※この作品はR-18です。

波間の向こうを目指して(新・本編)   作:夢枕 七変化

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ロビン姉さん

 シャワー浴びたいと願う私に、まだ足りないと貪るように行為を続けたルフィ。それを仕方ないわねと言いながら受け止め、そして……意識を手放した私は、目覚めるとロビンが居て驚いてしまった。

 ルフィは、どこだろう。さっきまで1緒に……。

 そこまで考えた時、このベッドでしていた事を思い出して、赤くなる頬を自覚した。もう、泣きそうな程に恥ずかしい。

 そんな私に、ロビンは優しく気遣うように笑うと、そっと頭を撫でてくれた。その手が、何だか心地良い。

 

 「……ナミはルフィをあまり甘やかさないのよ。際限なく許してたら、ナミが腹上死しちゃうわ」

 「だって……」

 「ナミ、めっ!」

 「ごめんなさい」

 

 ロビンが可愛くてつい頷いた私だけど、ロビンは自分が何を言ったのか遅れて気付いたらしく、少し頬を染めた。ふふふ、ロビン可愛い……。

 そんな事を思いながら身体を起こすと、少しでは無く全身が重怠い。なんで、こんな事に?

 確かにいつも多少キツイけど、ここまでじゃないと思うのよね。そう思いながら、不自由な身体をロビンに支えてもらいながら着替えを済ませる。

 するとその途中で、身綺麗になってるのはわかってしまう。という事は、誰かが清めてくれた訳で……。

 

 「ねぇ、ロビン……」

 「私が清めたから、大丈夫よ。ルフィったら、シーツ巻いただけのナミを連れて部屋から出てきたんだから」

 

 それはつまり、皆に見られたのと同意じゃないの!?何が、仲間にも見せたくない、よ!?

 声に出せない私の悲鳴が聞こえたのか、ロビンが慰めるように私の頭を抱えて、優しく撫でてくれる。そんなロビンに頭を預けて顔の熱が落ち着くのを待っていたら、ウソップの声が聞こえて来た。

 

 「六時の方角、なんかいるぞ!!海獣!?」

 

 ただの海獣なら皆がいれば大丈夫だけど、念の為表に出る。船の操作が必要になるなら、私は休んでなんて居られないもの。

 フラフラとドアに向かえば、ロビンがそれを支えてくれる。それにありがとうと笑ったら、ロビンの顔が険しくなって、即座に上着としてカーディガンを羽織らされた。

 何だろう。ロビンの気配が少し……殺気立ってる感じがして、怖い。

 

 「着てなさい。素肌を晒す事は許さないわよ」

 「へ?」

 「許さないわよ」

 「はい!」

 

 なんか、ロビンが怖いです。え、私が、その……ルフィとしてる時に、悲鳴みたいな声出したから……かな?

 ううぅ、ルフィ、ごめんね。そう思って甲板に顔を出すと、ウソップの言葉が響いた。

 

 「いや……。おい皆!!後ろから船らしき影が!!」

 「船!?」

 「こっちへ突っ込んで来る!!海賊船だァ!!」

 

 シャボンが割れる事はない筈。でも、シャボン越しに乗り込んで来るつもりらしいソレに、私はクリマタクトを構えようとして……気付く。

 何年も傍で見ていたのだ。分からない筈もない。

 

 「ちょっと待ってよ。アレ……!!モーム?あんた、アーロン1味のモームでしょ!?」

 

 私の声に反応してモームは動きを止める。そして、私をじっと見るから、言葉を重ねた。

 

 「私!わかる!?」

 

 その瞬間、モームは私を私として認識した様子で、するとその視線はルフィとサンジ君に向けられた。そのまま泣きそうに顔をゆがめ……いや、泣いてる?

 まぁ、とりあえずそうしてモームは悲痛な声を上げながら何処かへと泳いで行ってしまった。……どうしたのかしら?

 

 「ねぇ、モームに何かしたの?」

 

 思わずルフィとサンジ君を見て言葉を放てば、2人は首を傾げる。それからサンジ君が、そう言えば、見覚えあるんだよな……なんて言っていて、ルフィはそうか?なんて言いながら首を傾げていた。

 となると……ルフィとしては他愛ない事をサンジ君と1緒にやって、モームはそれがトラウマになったのね。可哀想に。

 ハチに会って慰めて貰えるといいけど……。ハチはモームを可愛がってたし。

 あまりにも弱い海獣だったから、アーロンにもう少しマシなの居たわよねと聞いた事がある。その時驚いたような顔で私を見て、その後モームを妙に優しい顔で見て言った。

 

 『弱過ぎるから保護してんだよ。だが、自由に泳げない海獣なんざこの先を生きられる訳もねェ。……だから、何かの時には戦えと教えてる。……モームが全力でやって負けたなら、その後は……ちゃんと守ってやるし治療もしてやる。……俺達は、そういう守り方しかできねェ』

 

 だからこそ、ルフィと戦わずに逃げようとしたモームをアーロンは怒ったのだ。ちゃんとご飯あげて、戦ったけど負けたとなればアーロン達がその後制裁に行っていた。

 そんな事を思い出したのは、モームを見たからか。それとも、魚人島という場所に近付いているからだろうか。

 

 「さァ挨拶代わりにィ~!!ガトリング銃をぶっ放せェ~!!〝麦藁の一味〟を全員ブゥチ殺して……。……?」

 

 ……なんか、1人で騒いでるのが居るわ。まぁ、ガトリング銃とか使われたらシャボンが壊れちゃうかもだから、そうならなくて良かったけど。

 フランキーがソレを引っ掴んで海に捨てようとするのを嫌だ辞めてと縋り付くその姿に、見覚えがある気がして凝視してしまう。でも直後に、ゾロから船長だよなと問われて鉄砲玉と答えるそれは、明らかに嘘だわ。

 鉄砲玉が、他の船員に指示出したり出来る筈ないもの。でも今はそんな事より、気になってる事があるのよ。

 

 「ねぇ、ちょっと!!さっき船を引いてた海牛、どうしたの?」

 「おっとォ……。こりゃあ……ん~。カ~ワイ子さん~。アンタァ……〝泥棒猫〟だなァ~?」

 

 視線と声の掛け方、どちらを見ても下の下ね。こんなのが船長だなんて……。

 船長ってのは、もっとこう……。駄目だわ、私の知る船長って、皆世間的に見ても良い男だったもの。

 コレと比べたら、皆に悪いわ。言うまでもなく、ルフィはもっとずっとカッコイイし……。

 その時サンジ君がそれを蹴り飛ばし、私にもう大丈夫と笑いかけようとして……そのまま鼻血を吹いて飛んで行ってしまう。サニーが汚れるから、チョッパーに早く治してもらって欲しい。

 サンジ君にボコボコにされた哀れな姿で、侵入者は言う。その言葉にルフィはその瞳をキラキラと輝かせる。

 

 「アレは、ただその辺でとっ捕まえた海獣だ……!!ああいうのに船を引かせるのが……上級者の海中旅行なのよォ!!」

 「え~!?そうなのか!?海獣、どっかにいねェかな~」

 

 侵入者の言葉に反応してルフィは楽しそうにしてるけど、そっか、捕まっちゃってたのね。モーム、弱いから……。

 ふぅ……と溜息おとしてから、私はルフィに問い掛ける。皆の命もかかってるから、適当に流してはおけないのだ。

 

 「……ちょっとルフィ、何を企んでんの!?」

 「おいナミ!!〝記録指針(ログポース)〟と少し違う方向へ進んでねェか?」

 

 ルフィが侵入者で遊んでる間に、ウソップがそう問い掛けてくる。それにより指針を確認したけど、何も問題はない。

 それより、少し肌寒くなってきたわね。……何か羽織ろう。

 ロビンにも羽織れる物をと思ってお揃いのコートを渡して、それから私は自分の着ていたカーディガンを脱いだ。すると何故かルフィが顔を背けて、サンジ君が出血を増して、ブルックとフランキーが天を仰ぎ、ゾロとウソップが硬直した。

 

 「皆……どうし……「ナミ!早く羽織っちゃいなさい!」」

 

 ロビンに言われて、私は確かにと思ってコートを羽織る。ふふ、あったかぁい。

 そんな私を見ていたチョッパーがテクテクとルフィに近付き、殴った。もう、なんか、物凄い勢いで。

 

 「ルフィは、なんで学習しねェんだよ!?」

 「チョッパー、待て!!待てって!!でもよ、ナミは俺のなんだし「加減を知れって言ってんだろ!?」」

 

 どうやらルフィはまた何かやらかしたらしい。困った船長ね。

 泣きそうな顔で怒りながらルフィを殴り続けるチョッパーを見れば、ルフィの肩を持つ気にはなれない。とりあえず状況把握をしたくて、ロビンに問い掛けてみる。

 

 「ロビン、ルフィは今度は何したの?」

 「その無自覚な所が恐ろしいわ」

 「ん?」

 

 首を傾げたらロビンがそっと私の顎に指を這わせた。そのままクイッと顔を上げられて、視線が絡む。

 

 「……首輪でもつけて、部屋に繋いでおきたいわ」

 「いやよ、そんなの。私、自由に島に降りたいもの」

 

 ロビンが珍しく冗談なんか言うから笑ってしまう。そんな私を見て、溜息を落としたロビンは呆れたように私を見て、強く抱きしめてくる。

 それにしても、このコートは外側もふかふかしてて、選んで正解だったわ。ロビンとは内側の部分が色違いの、お揃いにしておいたのだ。

 

 「ふかふか……」

 「今度、また1緒に買い物しましょうね。その時、ナミの服選んであげるわ」

 「今回みたいにお揃いのも買いましょうね」

 「そうね。ナミとなら、お揃いも嬉しいもの」

 

 そのまま少しロビンと話して、ペンダントトップをいちいち付け替えるのは面倒だからネックレスにした方が良いかしらなんて話題に入った時、ウソップから進路について再び問われた。それによりそうだったと思い出して、私は針路を確認しつつそれに答える。

 

 「大丈夫よ。指針より〝南西〟に向かうのが正しい航路」

 「何でだ?真っ直ぐ進んだ方が早ェに決まってんじゃねェか!!……あ!ナミまた俺と「違うから。のんびり進む為じゃないからね」」

 

 何を言うつもりだったのか。全く……危険過ぎるわ。

 それに、そんな事を何度もしたら……私、航海士の仕事出来なくなっちゃうじゃない。ルフィの馬鹿……。

 

 「なんか私……少し、肌寒くなってきましたよ!?あ!でも私「お前骨だから、肌ねェのにな!」」

 

 ブルックはチョッパーに言葉を奪われたからなのか、真実を突きつけられたからなのか、涙を流しながらその場で崩れ落ちた。なんとも可愛い奴であるとは思うけど、あれ?ブルックって骨だから泣けないんじゃ……?

 そんな風に思いながらブルックを横目に見て、私は皆への説明を再開する。ルフィに妙な事を言われる前に、終わらせてしまいたい。

 

 「真っ直ぐ進んでも、海流に攫われて下降しきる前に海山や海底火山に突き当たっておしまいよ」

 「ふーん」

 「えー!?火山!?海底コエーよ~!!」

 「でもよ〝偉大なる航路〟の海流なんて元々デタラメだろ?間違いのねェ流れなんてのがあるのか?」

 

 ルフィ、チョッパー、ウソップと続いた言葉に私は頷く。ふふ、あるのよー!

 これは2年の勉強の成果ではなく、理科のお勉強が好きだと簡単にわかる話でもある。小学校で習う範囲の物だから、理解も難しくは無いし。

 

 「1つだけある!!皆、コートでも羽織った方がいいわよ。ここから先寒くなるから」

 「寒ィとこに行くのか?深海じゃねェのか」

 

 ゾロの言葉にフランキーが反応して、風呂の水で温度差を説明してくれる。これは小学生の理科の授業で、皆も習ってる筈よ。

 日本の授業だと、習うのは四年生位かな?

 ビーカーに水と味噌入れてお湯沸かす実験。記憶にあると思う。

 そこから先の説明は、ブルックとフランキーがしてくれる。それを聞いて流石に詳しいわねと思うけど、同時にこの世界では勉強は自分からやらなければ何も知らないままに大人になるのだという事を、痛感させられてしまった。

 気付けばお化けだの呪いだのに話は移行していて、なんだか大騒ぎになっている。こんな所が、本当に可愛いと思う。

 

 「さぁ?オバケとかはわかんないけど……つまり、その表層から深層へ潜る下降流に私達は乗るのよ。そうすれば深層海流の流れる深海へ到達できる!」

 

 私の言葉に1度は納得した皆だけど、チョッパーがどうやって潜る場所を探すのかって問いかけた事で、ロビンが最初のお風呂の話に戻した。そう、暖かい水が上に上がるなら、冷えた水は下に潜る。

 離岸流に乗ってしまったら、落ち着くまでそれに乗っていて、動きが緩やかになってから泳いで戻る必要があるのと似てる。無理に逆らっちゃいけないところがね。

 まぁ、普通は潜らないように気を付けるけど、私達は今回潜る為に進んでるから、冷えた所を目指すのが正解となるのだ。そしてそれは、離岸流等と同じで、1度乗ってしまえばもう無理に降りようとしてはいけないものでもある。

 恐ろしく腕のいい操舵手でもいたら話は別だけど、基本的に逆らえば船ごと木っ端微塵になるわ。残念ながら私はただの航海士だし、フランキーは船大工なのでそこまでの操舵技術はない。

 

 「〝赤い土の大陸(レッドライン)〟は言ってみれば地続きの島の集合体。夏島の土地もあれば、冬島の土地もある。今真っ直ぐに向かってるのは勿論〝極寒の冬島〟の気候帯」

 

 私の言葉に皆が納得したように頷いてくれたから、少し嬉しくなる。理科の授業とか、案外実験系なら皆楽しんでくれそう。

 今度やってみようかな。皆だって、知ってて損にはならないわよね。

 

 「そこには海流が大きく下へ流れ落ちる為の、もう1つの条件が揃ってるのよ」

 「え?いったい何だ?そのもうひとつの条件とは?はたして?」

 

 ルフィがスススっと近付いてきてそんな事を言うけど、絶対興味なんかない。興味があるのだとしても、理解してくれるとは思えないわ。

 

 「また適当に首突っ込んで……。本当に聞きたいの?海の塩分濃度の話」

 

 その瞬間ルフィは船縁へと逃げて行く。そこでゾロと二人仲良く塩分濃度で遊んだとか、炎分ソードが欲しいとか言ってる。

 塩分濃度でどうやって遊んだというのか。そう言えば、空島でも似たような事言ってたわね。

 そしてゾロの言う謎の物体。炎分ソードって何よ、それ?

 伝説の剣か何かなの?聞いた事ないけど。

 そう思って呆れを隠せずに居る私に、ロビンがクスクスと笑う。酷いと思うわ、あの阿呆達を諌めもしないで笑うなんて。

 

 「ロビンー!」

 「ふふ、ごめんなさい」

 「ロビンの方が、私よりもずーっと!ルフィを甘やかしてると思うわ」

 「あら?なら、ルフィに聞いてみる?どっちの方が甘いかって」

 「何でかな、それ、私が不利な気がするわ」

 「大丈夫よ。負けたからって何があるわけじゃないもの」

 

 そう言って笑うロビンは、けど、ルフィを見るその眼差しが笑ってない。後で何かするつもりのようだ。

 とりあえず、ロビンの怒りの矛先が私に向いてなくて良かった。ロビンって、怒らせるといけないタイプの人だと思うのよね。

 ロビン姉さんが優しいのは、基本的に可愛いものに対してのみ。つまり、ナミとチョッパーにだけだと言う事に未だ当人は気付いていない。

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