※この作品はR-18です。

波間の向こうを目指して(新・本編)   作:夢枕 七変化

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大好き、愛してる

 結果論だけど、私の提案は全て通った。それにより皆が明日から出航と復興に向けて動く事が決まり、今夜は王宮に泊めてもらう事に決まる。

 ルフィはジンベエちゃんと楽しみたいだろうから、特に指示は出さなかった。……と言う名目で指示を出さなかったけど……その結果が自分にどう降りかかるのか、それをわかってはいなかったのである。

 だけど、正直ルフィに関しては、指示をだ出しても聞いてくれないともわかっていのが大きい。海上ならともかく、陸地ではルフィをどうにも出来る筈が無いのだ。

 頑張ってね、ジンベエちゃん!……往々にして悪巧みは因果となり巡る事となる、とは、後に思うかもしれない事である。

 

 「ナミ」

 「ルフィ?」

 

 1人ずつ別な部屋をちゃんと用意して貰ってるので、私は早速その部屋に行こうとしてたんだけど……何故か腕を掴んで、ルフィが離してくれない。何だろう?

 

 「話がある」

 

 珍しくキリッとした表情を見せるルフィに、胸がときめく。この顔は駄目よ……カッコよすぎる……!

 そんな訳で、脳内を強制ピンクにされた私はルフィについて部屋までフラフラと連行されてしまう。勿論重要な話なんだろうと思うからこそ、表情と脳の1部はちゃんと引き締めてある。

 表情を取り繕う事に慣れてて良かったわ。そうじゃなかったら、酷い顔を晒してた筈だもの。

 

 「ナミ……」

 

 ルフィに名を呼ばれるのが、好き。部屋に入ると同時に腰を強く抱き寄せられて、だから私もついルフィの首に腕を回してしまう。

 二人きりの空間で、誰の目も気にせずに、互いだけを感じられる事がどれ程の幸福か。そんな事を思いながら重ねた唇。

 それは決して貪るようなものではなく、けれどもただ優しいものでもない。それを待ってるだけなんて出来なくて、自分から舌を絡めに行けばルフィが笑ったのがわかった。

 そっと唇が離れた時、ルフィが意地の悪い顔で笑っていて首を傾げれば、その瞬間にベッドへと問答無用で運ばれてしまう。何がどうして、こうなってるのかは分からないけど抵抗する理由も特にない。

 なので大人しくしていれば、ルフィが首筋に吸い付いて痛みを残す。でも、少し不安でつい名を呼んでしまう。

 

 「ルフィ?」

 「ナミお前さ、戦ってる時……俺に見惚れてただろ」

 「なっ……!?」

 

 気付かれてると思って無かったのもあり、咄嗟に言葉が出ない。ジワジワと顔に熱が溜まるのが分かる位、熱い……。

 

 「さっき、話があるって言った時も……見惚れてた、よな?」

 「そ、んな……こと……「あるだろ。見聞色の覇気使えるようになったし、それ以前にナミの視線が何処にあるのか位なら、分かってる。二年前も時々、ん?って思ってたけど、気のせいじゃ無かったんだな」」

 「うっ……!」

 

 少しだけ意地の悪い顔をして、私の顔を覗き込む。そんな顔にすらトキメク時点で、私に勝ち目なんてある筈無いのだ。

 

 「ナミ……もしかして、俺の顔、好きか?」

 「……うん、好き。ルフィって色々やらかしてくれて大変だし、手もかかるし、傍迷惑で目を離せないけど、それを補って余るくらい……本質しか見ないし、ちゃんと大切なものは全て守る為に努力してる。尊敬出来る船長だし、愛しい人だもの……迷惑な所も含めて、全て大好きよ」

 

 伝えないで後悔するなんてしたくない。そんな想いを込めて口にした言葉で、ルフィが真っ赤に染まる。

 それを見て頭を撫でたら何故か唸り出すから、とりあえずシャワー浴びて来るわねと腕を抜け出した。前半は単純にこき下ろしてたとも取れるから、反応に困ってるのかな?

 

 「ナミは、いつもいつも、俺をどうしたいんだよ……」

 

 ルフィが何か呟いてる声が聞こえたけど、正直意味がわからない。寧ろルフィが、私を求めてたんじゃないのかな?

 そんな事を思いながら手荷物からシャンプー達を含む入浴グッズを取り出して、部屋についてるシャワーを借りる。王宮のお風呂ってのも興味あるから、明日辺りしらほしとロビン、ケイミーでお風呂行こうかなと少し浮かれつつ慌ただしくも塩を落としてしまう。

 お風呂を出て身支度を整えてからルフィの所に戻ったら、本気で嫌そうな顔をされた。けどさ、じゃぁ裸で出ろとでも言うのか。

 

 「何もキッチリ寝間着着てくる事ねェだろ」

 「折角用意して貰ってたんだし……使わないと悪いじゃない?それも何故か、男女のワンセットあったのよ」

 「誰が何処の部屋使うか分からないからだろ。……俺もシャワー浴びて来るから、少し待ってろよ」

 「あ、浴びてくれるんだ」

 「ん、流石に塩っぽいからな」

 「うん。待ってる」

 

 笑顔で手を振り見送ってから、私はベッドへダイブする。けれども柔らかなそれに包まれた時、私の意識はそのまま沈んでしまったのだった。

 だって、考えても見て欲しい。魚人島突入から現在までで、1日なのだから体力の消費がどれ程の物であるか。

 そんな訳で当然、ルフィが戻った時にはスヤスヤと眠ってるナミがいた。それを見てルフィが苦笑したのは当然で、体力を考えたら今は襲えないかと並んで寝るように対応するしかない。

 自分の寝床を得る為に、ナミを動かす為に抱き上げても反応が無い。なので、無防備過ぎると思いながらも自分も寝ようとしたが、その時身体の向きを変えたナミが頭を枕から落としてしまう。

 それに視線を向けるとそのままナミが甘えるように擦り寄るから、ルフィは息を飲み自分の理性との戦いを強いられる事となった。その上ナミは、口の中で何かモニュモニュと言っている。

 ルフィがそっとナミへと顔を近付けて何を言ってるのか聞こうとしたら、首に抱き着いて来て、そのまま頬にキスをされる。それにより名を呼んでみたのは、当然と言えるだろう。

 

 「ナミ?」

 「んっ……ルフィ……」

 「……なァ、本当は起きてたりしないか?なァ?」

 「……大好き……」

 

 そのままナミが寝息をたてるのを聞けば、ナミが寝ているのはルフィもちゃんと理解している。ただ、それならいっそ宝を取り返せなかったからお仕置と言われた方が諦めもつくというだけの話だ。

 寝言とわかっていても、いや、わかっているからこそ、ルフィ大好きとか言いつつ、抱き着いて来て、スリスリと甘えてくるのは苦しい。特に下半身が。

 やられて迷惑かと聞かれれば、それは違うし、当然愛しい。だが、健全な肉体を持つ19歳男子としては理性が……!と珍しくも我慢なんて事をするしかないルフィなのである。

 だが、それを褒めてくれる人間はとりあえず居ないだろう。何せこの場には幸せそうに寝ているナミと、身悶えるルフィしかいないのだから。

 翌朝目を覚ますと妙に暖かくて、でもベッドにしては固くて……。あれ?

 顔を上げて、気付く。もしかして、朝?

 ……って事は、ルフィが帰る前に寝ちゃった?

 なら、この温もりは……?

 少しだけ顔を上げて、じっと視線を向ければ、それはルフィで……。目を閉じてる方がルフィは賢そうに見えるわねと考えながら、その頭を撫でる。

 昔からこの髪の柔らかさが変わらないのは、私への挑戦だろうかと内心でつのる。だってさ、どれ程頑張って、私が髪の艶をキープしてると思っているのかって思うじゃない。

 

 「んっ……ナミ?」

 「あ、起こしちゃった?」

 「ん……。ナミだ」

 

 そう言いながら強く抱き締めてくるルフィに、この鼓動の音を聞くと眠くなるのよねと思う。幼いルフィを抱いて寝ていた弊害かな?

 そんな事を思いながら、ルフィの胸に頭を落とす。いつまでも持ち上げてると疲れるし。

 

 「そうね……。ルフィだわ……」

 「ナミ……」

 「なぁに?」

 

 ルフィの胸から顔を上げて視線を合わせれば、ルフィが妙に真剣な顔をしてるのに気付く。……怒ってるとかじゃ、無さそうね。

 

 「ナミから、ちゃんと答えて貰いたい」

 「何を?」

 「ナミの中で、俺はまだ、弟か?」

 「馬鹿ね……。ちゃんと、男として……そして何より船長として、愛してるわ」

 

 素直に答えた私に、ルフィはホッとしたような顔を見せる。それの理由が分からずにじっとその瞳を見詰めたら、ルフィはゆっくりとその唇を動かした。

 

 「やっと……聞けた」

 「え?」

 「ナミからその返事聞くのに、二年かかったな」

 「へ?」

 

 よく分からなくて首を傾げる私に、ルフィは笑う。分からないのかとその瞳が訴えて来る。

 でも、分かるわけが無い。情報が少な過ぎるもの。

 

 「俺が初めてナミを抱いた翌朝、俺、抜かなかったろ?」

 「うん」

 

 覚えてるわ。あんな経験他では無いと思うし。朝になっても抜いてくれてなくて、そのまま起きてから続け様だったんだから。

 いくら17歳だったとは言え、盛りすぎだと思う。……健康な証拠なんだから、良いとは思うけどね。

 

 「その時、同じ事聞いたんだ。でもよ、その時ナミは〝分からない〟からって俺の頭撫でたり、キスしたりした上で首傾げてた」

 

 言われてから思い出してみれば恥ずかしい。でも、あの時は本当に分からなかったのだ。

 そう考えたら、あれはそのまま襲われたのも自業自得だったのかも。いや、でも、やっぱりルフィが悪いんだもん……!!

 そう思って顔を背ける私に、ルフィは楽しそうに笑う。こんな時、いつの間にか余裕とかそういった事が逆転してる時が増えたなと気付かされる。

 いつの間にか、ルフィが余裕綽々で、私は真っ赤になってる事が本当に多くなった。……それは、ルフィが成長したのは勿論だけど、私が退化してるのでは無いかなと不安になる。

 

 「そんな、不安そうな顔するなよ」

 「だって……」

 

 不安なんだもん。そうは言えなくて小さくなる私をルフィが今度は撫でて来る。

 いつの間にか入れ替わっていく立場。それが嫌と言うではないけど、なんか切ない。

 

 「ちゃんと……愛してやるから……な?」

 「はぇ?」

 「抱かれなかったから寂しかったんだろ」

 

 話についていけない私を置き去りに、疑問符さえないそれ。その後理解して慌てて、そんな話してないと言おうとして……言えないままに唇が塞がれる。

 ルフィの舌が私の口内を蹂躙して、逃げようにも頭をしっかり押さえ込まれていてはどうにもならない。何よりも困るのは、この行為が全く嫌じゃない所。

 ううん、寧ろ幸せと言うか……。気持ちいいと、言いますか……。

 

 「ふぁっ……んっ……!ルフィ……!」

 「ナミ」

 

 唇の隙間で互いに名を呼び合い、そのまま幾度となく唇を合わせる。そうしている内に、気付いた時には私がベッドを背にする形に変わっていた。

 その上しっかりと脱がされていて、器用なものねと思って笑ってしまう。そんな私にルフィは少しムッとした顔をするから、どうしたのかなと首を傾げた。

 

 「ナミはいつも、余裕だよな。俺ばっかり焦って、戸惑って……翻弄される」

 「な、何言ってんの!?最近はルフィが余裕綽々で、私ばっかり焦って、ルフィだけ成長して、私は……退化してる気がしてるのに……」

 

 後半になると段々悲しくなって来て、声が小さくなる。そんな私にルフィは驚いたような顔をしてから、破顔した。

 その顔に魅入られて、私は呼吸さえ忘れてしまう。それくらい、本当に嬉しそうな、幸せそうな……どう表現したら正しいのか分からないくらい、本当に〝破顔〟って感じの……ううん、微笑み……とか言うのかな?

 

 「俺、幸せだ」

 「え?」

 「ナミからちゃんと女として愛されてる。ナミがちゃんと、俺に等身大で向き合ってくれてるんだってわかった」

 

 意味が、分からない。と言うか、ルフィが大人に見える。

 

 「ナミはさ、ずっと何かを抱えてて、それを守る為に本当のナミよりもずっと大きく、強く見せかけてた。崩れそうなのに、砕けそうなのに、それを隠してただ駆け回ってたように思うんだ」

 

 ルフィの言わんとしてる事は何となく分かるけど、私はそんなご大層な存在じゃない。でも、それを言葉にする事が出来なかった。

 

 「その抱えてるのが、ガキの頃は俺と、サボと、エースだったし、再会したら村で、その名残で村の事が終わったらまた俺を抱えて、その上で今は船員を抱えてる。そんで、それは多分治らないんだってのも分かってたから、そんなナミごと愛そうって決めて来たんだ」

 「私の抱える相手ごと、ルフィは、愛してくれるの?」

 「おう!だってよ、その抱えてるのも含めて〝ナミ〟なんだって気付いたからな!」

 

 これ迄ずっと、皆から優しく1人で抱えるなと何度も繰り返し言われてきた。でも、抱えてる大切な人達を手放す事も、それを誰かに託す事も、私には難しくて……。

 下手に1緒に抱えて貰おうとしたら、私はバランスを保てなくなるような、そんな不安さえあった。それに、下手に巻き込んでしまう事も怖くて……身動きが取れなくて……なのにルフィは、私に抱えたままでいいと言ってくれる。

 

 「ナミがジンベエに言ったろ。〝全部繋がって私ができてる〟って。だからさ、無理してばっかで、自分の事放置しちまう悪い所も含めて、ナミなんだなって……なんか、すんなり思えたんだ」

 「ジンベエちゃんとの、会話で?って……あの時ルフィ寝てたわよね!?」

 「ん?寝てたけどよ、ナミの声は何となく聞こえてたから、チョッパーからジンベエとの会話後から聞いといたんだ。だから、ナミの言葉の意味とかちゃんとわかってさ」

 「ルフィ……」

 「そうやってナミの事が分かったら、後は簡単だった。悪い所があるから人間で、欠けてるから補い合うんだ。なんでもできるナミなんだから、そんな悪い所は皆で支えたら良いって気付いた。直させようとしても、難しいのもわかってるしよ」

 「ルフィ……」

 

 私はもう、ルフィの名を呼ぶしか出来ない。なのにルフィは、優しく言葉を続けてくれる。

 ずっと、私がルフィを守るんだって……片意地張ってた。けど、護られてるのは……私の方だ。

 

 「ナミがナミなら、それでいい。変わってもいい。変わらなくてもいい。ただ、自分に嘘ついたり、1人で苦しまないなら、それでいいんだ」

 

 ルフィは笑う。太陽のような笑顔で。

 私はルフィと言う太陽を求めて手を伸ばす。その存在全てが愛おしすぎて。

 きっとルフィは、私の手を振り払わないと信じられるから。ルフィへと抱き着いて、引きずり倒して、そっと耳元で囁く。

 ルフィしか、今は感じたくない。ルフィに、甘えたいの。

 

 「ルフィ……抱いて……」

 

 私の言葉にルフィは口付けで返事をする。それだけで、ルフィの想いが伝わって来るような、そんな気がした。

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