街に戻れば当然のように女の人達は踊っているし、良い匂いがどこからともなく漂って来るので、ルフィはキョロキョロと辺りを見ている。そして今は、動く玩具に大はしゃぎしているけど……何だろう、玩具を見ていたら切なくなって来たのは。
壊れても動くから……とか、そんな理由じゃない。なんでだか分からないけど、見ていたら泣きたいような衝動にかられてしまった。
「うーん!!オモチャ動いてっけど、まあいいか!!とにかく飯だ!!」
そう言われて私はハッと意識を現実に戻す。ルフィが居なければ、きっと悲しみの感情に飲み込まれていた。
そうしてルフィが匂いに釣られる形で入ったお店で、私は値段を見て驚く。……安っ!!
お小遣いの足りない面々がいつもどうやって外食してるのかと思ったけど、この世界、案外食費安いらしい。……でも、確かにある程度戦える人がいればこの世界は食べ物に困らないから当然なのかも。
水水肉も数百円だったし……。生きるだけなら、それ程苦労しない世界なのかな。
「ナミ、これ美味いぞ!」
「なら、私も貰おうかしら」
「ちゃんと食っとけよ。ナミ最近、また細くなったからな」
「え?」
そんな馬鹿な。空島に居た時の倍は食べてるわよ?
そう思ってルフィを見たら、ルフィが当然のような顔をした。そして言う。
「あのな、ロビンとチョッパーに聞いたんだけどよ、抱かれてる時の運動量ってヤバいらしいぞ。つまり、食わなきゃ倒れるし死ぬから食えよな!」
「もういいから、ルフィは黙って食べてなさい!」
赤くなる顔を抑えて叫べば、ルフィはちぇー……とか言いつつ次々と食べていく。それを横から少しずつ貰って、9割以上はルフィのお腹に入るようにして行った。
そうして可能な限り食べていたら、踊る人が本当に多い事に気付く。それが何だか妙に懐かしい。
「ナミも、踊れんのか?」
「ん?まぁ、恥じ掻かない程度になら1通りは」
「……見てみたい」
「え?」
何を言われたのかと思ってしまう。だって、ルフィが真剣な顔で私を見ているから。
呆然とルフィを見たら、ルフィが妙に眩しそうに私を見詰めてきた。そして、優しい声で、期待に声を弾ませて言う。
「ナミが踊ってたら、綺麗だと思うから、見てみたい」
「ルフィが望むなら、何でもするっては言ったけど……突然踊ったら可笑しいでしょ?」
その時玩具が突然話しかけて来た。そして店の前にある踊り台で踊り、客を集めればそれに見合ったサービスがあるらしい事を教えてくれる。
飲食店なら飲み物無料とか、デザートサービスとかは勿論、客寄せになった人数に応じて食事代が値引かれたりするらしい。先にどの位でと言うのを店に確認して踊るのが良いと教えて貰えた私達は、とりあえずここのお店について交渉してみる事にした。
その結果、集まった人数が10人以下ならドリンクサービス。これは踊って汗かくからと言う事らしい。
10~19人ならデザートサービス。20~29人なら5%OFF。
100人超えたら食事代無料と言われて……私は立ち上がった。恐らく今、私の瞳はベリーだと思う。
「店主……無料にして貰うわよ」
「ほほう……自信がありそうだな。だが、この国は目が肥えてるから、難しいぞ」
「ふふふっ……それは結果を見てのお楽しみよ!あ、小部屋あったら貸して。着替えて来るわ。ルフィ……ご希望は、どんな踊り?」
「ナミの得意なやつ」
言われて首を傾げたら、指で示されたのは鉄扇。それによりああ、と思って頷く。
舞なら、物珍しくて人も集まるかもね。そう思って歩き出せば、ルフィが楽しみにしてると笑ったので好きなだけ食べなさいと笑みを深めておいた。
単価が安くても、大量に食べればそれなりの金額になるのである。そうして私は、店主から提供された小部屋に様々な衣装があるのを見て驚かされた。
「ここにあるのは好きなの使っていい。この国では衣装は無料レンタルと決まってるんだ」
「ワノ国の物もあるのね」
「人目は集まるが、踊りにくいから客寄せにならねェぞ」
「そこは、安心して。舞台使えるようにしておいてね」
笑う私に店主は軽く笑い部屋を出て行った。私はその中から使えそうな物を見繕って行く。
日本舞踊の定番人気演目の多くは、歌舞伎から生まれたもの。日本舞踊には、舞踊家がしっとり踊る為に作られた演目もあるし、祝儀舞と言われる寿ぎの踊りもある。
初めて鑑賞する方には、歌舞伎舞踊がお勧めよね。動きが芝居がかって華やかだし、衣装も、羽子板や日本人形を思わせる豪華なものが多いから。
こういう時、巫女舞は集客に向かない。ならばと思って選んだのは〝藤娘〟だ。
使えそうな、吊るせる系の花が小道具の所にあったのが理由。古風な演目の方なら、この花も要らないんだけどね。
黒い大きな塗り笠、藤の柄の振袖にだらりの帯、大きな藤の枝をかついだ娘姿は、キレイ系の演目としてはインパクト抜群。巨大な松の木からたくさんの藤の花房がカーテンのように垂れ下がり、大変美しい舞台が基本となる。
この演出は、歌舞伎役者で伝説的な踊りの名手の六代目菊五郎が始めた物。大柄な体格の菊五郎が、自分を愛らしい娘に見せるために、松の木や藤の花を大きくする事で目の錯覚を狙ったのよ。
元々〝藤娘〟は、人気風俗画に描かれたお洒落な女性を風刺した踊りだったんだけど、菊五郎が〝藤の花の妖精〟という解釈に変えたの。この国には、妖精の伝説もあるからちょうど良いかな……と判断したって所だと推察されている。
この話は見どころのひとつに〝お酒を飲んでほろ酔い加減になる〟って趣向の振付があるのだけど、これは〝藤に木の根元にお酒をかけると花が長持ちする〟という言い伝えを踏襲したものなのよ。他の詳しい所は、自分で見たり調べたりしてみてね。
そんな訳で着替えた私が店主に言って少し舞台を整えて貰い、始めた舞。それにはルフィも言葉を無くしてたし、多分満足したんじゃないかな。
結果、集客は宣言通り百を超えたので無料での飲食可能となり、ルフィは大喜びで食べていたし、私はお金がかからなくてホクホクである。勿論ルフィが食べてるのを横から貰ってたから、私だってお腹が膨れているわ。
「……ルフィ……」
「ん?」
「デザート食べたい」
「……ん。好きなの貰えよ」
「ありがとう!」
そんな訳でパフェとケーキを頼んで、ルフィに先に来たパフェを掬って差し出せばパクリと食べて頷く。……何だろう、可愛い。
「お!思ったより美味ェな!!」
「私も名前見た時怖かったけど、ルフィのその反応はどうなのよ?」
そんな事を言いながら私もパフェを食べられるだけ食べて、残りをルフィに差し出した。でも、ルフィは何か不満そうで……。
じっとスプーン見てるから差し出したけど、違うと首を横に振られる。そして……スプーンにアイスを乗せて差し出すと食いつくルフィ。
どうやら食べさせて欲しいらしい。そうよね、ルフィは他のも食べないといけないもんね。
そう納得して食べさせていたら、ハムスターみたいに思えて来て、何か……どうしようもなく愛しくなる。そっか、ルフィって齧歯類だったのね。
そうしてパフェをルフィが食べ尽くした頃、甘さが負けそうなケーキですと言って玩具がケーキを運んで来たけど、何に甘さが負けそうなんだろう?パフェにって事かな?
そんな事を思いながらルフィにフォークに刺したそれを差し出せば、美味い美味いと喜ぶので、それに小さく笑ってしまう。そっとハンカチで口周りを拭いてあげれば、ルフィはキョトンとした顔の後で、にししっと笑う。
「ありがとな」
「折角かっこいいんだから、綺麗にしてて」
「おう!!」
ちなみに客寄せにちょうどいいから、衣装はそのままでと言われてる関係で、私は藤娘の姿のままである。食べ終わったら、何処かで少し休憩したいな。
そう思ってケーキを食べながら玩具に声をかければ、店主に上の部屋を1部屋貸して貰える事になった。ここは〝愛と情熱の国〟なので、基本的に飲食店と酒場は全て部屋付きらしい。
「も……むり……」
「食べきれないなら、俺が貰うぞ」
「んっ……ルフィ、お願い……」
「……ナミ、それ、わざとか?」
「へ?」
「無意識でそれか。本当にタチわりィな」
よく分からなくて首を傾げたらルフィは何でもないと言って残りのお皿を空にしつつ、五皿ほど大皿を追加注文していた。本当に無料ってありがたい。
食事を終えて、文字通り丸くなったルフィと共に借りた部屋に行けば、食べ過ぎたルフィを休ませるのだと判断したらしいお店の人がルフィを見て小さく笑いながらごゆっくり……と言う。でも、ドアを閉めて少ししたらルフィの身体は元に戻るのだから、恐ろしいと思ったのも当然だろう。
同時に、物凄く羨ましくもあるけど。いくら食べても太らないとか……本当に憎い。
その恨みを込めてルフィの頬をつねれば、覇気を纏ってもいないのに痛がるのだから不思議なもの。ゴムだし、痛くない筈なのに。
「ナミ!?俺が何したってんだよ!?」
「すぐ痩せるとか、憎い……!!」
「俺、ゴムだから」
「それ、世界のゴムに謝って。ゴムだからってそんなに簡単に痩せないし、伸びる事に慣れたらゴムなんて縮まなくなるんだから!!」
「……だとしたら俺、デカくなるかもな」
「え、そこ?そっち気にするの?」
ルフィは確かに実力者の中では小柄な方だけど、世間的に見れば普通くらいの身長あるのに。……それに、二年前と比べたら少し大きくなったと思うのよ?
でも男の子だもんね、ルフィも身長位気にするか……。それにガープさんもドラゴンさんも大柄だったから、ルフィも大きくなる可能性はあるわよね。
そう思って見ていたら、ルフィの手が無遠慮に延びてきた。なのにその手は肩を優しく引き寄せて、そんな事よりも……なんて言うから、望まれてる事に気付いてしまう。
でも、まだお風呂も入ってないし……。踊ったから汗かいてるし……。
「ナミ、嫌か?」
「やじゃない……けど、お風呂、入ってない」
「朝入ってたから、十分だろ。それとも、本当は俺の事……嫌いか?」
「そんな訳……っ!!」
「なら、好きか?」
声が出せなくて、小さく頷く。そんな私の頬に吹き掛けてくる声音は、何かの呪文のように私の羞恥心を含む全てを奪い去る。
「言葉で、聞かせてくれよ」
「……すき」
「もっと」
「大好き……!」
その時ルフィが艶のある声で言った。王者の風格をこんな所で出さないで欲しい。
「足りない。もっと、聞かせろ」
「ルフィが、大好き!!」
「俺も好きだよ、ナミ。ナミを、愛してる」
その言葉と同時にルフィの熱い唇が触れる。その途端に、全身に甘い痺れが駆け抜けた。
そんな私にルフィは薄く笑って、衣服を脱ぎ去った。顕になる身体には、引き締まった腹筋が、更に鍛えられた太腿が、最後に……既に屹立した男の証が……惜しげも無く晒される。
「男ってのは便利だよな。欲望を隠せない」
本当に隠される事の無いそれが、眼前に晒されている。そんな状態でルフィは極上の低音を響かせた。
「ナミを見ただけで、ナミの声を聞いただけで、こんなになっちまうくらい、ナミを愛してる」
私は目を逸らせない。男の理想のような身体を手に入れて、堂々と愛を語る自信を身に付けて、その全てを結集しどくどくと脈打つ雄々しいルフィの象徴。
恥ずかしくて堪らないのに、そこから目を逸らす事が出来ない。自分が酷く淫らな気持ちになっていくのが分かり、同時にルフィから本気で求められているとわかってしまう。
「なァ……抱いていいか?」
そんな聞き方は狡い。漲る欲望を見せ付けられて、甘えるような声音で懇願されて、逆らえる筈なんかない。
恨みがましく睨んだ時、ルフィの手が伸びて来て服を器用に脱がせて行く。顕になった胸に、そっと唇を寄せて吐息と共に囁きを吹き付けて来る。
「ナミも、感じてくれてるんだな。乳首、立ってる」
ねっとりと絡まる舌が、突起を更に育てようと絡んで離さない。その為に電流でも流れたかのように、身体がひくりと痙攣する。
たかがこれしきの事で、力が抜けてしまう程。揺れる私の身体をルフィがベッドに横たえて来る。
でもそれは優しさからではなくて、更なる攻撃の為。キュッともう1方も摘まれて、胸を突き出すようにして私は背を仰け反らせた。
「はっ……ああっ……!」
「片方だけだとダメだから、公平にしてるだけだぞ?」
「そんな屁理屈言っ……!?」
甘噛みなんて可愛いものじゃない。小さな突起の根元に歯を立てられ、ちぎれんばかりに引っ張られる。
乱暴でしかないその行為の中に、痛みを凌駕する程の快楽を覚える。私は陶然と瞳を潤ませた。
蕩けるように痺れた身体の奥深いところから、何かを求めるような疼きが湧き上がって来る。気が付いた時には、私の恥ずかしい部分がルフィの視線に晒されていた。
「ナミの身体も、もう濡れてるな。だけどよ、俺の方がもっと凄いぞ」
ルフィは自らの熱い塊を、私のそれに押し付けて来た。すっかり成熟した雄の形に育ったものは、溢れた蜜液を茎の根元にまで滴らせている。
「ほら、分かるだろ。俺のがどうなってんのか」
「ルフィ……」
「ナミが男好き?こんなにウブで、いつまでも恥じらう乙女なのに?」
「ルフィ……!」
「なら俺は、ナミ好きだろ。ナミを見ただけでこうなっちまうんだから……だから、最後まで付き合えよ」
ルフィは、私の反応が普通だと断言する為に、私が自分を許せるようにこう言ってるのだと気付いてしまった。どうして、ルフィはこんなにも私を甘やかしてくれるんだろう。
10年ぶりに再会してからは、私何もできないでいたのに。ルフィには、迷惑かけてばかりなのに……!
「ナミ、言ってみろよ。どんな感じだ?」
「すごく……おっきい……」
突然の問いかけに思考が働かない。そんな私にルフィは息を飲んで、動きを止めたと思った直後、囁くように言う。
「もっと言って」
「堅くて……あ、熱……いっ!」
「ナミって、少なくとも俺を煽る天才だと思うぞ。いつも遠慮してたけど、今日はもう遠慮なんかしない。ナミは、俺の女だって刻み込んでやるよ。……こんな可愛い事言われたら、歯止めなんか利かないからな」
耳朶を噛みながら囁かれる。ゾクゾクする程、凶暴で甘美な誘惑。
ルフィの指が私の秘所を弄り始める。そのむず痒いような感覚にうっとりと酔いながら、私はふるふると首を横に振った。
「歯止めなんか、いらない」
「じゃァ……挿れてと、言ってくれよ」
「え……?」
「自分で両足を抱えて、自分の指で蜜を滴らせるそこを広げて、挿れてってお願いしてみてくれよ」
「そんな……できない……」
「じゃァ……挿れられないな。ナミが望まない事は、何ひとつしないと決めてるからよ」
ルフィは僅かに口角を上げて、何処か苦しげな笑みを作る。それはまるで、母親に置いてきぼりにされて、怯えてる子供のように思えて、仕方なかった。