似合いもしない冷徹な瞳と、抑揚のない声音。苛烈に私を好きだと言っていたエースから向けられたのは、ただの1言。
「逃がさねェ」
「エース……」
「誰でも良いなら、俺でも構わねェだろ。なァ、ナミ……俺を、拒むなよ」
背筋を冷たいものが走るのに、唇は勝手に動こうとする。いい加減にしなさいと言おうとして、なのに、その眼差しに声を失ってしまう。
両手をぐるぐる巻きにしている流星錘に目をやるものの、何故か現実味が薄い。エースが本気で私を傷つける筈ないと思うからこそ、現実味が無いのだろうとはわかっている。
でも残念ながらこれは現実。その証拠に両手首を締め付けてる戒めが、徐々に現実の痛覚を連れて来る。
だからこそ、私は勤めて冷静に言葉を紡いだ。エースが頭を冷やして辞めてくれる事を信じて。
「私の全ては、私の船長のものよ。エースが本当に私を好きだと言うなら、辞めなさ「いつまで、姉貴のつもりで命じてんだ。俺も海賊だって事、ナミは忘れてる」」
「ちょっ、何を……!?」
突然ビキニの布に差し込まれた指で、突然強く乳首を抓られて、ピリッと走った痛みに私は背中がシーツから浮き上がるのを自覚した。大きく身体をしならせて、悲鳴とも嗚咽とも知れぬ声を放つ。
自由を奪われた腕を更に頭上で押さえられ、無防備に晒されたまま隠すすべさえない胸元をエースの指が這い回る。小さな突起に悪戯を仕掛ける動きは、酷く形式的で楽しさの欠片も無い。
だからと言って義務感には程遠い程に無体な行為。私は驚きを隠す事も出来ず、自分に馬乗りになっているエースを仰ぐ。
「ナミがルフィのものだと言い張るなら、好きにしろよ。俺も、好きにする」
常より低く歪んだ言葉が、凌辱の夜が始まる事を告げる。大きな手で髪を掴まれ、グイッと引き寄せられた時になって、もう少年では無いのだと気付かされてしまう。
その行為により、自然と頭が枕から浮き上がる。そんな苦しい体勢で必死に仰ぎ見れば、感情の見えないエースの顔があった。
「いっその事、ナミが本当に、ただの男好きなら良かったのによ」
「エース?」
「違うとわかってて、傷付ける言葉しか俺は向けられないんだ」
「何言って……」
「ナミは誰にでも股を開く、淫乱な男好きだろ。存分に可愛がってやるよ」
意図して作っただろうと分かる冷静な態度。いつもは否応なしに、身の内から湧き出るような熱を発散していた双眸が、今は酷く精彩を欠いて……夜すら慄くような深い闇の色に沈んでいる。
このままにしたら、駄目。エースが、壊れてしまう。
この重苦しさ、この陰鬱さ……。こんなエースを見た事は1度もない。
白髭の親父様を亡くした直後でさえ、私を失ったかも知れないと怯えていた空島でさえ、こんな様子は見せなかった。エースは何だかんだと言いながら、マルコにボコボコにされる日々の中でさえ常に自信に満ち溢れていたわ。
ただの1度も、自らの立場を卑下した事は無かった。それなのにどうして突然、こんなお仕置紛いの事を仕掛けて来るのか。
「口を開けろ」
豪胆でいながら、油断のない戦うエースとは全く違う。そして、白髭海賊団の人達に囲まれている時の末っ子気質ですらない。
ルフィの兄として気取って見せてる時の様子とも異なるし、私に甘えてるにしては様子がおかしすぎる。どうしてエースは突然、ただの凌辱者になり下がろうとしているのか分からない。
だけど、その謎を解いている暇は、どうやら無さそう。皮肉に笑うエースが、目の前に突き付けるモノを見て、ただどうして……?と脳内で繰り返してしまう。
「ナミ、咥えろ」
これまでだって強制的に私を犯して来た事はあったけど、ここまでの事は無かった。どうしてこんなに常軌を逸する程に、冷静さを欠いてしまってるの?
このままではエースが壊れるのは分かるのに、それを止める手立てが分からない。だって、その原因が分からないんだもの。
「噛み付きたければ噛み付けよ。その姿のまま、外に放り出してやる」
これは、私を求めて荒れ狂ってるのとは違う。絶望に近い憤りを隠しもせずにぶつけて来るけど、無体で独り善がりなエースの渇望だわ。
そもそもそんな事をしても、誰一人得なんてしない。それが脅しになると本気で思っているのなら、今のエースは本気で可笑しい。
この姿で放り出されても、私はある程度名の通った男以外が相手なら足だけで逃げられる。サニー迄帰る事に何の問題も無いわ。
私を抑え込める男は、少なくは無い。けど、その辺の雑魚に何かされる程甘くも無いのよ。
それを分からないエースじゃない筈。もしもそれにより私の裸体が晒されるのだとしても、別に変なものでも醜いものでも無いし……何も問題にならないわ。
1分の狂いもなく回り続けていた運命という歯車が、急激に歪んで軋んでいるような違和感。これがもし、あの光源体が理由ならば許しはしないところよ。
「それとも……サッチの方が良いのか」
その言葉でまさか……?と思う。まさか、エースはサッチさんに嫉妬してる……?
布地に包まれた膨らみを鼻先に突きつけられているのに、現実味が酷く薄い。その為か困惑は増すばかり。
エースは私の髪を掴んで固定したまま、器用に片手だけで自らの前を寛げる。下着は既に、くっきりと欲望の形を刻んでいた。
今、目の前に突き付けられたエースの男性器が……これがルフィのものであれば、胸をときめかす程に愛しいのに。でも、どれ程本質が似ていても……エースはエースであり、どれ程可笑しくなろうとも可愛い弟でしかないのだ。
「そんなに男が好きなら、こういう事もさせれば良かったな」
起伏をなくした声が、温度すら失ったかのような冷たい響きで、私の鼓膜を凍えさせる。いったい何が、エースをここまで追い込んでいるの?
雫を滲ませた先端を私の唇に押し付けてくる。それに対し、頭を押さえられているから、逃げる事もできない。
どんなに歯を食いしばろうとも、唇の隙間から入り込んでくる液体の味を感じてしまう。上目遣いに睨めつけるけど、そこには酷く抑揚を欠いた表情があるだけ。
その白々とした態度が気に入らない。私に姉として振る舞われたくないなら、こんな愚かな行動に出なければいいだけじゃないの。
勝手に何かに憤って、八つ当たりのように私に行為を強要してる癖に、自分は少しも悪くないとその顔が物語ってる。それが不快で、腹立たしくて、1矢報いてやりたくなるのだ。
……そんなに望むなら、やってやろうじゃない。逃げられないからと言うのは当然あるけど、ドフィとレイリーに仕込まれてる私の技術を甘く見られたものだわと内心で笑ってしまう。
やけっぱちの血が騒ぎ、闘争心に火がついた。例え犯されるしか知らない女の立場でも、伸ばされる手をただ待ってるだけで気が済む程に、可愛い性格してないのよっ!
無駄な意地で口を開け、ぐいぐいと押し込んで来るモノを受け止める。ドフィ程ではないけれど、やはり無駄に大きいと思う。
いっぱいに含んでも尚、収まりきらない量感に内側から圧されて、喉奥でひしゃげた喘ぎが唾液と共に口の端から零れていく。それでも息苦しさの中でもまだ余裕はあるから、鼻で息をしながら搾り取ってくれるわと口淫を開始する。
徐々に太さと硬度を増していくそれを、頬の筋肉を伸縮させて刺激してやる。舌を、唇を、エースのモノに合わせて蠢かせれば、ちゅぷちゅぷと粘着質な音が静まり返った部屋に散っていく。
口腔内に響く音は、耳から伝わって来るそれと相まって更に卑猥な色に染まる。けれども、それにより羞恥にかられてしまうようなレベルでは既に無いのだ。
レイリーの指導は、もっと隠微であり容赦が無かった。ドフィのそれは1歩間違えたら生命を奪われる所だったのも理解してるけど、その緊張感も今は無い。
どうすれば反応するのかは、二人に仕込まれた。教育された全てを、私はきちんと身に付けてしまっている。
「初めてじゃねェだろうと思っちゃいたが……本当に慣れてんな。流石は好き者なだけの事はある」
くだらない揶揄に、カッと体温が上がる。誰が、好き者ですって……?
鋭い視線で睨めつければ、後頭部に添えられていたエースの手に力が籠る。それにより、否応なしに喉奥を突かれた。
「……っ!んっ、ふっ……」
望んでる訳じゃないのに、口腔に含んだものがあさましい官能を呼び覚まし、甘ったるい吐息が鼻から抜けて行く。それでも経験値は強制的に高められてきたから、私の技術はその辺の夜の蝶達より下手したら高い。
それを認識しているからこそ、息苦しさの中でも精一杯の根性で、ふんっと鼻先で笑ってみせる。エースはその程度なの……?と。
これがエースの限界なの?可愛いものね……?と。
言葉にしなくても伝わるものだと、私は知っている。だからあえて、内心の怯えを隠して、強がりそれを伝えてみせた。
無闇に煽ってる自覚も無く、ナミは勝気な態度をみせる。それでいつも泣きを見るのに、この子は何も理解出来ていないらしい。
徐々に漲っていくものを、いっぱいに頬張りながら強く吸う。届かない所は、グルグルに縛られて指先しか動かせない両手を添えてしごき上げる。
ふたつの袋まで唇を這わせて、舐め取り、時には歯を立てて甘噛みする。低い呻き声が聞こえ、途端に口腔内にあるものがずくりと大きく脈打った。
「はっ……!やってくれる。舐めてたよ、奥手な少女の皮に騙されてな」
抑揚を欠いていたエースの声が上擦ったとたん、身の内からえも言われぬ優越感が満ちる。それにより、僅かながら溜飲が下がった。
だが、好戦的な男相手に、この状況で挑むのは無謀。自由の効かない状態である事を失念していた時点で、ナミに勝利は無い。
「そんなに美味いなら、もっと味わえ」
両手が私の頭を押さえ、グイッと力強く引き寄せられる。怒りからか、欲望からか、いっぱいに膨張したもので容赦無く喉奥を突かれた。
あまりの息苦しさに、ヒューヒューと喉を鳴らして嘔吐いても、私の髪を掴んで前後動を強いる手が緩む事は無い。唇の端からエースの精液を含んでいるだろう唾液が、いく筋もの流れとなって零れ落ち、喉元を汚していく。
そんな中でエースのソレがみせる反応から、不穏な危惧が生じてしまう。だが、往々にしてそういった予感は、よく当たる。
痙攣と共に、ずくりと1際大きく脈動したものが、口腔内で弾けた瞬間、掴んだ髪ごと顔を引かれた。口内に放たれなかっただけ、良かったと思うべきなのかな?
そんな事が脳裏に浮かぶけど、口に放たれたなら吐き出せば済むものを……何してくれてんだと本気で思う。だって、低く押し殺した呻き声と共に、1気に放たれた体液が私の口元だけでなく、頬へ、顎へ、額へと散っていたのだから。
ぬめった感触が自分の顔を汚していく。そのあまりにも屈辱的な行為に、呆然としてしまう。
「ここからが本番だ」
呆然としているその間に、ただ意味不明な事を囁いて、エースはきつく掴んでいた髪を離す。それにより漸く開放された頭が、パタリと枕の上に落ちる。
教えられてはいても、望んでもいない奉仕を強要された顎や首の付け根が痺れたように痛む。全身が気だるくて、身動きするのも億劫な気持ちになる。
なのにエースは容赦無く肩を掴んだかと思うと、強引に身体を裏返させる。これ以上何をするつもりなのかと、腰は逃げようと動くけど、それを許さじとばかりに爪がくい込む程にきつく双丘を掴まれて、高々と固定されてしまう。
突然の事にバランスを崩し、私は頭からベッドに沈みこんだ。縛られている両手では、自らの体重を支える事もままならず、シーツに頬を押し付けて苦しい体位に耐えるしか出来ない。
「後ろの孔と、子宮に通じる穴……どちらに入れて欲しいか、選ばせてやるよ」
「巫山戯んじゃないわよ!私は「なら、両方だな」」
残酷に言葉を落としたエースは、尻の狭間を探るように触れて来る。その指先に後孔の周囲の柔肌を撫でられて、ひくりと背中が反り返った。
その動きから本気の空気を感じ取れば、背筋を冷たいものが走る。そんな、馬鹿なと叫ぶ代わりに、微かに震える声で否定して欲しいと願いつつ呼び掛けていた。
「な、なにを……?エース、冗談でしょ?」
確かにドフィに糸人形を使って使われた事はあるけど、私はそれを好む性癖は無い。だと言うのに、ろくに湿らせてもいない場所に、いきなり潜り込んで来る太い指に柔襞が引っ張られるように窄まる。
中へと落ち込んで行くのが感触で分かって、羞恥と嫌悪から身悶えた。内側から脆いポイントを探られて、くの字に折り曲げられた指の関節が粘膜のどこら辺に当たっているか迄感じ取ってしまい、その過敏さに身体が火照る。
体内を広げられる刺激は、いっそ甘苦しい程。その先に待つ快楽を、この身体は知り尽くしてしまっている。
何より厄介なのは、エースとは肌の相性が良過ぎるのだ。技術はそれ程高くもない筈のエースから与えられるそれに、この身体は悦んでしまう事をこれ迄の経験から散々に思い知らされている。
だからこそ簡単に指が馴染んで、受け入れる器官では無いのに柔らかくほどけてしまう。そうして中をほぐす間にも、チュッと小さな音を立てながら首筋のへこみをなぞるように送られるキスが、むず痒い痺れを生み出していく。
いつの間にか外れていたビキニにより、素肌を隠してくれる物は既に何も無い。それを自覚した時、弄られて居る訳でも無いのに、勝手に卑猥な形に立ち上がった乳首が熱を持つ。
指も、舌も、唇も、ルフィのものではない。なのに、その全てでエースが私の身体を高めて行く。
「こっちも経験があるみたいだな」
背後から聞こえた、何処か侮蔑を含んだような声と共に唐突に引いて行った指。その代わりに押し当てられたものの感触に、腰がビクッと跳ねる。
どくどくと脈打つ熱塊の正体が分からない程に、無知ではない。ついさっきまで、強制的に育てさせられていたものだ。
「やだっ!挿れないでっ!!」
けれども言葉とは裏腹に、モノ欲しげに蕩けた窄まりに、グリグリと小刻みな回転を施されただけで甘やかな刺激が全身に広がって行く。それにより元々力の入らなくなっていた身体では、抵抗のしようがなくなってしまう。
勝手に燃え上がって行く身体の反応とは裏腹に、不快な感覚が胸の奥から湧き上がってくる。どうして、エースはこんな暴挙に出たのかさえ分からない。
本心で私を貶めたいとか、辱めたいとかそういう事じゃないのは分かるのに……。そう思ったら、悔し涙が止まらなくなる。
分かるのは、サッチさんがその引金を引いた事。だけどこの横暴さは、あまりに理不尽過ぎる。
けれどもそう訴えた所で、今のエースには何も響かない気がするの。どう考えても、今のエースが真っ当な神経で居るとは思えない。
今押し付けられてる尋常では無い熱量が、エースの中に渦巻く行き場のない感情を示しているのかも知れないとは思う。そう、きっと、エースの中には今も、昏く歪んだ闇がある。
光も届かぬ深い海の底で、想像を絶する水圧故に醜く歪んだ姿へと変貌せざるを得なかった深海魚のように。他人が見れば目を背けたくなるだろう程に憂鬱な何かが、しなやかな筋肉に覆われた胸の内にあるのだろう。
まだ正体こそ定かではないその歪みが、この無体を仕掛けているのは分かる。それでも、私は今それを受け入れて微笑む余裕は無い。
どれ程指の太さに慣れようと、本来受け入れる為の場所ではないその場所が、すぐにでも訪れるだろう痛みを予感して、身震いする。涙を落としても止まらないエースに、今は何かを言うだけ無駄だと言う事だけは分かる。
その絶望に震えそうになる身体を抑え込んだのは根性か、それともプライドか。どちらにしても、可愛げが無い事だけは自分でもちゃんとわかっていた。