私がその場に到着した時、ルフィは肉をモグモグと食べながら、しらほしに両手の掌でギュウギュウと締め付けられながら、泣きつかれていた。その状態でも肉を食べ続けるのって、凄いよね。
その上サイズ感の問題もあって、もう、しらほしが掌サイズのルフィ人形を抱き締めてるようにしか見えない。そのサイズ感のルフィ人形、あったら欲しいかも……。
……それにしても、可愛いわ、しらほし。何だろう……胸が、苦しい。
そう言えば、冷静に考えてみたら……サイズ差の問題もこの世界って特にないみたいだし、しらほしはルフィに懐いてる。つまり……ルフィの伴侶になる可能性って、無いとは言えないのよね。
そう考えた時、心臓が嫌な音をたてた。ドクン……ドクン……と、妙にそれが響いて脂汗が滲むのを理解する。
確か彼女は、古代兵器の筈。ロビンがこの島でメモして来ただろうノートを見ないと確信は無いけど、前に解読を教えてくれる時にロビンがみせてくれたアラバスタにて示されていたのはここ……魚人島。
その上で、実際兵器の名前が〝ポセイドン〟だもの。今の王様がネプチューンで、王妃が乙姫なら、重要な姫がポセイドンでも何1つ不思議はない。
そうなれば海王類を束ねる王が、即ち古代兵器と考えるのが妥当だわ。そうなると今しらほしがドロの奴に狙われたのも、多分その話をロビンが王様に確認してるのをこいつが聞いてた……って所かな。
そんな事を考えてる間に右大臣ちゃんがお礼を告げて来るのを聞き流していたけど、結局は到着したケイミー達も1緒になって話を聞く事となった。するとお礼の途中で、宝石泥棒もアイツだった事と、その財宝はまだヤツが持ってる事、更には……ゾロが色々破壊行為をしていたと知る。
……破壊行為は良いのよ、この際どうでも。どんな理由があれどうちの船員を捕らえたんだから、それは甘んじて受けてもらわなきゃ。
つまりそんな事よりも先に、重要な事がある。そう……私のお宝が、今目の前に無いという事だけ!
「じゃあ……
「「「嫌な予感……」」」
こんな時ばかり同じ反応をする三馬鹿を無視して、宝物庫にあるそれを空のその部屋を見ながら軽く計算する。……空島で得たそれと同額か、それ以上と考えて間違いないわね。
全てが程度の低い金・銀で半々として計算しても、空島で得た宝と同額にはなるわ!つまり、金・銀よりも価値のある宝石が付いていたり、金・銀の程度が普通以上であるならその金銭価値は更に跳ね上がる。
「国の財宝でしょ!?追わないの!?」
「命ある国民達が救われた後では、財宝も軽く見えてな……」
「じゃあ、私達が取り返したら?」
いらないって言うなら欲しい。私のお宝が、私の元に帰りたいと泣いてるわ!
そうなったら、お金持ち海賊団よ!困った時はお金で解決出来るわー!!
「全部やろう。……国の恩人に渡るのなら、本望じゃもん」
「ほ~んと~!?」
王様からの言質は取った。つまりは、今ここに私宝が無い理由を作ったこの三人に全ての責任がある。
え?宝玉として結構稼いでるだろうって?
……ルフィの食費とか、諸々の諸経費考えてよね!?いくらあっても足りないわ!!
私は拳を握り締めて、三人を睨み付ける。それにより慌てた様子で私を宥めようとする二人と、何故かにへらっとしてるサンジ君が目の前に居るけど、今私は彼等の話を聞く気はない。
「あんた達、何であいつ吹き飛ばしたのよ……!!何故ここで殴って、縛り上げなかったの!?」
「「ナミ!落ちつ……「さっさと探してらっしゃいよ~!!」」」
「「「ぐあぁぁ~!!」」」
「宝見つけるまで、帰って来るんじゃ無いわよ!!」
「「「ぎやぁぁぁ!?」」」
何をしたのかはご想像にお任せするとして、そうして三人が消えたのを確認して、私は1人で納得し頷いていた。そんな様子をつぶさに見ていた王様は、人間は女も怖いんじゃもんなんて言う。
けど……多分、これは人間か魚人かなんて関係無いわよ。そう思って首を傾げたら、王様がビクリと身体を震わせた。
そのまま騒ぎも幾つか起きた様子だったので、宴もたけなわ……として、宴は程よくお開きとなった。そして宝探しに出た三人以外の麦藁の1味が揃った所で、安全の為にしらほしは預かりつつ他の王族達を見送る。
ホーディ達に何かあったらしいけど、あの悪意の塊にしらほしが向き合う必要は無い。そして、倒す所までは参加してもその後の政治判断については、参加する気なんて少しも無いのだ。
そこで私は、誰かに触れていないと落ち着かないらしいしらほしの掌に乗り、しらほしに笑いかけつつ皆に状況説明をした。そうして話を聞き終えた面々は、嬉しそうにその頬を緩める。
「え~!?財宝貰えるのか~!?」
「幸先良いじゃねェか。早速大金持ち海賊団か~!!アウ!!」
「そんなに上手くいくものですっけ。
素直に喜ぶ二人と、不思議そうにするブルック。そして楽しそうに会話をするロビンとケイミーを眺めていたら、しらほしが不安そうに聞いて来た。
「ルフィ様達、お平気でしょうか?ナミ様」
「うん。平気よ。ルフィ達の事は気にしなくて良いから」
その時下からチョッパーの参加しようかなという声が聞こえて、ウソップが辞めとけと止めるのを眺める。1応アレでも億超のロギアだから、辞めといた方が賢明だと、私も思う。
今の所この場に残ってるメンバーは、覇気を使えないもの。それだとロギアを相手にするのは案外面倒なのよね。
それにしても、今回三人だけで行かせたけど問題無かったかしらね?
問題起こす天才だから、心配だわ。そんな事を思いながら、同時に財宝貰ったのにお菓子工場のレシピまで貰えるかしら?と少し考えてしまう。
そうして皆と共に比較的穏やかな時を過ごしていたら、ルフィ達が
その話は纏めてしまえば、四皇ビッグ・マムに魚人島を攻撃させないようにと考えたルフィが、落ち着かせる為に財宝を全てあげたと言う。それにより王様と右大臣ちゃん、そして私が悲鳴をあげたのは当然だろう。
「何ですって!?」
「何じゃと!?」
「何ですと!?」
同時に聞こえる微妙に違う驚きのそれに、けれどもルフィは鼻息荒くふんぬ!としている。その勢いのままにルフィは言う。
「お菓子がねェなら〝魚人島〟を潰すとか言うんだよ、あいつ!頭おかしだろ!?」
ルフィの言葉に確かにと頷く私。けれども続いた言葉には、眉間に皺がよるのを抑えられない。
「肉ならわかるぞ!?なァ!?だから安心しろ!!俺は思いっきり、あいつに喧嘩売ってやったよ!!」
「「「「〝四皇〟にィ!?」」」」
叫ぶウソップ、チョッパー、フランキー、ブルックと、微笑むロビン。そして妙に焦るジンベエちゃんがいる。
それ以前に、私としてはルフィが肉なら分かるって所に危機感を抱く。お菓子でもお肉でも、結局同じだから!!
「〝ビッグ・マム〟に喧嘩を!?そりゃ、困る……!!」
そんな中で状況をイマイチ理解してないらしいしらほしがうふふ……と笑う。でも、だとするなら次の手を考えないと……。
過去はどうしたって変えられない。でもだからって、四皇問題をこのまま放置って訳にはいかないものね。
「まあ!力強いのですね!ルフィ様!」
「そういう問題じゃねェよ!!」
「え~ん……。おハナップ様、怖いです~」
「ウソップだし!ごめん!」
泣いてるしらほしに必死で訂正しつつ謝るウソップを横目に、困ってる様子を隠せないジンベエちゃんへと視線を向ける。すると王様と右大臣も顔面蒼白で何やら話をしているから、後で聞き出さなくてはと決意した。
さて、それよりも……。ルフィよね、問題は。
白髭海賊団には及ばなくても、格としては赤髪海賊団よりもビッグ・マム海賊団の方が上の筈。そんな相手に、これから新世界へ向かうって段階で喧嘩を売るのはどうなのよ。
ルフィの成長と今後の為にもシャンクスは頼れない。白髭海賊団は安否不明。
四皇相手だとどうしても七武海は力不足……。でもまぁ、ルフィの気持ちも分からなくはないのよね。
それでも、仲間達の安全を守るのも本来船長の仕事なのに……!何より、魚人島を守る為とは言ってもよ!?
「売り言葉に買い言葉。男だもん。喧嘩するのは仕方ないけどね……」
「そうなんだ!!ナミならわかってくれると思ってた!!相手が誰だろうと「なんで
当然同罪であるゾロとサンジ君も含めた三人を、私は怒りの拳とクリマタクトでボコボコにした。雷が効かない筈のルフィも含めてバチバチといってるので、怒りによるこういうのはゴムとかそういった部分を無視してくれるらしいと知れたのは収穫かも。
「「「「そこ~!?」」」」
叫ぶウソップ、チョッパー、フランキー、ブルックは無視して、何故か1人瞳がハートのままに倒れているサンジ君に少し呆れる。それでもルフィは新世界へ行くと号令をかけるから、突っ込み四人衆のそれは置いといて焦りを隠さない王様に視線を向けてから言葉を口にした。
「ルフィ……数日、出航までに時間が欲しいわ」
「へ?……どうした?」
「まずはビッグ・マムから貰えたお菓子納品迄の猶予期間と、その期間猶予された理由を教えて」
私の言葉で前に出たのは左大臣ちゃんで、お菓子工場の機械が壊れていて修理にかかる時間の問題で2週間の猶予を願い出た所で、ルフィが庇ったのだと言う。でも……なら……。
「フランキー!お菓子工場の修理、手伝ってあげて。……何日あればできそう?」
「ちゃんと見てみねェとなんとも言えねェが、恐らく3日もあれば大丈夫だろう」
「ならルフィ、3日の猶予をちょうだい。そうしないとこの魚人島は結局ビッグ・マムに滅ぼされちゃう」
「どういう事だ?」
首を傾げるルフィはいつもの事としても、魚人島の人達の反応が怖い。……修理日数しか考えてないでしょ、貴方達。
「機械を修理する期間が2週間なら、お菓子作る時間が考慮されてないじゃない……。工場が直ってるかが問題じゃなくて、お菓子があるかが問題でしょ」
私の言葉にハッとした顔をする面々に、私は本気で呆れてしまう。本当に困った人達だわ。
とりあえず折角できた時間なのだから、有効活用しなきゃね。ルフィにこういった指示出しは期待できないから、私がやるしかないか……。
「その三日の間にサニーのコーティングを終わらせてもらって、ウソップはサニーの方を手伝って。サンジ君、チョッパー、ロビンは買出しリストを作ってゾロとブルックを荷物持ちにして出航の準備を進めて」
「「「わかった!」」」
「ふふ、相変わらずね」
「オゥ!!任せろ!!」
「謹んで!」
「面倒だな」
ゾロの発言に笑顔で回し蹴りを入れてから、ルフィに視線を向ける。本来ルフィが指揮を執るのが正解なのに、実際何かして貰える事って無いのよね。
ルフィは平時だと、ただの少年だから。……ジンベエちゃんと遊ぶ時間にして貰って、その間はジンベエちゃんには悪いけど人身御供になって貰うとしよう。
それがきっと平和的な解決になるわ。そう思ったら、言葉が自然と出ていた。
「ルフィは適当に遊んでて良いから、皆の邪魔はしない事!フランキーとウソップは、ロビンに必要な物のリスト作って渡しておいてね」
そこまで言ってから、私は国王と右大臣ちゃん、左大臣ちゃんでに視線を向ける。ビクリと揺れるその身体に、何を隠してるのかと内心で深い溜息を落としてから唇を動かした。
「今回こちらからこれだけ協力してる見返りとして、本来なら宝を貰える筈でしたが、それも魚人島を守る為に消費されました」
「う、うむ……」
「さようで……」
「かなわんわー……」
それぞれが落ち込んだ様子を見せる。この素直な感じが、本当に憎めないのよね。
恐らく、王族や貴族としては欠点だろう。けれども、だからこそこの国は平和になって行くと信じられる。
「そこで、別な対価を要求したいと思います」
「可能な限り、聞こう」
王様の言葉に小さく笑ってから、掌を向ける。それをまずは1本折って、言葉を口にすれば安堵の表情を浮かべつつ頷いてくれた。
でも正直、これは本当に有難い。宝を貰えなかった分を多少は補える話だわ。
「この魚人島でかかる諸経費の負担をお願いしたいの。ルフィの食費、船のコーティング代等も含むわ。勿論、何か無駄に豪遊したりするつもりは無いから安心して」
「その程度当然なんじゃもん。他の指は何を求めておる?」
「まぁ、そんなに大した事じゃないからまずは聞いて。無理なら別な案を出すし。……では次に、お菓子工場のレシピが欲しいわ。うちのコックにそのレシピでお菓子作って欲しいだけだから、流用はしないわ」
私の言葉に答えたのは、右大臣ちゃん。王様はただ頷いている。
「それでしたら問題ありません。特に、門外不出と言うものでもありませんから」
「そう……ありがとう。それからね……王様がさっきから挙動不審な理由を後で私とロビンにだけで良いから話して。何も分からないと対応できないわ」
「うっ……」
言葉に詰まる様子に、お願いできるわよね?と微笑めば力なく頷かれた。残す二つの願いは、本当にある意味どうでもいいんだけど。
正確には、私達の旅に直接影響はしない……と言う所かな。でも、訃報を聞きたくは無いのだから仕方ない。
「ケイミー、ハチがこの先王族と関わりがあるとして厄介事に巻き込まれる可能性があるから、保護とかそういう感じの事をして欲しいの。ケイミーはマーメイドカフェの従業員でしかないし、ハチは元海賊だわ。どちらも色眼鏡で見られたら生きにくい」
「うむ。それは対応すると約束するんじゃもん。……もう1人……パッパグじゃったか?は、いいのか?」
「パッパグは、元々天才デザイナーだか、カリスマデザイナーだかで売ってるでしょ?なら、王族と関わりがあっても余りおかしくないと思うのよ」
通常ならペットの枠だし、そんなに構える事はないと思う。スター犬とかと扱いは同じ筈。
お金には余裕もあるし、豪邸にも住んでるから必要なら護衛の1人でも雇えばいいと思う。だから問題は残りの2人なのだ。
「では、その店やブランドを贔屓にさせて貰うだけにするんじゃもん!」
その返しにありがとうと笑って、最後のお願いだ。これは正直無理にとは言わないもの。
でもきっと……この話は断られはしないだろうと思ってる。話に拠れば、マーメイドカフェでも人気者だったみたいだもの。
「ブルックの……いいえ、ソウルキングのコンサートを開かせて欲しいの。魚人島の人達は今、気分が落ち込んでるでしょ?人間達の間で、種族問わずに人気のあるブルックのコンサートがあれば、気分が盛り上がるんじゃないかなと思って……」
私の言葉に左大臣ちゃんが泣きながらその場に崩れ落ちて、右大臣ちゃんが泣きながら天を仰ぎ、王様がありがとうと笑ってくれた。ブルックの許可を取ってないけど、ブルックはきっと喜んで演奏してくれるだろう。
そう思って視線を向ければ、ブルックはギターを軽く持ち上げてから頷いてくれた。これで了承は得られたので、時期とか曲とか場所とかは王族達とブルックで決めて貰おう。