サンジ君はササッと飲み物だけ用意してくれたので、この暑さに弱らないよう考えてくれたと気付く。こういう細やかな気遣いが本当に有難い。
何かを頼まれるより先にそういった物を用意できるのは、執事としての才能があるんじゃないかと常々思ってる。……正直、これが当たり前になると困るから甘やかさないで欲しいんだけど。
ロビンが居ないので、1人で航海日誌をつけているけど何だか不思議な気持ちになる。サンジ君は本格的にデザートを作りに行ってるらしく、戻る気配はない。
航海日誌をつけてふと視線を上げた時、空がおかしい事に気付いた。……あら?
「どうかしたのか、ナミ」
「うん。雲が……よく見ると、この島の空……可笑しいのよ。反対側はまるで極寒の空で……」
「んな馬鹿な!!」
フランキーはそう言って笑うけど、あの雲は間違い無く寒い所のもの。それも、相当寒くなければならない形状なのだから、首を傾げるのも当然。
ここは暑いけど、それはこの海まで燃えてる現状がそう思わせるだけなのかな。島は寒いとか……?
それでもここから近い範囲は雲も夏雲なのだ。だとするなら、島も暑いと考えるべきだろうけど……。
でも、あの時の電伝虫も確かに〝寒い〟といっていたわ。少しサンジ君に相談してきた方が良いかしら?
そう思って立ち上がった時、チョッパーがフラリと身体をよろめかる。ブルックに視線を向ければ、楽器を抱き締めて眠っていた。
それによりチョッパーを支えようとしたらしいフランキーが手を伸ばした所で、そのまま倒れて眠ってしまったのを見て私は慌てて船内へ向けて駆け出す。けど、少し遅かったみたい。
薬に慣れてるこの身体で、既に視界が揺れてる。この強さの薬品は、不味い。
キッチンに続くドアを開けて僅かな隙間で侵入を果たすと、直後ドアを閉めてそのドアに寄りかかる。それに驚いた様子で視線を向けてくるサンジ君に、最後の力を振り絞って言葉を告げる。
「外に、ガス……眠り、ごめん……」
「ナミさん!?」
動いた事で急激に回ったそのガスの効果で、私の意識は沈んで行く。だけど、どうして?
外は密閉されてないのに、それなのにここまでの効果を出せるなんて、尋常じゃない。ルフィ、ロビン……無事で、いて……。
人の話し声が聞こえて意識が浮上するけど、誰の声だか分からない。知らない、声だわ。
「ほ、本当にこの女……あの手配書の!?」
「他の誰だよ!?なァ……少しくらい……」
「でもよ、マスター怒らねェかな?」
「あァ……お優しい方だから……」
優しいマスターが怒るから、手を出さない。そんな会話かな?
身動ごうとしても、キッチリ縛られてるようで何も出来ない。その時、聞き慣れた声が耳に届く。
「汚ェ手でウチの美人航海士に触れるな!……最悪の目覚めだよ……ったく!!」
「なァ……俺達が手を出すんじゃなければ良いんじゃねェか?見てただけなら」
「あ!そうか!よし、その手で行くか!!」
嫌な予感がして、でも下手に動けば状況を打破する機会さえ失われると意識のないフリを続ける。そして、恐らくは縛られているだろうサンジ君と私を、私の見知らぬそいつらは近くの部屋に運び込み……閉じ込めた。
直後にウィン……と言う音が聞こえて来て、映像と音声が部屋に流れ出したと分かる。そこで言われた事を纏めるなら、ペットを殺されたくなければ、女を辱めろと言うもの。
当然サンジ君は怒り狂ってる様子だけど、ならばチョッパーを殺すと、毒ガスを入れると言われれば戸惑うのも無理は無い。でも、優しいサンジ君が私にそうして触れる事ができるかと言われたら難しいだろう。
「んっ……」
「ナミさん!!」
「サンジ君……?」
今起きたように見せかけて、辺りを確認する。窓1つ無い空間には、確かにガス等を送り込めそうな排気口が幾つか設置されていて、幾つかの電伝虫が設置されていた。
出入口は1箇所のみ。例えば今サンジ君の蹴りでその扉がどうにかなったとして、チョッパーの居場所を探してる間にチョッパーは簡単に殺されてしまうだろう事を思えば逃げるのは悪手。
「ここは?」
「わからねェ。悪い、ナミさん。折角教えて貰ったってのに……」
話を纏めると、あの後サンジ君は私をソファへと移動させてから、電伝虫で皆に連絡を取ろうとした。でもドアを全開にされて船内へ向けてガスを注入されてしまった為に、連絡を誰にも取れないままに見知らぬこの場所へ拉致されたらしい。
それはもう、不可抗力の領域。サンジ君を責める気はない。
そう思った時、通信を入れて来てる奴等から、どうせ恋人か夫婦なんだろうと言われて私とサンジ君は揃って首を傾げる。その後奴らの話を聞いて、状況をまとめれば成程と思う。
あの時船にいたのは、人間二人とロボット、そしてペットが1匹だったから、人間二人が旅をしていたと思われたらしい。確かにそう思われても不思議は無い。
チョッパーはペットとして手配書に載ってるし、サンジ君の手配書はアレだから本人として認識しにくい。手配書には、何処の海賊団に所属してるのか迄は基本的に書かれないのも大きいわよね。
フランキーは生物と呼べるのか怪しいし、そうなればブルックは生きてるなんて思われる事の方が難しいだろう。こんな変な海で長く生きていた筈のシャッキーでさえ、ブルックには驚いていたのだから。
「ナミさん……」
「チョッパーが殺されるのを黙ってはいられないわ。……従うしかないでしょうね」
「でも……!!」
「大丈夫よ。考えはあるから」
そう言ってサンジ君に紐を解いて貰い、画面の横にいる電伝虫へと語り掛ける。これで伝えて貰える筈だから。
聞き出さなければいけない事はある。それが確認できなければ、この作戦はそもそも使うべきじゃないわ。
「従った後、ちゃんとチョッパーに会わせて貰えるの?」
「勿論だ」
「……私もそれなりの賞金首よ。どうやって移動させるつもりなの?」
「……部屋の真ん中に、床が開く所がある。そこに入れば滑り落ちる形でペットのいる部屋に到着出来るから、そうやって移動して貰う」
その言葉で私とサンジ君は頷く。あちらに到着してから、その部屋を出る為の時間も必要だから今すぐ行動には移せないけど。
可愛い顔と、美しい身体。……二年前、日常的に見慣れてる筈のメンバーでさえお風呂を覗いた瞬間に鼻血を吹いたその威力を、こいつらが耐えられるとは思えない。
艶のある仕草も表情も、レイリーに仕込まれてる。つまり画面の向こうにいる相手の意識を奪うのは恐らく、造作もない。
「ここでやるなら、何かクッションだとかマットレスだとかを用意しやがれ!!このままじゃナミさんが、怪我しちまう」
成程、落下時の衝撃緩和用にするつもりなのねと思えば、笑みが浮かびそうになる。それを誤魔化す為に、私はサンジ君へと潤んだ眼差しを向けた。
ここで気取られたら良くないのは阿呆でも分かる。賢い人はこう言う時楽だわ。
「サンジ君……私の事、気遣ってくれるのね」
「当然ですよ。俺はナミさんのナイトですからね。ナミさんが傷付くなんて、俺には耐えられません!!」
「嬉しい……!!」
そう言って飛び着けば、演技とは思えない程に動揺するサンジ君に、役者ねぇ……と心から思う。するとその直後、そこそこ柔らかいマットレスが降って来て、つまりこのような形でチョッパーの元へ行けると言う事かと理解した。
そして、上の方に道具の保管庫があるのか、地下に人を閉じ込めているのか、とりあえず何階迄あるかは分からないけど、下手に動き回るのは得策じゃない。ならば、演じ抜いて必ず皆と生きて再び会ってみせるわ。
「ナミさん……」
「や、恥ずかし……」
手を伸ばして来たサンジ君の手を振り払い、恥じらいを見せれば画面の向こうで息を飲んだのが分かる。でも、それは良いように作用したらしい。
視線が集まるのが分かる。身体の角度を変えて、画面の向こうに見えないように衣服を脱ぎ、ブーイングの起きるそれに小さく笑う。
さぁ……意識を保てるものなら保ってみなさい。そう思いつつ、艶やかな流し目で黙らせてから妖艶な笑みを浮かべて裸体を晒した時、案の定画面の向こうで宇宙服のような物を着た奴等が倒れた。
それを確認して、ふふんと笑ってから脱いだビキニに手を伸ばせば、掴まれた腕。視線を向ければ真剣な顔をしたサンジ君がいて、どうしたのかと思う。
「玉体を……そう簡単に、見せるもんじゃありませんよ」
「サンジ君?」
「俺がその素晴らしいお姿を、見ただけで意識失う程慣れてない訳じゃない事は、1度俺に犯されてるんだから知ってますよね?」
その言葉に頷く。だって、サンジ君の意識が失われないとわかっていたからこの手法を使ったのだから。
身内に意識を失われては、この先に進めない。だから、敵の意識だけを刈り取れる手段としてこれを選んだのよ。
なのにどうして、こんなに欲望にぎらついたそれを向けられているんだろう。そんな不安と疑問を抱いてる間に、サンジ君は舐めるように私の裸体を見て、当然のように組み敷いて来た。
床に押し倒されて、漸くサンジ君が見られている状態でするようにと望まれていた行為をしようとしていると気付く。でも、そんなの必要無いじゃない。
サンジ君は、この場を乗り切る為の方弁だとわかってた筈よ。何より、私がルフィのもので、サンジ君にはもう触らないでと言ってあったのに。
「辞めて、サンジ君」
「ナミさんのその強気な態度が、好きですよ」
「ぃや!!やだ!ルフィ!!」
胸に吸い付かれるのと同時に求めた助けに、サンジ君はお仕置と言わんばかりに歯を立てる。その痛みに首を横に振れば、サンジ君の瞳に狂気に近い色を見付けてしまう。
どうして……?
サンジ君、急にどうして……!?
そう問掛ける間もない。両足を掴んで割り開く手に、容赦は無い。
恥ずかしい部分を覗き込み、突き刺さるような視線に晒されていると自覚してしまう。恐怖と絶望と、切なさの中で、身体だけが期待しているのを自覚して泣きたくなる。
「俺は、これ迄幾度も伝えて来たようにナミさんに惚れてます。そんな男の前で平然と全裸になった己の無防備さと無知さを……呪ってください」
「ほ、他に方法が無かったでしょ!?それに、何度も言ってるように私は、ルフィじゃ無きゃ「こういう状況で、他の男の名を出すのは……悪手ですよ。愛しい人」」
必死に紡ぐ言い訳を尽く無視して、見せたのが悪いとサンジ君は言う。そしてひくつくその場所が、ねっとりとした感触に包まれた。
サンジ君の頭が、私の足の間に埋め込まれている。熱い唇が移動して充血している蕾を吸う。
「あっ……あぁっ!!サンジ、く……!いやぁぁぁ!!」
ブルブルと腰が淫らに震える。叫ぶ事に、何の意味が有るだろう。
1旦暴走した男の欲望を止めるなんて、できる筈も無いのに。レイリーに教えられた躱し方さえ、大切な仲間には使えないのだと思い知らされるだけ。
それ以前に、私の身体は本当に抵抗する気があるのかな。割り開かれた両足は、自らサンジ君に絡まろうとはしてない?
サンジ君の髪を掴んでる手は、引き離そうとしてるのか、それとも押さえつけようとしてるのか。自分で自分が分からなくなる。
好き者の身体なのだと、そう言われてる気がしてしまうの。身体が、熱を求めている。
指で、舌で、散々に弄って欲しいと疼いてる。でも何より、太くて堅い1物をぶち込んで、いっぱいに満たして欲しいと、飢えた内壁が悲鳴を上げているのを自覚してしまった。
「もういやぁぁあ!!やめてぇぇ……!!」
それはもう、サンジ君にではなく、快楽にしがみつこうとする自らの身体に向けての言葉。ルフィが良いのに、ルフィじゃ無きゃ嫌なのに……どうして……?
その時、あらぬ所で濡れた音が響く。絶望の涙が落ちそうになった時、サンジ君が真っ直ぐに私を見詰めている事に気付いて呼吸さえ忘れそうになった。