※この作品はR-18です。

波間の向こうを目指して(新・本編)   作:夢枕 七変化

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人魚の入江

 握っていた手が微かに震えたと思った直後、盛大に咳き込み……水を吐いた。なので即座に、ルフィの身体を横に向ける。

 こういった状態の時は、上を向かせておくと窒息する危険があり、危険なのだ。これは嘔吐してしまうような体調の時も同じである。

 そうして何度か海水を吐き出したルフィは、次第に呼吸が安定した。なのでホッとして息を吐いた直後、ルフィの腕が腰に絡み付いてきて……意識を取り戻した。

 私にルフィが絡まるのと同時に、小さな人魚さん達がルフィの顔を覗き込んで、喜びながら騒ぎ出す。……そう言えば、さっきからウロチョロしてたけど……この子達も、人魚で間違いないのよね?

 ……まさか、ケイミーの子供とか!?

 小さいし、その可能性も!……ハチ、手が早いわね。

 

 「「「気が付いた!!」」」

 

 ウソップ、サンジ君、チョッパーの声が揃い、ルフィは咳き込みながら身体を起こす。そして、キョトンとした顔で私を見てから、周りを見る。

 ルフィは大丈夫みたいね。……うーん、この子達をケイミーが産んだとなると結婚ってもうしたのかな?

 結婚祝いって、何あげたら良いんだろう。これ迄あげた事無いし、世界違うから同じような感じでいいのか分からないのよね。

 ……はっ!結婚祝いだけじゃなくて、それだと出産祝いも贈るべきよね!?

 子供達が居るなら、割れ物とかペア系の物は辞めた方が良いわよね。カタログギフトで、自分で選べる奴ってこの世界にもあるのかな?

 

 「ハァハァ……ん?」

 「あ!ルフィちん!!」

 

 ルフィが荒い呼吸を繰り返す中で、ケイミーが声をかける。ルフィはそれに反応して顔を見るけど、即座には理解出来ないでいる様子。

 

 「ん??」

 「良かった無事で!!気分はどーお?」

 「おー!!ケイミーじゃねェか!久しぶりだな~!!」

 

 誰なのかを認識した瞬間、ルフィは本当に懐かしそうに、嬉しそうな様子でそう言う。なのに、何故か私を抱き締めてる腕の力が増すルフィ。

 地味に、痛いし苦しいです。なのでルフィにそれを訴えようと、必死で言葉を音にする。

 

 「んっ……!ルフィ、くるし……」

 「……ナミ、何色っぽい声出しんだよ。サンジ達居るんだぞ?」

 「る……ふぃ……」

 

 お前の腕が……!私の身体を圧迫してんじゃー!!

 と、思いながら睨んだら、何故か顔を赤くして私の胸に頭を乗せて来る。どうやら、溺れた事で消耗してたらしいと理解した私は、力加減だけはしてよねと呟くように言いながら腕を抜き出してその頭を撫でた。

 全く。力加減って大切なのよ?

 

 「……サンジちん、ルフィちんとナミちん、前よりなんか……」

 「2年離れてたからかもなー。それにしても、また1段と可愛くなってるね!ケイミーちゅあ~「ごめんねー。私、皆の事迎えに行くつもりだったのに、時期を1ヶ月勘違いしてて……」」

 

 そこで皆から状況を教えられ始めたルフィは、漸く私を離してくれた。なので私はサンジ君から帽子を受取り、壊れてないかを確認して手荷物から取り出した裁縫セットで簡単に直せる所を直して会話が落ち着くのを待つ。

 さっきからキッチンで何かしてると思ってたけど、スープを作ってくれてたらしいケイミーがワカメの冷スープを差し出して来て、それをサンジ君とルフィが受取り飲んでるのを眺める。すると2杯目に手を伸ばしたルフィが、1口飲んでから私にそれを渡して来た。

 

 「ん」

 「ありがとう」

 

 スープと引き換えにルフィへと帽子を返して、貰ったワカメスープを飲んでいると、ルフィは当然のように次のカップに手を出して飲み始めて……。え?

 まさか……ルフィ……。毒味、してくれたの!?

 ルフィの毒味って正直何の価値も無いけど、でも、その気持ちが嬉しくて笑ってしまう。実際、ルフィから渡されたから普通に飲めるし。

 その心が嬉しい。そう思ったら、言葉が勝手に滑り落ちていた。

 

 「ルフィ……」

 「ん?」

 「ありがとう」

 

 私の言葉にルフィは首を傾げる。なんでお礼言われたのか、本気でわかってない感じで。

 

 「それは、ケイミーにだろ。作ってくれたのケイミーだしよ」

 「そうね。……ケイミー、ありがとう」

 「ううん!それより、ご馳走様!!」

 

 ケイミーは、何も食べてないと思うんだけど。そう思って首を傾げてたら、チョッパーがウソップと顔を見合わせて溜息を落とした。

 本当に謎である。その時、ルフィ達の服を運んで来てくれたケイミーの子供達にルフィが興味を示せば、ケイミーが紹介してくれた。

 

 「お友達!メダカの5つ子ちん。泳ぎが早くて情報通なんだよ」

 

 その言葉に私は内心で謝る。ごめんなさい、子供だと思ってました。

 でも、メダカか。だから小さかったのね。

 魚人島と言えば……で名が上がる程有名な人魚カフェでケイミーは働いているらしく、そこでのお友達だと言う。確かにメダカの人魚達がこれで働いてもいい年齢なのだとしたら、需要はあるだろうなぁ。

 小さくて可愛いし。そうなると、色々なタイプの人魚さんが居るのかな。

 そんな事を思いながら飲み終えたカップを返したら、置いといてと言われたのでお言葉に甘える。ここのキッチンは水の中にあるから、ちょっと持って行けないのだ。

 その話の流れで、亀に乗って上まで行く事になれば、ハチは魚人街にいて、ケイミーは家賃の安い部屋に住んでるのだと教えてくれた。パッパグの住んでる所の説明を聞く前に、魚人街に後で行こうとルフィが言うので、私はその時だけは何処かのお店で待ちたいなと心から思う。

 パッパグは高級住宅街に御屋敷を持ってるらしいけど、ケイミーには住みにくい地域だと言う。まぁ、それは性格もあるわよね。

 私は何処でも生きていけると思ってるけど……普通はそうじゃない。それは例えば、豪華な家なら良いけど、成金趣味は嫌とか……人によりその感性は異なるから難しい所だと思う。

 魚人島の中に空気があるのは不思議じゃないけど、外に出た時空と雲があるのには驚かされた。それに気を取られてると、背後から声がかかる。

 振り向けばそこは美少女や美女、可愛い系まで含めて多くの人魚がいて……。ハッとしてサンジ君を見ると、大号泣していた。

 ……うん、鼻血吹いて死ななければそれでいいわ。サンジ君の血液型、珍しいから。

 

 「あら?貴女足があるのね。若いのかと思ってたのに……」

 「私は人間だから、尾が割れた訳じゃないわよ」

 「え!?人魚じゃないの!?こんなに可愛いのに!?」

 

 そう言って人魚達が集まって来る。確かに可愛いけど、人魚のそれとはなんか違う気がしてるのよね。

 そう思って首を傾げると、そっと人魚達に手を引かれる。そのまま誘われるままに泳ぐ事になれば、ズボンさえ脱げば水着だしと思って入江に入る事を決めた。

 そうしてズボンを脱いだ時、ルフィの腕が絡んで来た。どうしたのかと思ったら、なんか不愉快そうな顔してて困ってしまう。

 お腹痛いとかは無いわよね。どうしたのかな?

 

 「……俺のせいだけど……その、肌、見せない方がいいぞ」

 「ルフィ?」

 「ナミちん、キスマークだらけだもんね!」

 

 その言葉により私は、ロビンが上着を脱ぐなと言っていたのを思い出して自分を改めて見てみると……確かに酷い。あれ?

 待ってよ。私、ケイミーの所についてから上着着てなかった……けど……?

 

 「ルフィ~……」

 「ナミ、とりあえずズボンは「水に入っちゃえば大丈夫だよ!ナミちんは泳げるでしょ!」」

 

 そう言って私の手を引くケイミーにより、私は人魚の入江へと落下した。そうして水の中に入ってしまえばルフィも何も言わなかったけど、その眼差しが少しばかり怒ってて……。

 

 「ナミ」

 「なに?」

 「上がったら、ズボンはくまえに俺のとこ来いよ」

 「ん?分かった」

 

 あれ?もしかして、ルフィ……怒ってないのかな?

 なんか、ルフィの耳が赤いわ。どうしたんだろう。

 そうは思うけど、ウソップやサンジ君も人魚達と遊び始めれば色々と落ち着いた空気になる。そうして遊び初めて暫くの時が過ぎると、ルフィがいじけたような声を出す。

 

 「良いよなー……お前達は泳げてー……」

 「ルフィ、元々泳げないじゃない」

 「ナミ!?お前……!余計な事言うなよ!」

 「だって……本当の事でしょー?」

 

 言いながらルフィとの距離を取り、水の中に潜ったりしてゆっくりと水の感触を楽しむ。人の物盗み食いしたルフィがいけないんじゃない。

 あれ、シャンクス達じゃ無かったら、本当に殺されてたような事をしたんだって理解して欲しいわ。悪魔の実って1つ、1億ベリーが最低価格なのよ?

 

 「は!?悪魔の実食う前から泳げなかったのかよ!?」

 「ん?そうだぞ?だからシャンクスとナミからは、海賊になるのは無理って言われてたんだ」

 「ルフィが1緒に航海へ連れてけって騒いだからよ。ルフィは海賊以外、何もできないわ」

 

 クスクスと笑いながら未来の海賊王なのは、あの頃から私もシャンクスもわかってたわと続けて言えば、ルフィが顔を背けた。……なんだろう?

 シャンクスの事聞いて、懐かしくなったのかな。だから泣きそうになってる……とか?

 

 「ナミお前、ルフィを手玉に取れるような成長したんだな」

 「ウソップ、何言ってんの?」

 「ルフィの奴、照れてんだよ。……な?」

 「う、五月蝿いぞ!ウソップ!!」

 「あらら……」

 

 新鮮だぞ。なんだその反応。

 そう思ったら楽しくなって、ルフィが足だけ入れてるそこに近付いて湖の水を水鉄砲にしてルフィにかけてみる。ふふふ、ビビとお風呂で練習したからできるようになったのよ!

 

 「うわっ!!何すんだ!ナミ!」

 「アラバスタのお風呂で練習したのよ」

 「アラバスタ……って、あ、ナミが俺以外の奴にも裸見せた時のだな!?」

 「なんて覚え方してんのよ!?そもそも、覗いてたアンタ達が悪いんじゃない!!」

 

 叫んだ時、自分の発した〝アンタ〟に反応して身体から血の気が引く。アーロンはそう言うと、私が幼い頃はよく怒って拷問をして来たから……。

 突然胸が苦しくなって、呼吸が上手くいかなくなる。それに即座に気付いたのはチョッパーで、ルフィに言って私を岸にあげるとその背を摩ってくれる。

 

 「ナミ、息を吐き出す事だけに集中しろ。吸おうとしなくていい。……大丈夫だから、ゆっくり吐き出して」

 「チョッパー!!ナミは!?」

 「心意性の過呼吸だよ。ナミは、強がりなだけで、そんなに強くねェから……。ここは、魚人島だからどうしても負担になってんだな」

 

 チョッパーの言葉にルフィは動揺を隠さない。その様子に、人魚達も心配そうに見守る。

 けど、会話の中に見え隠れする魚人島であるが故の事だと言うそれに、人魚達は顔を見合わせる。海賊をしている魚人がいる以上、犠牲者もいるのだろうという事を、彼女達もまた、理解しているから。

 

 「それ、治るのか?」

 「すぐ落ち着く。……ルフィ、ナミの事、抱きしめててやってくれ。その方が多分、早く回復するから」

 「そうなのか?」

  「うん、ナミの場合はそうだと思う」

 

 心意性のものである以上、心の不安が1番回復に邪魔なものだ。そういう意味でチョッパーは、そう判断をくだしたのだろう。

 

 「ルフィ……」

 「無理に喋んな!あ、とりあえずこれ着とけ」

 

 そう言ってルフィは、私に自分の服を羽織らせてくる。そんな事したら、濡れちゃうのに……。

 そう思うのに、着せてくれたそれを脱ぐ気にはなれなかった。ただ、そんな私を抱き締めてくれるルフィに甘えるように頭を預けたら、人魚達がキャー!と何故か喜んでるのだけが謎だったけど。

 

 「今は、答えなくていい。たださ、ナミは1人で立とうとすんのやめて欲しい。休んだりさ、支えて貰うって事を覚えてくれ。それとも……俺は、まだ信用できないか?」

 「る……ふ……」

 「今は答えなくて良いってのに。今は、そうして力抜いてろよ。……ちゃんと、大切なものを全部守れるように、強くなったんだぞ、俺」

 

 うん、知ってる。そう言葉にできない代わりに、その胸に手を持って行く。

 するとルフィがその手を握って、指先にキスをした。それに反応するよりも早く、抱き締められてる現状に身体から力が抜けて、呼吸が落ち着いていく。

 ルフィが、守ってくれてる……。頑張りすぎるなと、優しく言って……甘やかしてくれるから……私は次第に胸の苦しさから解放されていく。

 呼吸が落ち着くと、視界もクリアになり、現状を把握した私はどうしたらいいのか分からなくなる。だって、ルフィは上半身裸だし、私はビキニの上からルフィの上着だけ着てるから、なんか、彼シャツみたいになってるし……!?

 どうしていいのか分からなくなって、顔を隠す為にルフィに抱き着いた私は、それが傍から見てどう映るのかを考える余裕は無かった。ただチョッパーが小さく、診察できねェ……と、ボヤいてる声が聞こえた気がする。

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