※この作品はR-18です。

波間の向こうを目指して(新・本編)   作:夢枕 七変化

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酷い!!

 私はそっと縛られている兵士の1人に近付き、その頬に触れる。怪我には触れないように気を付けつつ、その頬に添えた手を使い視線を合わせて。

 必死なの。時間が無いのよ!

 

 「本当に急いでるの!だから、意地悪しないで教えて!」

 

 私の言葉にウソップも同意して頷いてくれる。やはり、持つべきものは信頼出来る仲間よね。

 

 「〝宝物庫〟は、どこ?」

 「やめんかァ!!」

 「え……何故?」

 「何純真なフリしてんだ!!分別を弁えろ!」

 

 分からないわ。なんで、怒られたのかしら?

 まさか……ウソップはカルシウム不足なの?魚好きな癖に、どうして?

 普通の魚じゃなくて、小魚を頭から食べる必要があるのかしら。だとしたら今度ちゃんと話しておかないと。

 その瞬間に歌い出すブルックに、ウソップはソウルキングと呼びつつ黙れと言う。その騒ぎの間に因縁付けて来る奴らの話は無視して、魚人島を出ようとの話になるけど……問題があるのよね。

 

 「ごめんなさい。記録指針、新世界用が必要で持って出たんだけど、皆と合流する前に色々あって無くなっちゃったのよ」

 「今使ってるいつものじゃ駄目なのか?」

 「楽園の記録指針だと新世界では先へ進めないから、先に新世界用の記録指針を手に入れる必要があるわ」

 

 それから不思議そうにしているゾロを筆頭に、ブルックまで首を傾げるから簡単に説明する。この場にルフィが居ないから説明しておきたいってのもあるのよね。

 

 「新世界では常に3つの行き先が示される形なの。それぞれの島の磁場が強過ぎて、1つの針しかない記録指針だと永遠に針が揺れちゃうって事。だからそのタイプに変えなきゃなんだけど……」

 「必要に応じて、別な所へ進路を変更できるのは有難いな。この先何があるか分からねェから」

 

 ウソップの言葉に私は苦笑してしまう。確かにそれはあるけど、同時に怖い事もあるから。

 

 「次の島の危険度がわかる仕様なのよ。新世界用って」

 「「へ?」」

 

 ウソップとブルックの声が重なり、ゾロだけが器用に片眉を上げてみせる。そう、危険なの。

 

 「磁場が安定してない島は、それだけ〝普通では考えられないような事が起きてる島〟なのよ。魚人島の次に行ける島は勉強ついでに調べたから知ってるんだけど、1番危険な所がね……」

 

 言葉を切ると何故か魚人の兵達まで黙って聞いている。近くの島だから、知ってると思ってたわ。

 

 「雷の降り注ぎ続ける島なのよ。名前もライジン島とかだった気がするわ」

 「嫌だァ!!そんな記録指針いらねェ!!」

 「無かったらこの先遭難しか無いじゃない。我儘言わないのよ」

 「ルフィだぞ!?1番危険な所に行こうとするに決まってるじゃねェか!!」

 「そこは……皆で止めるしか無いじゃない?」

 「言って止まる相手なら、こんな事言わねェよ!!こうなりゃ仕方ねェ……ナミが色仕掛けで止めろ!」

 

 無茶言うでない。単純に貪られた後で、危険な所へ向かう事になるわ。

 とは言えないので、とりあえず話題を少し変える。大切なのはここからだもの。

 

 「でね、その記録指針を空島で貰ってきたんだけど、途中色々あって無くしちゃったのよ。ただ、これ迄記録指針って全部貰い物だったから、どうやって作るのか、どこで売ってるのか、何も知らないのよ」

 「それは、流石に困るな。どうするか」

 「かなわんわー。予備も持たないとは、愚かな海賊共め……!!」

 

 ゾロの言葉に反応した、多分鰻だろう大臣がそう言う。……って事は?

 

 「……て事は、記録指針はここにあるの?」

 「縄を解くなら教えよう」

 「むっ」

 

 その時響き渡ったのはチャイムの音。それにより対応したのはゾロで、出航準備を整えさせる方向で話を付けてくれる。

 その中には当然、今話にあった記録指針の入手も含まれていた。話しておいて良かったわ。

 なので私はそれを途中迄は大人しく聞いていたけど、途中の単語に反応してゾロの腰に背後から回し蹴りを入れていた。痛がるゾロにふんっと思ったのは、当然と言えるだろう。

 

 「……誰が……〝暗黒女〟ですって!?」

 「わかってて聞くなよ。時間の無駄だ。……お前を言う時は、分かりやすく蜜柑女って言ってやるから安心しろ」

 「それで私が判断できたら怖いわ!」

 

 怒鳴る私にウソップがボソリと、わかる気がするなんて言ったのは聞かなかった事にしよう。そんな優しい私に、ゾロは言う。

 

 「お前も暗黒女でロビンだとわかったんだから、問題ねェだろ」

 「麦藁の1味には私の他に女はロビンだけでしょ!?……それと王子さん!10億ベリーも宜しく」

 「やめろてめェクラァ!!」

 

 ゾロの言葉に突っ込まなかったのに、何故か私の発言には怒るウソップに、酷い……と俯けばウソップが胡乱な眼差しを向けて来た。……そこは本来、心配したり、動揺する所よね?

 

 「俺は、騙されねェぞ。ナミの嘘は、癖があるからな」

 「……ノジコ?」

 「俺の何処がお前の姉ちゃんに見えんだよ!?」

 「だってノジコ、同じ事言ってたもん!」

 「このシスコンがァ!!」

 

 怒鳴るウソップに飛びつくように抱き着いて、その言葉には否定する。ノジコの方が比べ物にならないくらい可愛いし美しいけど、今はウソップで我慢してしんぜよう!!

 

 「違うもん!私は極度のマザー&シスコンだもん!!」

 「悪い方に訂正するだと!?」

 「真実をありのままに!!……ノジコォ~……」

 「思い出させて悪かったから離れろ!」

 

 そんな私とウソップのやり取りを無視して、ゾロと王子の話は進んでいく。そうして王子から告げられたのは2つ。

 〝ホーディと戦うな〟と〝海の森で待つ〟だ。でも、この場にルフィは居ないのでゾロがそれを伝えると約束した。

 それから少しの待機時間ができたので、私はウソップにクリマタクトについて話をする。私としてはできる限りの改良をしたつもりだけど、やっぱり足りないのよね。

 3本に別れてるのも不便ではあるし……。だからと言って長いままでは邪魔になるので、伸縮自在なのが望ましいし、空島の技術は私なりに組み込んだけどやっぱり足りないから、ウソップにそれもやって貰いたい。

 

 「ねぇ、できそう?」

 「空島の技術に関わるノートとかはあるのか?」

 「ノートだと専門的すぎて分かりにくいと思うから、必要なら私がレポートに纏め「簡単なメモ書きでいい!レポートとか嫌な予感しかしねェ!!」」

 

 可笑しいわ。お爺ちゃん達は褒めてくれたのに。

 参考書とか作れそうだと迄言ってくれたのに!見る前から拒否するなんて酷過ぎる!

 そう思ってブーたれていたら聞こえて来た騒音。いいえ、轟音。

 そっと見聞色の覇気で様子を伺えば、嫌なものが見えた。あれは……人間?

 様子を見に行く事になったブルックに、言葉だけで追い掛ける。戦えるように、1度ウソップからクリマタクト返してもらわないとね。

 

 「ブルック!……戦いになるわ!気を付けて」

 「……見えたんですか?頭痛なしで?」

 「見聞色よ。もう私には、未来は見えないの」

 

 正直、未来が分からないのは不便だと思う。そして、不安にもなる。

 今までは前もってわかってたからこそ、年単位で対策を練って行動していた。でも、今はそうじゃない。

 だけど、それが本来の姿。なら、その状態でやれるだけの事はやって、足掻けるだけ足掻けばいい。

 

 「分かりました。気を引き締めて行きます」

 

 そう言って去るブルックを見送り、私はウソップからクリマタクトを返してもらう。この人達全員を無事に守りきれるかと言われたら……少しばかり不安になってしまうけど、とりあえずケイミーだけは守らないと。

 

 「なァナミ」

 「ん?」

 「見聞色の覇気が使えんならさ、ルフィの居場所……わかったんじゃねェの?」

 「……!?……そんな事、考えた事無かったぁ~」

 

 某クイズ番組風に答えてみたけど、本気で考えもしなかったわ。確かに、それなら宝物庫も探せるかも知れないわよね!!

 よし、試してみましょう。宝物庫は何処かし……ら?

 

 「違ァう!!」

 「何が!?私、声に出してないわよ!?」

 「宝物庫探すんじゃなくて、ルフィを探せよ!それと、瞳がベリーになってたから分かるに決まってんだろ!?」

 

 怒るウソップ。けど、成程そうだったのね。

 

 「……ウソップ」

 「なんだよ?」

 「ウソップも見聞色使えるのね」

 「違うってんだろ!?このボケが!!」

 「ゾロ~!ウソップが虐めた~!!」

 

 ここは古株として、ビシッと決めて欲しいわ!美少女航海士を虐めるなんて、許される筈ないもの!!

 

 「ウソップ」

 「なんだよ!?」

 「五月蝿くなるから辞めろ」

 「酷い!!」

 

 ゾロの心無い言葉に文句を言い始めた時、突然襲いかかって来た海賊達に私は容赦無く電撃を浴びせかける。挑んできたのだから、何をされても文句なんて言わせないわ。

 同じ海賊同士、戦いは言葉より雄弁に多くの事を伝えてくれる。そう、私のストレス発散の道具になってね!と言うのも伝わっているだろう。

 けど、そんな風に遊んでいられたのは途中まで。だってゾロが切り倒す方が断然に早く、多かったから。

 ……気絶させて終わる筈だったのに。どうしてこうなるの?

 まぁ、ゾロも命を奪ってはいないみたいだけど。そういう意味では、この1味は優しい。

 ドフィもシャンクス達も、命を奪う事に躊躇いはなかったし、血飛沫の飛ばない戦いなんてして来なかった。シャンクスも好んで命を奪いはしないけど、やる時は殺るからね。

 ああもう、それにしてもゾロが1人で大暴れするから、全然ストレス発散にならなかったわ。ゾロばっかり、お酒も呑んでたし……狡いんだ……。

 

 「俺が好きで斬りまくったみてェな言い方すんな!!」

 「いや、戦闘中生き生きしておった!生まれついての人斬りだ、お前は」

 「じゃあ、刀持って襲い掛かって来る海賊に茶でも出すのかてめェは!!」

 

 私がいじけてる間にそんな怒号が交わされていて、ウソップと私は仲良く膝を抱える。海賊達に追われる形で、この場所に帰って来てたブルックだけが楽しそうだわ。

 そんな中で人魚の王が姫を返せと騒ぎ出して、ルフィが誘拐したと言うからそれには反論させて貰う。うちの船長は、そう言うありきたりな悪人っぽい事を出来る男じゃないのよ!!

 

 「うちの船長は誘拐なんてしないわよ!!疑うなら他を当たって!!それに、そんな方法取るなら本人の協力が必要でしょ!?」

 「それは……そうじゃが……他に考えられないんじゃもん!!もし無事に」

 

 話は途中で聞くのが面倒になったので割愛するけど、人魚姫が無事じゃなければ出航させないという。でも、私は兎も角ルフィを止められるなんて考えるのが愚かしいのよね。

 ……それにこの王様、絶対ルフィと気が合う。この人、今はこんな阿呆っぽくしてるけど、決して愚かでもないし、弱くも無いわ。

 その後姿を見せた1団に、私は血の気が引きそうになるのを自覚する。この場にはルフィが居ないのに……と、そこまで考えて気持ちを切り替えて彼等を観察し始めた。

 いつまでも、ルフィを頼れない。今度は……いいえ、今度こそ私がルフィを守るんだから。

 戦争でも、私はルフィを守れなかった。いつも私は、ルフィに守られてばかり。

 これ以上、頼ってなんて居られないわ。そう思えば、身体の震えも止まる。

 部屋の空気を創り出していた巨大なバブリー珊瑚が折られて何処かへ飛んで行くのを見れば、ケイミーを庇うように前に立つのは当然。ケイミーは戦えないもの。

 

 「ナミちん……」

 「大丈夫よ……」

 「ナミ?」

 

 魚人のリーダーらしき男が私を見て、ニンマリと笑った。その身体にアーロンのマークが刻まれてるのには気付いてたけど、アーロンに弟がいるなんて聞いてないわよ?

 

 「裏切りの魔女……アーロンの女……。他には、アーロンの……奴隷!!呼び名の多い女だなァ?」

 

 無言でそれを睨み付けて、そのままホーディと呼ばれる男の口上を聞く。そして案の定アーロンの意志を受け継ぐと言うそれに、脳内で多くの事が駆け巡る。

 過去の事、ジンベエからルフィへの伝言、ホーディの言葉。ここで、思考を止める事は出来ない。

 ゾロもまた無言でホーディを見ていて、ウソップは動揺を隠さないけど、私を気づかうように時折視線を投げて来る。ブルックだけが食べた事無いとか言って……ウソップに蹴られたらしい。

 

 「ブルック……この話で軽口は許さねェぞ」

 「ウソップさん?」

 「次は、止めてやらねェからな」

 

 珍しく低い声で言うウソップに、ブルックは静かに頷いた。……どうして、ウソップ、怒ってるんだろう?

 そんな事を思ってる間に壁が破壊されて、室内に水が入って来る。……意味が、だいたい繋がったわ。

 そうなればとりあえず、全てを知ってるだろう人から話を聞いた上で、ルフィと合流するのが最適。……1人ではどう足掻いても逃げられないし、こいつらがケイミーに手を出さない保証も無い。

 

 「ケイミー……」

 「な、なに?」

 「外へ、私を連れて行って」

 

 そう言って巨大バブリー珊瑚から手に入れていた欠片で、顔にシャボンを付けてケイミーに抱き着く。ケイミーは無言のままそれに従ってくれたけど、ある程度離れてから不安そうに皆を残して来た事を疑問視して聞いて来る。

 それに対して私の考えを纏めてから話せば、納得してくれた様子なのでそのまま海の森へと連れて行って貰う事にした。そうして到着した海の森にはルフィが居て、それにより1人で〝ジンベエ〟と話をしなくて済む現実にホッとする。

 ルフィがいるなら、私は私を保っていられる。ルフィがいるなら、私はなんでも出来るわ。

 

 「ルフィ~!!」

 「あれ!?しらほし姫が1緒に……!!」

 

 動揺するケイミーに、けど、あの大きな人魚がお姫様か。確かにモジャモジャの王様と、同じ位のサイズはあるわね。

 見ればこの場にサンジ君とチョッパー、そしてフランキーもいる。これなら、戦力としても何とかなるわね。

 

 「お!!ナミ~!宴、始まったか~!?」

 「それどころじゃないのよ!!聞いて!!」

 「んナミさ~ん!!」

 

 鼻血を噴き出さなくなってるサンジ君に内心でホッとする1方、現状そのテンションはウザったいわねと本気で思う。それから私は、ケイミーにお礼を告げてから手を離して、ルフィに向かって駆け出した。

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