※この作品はR-18です。

波間の向こうを目指して(新・本編)   作:夢枕 七変化

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トラ男とミンゴ

 意識を取り戻した時、私の身体は本当に驚く程楽になっていた。どうやらローちゃんはあの後、しっかりと治療もしてくれたらしい。

 清潔なベッドの上に、丁寧に整えられたいつもの服で寝かされていた私が身体を起こせば、ローちゃんは私に静かな視線を向けて来る。罪悪感を抱いている癖に、謝る事も出来ずにいるその様子は幼い頃から変わらない。

 そんな所はドフィと似てる気がするわね。……言ったら怒りそうだけど。

 

 「ローちゃん」

 「……あ、っ!!」

 「なぁに?」

 

 何かを言いかけて辞めたローちゃんは気まづさを隠せずに、視線を逸らす。……やっぱり、大人として見てあげるのは難しそう。

 そう思った時、

 

 「……っ!!あゃ、まらねェからなっ!!」

 「ローちゃん」

 「……なんだ」

 「めっ!!」

 

 私の言葉にローちゃんは黙ってしまう。それから、無防備な顔で首を傾げるから、ついクスクスと笑ってしまった。

 本当は呆れてたのに、ローちゃんのそんな幼い顔初めて見たせいか毒気が抜かれてしまったのだ。謝らないって言うより、ローちゃんは今回の事を謝れないのよね……。

 

 「……謝らないのは、許されないと思ったからでしょ。反省してるならいいのよ……とは、言えないわ。ローちゃんは医者だから」

 

 私の言葉にローちゃんは黙ったまま。でも、聞いてない訳でも無いのよね。

 その証拠にローちゃんの表情が引き締まる。無防備な少年みたいな顔はもう、要素さえ残ってないわね。

 

 「医者が、医療にかこつけてしていい事じゃないでしょ。だからって、今更ローちゃんを嫌ったりもできないし、厳しく叱ってもローちゃんは既に反省してるから無意味」

 「ナミ……」

 「だから〝めっ〟って叱ってみたのよ」

 

 私の言葉に肩から力を抜いたローちゃんは、少しだけ寂しそうな顔をした。それが何だか胸を僅かに突き刺すけど、やっていい事と悪い事の区別はつけて欲しい。

 普通の女の子なら、多分狂ってる。何度イかされたと思うのよ。

 冗談抜きで、普通なら死ぬか狂うわ。ナミちゃんの身体はスペックが良いだけではなく、体力もあるから生きてるに過ぎないのよ。

 

 「俺はいつまで、小さいローちゃん……何だかな」

 「この先もずっと、変わらないと思うわよ。ドフィやロシーも、私の中では小さな少年のままだもの」

 「……手強いな」

 

 そう言って苦笑したローちゃんに、治療してくれた事に対して礼を告げれば息を飲んだような顔をしてから、困ったように笑う。そして、聞き取れた事が奇跡のような声で〝ありがとう〟と告げられる。

 それに何かを返す事は難しく、私は聞こえなかったフリで立ち上がった。ローちゃんが死ぬつもりなら、私はそれを阻むし、ルフィだって止めるとわかってる。

 ルフィは、友達であり仲間であるローちゃんを見捨てない。だからね、私だけ止めても無駄なのよ。

 そう思ってニヤリと笑えば、何故か苦虫を潰したような顔をされたので、伝わったらしいと知る。……でも、それならそれでいいのかも。

 その時、感じ取れたのは随分冷静さを取り戻したらしいドフィの様子。これでは、見つかるのも時間の問題だわ。

 

 「……あら」

 「どうした」

 「ドフィが近いわ」

 「わかった。……ナミも、行くか」

 「ええ」

 

 恋愛感情で愛しているのは……愛していたいのは、1人だけ。でも、違う形でなら愛してる人は多いの。

 ローちゃんも愛してる人の中に含まれる。見捨てるくらいなら、死んだ方がマシだわ。

 そんな私の思考を読み取ったかのように、ローちゃんは言う。その声が掠れているから、本心なんだと伝わって来る。

 

 「……本当なら、今のうちにナミは船に戻ってくれると有難いんだがな」

 「無理よ。諦めて。……その為に、私はローちゃんに抱かれたでしょ」

 「耐えるべきだったかもな」

 「今更、遅いわ」

 

 私はそう言って窓に向かい歩き出す。ローちゃんは溜息を落としつつ、それに従った。

 ローちゃんは人を巻き込みたくないと思うのか、人の少ない場所を選んで進む。そして、ある程度開けたのは先日戦った橋の袂。

 

 「鬼ごっこは終わりか?ロー……ナミ……?」

 「あらヤダ、隠れ鬼のつもりだったのだけど……?」

 「相変わらず、口の減らねェ奴だな」

 「私は口がひとつしかないもの。減ったら無くなっちゃうわ」

 

 クスクスと笑う私にドフィは青筋をたてる。ここなら、ローちゃんの希望通り人を巻き込むリスクは少ないだろうと思う。

 本来ならば闘魚が現れる筈の橋も、ドフィとローちゃんがいるからかその存在を示しはしない。なんとも不思議なものね。

 こうしてみると、本当に格の違いを痛感させられる。ドフィやローちゃん、ルフィは闘魚に襲われる事は有り得ないのがその証拠。

 そう、ベックが表に出ただけで闘魚が逃げたのは敵わないと即座に判断したから。そして、私を含むあの時のメンバーは、あれだけ居ても敵として見ても貰えず、獲物と認定されていたのだから笑えないわ。

 そうなると、ローちゃんもドフィも、流石は王下七武海に選ばれただけの事はあると言える。この称号は、強さの証でもあるのだから。

 

 「黒足にも逃げられた様子だ……。ウチの作戦にも色々と支障が出てるようだな。だが、お前のやってる事は、ただの逆恨みだ。ロー!!」

 「恨みじゃねェ……。俺は大切な人達(・・・・・)が安全に生きる未来を確約する為に、今度こそ俺が守る為、今日まで生きて来たんだよ!!」

 

 そうして始まった戦いはローちゃんが劣勢ではあるけど、一進一退の攻防と言われればそれも納得できそうなもの。私も精一杯のサポートをする形で参戦する。

 ドフィに致命傷は与えられないけど、ローちゃんを守る動きならできる。それにしても……身体が恐ろしい程に軽いわ。

 ローちゃんの言う大切な人達とは、ロシーや仲間達よね。確かに彼等が生きる為には、自分とロシーを狙い続けるドフィは脅威。

 そういう事なら、ドフィを始末しようとするのも納得出来る。そう思いつつ、ドフィの繰り出す鞭の前に躍り出てローちゃんを庇い背後で構えて、腕を突き出しつつ技を使うローちゃんの動きを確認していた。

 正直、二対一なのにそれで互角。少しでも隙を作れば、この戦いは1気に負けに転じるのが分かる。

 それどころか、ドフィは余裕綽々で電伝虫を使い通話まで始める始末。本気になれない私と、能力の全てを知られているローちゃんではどうしたって勝ち目は薄いのだ。

 だからこそ、ローちゃんは初めからドフィをカイドウに倒させる計画だったのだ。そう考えたら、ローちゃんの選択は正しい。

 

 「〝おいドフィ〟」

 「あァ……悪い。話の途中だったな」

 

 私とローちゃんの呼吸が乱れた時、そう言って休む時間をくれちゃうくらいに余裕なのだ。そして、痛感する。

 ドフィの動きは、私の動きと似てる。舞をしていなければ、変則的過ぎるこの動きにはついていけないだろう。

 

 「〝ヴァイオレットが裏切りやがったんだ〟」

 「成程、黒足が姿を見せたから何かあったとは思ったが……」

 

 その言葉で思い出す。国の為にと身を差し出した王女の話。

 ドフィが、初めて私を襲った時に話していた。知識は奪われたけど、何となくそれがヴァイオレットという人なのだと分かる。

 そう言えば、ドフィってロン毛の巨乳好きよね。……前に言ってた、私を無意識に求めてたって、そんな所に影響してるのかな。

 

 「〝お陰で麦藁達の作戦は分からずじまいよ〟」

 「あァ、それは良い。ラオG達をSMILEの工場入口に配備しろ」

 

 その言葉にローちゃんはビクリと身体を震わせる。これ迄に考える時間を与え過ぎたのはあるけど、どちらにしても作戦内容はローちゃんの動きと言動から確かに推測できるものね。

 そういった事を考え、予測するのはあの頃必要だからと基礎を叩き込んだ覚えがある。本当に、墓穴を掘るとは正にこの事だわ。

 それでも、教えた事に後悔はない。私は、あのころのドフィ達を助けないなんて、できる筈ないんだもの。

 きっと、幾度やり直せても、ドフィ達家族を守ろうとする。私は……ドフィ達を見捨てられない。

 迫害されて、傷付けられてる子供を放置したりできないわ。だから、これは私がどうにかしないといけない事なのかも知れないと思う。

 

 「優秀過ぎる弟で、嫌になるわ」

 「ナミ?」

 「ドフィの戦い方も、その戦略的思考も、戦いの進め方も……間違いなく私が教えたものよ。それを経験と共に実績を積み重ねて、独自のものに進化させてしまった」

 「……ナミが、教えた?」

 

 不思議そうなローちゃんに、私の方が不思議に思う。だって、ロシーからきいてるでしょ。

 私も理屈は分からないけど、過去に飛んでて、ローちゃんともそうやって出会い過ごしてるんだから、不思議そうにされるのは謎。まぁ、実際まさか二度も過去に飛ぶなんて考えないかも知れないわね。

 

 「ドフィの幼少期に、共に過ごしてるのよ」

 「……まァ、ナミだから有り得るか」

 

 ……私だから有り得るって、どういう意味よ。そう問掛ける余裕は無かった。

 ドフィは電伝虫で会話しながら、ローちゃんを執拗に狙って攻撃するから。糸に私が反応して対処してる隙に、蹴り飛ばした小石や砂利でローちゃんの視野を狭めて、ローちゃんを傷付ける。

 そうやって繰り返される攻撃は、私があの頃ドフィ達を守る為にやっていた行動を思い起こさせる。だからこそ、ドフィの背後に今のファミリーが居るのだとわかってしまう。

 

 「〝馬鹿を言えあいつらはこれから決勝に出場して、会場を沸かせるんだ……!!〟」

 「お前が1人いれば充分だ」

 

 ドフィは私達と戦いながら、ファミリーを持ち上げる。そうやってドフィは、人を簡単に使えるようになっていたらしい。

 ベックから聞いていたけど、ルフィを追い詰める為に、本当は幹部をそれだけ使う予定だったのね。それを……変更してしまうくらいには、カイドウは脅威であると分かる。

 ルフィを甘く見てるんじゃなくて、カイドウの方がリスクが高いと認識してるって事になる。つまり、カイドウとはやはり白髭さんと同格であると言う意味に他ならない。

 そして通話が終わると、ドフィはそれまでの陽気な態度から1変。猫が死にかけている獲物を弄ぶように、ローちゃんに言葉を向ける。

 確認するように言いながら、その実確信を得る為の言葉。それでいて、その真相には辿り着いていると示すもの。

 

 「ロー……つまりお前は〝囮〟で……その間〝麦藁の1味〟が〝工場〟を破壊する……」

 

 間合いを詰められて、私とローちゃんは後退る事さえできないままに、対応を迫られる。私は息が上がってるし、ローちゃんは既に傷だらけで頭から血を流しているから、何処かで休ませてあげたいんだけどな。

 ドフィの静かな声は、現状を正確に把握してる事を伝えて来る。これだけ冷静に話をしている時点で、ドフィは覇気を何時でも全て使える精神状態にある事がわかるわね。

 

 「お前は死んでも……俺はカイドウに追い詰められる。そういうシナリオで良いか?」

 

 声もなく睨み上げるローちゃんと、庇うように前に出てるのに私を避けて行く攻撃に対処しきれない現実がある。悔しくて、情けなくて、涙がこぼれそうになるのを耐えていたら、ドフィは言葉を続けた。

 その声は妙に静かで、ともすれば冷淡にさえ聞こえそうな程。恐らく普通ならば、威圧感さえあるんじゃないかなと思わされる声音。

 

 「ところが、お前は想像以上に時間を稼げず……奴らもまたマゴついてる。利用した(・・・・)と言いつつも……この作戦には、奴らへの絶大な信頼が必要だ。何故……そこまで〝麦藁〟を信じる!?」

 「『〝D〟はまた……必ず嵐を呼ぶ』」

 「なに!?」

 「〝元〟とは言え、天竜人には怖い存在なんじゃねェのか?ドフラミンゴ」

 

 ローちゃんの言葉により、ドフィの動きが変わった。咄嗟に庇おうとしたけど、ドフィの動きが洗練されていて、私を動けなくしてから目の前でローちゃんをたこ殴りにするから何もできない。

 こんな状態なのに、私は自分の身一つまともに守る事さえ出来ないの!?

 足手纏いにしかなれないなんて、思ってもみなかった。あの戦場では、それなりに戦えたのに。

 どうして、守れないのよ。あの時に比べて、覚悟が足りないから?

 そんな事、言い訳にならないわ。今ここで戦えなければ、私は目の前でローちゃんを喪ってしまう。

 そんなのは嫌っ!!私はもう、大切な人を目の前で喪うなんて耐えられないっ!!

 建物を破壊しながら吹き飛ばされるローちゃんを見て、全身に覇気を纏い剃でその場を移動して、月歩で追いかければそこは私の想定を遥かに上回る状態に陥っていた。ローちゃんがドフィに蹴り飛ばされ、ぶつかった衝撃により崩れた建物の瓦礫の中、意識があるのかも危うい状態で倒れている。

 その近くには変装しているのかも怪しいゾロと錦えもん、そして座頭市を思わせる風体の男と、柵越しのルフィ。集まって来る海軍と、不機嫌さを隠しもしないドフィが一堂に会してる。

 

 「おい!!トラ男、お前何でミンゴと……!!」

 「ガキが……図に乗り過ぎだ!!」

 

 ルフィの言葉とドフィの言葉は、どちらが先だったのか。そんな事を考えるより早く、ドフィがローちゃんに銃口を向けてるのを見て飛び出す。

 ローちゃんに覆い被さるようにして守れば、ルフィの悲鳴が響き渡る。でも、これでも何とか、銃弾半分しか受けないで、済んだのよ?

 移動に力を使い過ぎて、全ては弾けなくて、でも、ローちゃんは無事な筈。そう思って確認すれば、少し掠めた様子だけど、大丈夫、致命傷には、至ってないわ。

 本来なら、無傷で助けたかったけど……。全ては、防げなかった。

 内心で落ち込む私に、ドフィによりその前に与えられていたダメージで、意識を朦朧とさせたローちゃんが声を掛けてきた。こんな時でも、そんな事言うなんて……。

 

 「ナミ……庇うな、と……言ったの、に……」

 「それは、断った筈よ、ローちゃん」

 「退け、ナミ。邪魔するなら、怪我じゃ済まねェぞ」

 

 ドフィから向けられた殺気は本物。わかっていても、私は退けない。

 私は、この子を喪えない。だからこそ、ドフィを迷い無く睨みあげる。

 

 「なら……殺しなさい。私は、ローちゃんを喪うつもりなんてないもの」

 「俺が殺せないと思って、甘くみ「てないわよ。ドフィは敵になった時点で、その相手がどれほど大切でも殺す事で、他の大切な人を守って来たんじゃない」」

 

 分かってる。そうする事でしか、ドフィは自分と他の大切な人を守れなかった。

 全てを喪わずに、何も失わずに、大切な者を守れるなんて……そんな奇跡普通は存在しない。頑張ればどうにかなるのなんて、物語の主人公とか、それに類する人の特権だわ。

 わかっているけど、それでも、ならばローちゃんを好きにして良いなんて口が裂けても言えない。だから、私はローちゃんを背に庇う形で、でも立つ事さえも出来ずにドフィを見上げる。

 そう言えば、また、左側だわ。いつも怪我をするのは左側な気がする。

 折角綺麗に、傷跡が消えたのに……皆が嘆くかな。でも、何度やり直せても私はローちゃんを庇うと思うのよね。

 

 「ドフィ……私は、ドフィも可愛い。だから、もし目の前で逆の事が起きたら、同じように庇ってたわよ」

 「……そうだな、ナミは、そう言う馬鹿だ。知ってたのに、防げなかった。……糸で、動けなくした筈だが、どうやって動いた?」

 「教える、わけ、無いじゃない」

 

 流れ落ちる体液が、私の視界を霞ませる。出血し過ぎた、かな。

 ローちゃんはいつの間にか静かになっていて、気絶してるだけだと思う。それこそ、致命傷は無いから、上手く時間を稼げれば逃げてくれるかも知れない。

 

 「おい!!ミンゴォ!!お前、よくもトラ男とナミを!!」

 「〝麦藁〟ァ、ナミの方はともかく、てめェに他でとやかく言われる筋合いはねェ……!!」

 

 ルフィの声が聞こえる。ドフィが怒ってるのがわかる。

 微かに、皆の声も、聞こえるわ。あれ、だとしたら、皆も、近くに居るのかな?

 頭が、ボーッとする。だめよ、しっかりしなきゃ……。

 

 「ローは元々俺の部下!!ケジメ(・・・)は俺がつける!!」

 「キン!!トラ男を運べ!!」

 「承知した!!」

 「ナミ!動けるなら自分の身は自分で守れっ!!」

 「……わかってるわ、私に、気を回さないで。この程度、何ともないわ」

 

 ゾロの声と、錦えもんの声が聞こえる。私は無意識で言葉を返して、でも、戦わなきゃとクリマタクトを手にして立ち上がった。

 杖のように使えるクリマタクトが、どれほど私を支えているのか……。本来と違う使い方してるけど、許してね……と、軽くクリマタクトを撫でてから、真っ直ぐに目の前に居るドフィを睨みあげた。

 その時聞こえて来た会話から、皆は船にいるのだとわかる。どうやら皆は、電伝虫でやり取りしてたところらしい。

 けれども、ドフィに斬り掛かる予定だったらしいゾロは座頭市のような人に抑えられて、錦えもんはそれに動揺してる間にドフィからの攻撃を受けてしまう。私は動く事さえまともにできなくて、でも近付こうとする海兵達に咄嗟に雷撃を放つ。

 これ以上、仲間を傷付けさせない。もう誰も、皆に……。

 

 「近付かないで……」

 

 その刹那、ドフィが笑い出す。それを聞いて私口は勝手に動き出した。

 

 「〝海賊狩り〟に〝狐火の錦えもん〟……その上、脱走癖のある〝俺の妻〟だ。面白いじゃねェか」

 「私は、ルフィの航海士よっ!!……そっちの男、大将って事は……」

 

 赤犬と青雉の抜けた穴を埋める為に入った、二人の大将の片割れ。つまり……今の私では相手にならない。

 ドフィは〝天竜人〟として、海軍を使ってるんだわ。都合のいいように、道具や部下として……!

 

 「ローちゃんは、渡さな、い……わよっ」

 「立ってるのもやっとの癖に、よく言ったもんだな、ナミ」

 

 嘲るようなドフィのそれに重なるように、ルフィの私とローちゃんを呼ぶ声が、そしてゾロと錦えもんを案じる声が谺響する。だけど、今それに答えるだけの余裕は私に無かった。

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