※この作品はR-18です。

波間の向こうを目指して(新・本編)   作:夢枕 七変化

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ろくろ首

 王子とは挨拶だけ交わして、私達は買い物を続けながらサニーへと戻った。帰ればその後何とかなると判断して、チョッパーにお風呂まで私を運んで貰った後は、のんびりと入浴タイムとさせて貰う。

 その間にロビン達は、買った物の整理を行ってくれてるらしい。本当に助かるわ。

 正直今は指示出し以外何も出来ないので、お風呂に入ったり本読んだりしてるのが1番迷惑をかけない手段でもあるのよね。だからと思っていつもより念入りにお風呂に入って、ホクホクした気持ちでその後を過ごさせて貰っていた。

 そうして遊び回っていたルフィを含めた全員が帰って来るまで、少しばかりゆったりとした時間を過ごさせてもらう。その間に備品確認や、航海日誌等はつけてしまったので、他に何が出来るかなと悩んだ結果でもある。

 皆で揃っての夕飯は、賑やかしくも楽しい。そうして出航までに買い忘れた物等が無いかをもう1度相談してから、各自の部屋で眠りについた。

 その眠りに入る前にウソップにクリマタクトの改良を頼んだのは、いつもの事。それにはフランキーも面白そうだなと言って参加してくれて、結局三人で嗚呼でもない、こうでもないと語り合ってしまった。

 途中それをロビンが微笑ましそうに眺めていて、そんな私達にサンジ君が飲み物を提供来てくれたら、チョッパーがロビンの膝で寝てしまうという事態に陥った。けれども、概ね平和で、でも朝まで語った訳でもない。

 途中ルフィが邪魔してこようとしたのをゾロが回収して寝かせてくれたのには、本当に感謝してる。お礼にと芋焼酎を1本提供したら、珍しいもん持ってんなと嬉しそうだったので、お礼になったと思う事にした。

 寝る頃になって、ブルックが子守唄代わりにと演奏してくれたのが結構激しい曲で、本当は寝かせる気ないよねと笑い合ってから各自部屋へと戻ったのだった。チョッパーは完全に寝てしまっていたので、女部屋で今夜は預かるわと言ったらサンジ君が泣き始めたのでそれには困ったけど。

 例え陸にいるとは言えども、誰も見張りをしなくていいなんて事は本当に珍しいのだ。だからこそ、全員揃って安眠できる珍しい機会を堪能するようにして、私達は珍しい夜をその後も楽しむ。

 私とロビンは、結局他愛ない事を話しながら眠るというある意味無駄で、物凄く贅沢な時間の使い方をしながら眠りに落ちていった。翌朝目覚めると、何を着ようかなと少し悩む。

 結局はパッパグの所から貰って来た物の中から、買うかを悩んでたビキニを選んで身に付ける。きっとどちらにしても、最後は手に入れてたと思うのよね。

 そして、着替えを選んだ私はシャワーを浴びて着替えを済ませると、いつものように甲板へ出た。そこへクジラちゃんやメガロがお迎えに来てくれていて、私は大興奮である。

 そんな私にルフィは何故か抵抗する。何が気に入らないというのか、本気で分からない。

 

 「ナミは、そんなにクジラとかが好きか!?」

 「だって可愛い!!」

 

 何故か不貞腐れてるルフィについ本音がもれる。だって丸っこくて可愛いじゃない!

 何よりラブーンと似てるし。……風船とかで似たようなの作れそう。

 あ、今度ぬいぐるみか抱き枕作ってみようかな。うん、いいアイデアかも。

 上手くラブーンを作れたら、ブルックにあげよう。きっと喜んでくれるわ。

 

 「チョッパーが居るじゃんか!!」

 「チョッパーは当然可愛いわよ!ロビンは美人だし!でも、クジラも可愛いの!」

 「……鏡、見てりゃ充分だろ」

 「……鏡?」

 

 鏡は可愛くないと思うけど。そう思って首を傾げたら、ルフィは当然のように言う。

 

 「ナミより可愛いもんなんか、この世にねェよ!!」

 「は!?ルフィのが可愛いわよ!!」

 「……俺、可愛いのか?」

 「うん、可愛い」

 「ナミの可愛いの基準が分からねェ」

 

 そんな会話をしつつ、到着した港で私は約束の品を受け取る為にサニーを降りる。するとルフィが私の姿を見て、不思議そうな顔をした。

 

 「どうしたの?」

 

 サニーを見上げて問いかけると、ルフィが嬉しそうに笑って頷いたので、首を傾げてしまう。そんな私にルフィはにししっと笑うから、余程嬉しい事でもあったのかなと思う。

 

 「ナミ、そのビキニ……俺とお揃いだな!」

 

 言われた言葉で、顔が熱を持つのが分かった。どうしてルフィは余計な事に気付くのかな!?

 ルフィの赤と同じ赤のビキニを見付けて、ついそれを身に付けてしまったのが運の尽きだろうか。でも、買うか悩んだ時も思ったけど、ルフィの色だから……欲しかったんだもん。

 まぁ、結局は買わないでいたらパッパグからプレゼントされたんだけどね。だからこそ、これにはパッパグのブランドを示す〝crimin〟と書かれている。

 でも私としてはとりあえずこの話を切り上げたいので、ルフィから視線を逸らして1言。普通に言うつもりがつい、強く言ってしまったのはご愛嬌だろう。

 

 「黙らっしゃい!」

 「にししっ」

 

 その直後、ルフィに泣き付くしらほしを見て、あっちはルフィ達に任せてしまおうと右大臣に話し掛けた。まずは隠されてた事を聞いてしまいたい。

 

 「それで?何を隠してたの?」

 「それは、その……」

 「ビッグ・マムに関わる事なら、聞いておかないとその方が困るわ。ルフィは作成立てて動くタイプじゃないけど、私やロビンは頭脳戦タイプなんだもの」

 

 背後では大騒ぎしてる皆の声が聞こえてるし、泣き続けているのは何もしらほしばかりでは無い。ウソップとチョッパーの嘆きっぷりは、最早見事とさえ言いたくなる程だ。

 そうして吐かせた話は、なんとビッグ・マムに爆弾を送っているという現実である。でも、それなら結果論だけど良かったかもしれないわね。

 

 「良かった……かも、知れないわ」

 「「何が!?」」

 「爆弾は〝玉手箱〟でしょ?なら、良かったかもしれないじゃない。古来から〝玉手箱〟については、開ければ歳をとるなんて言われていたりする神秘の箱。中々開けようとはしないでしょうし、秘宝だから魚人島としても中身を知らなかった事にできるわ」

 

 驚く二人に簡単に説明するけど、反応は微妙。どうやら納得は出来ないみたいね。

 

 「……え?」

 「可能とは思えんのじゃもん」

 「王家はずっと所有はしていたけど、中身がなんであるのかは伝わっていなかったし、開けることを禁じられていた……とすれば、国を作った時に最悪の時を想定してそうした物を用意していたとしても、歴史的に見ておかしくは無いわ」

 

 仕掛けを1つ動かしたら、城の全てが崩れ落ちるように設計されていた城もあった。何かの時には逃げる事が第一優先で、それ以外に目立つのは無駄に高い攻撃力も結果論防御力の1部であったって言うお城もあるわ。

 そうやって考えれば、魚人島は何かの時には知らぬ存ぜぬを貫き通す事も不可能じゃない。そして、それはルフィもまた同じ事。

 ルフィは本当に何も知らないのだから、責められた所でどうにもならない。四皇が爆弾如きでどうにかなる筈も無いのだから、こうなってしまえば気にする事はないと分かる。

 海賊王になるとルフィは決めている。つまりは、ルフィの場合七武海には友達も多いからどうでもいいかもしれないけど、四皇は全員遅かれ早かれ戦うしかないのだ。

 対外的な情報だけなら黒髭が1番弱いけど、多分最後に回すべきだと言うのもわかる。四皇の中で1番強いと言われていた白髭海賊団を、どんな手法であったとしても彼等は撃破しているのだから。

 シャンクス達とは戦わずに宴だけして済ませるかもしれないと思うのもあり、ならば世界最強の生物と呼ばれるカイドウよりはビッグ・マムを相手取るのが良いだろう。そう考えれば爆弾で怒って理性を失ってくれるなら、それの方が良いに決まってる。

 

 「だから、私達の事は気にしなくていいわ。万が一の時は知らぬ存ぜぬを貫き通して」

 「相分かった!そのように取り計らおう!」

 

 右大臣ちゃんの言葉に頷いて、私は王様に視線を向ける。それに頷き、左大臣ちゃんを呼んでくれたので私は引き続き約束していたレシピを受け取った。

 中身を確認して、それだけで本に出来そうなそれに満足して頷けば、王様達も満足そうにしてくれている。流石にこれは本に出来ないからと、そのままサンジ君に渡そうと決めた。

 

 「ありがとうございます。でも、これだけのレシピ、本当にお預かりしてしまって宜しいのですか?」

 「構わんのじゃもん。再現出来る人間もそう多くは無い、面倒な工程もあるんじゃもん」

 

 言われてみれば確かにと苦笑した時、右大臣ちゃんが言った。それは驚きの言葉である。

 いくら恩人へのものだとはいえど、大盤振舞にも程がある。何が彼等をここまで変えたのかな。

 

 「少し手直しして、万人が作れる型落ち品なら、本にして頂いても構いません」

 「え?でも……」

 「自分で作る手間が必要な他、本来の手順では無い為味も少しは落ちます。そうなれば本家である魚人島のお菓子が売れるのは必然。ですのでどうぞ、使いやすいようにお使いになって、我々に多少なりとも恩返しさせてください」

 「……ありがとう、では、遠慮無く」

 

 原本を製本してサンジ君に渡すか、私風にアレンジしたのとセットで渡すか……まずはこれを見てもらって二人で色々相談してみるのもありよね。1度は簡単にレシピを見てるから、サンジ君も必要な物は買い揃えてたんだろうけど。

 

 「さて、こちらが王子との約束の品で、新世界のログポースです」

 

 そう言って渡されたそれは、針が三つついている。それを確認して頷けば、ウソップとチョッパーが近寄って来た。

 

 「ありがとう。でも、説明はいいわ」

 「「え?何でだよ?」」

 「ルフィが知ると面倒な事になるのよ。私は把握してるから大丈夫」

 

 けれども興味を持った2人が騒ぎ始めれば、左大臣ちゃんが説明を開始してしまう。それにより〝危険がわかる〟と知った2人は慌てるけど、これはもうどうにもならない。

 その時ヒュルルルル……という音が聞こえて、私は身を硬くする。お化けでも出るんじゃないかという音だったのが、理由としては大きい。

 そしてその音の正体を掴むより先に、私の身体に巻き付く暖かな物。その体温と匂いに慣れてなければ、その時点で悲鳴を上げて泣いていただろう。

 でも泣かないで耐えられたのは、近くにルフィがいると思うからで……!?

 

 「いやぁぁぁ!!」

 

 ろくろ首のように首を伸ばしたルフィが、首で私の身体を締め上げ、その顔を私の横に出してると気付いた時には、その状況だけで悲鳴を抑えられなくなっていた。だって、怖い。

 

 「へ~……。カッコイイな~!新しいログポース~?」

 

 ルフィの質問に答える余裕はない。既にこれはルフィではなく、ろくろ首である。

 

 「いやぁぁぁ!お化けいやぁぁぁ!!」

 「お化けじゃねェよ!?それにしても、その真ん中のすげー針が揺れてる島、面白そうだな~!!」

 「「聞いてた~!」」

 

 聞いてた事に泣き叫ぶウソップとチョッパーだけど、私は思わずルフィの首を両手で締めて揺さぶっていた。何でルフィはこう……!

 ちなみに新世界のログポースは壊すといけないので片付けてから首を絞めてます。ご安心ください。

 

 「私お化け嫌いだって知ってるでしょ!?なんでそんなお化けみたいな事するの!?もう、1週間は私に触らないで!」

 「は!?巫山戯んな!今夜は俺が見張りなんだからナミを見張りついでに食うに決まってんだろ!!」

 「決まってないわよ、そんなの!!」

 

 怒りが頂点に達した私は、既に恐怖を怒りが凌駕していた。なので多分原作のナミちゃんファンには怒られるんじゃないかって言うような形相で、ルフィの首を全力で締めながら揺さぶり続ける。

 

 「もう許さない!ルフィ少し黙ってなさいよ!!そんなんだったらこれからは私が進路を決めて行く!!」

 「馬鹿言え!俺が船長だぞ!!」

 「「頼む船長、航海士の意見に、耳を傾けてくれ~!!」」

 「カップリング曲!!〝鎮魂歌(レクイエム)・フォー・アス〟!!」|

 

 ブルックがロビンの近くでそんな事言って演奏始めた。でも、私の心はそれにより安定はせず、今度は怒りの感情が振り切って悲しくなってきた。

 

 「……ルフィは、私の事嫌いなんだ」

 「は!?」

 「だからお化けみたいな事して、私を怖がらせて、その上で皆の前で私を辱めるんだ!!……私がお化けダメなの知ってる癖に、酷い!ルフィなんかもう知らない!!」

 「わ、悪かった!悪かったから!!」

 

 ルフィは本気で慌ててるみたいだけど、首で巻き付いて私を動けなくしてるそれは解放しない。勿論解放されてたら、脱兎の如く逃げてるけど。

 

 「ルフィなんか、サンジ君に言って今日のおやつ抜きにして貰うんだから~!!私がその分も食べてやるー!!」

 「うわぁぁぁ!!ナミ!ごめん!ごめんなさい!!許してくれよォ~……!!」

 「知らないもん!!」

 

 そう言ってルフィの首から自力で抜け出した私は、サニーへと駆け戻り追いかけて来るルフィから全力で逃げ回る。その様子を目視できる人間が少数派であるような状態に、流石は麦藁の1味……と見送りに来てる人達がある種の感動を覚えていた事を、私達は知らなかった。

 その後フランキーが出航の準備ができたと言うまで、私は逃げ回っていたし、ルフィはそれにより立ち止まった私に絡み付いて離れなくなった。とりあえず、ルフィはヒトデかタコなんじゃないかと本気で疑いたい今日この頃である。

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