が出来るようになったのねと笑えば、ロビンは優しく微笑んでくれた。
今日もサニーは平和である。その時上空から羽音が聞こえて来て、私はそっちに視線を向けた。
同時に聞こえてきたのは、待っていた人の声。当然そこには皆の姿もある。
「おーい!!うおー!!皆~!!」
「「「「「ルフィ!!」」」」」
「連れて来たー!!」
チョッパーの可愛い声がそれに続いて、会いたかったと喜ぶ皆に私も混ざろうとして手を広げた。その時何故かサンジ君が空高く飛び上がって行き、色々な意味で心配になる。
それをウソップが回収して、チョッパーは送ってくれた鳥に礼を告げる。その時ルフィは私にでは無く、迷い無くフランキーに反応して瞳を輝かせた。
そのまま当然のように、他の全てを放棄しようとするルフィを見てしまう。そうなれば私もまた、とりあえず全力でそれを引き止める事となった。
ルフィの馬鹿馬鹿!本当なら鳥さんにもう1度触れるチャンスだったのにー!
「うわぁ~!!フ……!!フ……!!フランキーお前ェ~!!」
「待ってルフィ!!気持ちは……わかんないけど!!後にして!軍艦がもうそこにいるって通信が!!」
その瞬間、撃ち込まれた砲弾によりサニーが大きく揺れる。バランスを崩した私をルフィがサッと支えてくれて、それに驚きつつもお礼を言えば明るく笑ってくれた。
支えてくれた腕が、熱い。ルフィの顔が、目の前に、あるわ。
「無事か?」
「えぇ」
「足ひねったりしてないなら、良い」
「お陰様で無傷よ」
笑って答えた私の髪を手に取り、ルフィは笑う。本当に嬉しそうに。
そのままそっと髪にキスをして、サッと視線を海軍に向ける。その時には既に戦う顔になっていて、そんな変貌に私の心臓は爆発寸前だ。
顔が、熱い。髪にキスするのなんて、何度もされてきたのに……どうしてだろう。……久々だから、かな?
「しまった!!もう、撃ち込める距離に!!」
「撃てェー!!撃ち沈めろォ!!」
ウソップと海軍の反応して甲板を蹴ろうとした時、聞こえて来た声に私の動きは止まる。砲弾は目の前で石となり、海へと沈んで行く。
皆が騒ぐ中、その人を見て素直に思う。……似てる、と。
「髪の色が同じなら、区別するのが難しくなりそうね」
「ロビン……」
「ナミと、似てるわ」
ロビンの言葉に同じ事を考えていた私は頷く。なのに何故か、その会話に当然のように入り込んで来たルフィが首を傾げてから、笑う。
「そっか?似てねェよ。ナミのが可愛い。でも助かった!今の内に出航だ!!」
……今、なんか、サラッと言いませんでしたか?
はっ!そんな事を気にしてる場合じゃないわ!
フランキーが船底のエアバッグから空気を入れてくれて、ゼリーが膨らみサニーがシャボンの中に包まれる。その時追ってこない海軍に不思議だとは思ったけど、気にしていられるだけの余裕が私には無い。
「皆いい!?コーティング船は色々な圧力を軽減する力を持ってるの!つまり、コーティングした船は浮力が足りなくなり、今船底を支えてる〝浮き袋〟を外すと船は海底へ沈んで行く。そう言う仕組み」
「「ははーん……。成程ー」」
「わかんないわよね。良いのよ、初めから期待してないから」
声を揃えたゾロとルフィに頭を抱えた私は、はぁと溜息を落とす。それにしても、本当にいつも慌ただしい出航よね……。
「浮き袋外したぞォ!!」
「了解!!沈むわよ!皆すぐに帆を張って!!」
「帆!?」
フランキーが戻って来て言ってくれたそれにより指示を出せば、驚いた声を出す皆。それを受けて、ロビンが説明してくれる。
そんな中でルフィが航海士としての私に問い掛けてくる。だから私は航海士として、それに応える。
「出航か!?ナミ!!」
「ええ、どうぞ?船長」
恋人としての時間は、後から余裕が出来た時にしたらいい。そもそもルフィが、私を許してくれるかも分からないもの。
捨てられる覚悟をしなければならない。それでも、航海士としては……傍にいても、いいよね?
「ほんじゃ野郎共!!ずっと話したかった事が、山程あるんだけど!!兎に角だ!!2年間も俺の我儘に付き合ってくれてありがとう!!」
「今に始まった事かよ……」
「全くだ!!お前はずっと、そうなんだよ!!」
サンジ君とウソップが笑って茶々を入れる。それを受けてルフィは大きく息を吸うと、地平線の彼方まで届きそうな大声で宣言するように叫ぶ。
今、目視では確認できないけど、きっとこの声はここに居る皆を育ててくれた人達に届く。そんな気がした。
「出航だァ~~!!」
「「「「「オオオオオオーー!!」」」」」
「行くぞォ!!魚人島ォ~!!」
そして私とロビンは叫ぶ男達を眺めながら微笑み合う。サニーが深海を目指して潜り始めれば、本当に綺麗な世界が待っていた。
シャボンディ諸島近海の海中。それぞれの感想を聞きながら、素直に喜べる自分に少し驚いていたりする。
海の中にいる事で興奮する皆を眺めつつ、フランキーに目配せすれば頷かれる。フランキーが話してくれるらしいとそれで分かるので、私はそれについては任せる事にした。
「ルフィ」
「ん?」
「逢いたかった」
思わず吐露した本心。でも、ルフィには必要に迫られなければ、自分から近付くなんて今は出来そうにない。
なのにルフィは私の言葉を受けて男の顔で笑う。そして、手を広げるのだ。
「ナミ、来いよ」
「でも、私……」
「……誰と何があったんだとしても、責める気も、別れるつもりもねェぞ。ナミは俺の仲間で、俺の恋人で、大切な家族だ」
それからルフィはもう1度同じ言葉を繰り返した。両手を広げたまま、動く事無く。
「ナミ、来いよ」
その言葉に私は床を蹴って飛び付く。逢いたかった、この腕に、帰りたかったの。
他に言葉を知らないとでも言うかのように、ルフィルフィと繰り返す私に、ルフィは優しく抱き締め返してくれる。もう二度と、離れたくないと、離さないと、互いが互いに伝え合うように……強く、抱きしめ合う。
そのまま重なろうとした唇は、けれどもサンジ君からの蹴りにより中断されて、正気に返った私が真っ赤になって震えるとロビンがその胸に私を抱き締めて頭を撫でてくれる。なので私はその胸に頭を預けて、少し甘えさせてもらう事にした。
その間にルフィとゾロが魚に興味を持って行かれて、コーティングを攻撃しようとするのをウソップとチョッパーが殴って止める。シバくぞと言った時には、既にしばかれていた二人に、変わらないわねと思う。
強いメンバーが弱いメンバーに手を上げる事は無いし、逆の時はちゃんと受け入れる。そんな皆が本当に愛しいと思う。
「出航前に網出しといたから、そろそろ1度引き込みましょ。美味しい魚ならサンジ君が調理してくれるでしょ」
「勿論です!喜んでー!!」
その網を中に入れる事を、今にも暴れそうな二人に任せる事で気を逸らす。そんな騒がしくて頭の痛い現状が、どうしてか愛しくて……私は無意識の内に笑っていた。
お久しぶりです。復活します。