ローちゃんは無言のまま私を見詰めて、それから徐ろに衣服を脱ぐとシャワーを浴びに向かった。清潔で無ければ治療できないものね……と、私はその後ろ姿を見送ってから姿を消して窓に近付く。
こちらから見える範囲は、相手からも見える範囲と言う事になる。光の加減とかで見えない時もあるけど、基本的にこちらが見えてる時は相手からも見えているのだろうと思う方が正しい。
ドフィは私を探しているだろうなぁ。突然消えた私の存在は、その位分かりやすくドフィを動揺させただろう。
そう思って見てみるけど、目視できる範囲にドフィはいない。こうして怒り狂ってる時はドフィも見聞色の覇気使えないから、見付かる可能性は随分低くなる。
後はこちら側が居場所を把握出来ていると逃げるのに楽だけど、私としては無駄に体力を消耗したくないのよ。なので、窓から見えない限りは探さなくて良いかなと思う。
それに……そういう探索に覇気を使うの得意じゃないのよね。ドフィもそれは同じだから助かるけど。
「出たぞ」
「ん。なら、先に治療始めてて。私もシャワー浴びて来るわ」
「分かった」
ローちゃんがベッドに腰掛けたのを確認して、私はシャワーを浴びに向かう。ローちゃんの事だから、自分の治療ついでに薬作って待っててくれるのかな。
時間は無駄にできないものね。追われている今、いつまでも1箇所に留まってるのは悪手だし。
そんな事を考えながらシャワーを頭から浴びて湯船に浸かった時、開かれた扉。何事かと向けた視線の先に居たのは、裸体のローちゃんで……。
「……何か、忘れ物?」
「薬、抜いてやるって言ったろ。風呂場の方が色々楽だからな」
「……え?」
何を言われたのか、脳が理解を拒む。だって、そんなのおかしい。
ローちゃんって医者よね!?
「媚薬抜くなんてのは、やるしかねェだろ」
「それなら、この程度の薬……気にしないでいいわ。水浴びればどうにで」
最後まで紡ぐより早く浴槽から引っ張り上げられたかと思ったら、浴室に引きずり出されて、そのまま床に押し倒されてしまう。風呂場での行為は、色々不味いのはローちゃん医者だから知ってるわよね!?
そう思って睨めば、人の事をジロジロと見つめて来て……それから、優しげに笑った。その笑顔が幼子の残酷さを表面化したようなもので、背筋に冷たいものが走る。
そう、アリの巣にホースで水注ぎ込んだらどうなるだろう?と突然残酷な事を思いついて笑う子供のような。……つまり、本能が逃げろと言ってるのであります!!
でも、純粋な腕力で勝てる訳も無い。しかも今は丸腰なのだ。
抵抗しようとジタバタと暴れる私の足を掴んだかと思うと同時に、強制的に割開いた先にある弱い女の芽にローちゃんが吸い付く。それに身体は正直に反応して、私は必死で声を抑えて震えてしまう。
「っ……!!」
抵抗の声さえ、出せば喘ぎになると分かるから黙っているだけ。なのに、ローちゃんは妙に楽しそうにしているのが気に入らない。
簡単に上り詰めようとする身体が嫌。でも、抜けば終わるならと大人しく受け入れようかと力を抜いた時、秘部に差し込まれたのは二本の指。
「んぅっ……!!やっ……あ!」
「濡れてるから、問題ねェだろ。……ドフラミンゴに犯されたばかりとは思えないくらいキツイな」
「なっ!?」
余計なお世話だと言おうとしたのか、それともなんでドフィにされた事を知ってるのか問おうとしたのかも、自分でわからない。ただ、ローちゃんが女の弱点を口に含んだまま言葉を音にしてるから、唇が、歯が、舌が、いちいち刺激してくる。
その上で、音は空気を揺らして音にする。だから……つまり、その振動で身体は感じてしまうの。
ヤダヤダと首を横に振るけど、ローちゃんはそれをやめようとしない。ビクビクと震える身体の、何と情けなく浅ましい事か。
けれどもローちゃんは、達しようとする身体をそのまま高まらせて嫌がる私のそれをわかってて当然のようにイかせてくる。それにより必死に噛み殺しても、殺しきれなかった声が漏れてしまう。
「んっぅ……ぁ……あぁっ!!」
「可愛く、声を出してもらって構わねェぞ?」
「うる、さい……」
誰が簡単に屈するものか。私は、ルフィにしかこんな事されたくないのに……!
そんな私の葛藤を知ってか知らずか、ローちゃんは私の反応を冷静に見つめ……秘部から溢れ出るそれを指先で掬うと、何かを確かめるように弄る。見せ付けてるのか何なのかと睨んだ時、告げられたのは短い言葉。
「……あァ、新薬か」
「わかる、の?」
「分からなければ、薬の効果を抜けないだろ。……ナミ、愛してるよ」
「へ?」
何を言われたのか、本気で分からない。突然どうしたと言うのだろうか。
その媚薬、変な効果でもあるのかな。それとも、ローちゃんが不安定なのかな?
「俺は、ナミを、愛してる」
「ロー……ちゃん……?」
突然向けられた愛の告白に、私はなんと言っていいのか分からなくなる。呆然と見上げる私に、ローちゃんは困ったような顔で見つめて来て……そのまま妙に優しく抱きしめられてしまう。
何がしたいんだろう。ローちゃんは、何を考えているんだろう。
単語ひとつひとつを区切るようにして告げられたのは、何を意図して居るのかな。私に、ローちゃんは何を求めているの?
「ナミ、俺を庇うなよ」
「なに、言って……」
「この先、何が起きても俺を庇おうとするな。それが約束できるなら、治療だけで済ませてやる」
「意味が……」
そこまで言って気付く。ドフィとの戦いで、ローちゃんは自分が不利である事を理解しているのだ。
負けそうになり、死にそうになったローちゃんを見て、私が飛び出すリスクを考えたんだろうけど……。そんなの、無理に決まってる。
「私がローちゃんを見捨てられると思うの?」
「だが、約束すればナミはそれを守るだろ。ナミはそういう所が海賊に向かないな」
「ローちゃ「ナミが俺を〝庇わない〟事と〝護らない〟事を約束できるなら、この先は中和剤で治療してやる。だいたいの分析はできたからな。だが、約束できないなら……抜けるまでイかせ続けてやる」」
顔が瞬時に赤く染ったのが自分でわかる。ここで私が触られたくないからと、ローちゃんを見捨てる事を選べば解決できるのは分かるけど……。
でも、ローちゃんを見捨てるなんて私にはどう足掻いてもできない。だからと言って、ローちゃんに何度もイかされるとか、それも自分からそれを望むとか……出来る訳が無いじゃない!
泣きそうになる自分を自覚して、震える声を出す。そんな私にローちゃんもまた、痛みを感じているかのような顔をするのだから、切ないばかり。
「……狡い……よ」
「…………どっちが狡いんだがな」
「ローちゃんに決まってるじゃない。私は、ローちゃんを見捨てて逃げるなんてできない!でも、ローちゃんに必要以上にそういう意味で触られたくない!私はルフ」
言葉を遮るように重ねられた唇。それは呼吸さえ奪うようなもので、余裕のなさが伝わるもの。
それを無意識で逃げようとあがけば、顎を掴まれてより深く舌が攻め込んで来る。唇の端から溢れ出る唾液が、どちらのものなのかさえわからない状態で、酸素を求めて唇が開けばその隙をつくようにして喉まで蹂躙されてしまう。
「あっ……ん……ぅ……!!」
唇が離れた時には当然のように酸欠で、涙で霞む視界の中でローちゃんを見上げればヒョイッと抱き上げられて浴槽に入れられてしまう。今の行為で確かに身体が冷えていた私は、それにより身体がぶるりと震えたけど……結局、薬くれるのかな?
「ローちゃん?」
「……ダメだな。ナミが欲しい」
「へ?」
私の思考回路は、現在完全に停止している。そんな私を支えるようにして持ち上げたローちゃんは、背後から首筋を舐めてくるからつい、何してんの!?と振り向いてしまう。
でも、そこにあったのは絶望と悲哀を宿した瞳。私がそれに何も言えずにいると、その隙正面の壁に押さえつけられてしまった。
いっぱいに湯のはられたバスタブの中、膝立ちとなった私はタイルの壁に縋りついた体勢となる。その状態でローちゃんから、検査と治療の名目で女の穴を弄られてしまう。
勿論流石に私も、これが治療ではないと分かる。明らかに、ローちゃんを見捨てると言わない私に対する嫌がらせだ。
でも、どうしてそんな事を約束できるというのか。あんなにも小さい頃から苦労して、絶望の中で必死に足掻いて生きて来た子を見捨てられる程……私は人間を辞めてない。
指で押し広げられた入口から流れ込んでくる湯の感触が生々しくて、下肢に余計な力が加わってしまう。グリグリと中を掻き回されて、堪えきれぬ嗚咽が漏れる。
「も……やめってっ!!」
「俺を助けようとしない事を約束すれば、辞めてやる」
「む、りっ!!」
「なら、この治療しか無いな。……望んだのはナミだ」
ローちゃんは私が望んでない事を誰よりも知ってる筈なのに、そんな事を言われてしまう。それなのに、私の身体は心を裏切って、簡単にローちゃんに屈していく。
SEXに慣れれば慣れる程に、望んでもいない筈の相手に抱かれてよがる自分が異常に思えて、更に惨めさが増す。何より許せないのは、いつも……自分の事。
だけど、ここでローちゃんの望むとおりに約束をする事はできない。ローちゃんは、本気で死ぬつもりだと知っているから。
ローちゃんは生きる事を諦めているのだ。なのに、私やロシーには無事でいて欲しいと、仲間には笑っていて欲しいと……そんな事を願ってるのがわかってしまう。
私やロシーを守る為に、ローちゃんはこんな事をしているのだとわかってしまっている。なのに、それを〝はいそうですか〟なんて言える訳もないじゃない。
拷問のような快楽の時間。身体の仕組みを知り尽くしてる医者相手に、勝てると思う方がどうかしてるのよ。
背中に宛てがわれたイチモツは、あまりにもルフィのモノとは違い過ぎる。無意識で逃れようと壁に縋りながら立ち上がろうとした私の腰を強く抱き寄せたローちゃんは、お湯から開放されかけていた下半身を簡単にお湯の中に戻してしまう。
自分は立っているから、悪魔の実の影響は受けないみたいだけど……私はお湯の中に半分沈められた状態で快楽を与えられているから、上手く動けない。それでも、熱く、堅い、その感触に、思わず腰が引けてしまう。
「あ……や、辞めてっ!!」
明らかに、指ではないモノを入れようとしてるのがわかる。これを入れられてしまえば、治療なんかじゃない。
単なる強姦だと叫ぶように言葉にしても、腰を掴むローちゃんの手は力が緩められはしない。強く引っ張られる事で水面ギリギリに身体の全体が落ちて、顔と腕、背中だけがお湯に入らない状態となる。
現状ドフィから隠れている以上、何処からも助けは来ない。それに下手に助けられてしまえば、ローちゃんを喪ってしまう。
否応なしに逃げ場を失う私が、思わず首を動かしてローちゃんを見た時、それはローちゃんを煽っただけだったらしい。湯を伴いながら押し入ってきたモノの、それまで感じた事のない感覚に、はしたなく腰を捩ってしまう。
「風呂場での性行為のリスクを知るからか、経験が少ないな。湯が中に入ったのは初めてか」
「うる……さっ……!!ひああ……っ!!」
揶揄うような声に反抗的に返せば、動きが変わる。お仕置だとでも言わんばかりのそれに、絶望を含んだ私の声がエコーした。
簡単に感じてしまう。そんな自分の浅ましさに、全身が総毛立つ。
子孫を残す為に必要な行為だから、女の身体は男を受け入れる為にあるからとか、そんな理屈は分かってる。でもそれなら、意志ってものは何の為にあるのよ。
役に立たないものなのかな。そう思ったら、歯痒さに泣きたくなる。
「ナミ……このまま、俺の子を孕むか?」
耳朶を食みながら、イイところを擦り上げてくるローちゃんから、逃げたいのか、縛られたいのか、逃げていいのか、いけないのか、それさえ分からなくなる。レイリーからの指導なんて、心に余裕があったり、冷静な時しか適応できない。
「……っ……!!や、そこ、やぁ……っ!!」
感じ過ぎてしまう自分が嫌で、何もわからなくなりつつある中でさえ逃げようとするからか、結局弱い所を教えてしまう。だから、その後もそこばかり集中的に攻撃されて、身も世もなく泣かされてしまうのだ。
このままでは戦う所ではなくなる。壊れてしまうとの恐怖から、ローちゃんの手から逃れようと腰を蠢かすけど、その行為が更なる刺激となって、絶頂への甘く激しい疼きを齎してしまう。
「も……いやぁぁぁ!!」
叫んだ瞬間、ズルっと内臓まで引き出されるような勢いで、埋め込まれたモノが抜かれた。それにより絶頂の寸前で放り出された身体が、ブルブルと小刻みに震える。
突然の解放による喪失感に、焦れた熱だけ残された中は、今も淫らにびくついている。何の気まぐれかは知らないけど、助かったの……かな?
「ローちゃん?」
「……ここで、あからさまにホッとした顔されるとはな。普通は媚薬が無くても求める筈なんだが……」
「やめて、くれるの?」
「ああ、ナミが……〝逃げてくれる〟ならな」
この場から逃げて、ローちゃんをそのまま見捨てて、今すぐにサニー号へと帰れと言われているのがわかってしまう。それを拒むなら、自らローちゃんを求めてみせろと。
その証拠に、欲情に塗れた瞳は背後にあるまま。なのに、声は穏やかで、それが妙に不気味に思える。
言葉は半分は本心なんだとわかる。どちらになってもローちゃんに損は無いとでも言うように、猛々しいモノは衰えを微塵も見せず、堂々とそそり勃っているのだから。
悔しさにギリリと歯噛みするけど、私には逆らう手段がないのだ。鼓膜を震わす声は、既に脅しでしかない。
「ナミは俺を見捨てて逃げて、安全な所で俺の訃報を待てばいい」
「や、やだ……!!」
私は力無く首を横に振る。こうなれば、例え拷問のような行為でも、私に拒否権は無い。
こうなれば私に主導権なんて無いのだから、ローちゃんを刺激しないように、逆らわない事しかできはしない。少なくとも、心に傷を持ち過ぎてるローちゃんを拒絶する言葉が、更に追い詰めてしまうものになるのはわかっていたのに。
それでも犯られる事を望むのは無理なのだ。だけど、その為にローちゃんを喪う事は、不可能なのよ。
「挿れて……」
「何?」
羞恥と悲しみを堪えて、微かに声を出せばローちゃんは聞き取れなかったのか、信じられなかったのか、訝しげな声を出す。でも、ここで逃げる訳にはいかない。
「欲しい……」
「……何を?」
「ローちゃんのを……ここ、に」
「ココって?言葉でハッキリ言うか、自分の指で広げて見せろよ」
酷い……と、無意識で言いそうになる。泣きそうになる自分を自覚しながら、必死で自らの指で押し広げて屈辱的な体勢を取れば、ローちゃんが喉を鳴らしたのが分かった。
「ソコに、どうしろって?」
「ローちゃんの、注射、して……」
治療なのでしょうと視線で告げれば、ローちゃんはふっと笑った。そして、背後から支えるように抱き締めて来る。
「少しばかり、普通の注射より……太いかも知れねェがな?」
「んっ……」
「望んだのはナミだ。忘れるなよ」
「ローちゃん……」
「挿れるぞ。もう、耐えられねェ」
耳元で囁かれる声は、隠微な空気を孕んでいる。それと同時に狭い内壁を押し分けながら、太い凶器が突き刺さって来た。
「あっ……ああっ……んやぁ!!」
「嫌な訳ねェだろ、ナミが望んだんだからなっ!!」
挿入の瞬間、感じたのは痛みではない。痛みであれば、耐えられるのに……!!
バシャバシャと、二人の動きに合わせてバスタブの湯が波打つ。より激しく動いているのはどちらなのかな?
突き上げてくるローちゃんなのかな。それとも、受け入れている私なのか。
「くっ……!!もって、いかれそうだ……!!」
分からなくなる。この行為には、本当に意味があるのかどうか。
ローちゃんは、結局私にどうして欲しかったのかな。私は、どうしたら良かったんだろう。
人生には数学と違って明確な答えはないから、迷ってばかり。間違えては、人を傷付けるのを繰り返してしまう。
「ローちゃ……っ!!」
「ナミ……!俺を、忘れないでくれ……」
その刹那、最期だと思っているのだと気付く。最後に、求められて私を抱きたいと願ったのだと。
……馬鹿な子。私は、ローちゃんを死なせるつもりなんて無いのに。
今は巨大なケダモノになっていても、幼い頃の姿を知っていて、その後も何かにつけて守ってくれてるのを私だって理解してる。こうして身体を求められなければ、私は他に恩を返す手段を持たないかも知れない位には……ローちゃんに恩も、義理もあるし、なにより……愛しく思ってるわ。
「ナミとコラさんには、幸せに生きて欲しいんだ……」
最奥を穿つ激情に、いっぱいに埋め込まれた熱に、首筋を吸い上げる口付けの甘さに、思考力を奪われてしまう。傷付けるための行為ではないと、伝わってしまうのよ。
掠れた声で紡がれたそれに、嘘はないとわかる。ローちゃんは結局優しい子なのだ。
最後にはいつも、意識を保てるかの瀬戸際まで感じてしまうのは、私の弱さ。もういっそ、枯れてしまいたい。
枯れる歳ではないとわかってるけど、元々苦手な行為である為に、連日連夜こんな事が続けば、かなり辛い。なのに、その度に感じてしまう。
多くの男達に丹念に仕込まれた内壁は、それぞれの形や良さを覚えてしまっている。その上、経験豊富過ぎる彼等は、何処が弱いのかも全て把握し尽くしているのだ。
だから、心がどれ程拒んでも、身体は悦ぶ。その証拠に自ら腰を揺らして求めてしまうの。
……でも、今は兎に角……ローちゃんを落ち着かせなければ。この先に待つ死闘は、甘く見たりできるものでは無いのだから。
そう思って、私はローちゃんを甘やかすように腕を伸ばす。拒みきれない自分の弱さに幻滅しながら。